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第四十二話 牛と黄金と
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「やあやあ、みんな。みんなも昨日は、大変だったみたいだね」
筋肉痛がまだ少し残る今日、気さくに部室で挨拶するリーダー。
「おう……。歳は取りたくないもんだな……」
「にこちゃん、まだ十三でしょ」
「十三と言えば、一月十日、誕生日なんでよろ~」
「わあ! お祝いしますね!」
和やかムード。
「今日は、お父さんから二つ、面白いゲームを貸してもらったよ」
「ほうほう」と興味深げにきいろを見る一同。
「じゃじゃん! 6ニムトと、インカの黄金です!」
「6ニムト! 超有名ですね!」
ノヴァルナが、さっそく好感触。
「ルールを説明するね」
以下、きいろに代わり解説。
最初に四列山札から場に縦に四枚牛カードを並べ、プレイヤーは十枚の手札を得る。
あとは、数字の少ない順に横に並べて出すのだが、六枚目を出してしまうか、最低値を下回ると、罰として牛を引き取らなければいけない。
誰かの持ち点がゼロ以下になり、手札がなくなるとゲーム終了。最終的に、牛を一番得なかったプレイヤーが勝者となる。
「ゔにゃ~! 十頭の列、引き取っちゃった~!」
戦局を見誤ると、こうなる。
リーダー、どうにも運がなく、大量の列を引き取ることが多く……。
「負けた~……」
ちーん。
「でも、楽しかった~!」
このポジティブさが、きいろのいいところ。
「で、もう一個はインカの黄金だっけ?」
「うん。こっちのルールはね……」
再び、リーダーに代わって説明。
インカの黄金は、要はチキンレースである。
宝石カードと遺物カード、そして罠カードがあり、遺跡を進んでいくたびに、カードがめくられていく。
同一の罠カードが二枚出ると探索中止。そのため、途中で引き上げてもいい。
途中で引き上げると、引き上げたプレイヤーで宝石山分けとなる。
もちろん、最後 (五枚目)まで残っていたプレイヤーも、残りの宝石山分けとなる。
遺物カードは、その場で引き上げたプレイやーが得る。
この遺物カードは、五点。四枚以上集めれば十点の価値がある。
これを、五ラウンド繰り返すというもの。タイトルの割に、黄金要素が薄いのはご愛嬌。
「女は度胸! 進むぜ! ……ぎゃ~蜘蛛だ! 蜘蛛ごときで探索中断すんなよ!」
(蜘蛛平気な、大須先輩かっこいい……)と、ぽやんとなる、るうはさておき。
「やった! 遺物利確~」
歌留奈は堅実プレイ。
こんな、悲喜こもごもを楽しむ作品である。
「ノヴァ子、おめでとー!」
「ありがとうございます!」
ノヴァルナ、密やかに勝利。
「下校時刻までまだ時間あるね。もう一ゲームずつやろー!」
「おー!」
こうして、心ゆくまでゲームを楽しむのだった。
◆ ◆ ◆
「また、少しずつゲーム持ち帰らないとねー」
だいぶみっちりしてきた棚を見て、きいろがため息をつく。
「きいろのとーちゃん、様々だな」
卓ゲ部のゲームは、大体、きいろが父から借りてきたものだ。
「とりあえず、オンラインで無料でできるのは、持って帰ったら? 将棋とか」
片付け上手、歌留奈さん。
「そだね。にこちん、そういうわけでお願い」
「あいよ」
あまりやりすぎると、特にきいろが大荷物になってしまうので、小分けにして持って帰る。
(ボクらが卒業したら、この部、どうなっちゃうのかな)
がらんとしていて、るうしかいない部室を想像して、ぶるぶると首を振る。
(るーこなら、大丈夫だよね!)
「どうしました、佐武先輩?」
「なんでもないよ!」
努めて明るい笑顔を作り、ゲーム入りの鞄を持つ。
(らしくないよね!)
そう考え、部室を後にするきいろ。
「明日だけどさ、久々にエクスプ以外のTRPGやらない?」
帰りがけに、きいろが皆に問う。
「私、2.5がいい~」
「クトゥルフ駄目ですか?」
「るうに合わせる」
「ワタシ、ソード・ワールドやってみたいです!」
意見が真っ二つに割れてしまった。
「じゃー、割と久しぶりなんで、ソードワールドに一票ね。GM、ボクやるから」
やったーと、ハイタッチし合う歌留奈とノヴァルナ。
(卓ゲ部は、こういう明るい雰囲気じゃないとね!)
うん! と、グラウンドを踏みしめる、リーダーであった。
筋肉痛がまだ少し残る今日、気さくに部室で挨拶するリーダー。
「おう……。歳は取りたくないもんだな……」
「にこちゃん、まだ十三でしょ」
「十三と言えば、一月十日、誕生日なんでよろ~」
「わあ! お祝いしますね!」
和やかムード。
「今日は、お父さんから二つ、面白いゲームを貸してもらったよ」
「ほうほう」と興味深げにきいろを見る一同。
「じゃじゃん! 6ニムトと、インカの黄金です!」
「6ニムト! 超有名ですね!」
ノヴァルナが、さっそく好感触。
「ルールを説明するね」
以下、きいろに代わり解説。
最初に四列山札から場に縦に四枚牛カードを並べ、プレイヤーは十枚の手札を得る。
あとは、数字の少ない順に横に並べて出すのだが、六枚目を出してしまうか、最低値を下回ると、罰として牛を引き取らなければいけない。
誰かの持ち点がゼロ以下になり、手札がなくなるとゲーム終了。最終的に、牛を一番得なかったプレイヤーが勝者となる。
「ゔにゃ~! 十頭の列、引き取っちゃった~!」
戦局を見誤ると、こうなる。
リーダー、どうにも運がなく、大量の列を引き取ることが多く……。
「負けた~……」
ちーん。
「でも、楽しかった~!」
このポジティブさが、きいろのいいところ。
「で、もう一個はインカの黄金だっけ?」
「うん。こっちのルールはね……」
再び、リーダーに代わって説明。
インカの黄金は、要はチキンレースである。
宝石カードと遺物カード、そして罠カードがあり、遺跡を進んでいくたびに、カードがめくられていく。
同一の罠カードが二枚出ると探索中止。そのため、途中で引き上げてもいい。
途中で引き上げると、引き上げたプレイヤーで宝石山分けとなる。
もちろん、最後 (五枚目)まで残っていたプレイヤーも、残りの宝石山分けとなる。
遺物カードは、その場で引き上げたプレイやーが得る。
この遺物カードは、五点。四枚以上集めれば十点の価値がある。
これを、五ラウンド繰り返すというもの。タイトルの割に、黄金要素が薄いのはご愛嬌。
「女は度胸! 進むぜ! ……ぎゃ~蜘蛛だ! 蜘蛛ごときで探索中断すんなよ!」
(蜘蛛平気な、大須先輩かっこいい……)と、ぽやんとなる、るうはさておき。
「やった! 遺物利確~」
歌留奈は堅実プレイ。
こんな、悲喜こもごもを楽しむ作品である。
「ノヴァ子、おめでとー!」
「ありがとうございます!」
ノヴァルナ、密やかに勝利。
「下校時刻までまだ時間あるね。もう一ゲームずつやろー!」
「おー!」
こうして、心ゆくまでゲームを楽しむのだった。
◆ ◆ ◆
「また、少しずつゲーム持ち帰らないとねー」
だいぶみっちりしてきた棚を見て、きいろがため息をつく。
「きいろのとーちゃん、様々だな」
卓ゲ部のゲームは、大体、きいろが父から借りてきたものだ。
「とりあえず、オンラインで無料でできるのは、持って帰ったら? 将棋とか」
片付け上手、歌留奈さん。
「そだね。にこちん、そういうわけでお願い」
「あいよ」
あまりやりすぎると、特にきいろが大荷物になってしまうので、小分けにして持って帰る。
(ボクらが卒業したら、この部、どうなっちゃうのかな)
がらんとしていて、るうしかいない部室を想像して、ぶるぶると首を振る。
(るーこなら、大丈夫だよね!)
「どうしました、佐武先輩?」
「なんでもないよ!」
努めて明るい笑顔を作り、ゲーム入りの鞄を持つ。
(らしくないよね!)
そう考え、部室を後にするきいろ。
「明日だけどさ、久々にエクスプ以外のTRPGやらない?」
帰りがけに、きいろが皆に問う。
「私、2.5がいい~」
「クトゥルフ駄目ですか?」
「るうに合わせる」
「ワタシ、ソード・ワールドやってみたいです!」
意見が真っ二つに割れてしまった。
「じゃー、割と久しぶりなんで、ソードワールドに一票ね。GM、ボクやるから」
やったーと、ハイタッチし合う歌留奈とノヴァルナ。
(卓ゲ部は、こういう明るい雰囲気じゃないとね!)
うん! と、グラウンドを踏みしめる、リーダーであった。
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