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第二十二話 あくあ、それから

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「おはようございます! ご迷惑をおかけしました!!」

 翌朝。企画課の社員一人ひとりに、深く頭を下げ、謝罪するあくあ。「無理すんなよ」とか、「俺たちをもっと頼れ」など、温かい言葉をもらう。

 里愛にも、「健康第一!」と、サムズアップされる。

 課長が入ってきたので、同様に謝罪すると、「すまん」と逆に謝罪されてしまった。

 始業チャイムが鳴り、朝礼が始まる。様々な情報が、皆の口から報告される。一日と少し休んでいたあくあは、それらをしっかりと聞き、また質問する。

 そして、朝礼も終わろうというとき。

「春木、今日はやれそうか?」

 課長から、質問が飛ぶ。

「早退と休暇をいただいたので、そのぶんも頑張ります!」

「心構えでなく、自己診断を訊いている」

「はい! 休養で、すっかり疲れも取れました! いけます!」

 ぐっと腕に力を込めるあくあ。

 そんな彼女を見た課長は、(空元気だな)と見抜く。疲労が抜けきったようには、とても見えなかった。

 かといって、あまり仕事を休ませるのも、彼女のメンタルに良くないと、あくあの性格を把握した彼は悩む。

(これだけは、やりたくなかったんだがな)

「絶滅展のプロジェクトリーダーは、俺が代わりに務める。春木は、サポートに回れ」

「そんな!」

 絶望的な表情を、浮かべるあくあ。

「そんな顔するな。部下の手柄を、横取りしたりなどせんよ。お前には、入社間もないのに無理をさせすぎた。本当に、すまん」

 頭を下げる課長に、なにも言い返せなくなるあくあ。

 課長としても、あくあを育てる絶好の機会なのだが、倒れられては元も子もない。

 若い頃の無理は、絶対に将来祟る。

 こうしてあくあは、絶滅展プロジェクトの、中心から外れることとなった。


 ◆ ◆ ◆


「はあ~~~~~~~~~~~~……」

 昼休み。社員食堂で、納豆をかき混ぜながら、深いため息をつくあくあ。

「元気だしなよ。課長なりの、思いやりだよ?」

 それを里愛が、慰める。

「理屈では、わかるんですよ。ブッ倒れた挙げ句、一日安静でしたから。でも、アタシが考えたプロジェクトなんですよ? 最後まで、中心としてやり通したいじゃないですか」

「あ、春木さん、波部先輩」

 そこに通りかかった、企画課トリオ。

「元気ないね?」

 あくあの凹みぶりが、気になるまりん。

「実は……」

 三人に、プロジェクトの中心から外された事を、打ち明ける。

「ええーっ!?」

「雁州さん、声大きい」

「すみません。春木さん、あんなに張り切ってたのに……」

 いつか、アノマロカリスを一人で任されるようになった自分が、ナラオイアあたりに引き戻されたら……と、我が身に重ねて考えてしまう。

「閑職送りと思った仕事が、案外やりがいがあることもあるぞ。そう、落ち込むな」

 らいあはらいあで、自分の体験からアドバイスする。ただ、これはあくあのケースに当てはめるには、少々ずれているが。

「要は、デキるとこ見せて、名誉挽回すればいいんですよね!」

 ひたすらかき混ぜた納豆を、御飯にかけるあくあ。

「よーし! 頑張るぞー!!」

 納豆御飯を、勢いよくかきこむ。

 かえって、闘志に火が点いてしまったあくあを、心配する四人であった。


 ◆ ◆ ◆


「その作業、手伝わせてください!」

 職場に戻ってきて、始業チャイムが鳴ると、脅威のサポート魔と化すあくあ。

「え、ええ。じゃあ、これお願い」

 仕事をもらっては速攻片付け、またもらってくるという、ピストン作業を繰り返す。

(今度は、そうくるか……)

 困った様子で、己の後頭部を撫でる課長。無理させまいと思った配慮が、かえって裏目に出てしまった。

 これはこれで、彼女が育つのでありがたいが、また倒れるのではないかと、心配になる。

 それと同時に、こうも仕事を奪われては、他の新人が育たなくて困る。

「ほどほどにしとけよ」

「はい!」

 真意が伝わったのかどうか。ため息一つつき、缶コーヒーを飲む課長であった。
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