22 / 34
第二十二話 あくあ、それから
しおりを挟む
「おはようございます! ご迷惑をおかけしました!!」
翌朝。企画課の社員一人ひとりに、深く頭を下げ、謝罪するあくあ。「無理すんなよ」とか、「俺たちをもっと頼れ」など、温かい言葉をもらう。
里愛にも、「健康第一!」と、サムズアップされる。
課長が入ってきたので、同様に謝罪すると、「すまん」と逆に謝罪されてしまった。
始業チャイムが鳴り、朝礼が始まる。様々な情報が、皆の口から報告される。一日と少し休んでいたあくあは、それらをしっかりと聞き、また質問する。
そして、朝礼も終わろうというとき。
「春木、今日はやれそうか?」
課長から、質問が飛ぶ。
「早退と休暇をいただいたので、そのぶんも頑張ります!」
「心構えでなく、自己診断を訊いている」
「はい! 休養で、すっかり疲れも取れました! いけます!」
ぐっと腕に力を込めるあくあ。
そんな彼女を見た課長は、(空元気だな)と見抜く。疲労が抜けきったようには、とても見えなかった。
かといって、あまり仕事を休ませるのも、彼女のメンタルに良くないと、あくあの性格を把握した彼は悩む。
(これだけは、やりたくなかったんだがな)
「絶滅展のプロジェクトリーダーは、俺が代わりに務める。春木は、サポートに回れ」
「そんな!」
絶望的な表情を、浮かべるあくあ。
「そんな顔するな。部下の手柄を、横取りしたりなどせんよ。お前には、入社間もないのに無理をさせすぎた。本当に、すまん」
頭を下げる課長に、なにも言い返せなくなるあくあ。
課長としても、あくあを育てる絶好の機会なのだが、倒れられては元も子もない。
若い頃の無理は、絶対に将来祟る。
こうしてあくあは、絶滅展プロジェクトの、中心から外れることとなった。
◆ ◆ ◆
「はあ~~~~~~~~~~~~……」
昼休み。社員食堂で、納豆をかき混ぜながら、深いため息をつくあくあ。
「元気だしなよ。課長なりの、思いやりだよ?」
それを里愛が、慰める。
「理屈では、わかるんですよ。ブッ倒れた挙げ句、一日安静でしたから。でも、アタシが考えたプロジェクトなんですよ? 最後まで、中心としてやり通したいじゃないですか」
「あ、春木さん、波部先輩」
そこに通りかかった、企画課トリオ。
「元気ないね?」
あくあの凹みぶりが、気になるまりん。
「実は……」
三人に、プロジェクトの中心から外された事を、打ち明ける。
「ええーっ!?」
「雁州さん、声大きい」
「すみません。春木さん、あんなに張り切ってたのに……」
いつか、アノマロカリスを一人で任されるようになった自分が、ナラオイアあたりに引き戻されたら……と、我が身に重ねて考えてしまう。
「閑職送りと思った仕事が、案外やりがいがあることもあるぞ。そう、落ち込むな」
らいあはらいあで、自分の体験からアドバイスする。ただ、これはあくあのケースに当てはめるには、少々ずれているが。
「要は、デキるとこ見せて、名誉挽回すればいいんですよね!」
ひたすらかき混ぜた納豆を、御飯にかけるあくあ。
「よーし! 頑張るぞー!!」
納豆御飯を、勢いよくかきこむ。
かえって、闘志に火が点いてしまったあくあを、心配する四人であった。
◆ ◆ ◆
「その作業、手伝わせてください!」
職場に戻ってきて、始業チャイムが鳴ると、脅威のサポート魔と化すあくあ。
「え、ええ。じゃあ、これお願い」
仕事をもらっては速攻片付け、またもらってくるという、ピストン作業を繰り返す。
(今度は、そうくるか……)
困った様子で、己の後頭部を撫でる課長。無理させまいと思った配慮が、かえって裏目に出てしまった。
これはこれで、彼女が育つのでありがたいが、また倒れるのではないかと、心配になる。
それと同時に、こうも仕事を奪われては、他の新人が育たなくて困る。
「ほどほどにしとけよ」
「はい!」
真意が伝わったのかどうか。ため息一つつき、缶コーヒーを飲む課長であった。
翌朝。企画課の社員一人ひとりに、深く頭を下げ、謝罪するあくあ。「無理すんなよ」とか、「俺たちをもっと頼れ」など、温かい言葉をもらう。
里愛にも、「健康第一!」と、サムズアップされる。
課長が入ってきたので、同様に謝罪すると、「すまん」と逆に謝罪されてしまった。
始業チャイムが鳴り、朝礼が始まる。様々な情報が、皆の口から報告される。一日と少し休んでいたあくあは、それらをしっかりと聞き、また質問する。
そして、朝礼も終わろうというとき。
「春木、今日はやれそうか?」
課長から、質問が飛ぶ。
「早退と休暇をいただいたので、そのぶんも頑張ります!」
「心構えでなく、自己診断を訊いている」
「はい! 休養で、すっかり疲れも取れました! いけます!」
ぐっと腕に力を込めるあくあ。
そんな彼女を見た課長は、(空元気だな)と見抜く。疲労が抜けきったようには、とても見えなかった。
かといって、あまり仕事を休ませるのも、彼女のメンタルに良くないと、あくあの性格を把握した彼は悩む。
(これだけは、やりたくなかったんだがな)
「絶滅展のプロジェクトリーダーは、俺が代わりに務める。春木は、サポートに回れ」
「そんな!」
絶望的な表情を、浮かべるあくあ。
「そんな顔するな。部下の手柄を、横取りしたりなどせんよ。お前には、入社間もないのに無理をさせすぎた。本当に、すまん」
頭を下げる課長に、なにも言い返せなくなるあくあ。
課長としても、あくあを育てる絶好の機会なのだが、倒れられては元も子もない。
若い頃の無理は、絶対に将来祟る。
こうしてあくあは、絶滅展プロジェクトの、中心から外れることとなった。
◆ ◆ ◆
「はあ~~~~~~~~~~~~……」
昼休み。社員食堂で、納豆をかき混ぜながら、深いため息をつくあくあ。
「元気だしなよ。課長なりの、思いやりだよ?」
それを里愛が、慰める。
「理屈では、わかるんですよ。ブッ倒れた挙げ句、一日安静でしたから。でも、アタシが考えたプロジェクトなんですよ? 最後まで、中心としてやり通したいじゃないですか」
「あ、春木さん、波部先輩」
そこに通りかかった、企画課トリオ。
「元気ないね?」
あくあの凹みぶりが、気になるまりん。
「実は……」
三人に、プロジェクトの中心から外された事を、打ち明ける。
「ええーっ!?」
「雁州さん、声大きい」
「すみません。春木さん、あんなに張り切ってたのに……」
いつか、アノマロカリスを一人で任されるようになった自分が、ナラオイアあたりに引き戻されたら……と、我が身に重ねて考えてしまう。
「閑職送りと思った仕事が、案外やりがいがあることもあるぞ。そう、落ち込むな」
らいあはらいあで、自分の体験からアドバイスする。ただ、これはあくあのケースに当てはめるには、少々ずれているが。
「要は、デキるとこ見せて、名誉挽回すればいいんですよね!」
ひたすらかき混ぜた納豆を、御飯にかけるあくあ。
「よーし! 頑張るぞー!!」
納豆御飯を、勢いよくかきこむ。
かえって、闘志に火が点いてしまったあくあを、心配する四人であった。
◆ ◆ ◆
「その作業、手伝わせてください!」
職場に戻ってきて、始業チャイムが鳴ると、脅威のサポート魔と化すあくあ。
「え、ええ。じゃあ、これお願い」
仕事をもらっては速攻片付け、またもらってくるという、ピストン作業を繰り返す。
(今度は、そうくるか……)
困った様子で、己の後頭部を撫でる課長。無理させまいと思った配慮が、かえって裏目に出てしまった。
これはこれで、彼女が育つのでありがたいが、また倒れるのではないかと、心配になる。
それと同時に、こうも仕事を奪われては、他の新人が育たなくて困る。
「ほどほどにしとけよ」
「はい!」
真意が伝わったのかどうか。ため息一つつき、缶コーヒーを飲む課長であった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
異世界×お嬢様×巨大ロボ=世界最強ですわ!?
風見星治
SF
題名そのまま、異世界ファンタジーにお嬢様と巨大ロボを混ぜ合わせた危険な代物です。
一応短編という設定ですが、100%思い付きでほぼプロット同然なので拙作作品共通の世界観に関する設定以外が殆ど決まっておらず、
SFという大雑把なカテゴリに拙作短編特有の思い付き要素というスパイスを振りかけたジャンクフード的な作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
リインカーネーション
たかひらひでひこ
SF
いく度もの転生、再びの出会いを繰り返す、えにしの者たち。
それぞれが綾なす人生は、どう移り変わっていくのか。
オレは、新しき出会いに、めまぐるしく運命を変遷させる。
奇跡の水族館:ぬいぐるみたちの秘密
O.K
ファンタジー
水族館で、飼育しているぬいぐるみたちが突如として本物の生き物のように動き始める不思議な現象が起こります。この驚くべき出来事が世界中に広まり、水族館は観光名所として大きな人気を集めます。ぬいぐるみたちの秘密が明るみに出ると、職員たちは彼らを大切にし、愛情を注いで飼育します。この奇跡的な現象を記念し、特別展示も開催されます。出来事を通じて、水族館は環境保護や共生の大切さを訴え、人々に感動と教訓を与えることとなります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる