えっちな要素はありません。本当です、信じてください？

12 【百合掌編】そんなのダメっ……！ 濡れちゃうよぉっ！

「うっそー！？　今日、降らないって言ってたのにぃ～！」

　下校しようとしたら、結構な雨。嘘つき天気予報に、してやられた。

「ふっふーん。キミは普段から用心が足りないのですよ。三十％は降ると思うべし！」

　そう言って、カバンから折りたたみ傘を取り出す、親友の、そらちゃん。

　でも、彼女が次に繰り出した言葉は、あまりにも意外だった。

「はい、貸してあげる」

　え？　一瞬固まる私。

「そんなのダメっ……！　濡れちゃうよぉっ！」

　傘の持ち主が、わざわざ濡れて帰るなんて！

「いーのいーの。あたしんち、近いし」

　うう……。そらちゃんの優しさが眩しい。でも！

「あのさ！　ちょっとこっ恥ずかしいけど……相傘とかどう、かな？」

　今度は、そらちゃんがきょとんとする。

「あー。そりゃ合理的だね！　その発想はなかった。よし、そうしよう！」

　そんなわけで、傘をシェア。

「肩、濡れちゃうよ。もっとくっついて」

「うん……」

　肩を寄せ合う。

　うわ……なんだろ。ちょっと、ドキドキする。

「あのさ」

「なあに？」

　こちらを向く彼女。顔が近くて、思わず、心拍数が跳ね上がる。

「そらちゃんち、近いわけだけど」

「うん」

「その、少し寄り道……ってのはどうかな？」

　「ふーむ」と、上を見て考え込むそらちゃん。

「それもいいね！」

　やった！

「じゃあさ、とりあえず、駅まで行ってみる？」

　嬉しさに、声が弾む。

　なんだろうな。雨なのに、暖かくて、ぽわぽわして。

　こうして、そらちゃんと雨中の散歩を愉しむのでした。