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第五十五話 これが正真正銘、最終決戦だ!
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炸裂する火球、荒れ狂う吹雪、迸る雷撃、襲い来る光弾などなどあらゆる攻撃を、あるいは生み出した分身の犠牲で、あるいはエテメンアンキの機動性で、あるいは障壁で防ぎながら、ウォッチャーの報告をひたすら待つ。
ふはははは! 見よ、この鮮やかな体捌きを! 今の俺は風切る刃よ!!
ここは強がってやろう。僭称者と対面して以降、どうにも心の余裕がなくていけない。隙を作らない程度には余裕を持ちたいものだ。
何時間も経っている気がするが、その一方で実は数分しか経っていないのではないかと疑うような防戦が続く。その最中、僭称者の生み出したグングニールだのミョルニルだの、見覚えのある物から見覚えのない物まで無闇にレパートリー豊富な神器攻撃を躱していると、宙に浮かぶ堅牢な氷の城のような建築物のイメージが脳内に映る。
それが直感的に、ウォッチャーのひとつが見せているものであり、天界の牢獄なのだと理解出来た。なるほど、ウォッチャーの報告というのはこういう風に理解できるのか!
試しに光弾の山を喰らわせてみるが、僭称者に効いた様子はない。やはり、現状ではダメージを与えるのは無理か。
ならば!
強烈な閃光魔法を僭称者の眼前にお見舞いする。名付けて「魔光昏殺撃」! いつぞやサタンにかましたものの数十倍は強烈なやつに加えて大爆音付きだ。あとは分身を四方八方に散らせて囮にする。ついでに濃霧も発生させてやろう。どこまで時間稼ぎになるかわわからないが、やれるだけのことをやってやる!
◆ ◆ ◆
どれだけ遠くへ来ただろうか。前方に見える豆粒のような物体、あれが先程の牢獄だとウォッチャーが告げている。ここに来るまで何度も後方確認をしたが、僭称者につけられている様子はないようだ。しかし、何か嫌な予感がする。気は引き締めておこう。
距離を縮めていくと、その姿が鮮明になってくる。やはり、ウォッチャーが見せたのと同じ文字通りの堅牢である。近距離に到達すると、その威容が明らかになると同時に、冷気が伝わってくる。
至近距離に近づくと、城のような牢獄の格子の向こうに、サタンとオフィエルの姿が確認できた。凍てつく空気の中鎖で手を吊り下げられ、痛々しい姿だ。
「サタン、オフィエル! 聞こえるか!?」
「その声、ルシくんだね……? ごめんね、頼りないお姉ちゃんで……」
消え入りそうな小さな震え声を絞り出しているようだ。吐く息が白い。サタンはこんなところに何百年、あるいは何千年も拘束されていたのか。酷いことを!
「謝らなくていい、俺の不甲斐なさが招いた結果だ。オフィエル! オフィエル無事か!?」
返事がない。しかし、白い息が見えるので呼吸はきちんとしているようだ。サタンとの差は羽根の数がやはり影響しているのか?
「これを破壊するぞ!」
牢に両手をかざし、逆位相の波をぶつけるように魔法で魔法を打ち消すイメージを思い描く。
氷牢が淡い光に包まれ、粒子となり昇華して消え果てる。解き放たれた二人の囚われ姫がそのまま落下しそうになったので、しかと受け止める。
「ルシくん、あったかい……」
魔力を使って二人を温めると顔色が良くなってくる。
ふと、嫌な予感を覚え、左方向に風の刃を放つと、真っ二つになった巨大な火球が上下を通り過ぎて行った。
「無粋な奴だな、空気を読め」
火球の飛んできた方向を見やると、あの野郎が不敵なにやけ顔で腕組みしながらこちらに高速で飛来する姿が目に映る。
「サタン、オフィエルを頼む」
ここですべてを終わらせる。これが正真正銘、最終決戦だ!
ふはははは! 見よ、この鮮やかな体捌きを! 今の俺は風切る刃よ!!
ここは強がってやろう。僭称者と対面して以降、どうにも心の余裕がなくていけない。隙を作らない程度には余裕を持ちたいものだ。
何時間も経っている気がするが、その一方で実は数分しか経っていないのではないかと疑うような防戦が続く。その最中、僭称者の生み出したグングニールだのミョルニルだの、見覚えのある物から見覚えのない物まで無闇にレパートリー豊富な神器攻撃を躱していると、宙に浮かぶ堅牢な氷の城のような建築物のイメージが脳内に映る。
それが直感的に、ウォッチャーのひとつが見せているものであり、天界の牢獄なのだと理解出来た。なるほど、ウォッチャーの報告というのはこういう風に理解できるのか!
試しに光弾の山を喰らわせてみるが、僭称者に効いた様子はない。やはり、現状ではダメージを与えるのは無理か。
ならば!
強烈な閃光魔法を僭称者の眼前にお見舞いする。名付けて「魔光昏殺撃」! いつぞやサタンにかましたものの数十倍は強烈なやつに加えて大爆音付きだ。あとは分身を四方八方に散らせて囮にする。ついでに濃霧も発生させてやろう。どこまで時間稼ぎになるかわわからないが、やれるだけのことをやってやる!
◆ ◆ ◆
どれだけ遠くへ来ただろうか。前方に見える豆粒のような物体、あれが先程の牢獄だとウォッチャーが告げている。ここに来るまで何度も後方確認をしたが、僭称者につけられている様子はないようだ。しかし、何か嫌な予感がする。気は引き締めておこう。
距離を縮めていくと、その姿が鮮明になってくる。やはり、ウォッチャーが見せたのと同じ文字通りの堅牢である。近距離に到達すると、その威容が明らかになると同時に、冷気が伝わってくる。
至近距離に近づくと、城のような牢獄の格子の向こうに、サタンとオフィエルの姿が確認できた。凍てつく空気の中鎖で手を吊り下げられ、痛々しい姿だ。
「サタン、オフィエル! 聞こえるか!?」
「その声、ルシくんだね……? ごめんね、頼りないお姉ちゃんで……」
消え入りそうな小さな震え声を絞り出しているようだ。吐く息が白い。サタンはこんなところに何百年、あるいは何千年も拘束されていたのか。酷いことを!
「謝らなくていい、俺の不甲斐なさが招いた結果だ。オフィエル! オフィエル無事か!?」
返事がない。しかし、白い息が見えるので呼吸はきちんとしているようだ。サタンとの差は羽根の数がやはり影響しているのか?
「これを破壊するぞ!」
牢に両手をかざし、逆位相の波をぶつけるように魔法で魔法を打ち消すイメージを思い描く。
氷牢が淡い光に包まれ、粒子となり昇華して消え果てる。解き放たれた二人の囚われ姫がそのまま落下しそうになったので、しかと受け止める。
「ルシくん、あったかい……」
魔力を使って二人を温めると顔色が良くなってくる。
ふと、嫌な予感を覚え、左方向に風の刃を放つと、真っ二つになった巨大な火球が上下を通り過ぎて行った。
「無粋な奴だな、空気を読め」
火球の飛んできた方向を見やると、あの野郎が不敵なにやけ顔で腕組みしながらこちらに高速で飛来する姿が目に映る。
「サタン、オフィエルを頼む」
ここですべてを終わらせる。これが正真正銘、最終決戦だ!
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