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第十二話 なにをしよう?

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(う~ん……)

 まりんは、大きなアノマロカリスのぬいぐるみを抱え、自室のベッドであぐらをかいて、ゆらゆらしていた。

(三連休の、貴重なラストデイ。なにをしようか)

 お昼近くになっても、まだ予定が立たないでいた。

 対面では、あくあがアイマスクをして、気持ちよさそうに寝ている。

 朝食を食べた後、速攻二度寝してしまったのだ。

 自堕落だなあ、などと思うまりん。

 まあ、貴重な休日、どう使おうが、あくあの自由なのだが。

 そのとき、不意にアラームが鳴る。あくあのデバイスだ。

「ふぁ~……よく寝た~。おはよー、まりん」

 おはようという時刻ではないが。

「さーて、お昼御飯だー。食べに行こ!」

 やはり、自堕落だなあ。と思う、まりんであった。


 ◆ ◆ ◆


 いつもの五人が、食卓を囲む。波部も、最近は企画課仲間より、こっちに混ざって食事を摂ることが多くなっていた。今日のメニューは、カレイの煮付け。

「困りました。せっかくの休日最後なのに、この時間まで、やりたいことが思いつかなくて」

 悩みを打ち明ける、まりん。

「えー。アタシら、一昨日は飲み会、昨日は服買って、精神的には休めても、肉体的にはいまいち休めてないじゃん。だらだらしようよ~」

 うーんと、伸びをするあくあ。

「一理あるけど……」

 まりんの性分には、合わない。

「先輩方の、今日のご予定は?」

「実は、あたしも考えあぐねてる。ツーリングに出ようか迷っているうちに、こんな時間になってしまった」

 今日一日、雨が降るかも知れないし、降らないかもしれないという、微妙な予報が出ている。

 らいあの姿は、例のお嬢様ワンピース。いたく気に入ったようだ。

「わたしは、あみぐるみ作り」

 奈良先輩らしい趣味だなーと思う、まりん。

「私は、お勉強かな。そろそろ、企画当てたいし」

 真面目さんだ。

「うーん……。織田先輩、また調理器具借りていいですか?」

「かまわないが、調理中に降られたら、困るんじゃないか?」

「あー……」

 内心、頭を抱えるまりん。不安定な天気が恨めしい。いっそ、ザーッときてくれれば、諦めもつくのに。

 方針が決まってないのは、自分と織田先輩だけかと、難儀な表情でカレイをつつく。

 あくあのように、自堕落に過ごすのは自分のスタイルでないが、波部先輩のように、休日に勉強に打ち込むのも、またスタイルではなかった。

「織田先輩、暇を持て余してる者同士、なんかしませんか?」

「なんかというと?」

「それは、これから考えましょう」

 織田先輩の趣味というと、なんだろうか。知ってる限りでは、キャンプ、バイク、あとは奈良先輩から伝え聞いた、ミニサボテンの飼育だが。

 一方自分は、料理と菓子作り。どうにも、噛み合ってない。

「織田先輩、室内でできそうなご趣味、ありませんか? サボテン以外で」

「ふむ。レトロゲームを、たまにたしなむな」

「いいですね! やりましょう!」

 食べるスピードを、アップするまりん。

「ほう、君も好きか」

「いえ、ゲームはほとんどやらないんですけど、いい選択肢だな、と思いまして」

「なるほど。では、あたしもカレイを片付けるとしよう」

 らいあも、食事をスピードアップするのであった。


 ◆ ◆ ◆


 食後、ロビーでデバイスを立ち上げる二人。

 我々の時代のゲームは、皆著作権が切れており、膨大な数の作品が、無料公開されている。

「これをやろう」

 らいあが選んだのは、「PON」。

「えらく、シンプルそうですね」

「なんでも、世界最古のコンピューターゲームらしい。二人でないとプレイできないので、ちょうどよかった」

 ボールをサーブするらいあ。

「その、棒状のラケットを、デバイスのつまみで動かして、跳ね返すんだ。穴に入れられると、ゴールだぞ」

「ほっ」

 言われたとおりに、レシーブするまりん。

 ラリーは続き、いい勝負。シンプル極まりないゲームだけに、初プレイの彼女も、いい勝負ができている。

「あー!」

 まりん、ゴールを許してしまった。

「今度は、こっちのサーブか。いきますよー!」

 二人は、ちょうどいい暇つぶしに、熱中する。

 外では、雨がしとしとと降り始めていた。
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