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第五話 妹
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「あちゃー……」
きのこスパを食べ終わり、食休み中。スマホをいじってたハルちゃんが、何とも言えない声を出す。
「どしたの?」
同じくスマホでブラウジングしていたので、声をかける。
「止められちゃいました」
がっくり、項垂れる彼女。
「それも、親の管理かー」
ほんと、籠の鳥だったんだね。
「はい。就活しなきゃいけないのに、どうしましょう」
「新しいの、作りに行く?」
「いいんですか? 私、ないないづくしですよ?」
不安そうな彼女。
「まー、全部奢ってあげるとかは無理だけど、そこは出世払いでいーよ」
「ありがとうございます!」
ぱあっと、顔を輝かせる。
我ながら、お人好しがすぎるかなとも思うけど、なーんかほっとけないのよね、彼女。
「本人確認書類はある?」
「はい、保険証とマイナが」
なら、大丈夫かな。
「じゃー、今度はF駅に行きますかー。ハルちゃんも着の身着のままじゃね。服、買ってあげる!」
さっき、私たちが買い出しにでかけたのは東F駅。文字通り、F駅から東に一駅行ったところにある。
「何から何まで、すみません」
「気にしなさんな。それでも気にするなら、後から返してくれればいいから。なんだかね、妹ができたみたいで嬉しいのよ」
立ち上がり、腰を伸ばしながら言う。
「妹、ですか。ふふ、なんだか照れくさいですね」
はにかむ彼女。かわいいなあ。
「じゃ、行こうか」
さーて、本日二度目のお出かけですよー。
◆ ◆ ◆
バスで移動し、F駅前へ。ここの駅舎は、美しいと評判なのです。
ちょっと、地元民として誇らしい。
「ハルちゃんは、やっぱりそういうおとなしい服が好み?」
「好みというか、こういう服しか買ってもらったことがないもので」
ふーむ。
「ハルちゃんが、どういう仕事に就けるかわかんないから、そういう感じのと、アクティブなの、両方買っていこうか」
「ありがとうございます! ほんと、すみません」
「ほっほっほっ。情けは人のためならずじゃよ」
とか言いつつ、まずは駅そばのショッピングモール、「るるる」へ。そこのブティック、「ハーネスト」に案内する。
「ここの服ね、値段の割にはすごくいいのよ」
と言いつつ、店内を物色。
「たしかに、いいですねー」
ハルちゃん、ショッピング楽しそうだな。
彼女が嬉しいと、私まで嬉しくなってくる。
三着ほど買い、次は隣のビルのファッション店、「ユアクロ」へ。
「こう言う感じのお店、初めてです」
「とりあえず、長袖とデニム見ていこうか」
ハルちゃん、こちらでも楽しそうに物色。
活動的なデニムなんかに、興味津々。
「遠慮せず、好きなの選んでいいからねー」
ふふ。ほんとに、妹と買い物してるみたい。
私は一人っ子だけど、ほんとに妹がいたら、こんな感じだったのかな。
彼女は、清潔感のある白い長袖とネイビーブルーのデニムを選びました。
そして、本命である電気店に。
そこで、スマホを買い替える。遠慮して、格安シムを選ぶ彼女。でも、安物買いの何とやらなので、もうちょっといいのを勧める。
「悪いですよ!」
「いーの、いーの。かわいい妹のためだもん」
結局、私の熱意に押され、ちょっといいのを選んでくれました。
そのあとは、更に隣のショッピングモールで、シュークリームを買い食い。
「ほんと、何から何まですみません」
「あんまり恐縮しないの。たまには、人の善意をまるっと受けるって大事よ」
「善意、ですか。おねーさんは、わたしを葵家の娘ではなく、一人の葵ハルとして見てくれるんですね」
ちょっと照れくさそうに、はにかむ彼女。
そうか、打算的な人間関係に囲まれてたんだな、きっと。
「そうだよ。私は、ハルちゃんという人間に、惚れちゃいました! かわいくて、いい子なんだもん。好きにならない理由がないよ」
ほほえみを投げかけると、恥ずかしそうに俯いてしまう。かーわいーいなー!
「あとは、百均で細々としたもの買っていこう」
そういえば、布団も新しくしないとなー。これは、重いしかさばるから、通販だね。
諭吉先生がひらひら飛んでいくけど、かわいいハルちゃんのためだ!
きのこスパを食べ終わり、食休み中。スマホをいじってたハルちゃんが、何とも言えない声を出す。
「どしたの?」
同じくスマホでブラウジングしていたので、声をかける。
「止められちゃいました」
がっくり、項垂れる彼女。
「それも、親の管理かー」
ほんと、籠の鳥だったんだね。
「はい。就活しなきゃいけないのに、どうしましょう」
「新しいの、作りに行く?」
「いいんですか? 私、ないないづくしですよ?」
不安そうな彼女。
「まー、全部奢ってあげるとかは無理だけど、そこは出世払いでいーよ」
「ありがとうございます!」
ぱあっと、顔を輝かせる。
我ながら、お人好しがすぎるかなとも思うけど、なーんかほっとけないのよね、彼女。
「本人確認書類はある?」
「はい、保険証とマイナが」
なら、大丈夫かな。
「じゃー、今度はF駅に行きますかー。ハルちゃんも着の身着のままじゃね。服、買ってあげる!」
さっき、私たちが買い出しにでかけたのは東F駅。文字通り、F駅から東に一駅行ったところにある。
「何から何まで、すみません」
「気にしなさんな。それでも気にするなら、後から返してくれればいいから。なんだかね、妹ができたみたいで嬉しいのよ」
立ち上がり、腰を伸ばしながら言う。
「妹、ですか。ふふ、なんだか照れくさいですね」
はにかむ彼女。かわいいなあ。
「じゃ、行こうか」
さーて、本日二度目のお出かけですよー。
◆ ◆ ◆
バスで移動し、F駅前へ。ここの駅舎は、美しいと評判なのです。
ちょっと、地元民として誇らしい。
「ハルちゃんは、やっぱりそういうおとなしい服が好み?」
「好みというか、こういう服しか買ってもらったことがないもので」
ふーむ。
「ハルちゃんが、どういう仕事に就けるかわかんないから、そういう感じのと、アクティブなの、両方買っていこうか」
「ありがとうございます! ほんと、すみません」
「ほっほっほっ。情けは人のためならずじゃよ」
とか言いつつ、まずは駅そばのショッピングモール、「るるる」へ。そこのブティック、「ハーネスト」に案内する。
「ここの服ね、値段の割にはすごくいいのよ」
と言いつつ、店内を物色。
「たしかに、いいですねー」
ハルちゃん、ショッピング楽しそうだな。
彼女が嬉しいと、私まで嬉しくなってくる。
三着ほど買い、次は隣のビルのファッション店、「ユアクロ」へ。
「こう言う感じのお店、初めてです」
「とりあえず、長袖とデニム見ていこうか」
ハルちゃん、こちらでも楽しそうに物色。
活動的なデニムなんかに、興味津々。
「遠慮せず、好きなの選んでいいからねー」
ふふ。ほんとに、妹と買い物してるみたい。
私は一人っ子だけど、ほんとに妹がいたら、こんな感じだったのかな。
彼女は、清潔感のある白い長袖とネイビーブルーのデニムを選びました。
そして、本命である電気店に。
そこで、スマホを買い替える。遠慮して、格安シムを選ぶ彼女。でも、安物買いの何とやらなので、もうちょっといいのを勧める。
「悪いですよ!」
「いーの、いーの。かわいい妹のためだもん」
結局、私の熱意に押され、ちょっといいのを選んでくれました。
そのあとは、更に隣のショッピングモールで、シュークリームを買い食い。
「ほんと、何から何まですみません」
「あんまり恐縮しないの。たまには、人の善意をまるっと受けるって大事よ」
「善意、ですか。おねーさんは、わたしを葵家の娘ではなく、一人の葵ハルとして見てくれるんですね」
ちょっと照れくさそうに、はにかむ彼女。
そうか、打算的な人間関係に囲まれてたんだな、きっと。
「そうだよ。私は、ハルちゃんという人間に、惚れちゃいました! かわいくて、いい子なんだもん。好きにならない理由がないよ」
ほほえみを投げかけると、恥ずかしそうに俯いてしまう。かーわいーいなー!
「あとは、百均で細々としたもの買っていこう」
そういえば、布団も新しくしないとなー。これは、重いしかさばるから、通販だね。
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