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5"つるつるにしよう!
31.ラプラスの悪魔
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(悠莉視点)
中年オヤジが私に隠毛を見せろと言ってきた。
あまりにも最低過ぎる。今時一発でセクハラ認定されて職を失ってもおかしくない発言。
「え、あ……」
「冗談だよぉ。恥ずかしいもんね」
「……いいよ。恥ずかしいけど、哀香のためだから」
「え?」
男は驚いた。
私は行動に移す。
少しだけ後悔したけどもう遅かった。
履いていたジーンズとショーツを一気に足首まで落とした。
上着をたくし上げてはっきり見えるようにして、自分の下半身を男に見せた。毛の状態を男に見せてしまった。ついでにブラまでめくって乳房まで見せたことに深い意味はない。ただなんとなくだった。
男の目が私の股間に注がれているのが分かった。ついでに乳首にも。
──見るなっ! キモオヤジ!
って思ったけれど、私から見せているから、口に出せなかった。私にできるのはただ不機嫌そうに男を睨むことだけ。
「本当だ。綺麗に整えられてるね。君、毛が薄いタイプでしょ?」
「……うん」
「そっか、いいね。で、どうする? 彼女みたいに少し残すって言うのも人気だけど」
男は私の股間を指差して、哀香の股と見比べた。
「あ、私はツルツルでお願いします」
だけど哀香は、まるで初めから決めていたような声色で最初の希望を貫いた。
これでは私が無意味に下半身を露出したみたいだった。
少し前の私なら憤慨していたかもしれない。
視線を哀香に向けると彼女はチロっと舌を出した。自分のおかげで露出する機会を得られてよかったねって感じで、まるで「貸しだよ?」とでも言わんばかりだった。
「じゃあ、このまま進めていいかな?」
男が聞いて、哀香は同意した。
レーザー機器を準備して、照射準備が完了する。
「じゃあ、始めるよ?」
「お、お願いします……」
男はサングラスをかけて脱毛が始まるって言う時に私をチラッと見やった。
「……ああ、君もうパンツ履いていいよ」
「え? あっ…‥」
私は哀香の姿に夢中で、服をたくし上げて下半身を露出していたことを忘れていた。
「ありがとうね。見せてくれて」
──お前のために見せたんじゃない!
顔が熱くなって急いでボトムとショーツを引き上げる。心の中で悪態をついて平静を装う。
私がおずおずとジーンズを履いていると、脱毛が始まった。
レーザーが当てられる哀香は流石に緊張しているみたいだった。
「足を開いて」
男が哀香の股間を見つめて言葉を放った。
「あ、あの、えっと……」
「どうしたの? 怖い? パーテーションを使おうか?」
なぜか哀香は広げていた股を閉じて恥ずかしそうにしていた。さっきまで股を剃られて十分すぎるくらい見られていたと言うのに。
「えっと……見えないところでレーザーを当てられる方が怖いので、仕切りはいらないですけど……その」
哀香は股間をモジモジと締めながら男を見つめて何かを求めるように言い淀んだ。
「ああ、僕が開いてあげるね」
彼女の態度で察した男は哀香の両ひざに手を乗せた。
「あっ♡」
哀香は恥ずかしくてたまらなそうに顔を手で覆っていたけれど、指の隙間から男の視線を盗み見ていた。
彼女の股が開かれた。
ピンク色を増した内側。ビラビラとする筋肉さえも男の角度からは丸見えなのだろう。
男の口元が一瞬、緩んだ気がした。
「は、恥ずかしいですぅ」
足を開いて、おっぴろげ状態の哀香。その姿は本来なら異性になんて見せて良いものではない。
尊厳を破壊されるような屈辱的な格好。なのに哀香は嬉しそうだった。
「その格好を維持してね。じゃあ、始めるよ」
「……っ!」
ピカっと光って、哀香が声を漏らした。
「大丈夫? こんな感じでやっていくから。終わった後、少し腫れるかもしれないけどすぐに治るから」
男が哀香に優しく声をかけた。
「……はい、大丈夫です。我慢できます」
「じゃあ続けるね」
2回目……3回目と照射を繰り返えされる。
「……っ」
「……ん」
「……あ」
レーザーが当たる度に、哀香は声を漏らしていた。哀香が漏らす声が、男の行為によって出されていると思うとなぜかムズムズとしてしまう。
「……い」
「……あん♡」
5回目の照射が終わったところで男は一度手を止めた。
そして何事もなかったように照射が続いた。
「少し休憩しよっか」
男が言ってインターバルが設けられた。
哀香は腰を起こして渡されたペットボトルの水分を飲み、ほっと息を吐いた。
「ちょっとだけ痛いですね」
「うん、そうだね。でも最新の機械だから昔よりは痛くないんだよ」
「そうなんですね。すこしびっくりしちゃいました」
気さくなトーンで雑談する2人を私は見ていることしか出来なかった。
「じゃあ、再開するね」
またレーザーが照射された。
「……んっ」
同じような声を哀香はまた何度も何度も漏らした。
それがこのまま繰り返されると思った時、哀香は脚を震わせた。
「……っあん♡」
少し大きな声が漏れて部屋に響いた。
「あ、大丈夫? 入り口の近くはやっぱり痛いよね」
「……はい、あの……大丈夫です。続けてください」
「分かった。じゃあいくね」
男ご照射を続けると、哀香はまた声を漏らし始めた。
「っ!んっ……っ!あっ……ん♡!」
哀香の声は少しづつ大きくなっているように感じた。
「我慢できて偉いね。もう少しだから頑張って」
「はいっ……んっ!あっ、っあ♡」
しばらくして男の手が止まった。
「……ちょっと濡れちゃってるね。拭くね」
「……え? あっ……」
哀香が何かを理解したように、頬を染めた。
私も少し遅れてその意味を理解する。彼女の股には塗られたジェルとは違う湿り気が浮かんでいた。
哀香の愛液だった。
「あ、あの……すみません……恥ずかしいです」
「いいんだよ。よくあることだから」
優しい口調で言った男は淡々とティッシュで濡れたところを拭き取った。
彼女の液が付いたティッシュを片付けて、何事もなかったように改めてジェルが塗られて脱毛が再開される。
何度か同じ工程を繰り返して、作業が進んだ。
「じゃあ、今回の分は後少しだから一気にやっちゃおうか」
「……はい」
男はそう言って、レーザーを照射するスピードを上げた。
「あっ……っ!んっ、あぅっ……んくっ」
連続照射で哀香の声が一段と大きくなる。
──気持ちいいのかな? ……変態。
私はその姿をいつまでも見ていたい、っていう謎の感情に支配されていた。
でも、やがて終わりが来て脱毛は終わるのだろう。
このまま終わると思っていた。
「っあ、あ、え!? ちょっと待ってください!」
突然、哀香は迫真の声をあげた。
「痛い? もう少しだから我慢しようね」
「ち、違うんです! このままじゃ! ……んっ」
哀香は必死になって何かを訴えていたけれど、男は手を止めなかった。
「あと少しだよ」
「ちが、あ、ダメ……もうっ!無理っ!ぁぁぁ」
ブルっと彼女の身体が震えた。
正直、私は展開が予想できていた。
哀香はイくんだと思っていた。
男にアソコを晒して刺激されて、感じて濡れて、絶頂に達する。
自分が絶頂に達する姿を男に見せつけるだなんて、なんて異常なのだろう。でも、異常だからこそ当然だと思った。彼女は変態だから……。
そう思っていた。
でも私の予想は少し外れた。
「いゃぁぁぁぁぁ!!」
哀香が絶叫して、水飛沫が上がった。
ピシャァァと勢いよく放たれたソレが、ピッと男の顔に跳ねた。
そして、チョロチョロとシーツの上に注がれる。
ポタポタと施術台から水滴が落ち続けた。
その水は紛れもなく哀香の股から繋がっている。
彼女の体内から排泄された液体が小さな水溜まりを作った。
「あ、あぁ……うそ、うそ」
哀香は絶望に染まった声で小さく呻いた。
おしっこだった。
彼女は男の前で盛大にお漏らしをしてしまったのだ。
私は呆然として動けずにいた。
──どうしよう……さすがにコレは……。
男も困惑しているようで、言葉を探しているのかフリーズしていた。
「あ、ご、ごめんなさい……私…… 漏らしちゃって、ごめんなさい! おしっこ漏らしちゃってごめんなさい!」
私と男は哀香の謝罪の声で、ハッとした。
「ううっ……私っ、こんな……こんなのって……」
私は彼女の姿を直視することができなかった。
診察台の上でぐすぐすと涙を拭う哀香の股はだらしなく開け放たれていて、力なくだらんとしている。
いまだに股からつたう液体は決壊したダムのように溢れ続けていた。
──今日は暑いから水分補給をちゃんとしないと!
私を気づかって笑顔でペットボトルを差し出した午前中の彼女が思い浮かんだ。
その子は今、おしっこを漏らして泣きじゃくっている。幼い子どもだったらよかったけれど、彼女は大学生だった……。
「どうしました!?」
しばらくすると、異常を察して受付のお姉さんが駆けつけてきた。
「あっ」
部屋の惨状を見て事態を察した彼女は、すぐに近くに置いてあったバスタオルで哀香の下半身を拭いてくれる。
「とりあえず、着替えてきてください。今日のところは、そのままお帰りいただいて大丈夫ですので」
「すみませぇん」
哀香は力無く答えて俯いた。
「……あなたは大丈夫?」
と言われ、ビクッとした。
私に声がかけられていた。
「あ、えっと……はい」
「お友達でしょ? ちゃんとフォローしてあげるのよ」
それを聞いて私は彼女を抱き止めて更衣室に向かった。
哀香は俯いたまま何も言わないから、私が服を着せてあげて、受付のお姉さんに挨拶をして店を出た。
帰りの道は沈黙が支配していた。
私は彼女の手を離さないようにぎゅっと握ることしかできなかった。
なんて声をかければいいか分からなかった。
しばらく歩いていると哀香は俯いたまま立ち止まった。
「哀香……」
表情の分からない彼女にそっと声をかける。
時刻は夕方になって、背後には夕暮れが迫っていた。
夜に変わろうとする、美しい橙色の空はどうしようもない不安を孕んでいた。まるで私達を不安で呑み込もうとするみたい。
「悠莉……」
哀香がポツリと呟いた。私はただ黙って彼女の次の言葉を待った。
「私……おしっこするところ男の人に見られちゃった」
「……うん」
「我慢できなくて漏らしちゃった……」
「……うん」
「アソコからおしっこが出てる瞬間も見られちゃった……出し始めから終わりまで……」
「……う、うん」
私は哀香の現状認識にただ頷くことしかできない。
彼女には整理する時間が必要なのだろう。私が余計なことを言ったら彼女はまた泣いてしまうんじゃないかって心配だった。
だからこそ彼女が顔を上げたとき、私は震え上がった。
「……最高っ♡」
「え?」
私は耳を疑った。聞き間違いかと思った。
でも夕日に怪しく照らされた彼女の口元はぐにゃりと曲がって、愉悦に染まっている。
悪魔かと思った。
「最高に気持ちいいっ♡」
「な、何言ってるの……?」
「悠莉も見たでしょ? 私が漏らした時のあの男の人の顔っ! おしっこしてる私を見てドン引きした冷たい目!」
「……もしかして、全部わざとなの?」
私は自分の声が震えているのが分かった。
「え? そうだよ? ここでおしっこ漏らしたらどうなるんだろう……って考えたら止まらなくなっちゃった!」
哀香は当然のように答えた。
「嘘でしょ……?」
「え、現実だけど……? 人前でするなんて初めてだから出るか不安だったんだけど、お水がぶ飲みしててよかったぁ。そういえば、私のおしっこは誰が片付けてくれたのかな……後でお菓子持って謝りに開こうかな……♡」
「変態……。この変態女! 痴女!」
「うん!」
私は哀香を罵った。だけど、彼女は嬉しそうに屈託のない笑顔でニコニコするだけだった。
そして、私の耳元に口を寄せて囁いた。
「……悠莉も変態でしょ?」
ゾクッとするくらい艶っぽい声だった。まるで毒のように耳から脳に染み込んでいくような……。
──男の前でおしっこするのってどんな気分なんだろう……。
私は自分の頭に浮かんだ考えに恐れ慄いた。彼女の思想が無理やり頭に流し込まれるような混濁でおかしくなる。
「ねぇ、悠莉もしよ? 見ててあげる」
もはや私は目の前の友人に対して一つの言葉しか思い浮かばない。
「変態! 変態! 変態! 変態!」
「えへへ」
照れくさそうに哀香は笑っていた。
なんてことはないお茶目な失敗でもしたかのように……。
陽が落ちて夜の帳が下りた。
中年オヤジが私に隠毛を見せろと言ってきた。
あまりにも最低過ぎる。今時一発でセクハラ認定されて職を失ってもおかしくない発言。
「え、あ……」
「冗談だよぉ。恥ずかしいもんね」
「……いいよ。恥ずかしいけど、哀香のためだから」
「え?」
男は驚いた。
私は行動に移す。
少しだけ後悔したけどもう遅かった。
履いていたジーンズとショーツを一気に足首まで落とした。
上着をたくし上げてはっきり見えるようにして、自分の下半身を男に見せた。毛の状態を男に見せてしまった。ついでにブラまでめくって乳房まで見せたことに深い意味はない。ただなんとなくだった。
男の目が私の股間に注がれているのが分かった。ついでに乳首にも。
──見るなっ! キモオヤジ!
って思ったけれど、私から見せているから、口に出せなかった。私にできるのはただ不機嫌そうに男を睨むことだけ。
「本当だ。綺麗に整えられてるね。君、毛が薄いタイプでしょ?」
「……うん」
「そっか、いいね。で、どうする? 彼女みたいに少し残すって言うのも人気だけど」
男は私の股間を指差して、哀香の股と見比べた。
「あ、私はツルツルでお願いします」
だけど哀香は、まるで初めから決めていたような声色で最初の希望を貫いた。
これでは私が無意味に下半身を露出したみたいだった。
少し前の私なら憤慨していたかもしれない。
視線を哀香に向けると彼女はチロっと舌を出した。自分のおかげで露出する機会を得られてよかったねって感じで、まるで「貸しだよ?」とでも言わんばかりだった。
「じゃあ、このまま進めていいかな?」
男が聞いて、哀香は同意した。
レーザー機器を準備して、照射準備が完了する。
「じゃあ、始めるよ?」
「お、お願いします……」
男はサングラスをかけて脱毛が始まるって言う時に私をチラッと見やった。
「……ああ、君もうパンツ履いていいよ」
「え? あっ…‥」
私は哀香の姿に夢中で、服をたくし上げて下半身を露出していたことを忘れていた。
「ありがとうね。見せてくれて」
──お前のために見せたんじゃない!
顔が熱くなって急いでボトムとショーツを引き上げる。心の中で悪態をついて平静を装う。
私がおずおずとジーンズを履いていると、脱毛が始まった。
レーザーが当てられる哀香は流石に緊張しているみたいだった。
「足を開いて」
男が哀香の股間を見つめて言葉を放った。
「あ、あの、えっと……」
「どうしたの? 怖い? パーテーションを使おうか?」
なぜか哀香は広げていた股を閉じて恥ずかしそうにしていた。さっきまで股を剃られて十分すぎるくらい見られていたと言うのに。
「えっと……見えないところでレーザーを当てられる方が怖いので、仕切りはいらないですけど……その」
哀香は股間をモジモジと締めながら男を見つめて何かを求めるように言い淀んだ。
「ああ、僕が開いてあげるね」
彼女の態度で察した男は哀香の両ひざに手を乗せた。
「あっ♡」
哀香は恥ずかしくてたまらなそうに顔を手で覆っていたけれど、指の隙間から男の視線を盗み見ていた。
彼女の股が開かれた。
ピンク色を増した内側。ビラビラとする筋肉さえも男の角度からは丸見えなのだろう。
男の口元が一瞬、緩んだ気がした。
「は、恥ずかしいですぅ」
足を開いて、おっぴろげ状態の哀香。その姿は本来なら異性になんて見せて良いものではない。
尊厳を破壊されるような屈辱的な格好。なのに哀香は嬉しそうだった。
「その格好を維持してね。じゃあ、始めるよ」
「……っ!」
ピカっと光って、哀香が声を漏らした。
「大丈夫? こんな感じでやっていくから。終わった後、少し腫れるかもしれないけどすぐに治るから」
男が哀香に優しく声をかけた。
「……はい、大丈夫です。我慢できます」
「じゃあ続けるね」
2回目……3回目と照射を繰り返えされる。
「……っ」
「……ん」
「……あ」
レーザーが当たる度に、哀香は声を漏らしていた。哀香が漏らす声が、男の行為によって出されていると思うとなぜかムズムズとしてしまう。
「……い」
「……あん♡」
5回目の照射が終わったところで男は一度手を止めた。
そして何事もなかったように照射が続いた。
「少し休憩しよっか」
男が言ってインターバルが設けられた。
哀香は腰を起こして渡されたペットボトルの水分を飲み、ほっと息を吐いた。
「ちょっとだけ痛いですね」
「うん、そうだね。でも最新の機械だから昔よりは痛くないんだよ」
「そうなんですね。すこしびっくりしちゃいました」
気さくなトーンで雑談する2人を私は見ていることしか出来なかった。
「じゃあ、再開するね」
またレーザーが照射された。
「……んっ」
同じような声を哀香はまた何度も何度も漏らした。
それがこのまま繰り返されると思った時、哀香は脚を震わせた。
「……っあん♡」
少し大きな声が漏れて部屋に響いた。
「あ、大丈夫? 入り口の近くはやっぱり痛いよね」
「……はい、あの……大丈夫です。続けてください」
「分かった。じゃあいくね」
男ご照射を続けると、哀香はまた声を漏らし始めた。
「っ!んっ……っ!あっ……ん♡!」
哀香の声は少しづつ大きくなっているように感じた。
「我慢できて偉いね。もう少しだから頑張って」
「はいっ……んっ!あっ、っあ♡」
しばらくして男の手が止まった。
「……ちょっと濡れちゃってるね。拭くね」
「……え? あっ……」
哀香が何かを理解したように、頬を染めた。
私も少し遅れてその意味を理解する。彼女の股には塗られたジェルとは違う湿り気が浮かんでいた。
哀香の愛液だった。
「あ、あの……すみません……恥ずかしいです」
「いいんだよ。よくあることだから」
優しい口調で言った男は淡々とティッシュで濡れたところを拭き取った。
彼女の液が付いたティッシュを片付けて、何事もなかったように改めてジェルが塗られて脱毛が再開される。
何度か同じ工程を繰り返して、作業が進んだ。
「じゃあ、今回の分は後少しだから一気にやっちゃおうか」
「……はい」
男はそう言って、レーザーを照射するスピードを上げた。
「あっ……っ!んっ、あぅっ……んくっ」
連続照射で哀香の声が一段と大きくなる。
──気持ちいいのかな? ……変態。
私はその姿をいつまでも見ていたい、っていう謎の感情に支配されていた。
でも、やがて終わりが来て脱毛は終わるのだろう。
このまま終わると思っていた。
「っあ、あ、え!? ちょっと待ってください!」
突然、哀香は迫真の声をあげた。
「痛い? もう少しだから我慢しようね」
「ち、違うんです! このままじゃ! ……んっ」
哀香は必死になって何かを訴えていたけれど、男は手を止めなかった。
「あと少しだよ」
「ちが、あ、ダメ……もうっ!無理っ!ぁぁぁ」
ブルっと彼女の身体が震えた。
正直、私は展開が予想できていた。
哀香はイくんだと思っていた。
男にアソコを晒して刺激されて、感じて濡れて、絶頂に達する。
自分が絶頂に達する姿を男に見せつけるだなんて、なんて異常なのだろう。でも、異常だからこそ当然だと思った。彼女は変態だから……。
そう思っていた。
でも私の予想は少し外れた。
「いゃぁぁぁぁぁ!!」
哀香が絶叫して、水飛沫が上がった。
ピシャァァと勢いよく放たれたソレが、ピッと男の顔に跳ねた。
そして、チョロチョロとシーツの上に注がれる。
ポタポタと施術台から水滴が落ち続けた。
その水は紛れもなく哀香の股から繋がっている。
彼女の体内から排泄された液体が小さな水溜まりを作った。
「あ、あぁ……うそ、うそ」
哀香は絶望に染まった声で小さく呻いた。
おしっこだった。
彼女は男の前で盛大にお漏らしをしてしまったのだ。
私は呆然として動けずにいた。
──どうしよう……さすがにコレは……。
男も困惑しているようで、言葉を探しているのかフリーズしていた。
「あ、ご、ごめんなさい……私…… 漏らしちゃって、ごめんなさい! おしっこ漏らしちゃってごめんなさい!」
私と男は哀香の謝罪の声で、ハッとした。
「ううっ……私っ、こんな……こんなのって……」
私は彼女の姿を直視することができなかった。
診察台の上でぐすぐすと涙を拭う哀香の股はだらしなく開け放たれていて、力なくだらんとしている。
いまだに股からつたう液体は決壊したダムのように溢れ続けていた。
──今日は暑いから水分補給をちゃんとしないと!
私を気づかって笑顔でペットボトルを差し出した午前中の彼女が思い浮かんだ。
その子は今、おしっこを漏らして泣きじゃくっている。幼い子どもだったらよかったけれど、彼女は大学生だった……。
「どうしました!?」
しばらくすると、異常を察して受付のお姉さんが駆けつけてきた。
「あっ」
部屋の惨状を見て事態を察した彼女は、すぐに近くに置いてあったバスタオルで哀香の下半身を拭いてくれる。
「とりあえず、着替えてきてください。今日のところは、そのままお帰りいただいて大丈夫ですので」
「すみませぇん」
哀香は力無く答えて俯いた。
「……あなたは大丈夫?」
と言われ、ビクッとした。
私に声がかけられていた。
「あ、えっと……はい」
「お友達でしょ? ちゃんとフォローしてあげるのよ」
それを聞いて私は彼女を抱き止めて更衣室に向かった。
哀香は俯いたまま何も言わないから、私が服を着せてあげて、受付のお姉さんに挨拶をして店を出た。
帰りの道は沈黙が支配していた。
私は彼女の手を離さないようにぎゅっと握ることしかできなかった。
なんて声をかければいいか分からなかった。
しばらく歩いていると哀香は俯いたまま立ち止まった。
「哀香……」
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時刻は夕方になって、背後には夕暮れが迫っていた。
夜に変わろうとする、美しい橙色の空はどうしようもない不安を孕んでいた。まるで私達を不安で呑み込もうとするみたい。
「悠莉……」
哀香がポツリと呟いた。私はただ黙って彼女の次の言葉を待った。
「私……おしっこするところ男の人に見られちゃった」
「……うん」
「我慢できなくて漏らしちゃった……」
「……うん」
「アソコからおしっこが出てる瞬間も見られちゃった……出し始めから終わりまで……」
「……う、うん」
私は哀香の現状認識にただ頷くことしかできない。
彼女には整理する時間が必要なのだろう。私が余計なことを言ったら彼女はまた泣いてしまうんじゃないかって心配だった。
だからこそ彼女が顔を上げたとき、私は震え上がった。
「……最高っ♡」
「え?」
私は耳を疑った。聞き間違いかと思った。
でも夕日に怪しく照らされた彼女の口元はぐにゃりと曲がって、愉悦に染まっている。
悪魔かと思った。
「最高に気持ちいいっ♡」
「な、何言ってるの……?」
「悠莉も見たでしょ? 私が漏らした時のあの男の人の顔っ! おしっこしてる私を見てドン引きした冷たい目!」
「……もしかして、全部わざとなの?」
私は自分の声が震えているのが分かった。
「え? そうだよ? ここでおしっこ漏らしたらどうなるんだろう……って考えたら止まらなくなっちゃった!」
哀香は当然のように答えた。
「嘘でしょ……?」
「え、現実だけど……? 人前でするなんて初めてだから出るか不安だったんだけど、お水がぶ飲みしててよかったぁ。そういえば、私のおしっこは誰が片付けてくれたのかな……後でお菓子持って謝りに開こうかな……♡」
「変態……。この変態女! 痴女!」
「うん!」
私は哀香を罵った。だけど、彼女は嬉しそうに屈託のない笑顔でニコニコするだけだった。
そして、私の耳元に口を寄せて囁いた。
「……悠莉も変態でしょ?」
ゾクッとするくらい艶っぽい声だった。まるで毒のように耳から脳に染み込んでいくような……。
──男の前でおしっこするのってどんな気分なんだろう……。
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「ねぇ、悠莉もしよ? 見ててあげる」
もはや私は目の前の友人に対して一つの言葉しか思い浮かばない。
「変態! 変態! 変態! 変態!」
「えへへ」
照れくさそうに哀香は笑っていた。
なんてことはないお茶目な失敗でもしたかのように……。
陽が落ちて夜の帳が下りた。
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