64 / 73
64 【BL掌編】 瞳 【何処かの誰かさんのリク】
しおりを挟む「あの、すみませんでした…」
「僕こそ、ぐっすり寝ちゃってごめんね。」
次に獅音さんが起きた頃には、すっかり日が沈んでいた。
その間拘束され続けた私も、あの後二度寝した。
今日は夜、眠れないかもしれない。
時間は19時。
ご飯でも食べていってもらおうか。
「何か作ります。
良かったらご飯食べていってください。」
「体調は大丈夫なの?
何かデリバリーしようよ。」
「でも…」
「いいから、こっちおいで。
一緒に見よう。」
獅音さんが携帯を取り出してアプリを開く。
「何にしよう。
温かいものがいいよね。お粥とかあるけど…
何か食べたいものある?」
「へぇ~…お粥もデリバリーできるんですね。
だけどお粥だと獅音さん物足りなくないですか?」
「僕のことは気にしなくていいよ。
う~ん…ここはどう?」
「美味しそうですね…この、梅雑炊がいいです。」
「はーい。僕は鳥雑炊にしよっと。」
さっと注文を終えて、獅音さんが机に携帯を置いた。
「さて、それじゃあ奏ちゃん。おいで。」
私たちは今、ラグに横並びで座っている。
「…どこに…」
「ここ。」
ここ、と言って獅音さんは自分の太ももをぽんぽんと叩いた。
「はい?!」
「ぎゅっとしたいから、ここに来て。」
「上に乗れと?!」
「そう。
今日一緒に寝たし、もう慣れたでしょ。」
「それとこれとは別では…?!」
「いいから来て。」
流石に獅音さんの太ももの上に乗るのは、自分の体重も気になるしちょっと…
押し問答の末、獅音さんの足の間に座るということで合意した。
なんだこれ。
「こっち見て。」
「顔が近くて恥ずかしいので無理です」
「え~…」
そのまま固まっていると、急に伸びてきた獅音さんの両手が私の頭と腰を自分の方へぐっと引いた。
獅音さんの胸の中にぽすっと倒れこむ。
「わぁ、あ、ごめんなさいっ、」
離れようとするがまたも抱き締められたまま拘束される。
「このまま」
今日、ずっとこの体勢の気がする。
腕の中で固まってると、獅音さんが私の髪を弄り始めた。
「…毎月、今日みたいにしんどいの?」
「…暑い時期は多少マシかな、と」
「これから寒くなるよ。」
「そう、ですね…」
「奏ちゃんが嫌じゃないなら、体調悪いときは呼んでほしい。
一人で辛い思いしてほしくないの。
分かった?」
「…はい。」
「あと、もっと甘えてほしい。恋人だから。」
「それは、」
「僕以外に甘える相手が居るの?
僕以外にあんなところ見せてるの?」
急に変わった雰囲気に戸惑う。
いつもと同じ喋り方なのに、何かが違った。
「そんなわけないじゃないですか…」
「…そう。」
「…怒ってますか?」
獅音さんからネガティブな感情を感じたことは無い。
実際、いつもどおり優しい声で会話は続いている。
でも、
「怒ってないよ。」
これは嘘だ、と思った。
7
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる