たくげぶ!

みなはらつかさ

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第三十七話 明石焼き

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「こんにちは」

「おー、いらっ……!?」

 週末。いつものように佐武家でくつろぐ一同。

 そこに最後のノヴァルナが入ってきたが、あるものが皆の意識を奪った。

 「明石焼き」と大書きされた、白いTシャツである。

「どうしたん、それ……」

 ツッコむ前に、まずは探りを入れる、にこ。

「このシャツですか? 駅前で、おしゃれなのが売ってたので、買ったんです」

 ふんすと鼻息を吹き、目に星が宿っているかのよう。

 これは、相当気に入っていると、理解した一同であった。

「へ……へー、なんでまた明石焼き?」

「意味はわからないですけど、字がかっこよかったです!」

「そうなんだー」

 歌留奈、会話のキャッチボールを断念。

「とりあえず! ノヴァ子も来たことだし! テストプレイやろう!」

 声が震えているきいろ。センスを笑うのはよくないと理解しつつも、吹くのを我慢している様子。

「はい! やりましょう!」

 というわけで、ゲーム開始。

「というわけで、生き別れの恋人は、ノヴァ子隊長のお陰で……ブフォ!」

 きいろ、アウト。どうしても、GMとしてノヴァルナを見る機会が多いもので、我慢できなかったようだ。

「大丈夫ですか?」

「だ……大丈夫……ブフォー!」

 当のノヴァルナに心配されるが、一度ツボに入ってしまったので、もうだめ。

「きーちゃん! ちょっとごめんね。洗面所行きましょ」

 歌留奈に介抱され、洗面所へ。

「だめだよ、笑っちゃー」

「ゴメン、頭では理解してるんだけど……あ、明石焼きは卑怯」

 くっくっくと、我慢してた笑いを開放している。

「……はー」

「落ち着いた?」

「なんとかー」

 戻る二人であった。

「ごめん、ちょうどいいところで」

「大丈夫ですか?」

「あ、うん」

 ノヴァルナの気遣いに、リーダー、ちょっと気まずい。

「えーと、ノヴァ子隊長のおかげで、生き別れた恋人は、無事再会できました! CPと物資どうぞ~」

 きいろ、平常心を取り戻した。

「あの、わたし思ったんですけど」

「なんぞ?」

 にこが受ける。

「今度、みんなでカタン先輩みたいなシャツ着ませんか? いっそ」

「ひょえ!?」

 リーダー、変な声が出てしまう。

「いや、面白いなそれ。変T大会やろうぜ!」

「にこちゃん、変Tとか言わない!」

「あ、わり」

「よくわからないですけど、インフルエンサーですね、ワタシ」

 ふふんと得意げ。知らぬが仏とはこのことか。

 そして、翌日。駅前に向かった一同。

「どの店で買ったん、ノヴァっち」

「フォーリスの一階です」

 駅そばショッピングモール・フォーリスでは、一階でよく催事が行われている。

 実際行ってみると、たしかにTシャツがたくさん売られていた。

 もちろん、奇っ怪なのが。

「ブフォ!」

 きいろがさっそく手に取って吹いたのは、「焼豚」と書かれたTシャツ。

「あはは、これいいな!」

 にこが手に取ったのは、「蛤」の一字と、ハマグリが描かれたシュールなTシャツ。

「私、これ気に入ったかも」

 歌留奈のチョイスは、「苺」と書かれているのに、なぜかりんごがプリントされた変T。

「わたしは、これにします」

 るうが手に取ったのは、字ではなく、にょろりと伸びている複数のもやしが描かれたTシャツ。

「みなさん、いいセンスですね!」

 ノヴァルナ、ダブルサムズアップ。

「でも、買って使うかっつーと……」

「カタン先輩に併せましょうよ」

 発起人るう、ひそひそ声で難色を示すにこを、説得。

「えーい、アタシも女だ! 買っちゃろうじゃないの!」

 お買い上げ。他の皆も、それに続く。

「今度、おしゃれなTシャツ着て、街を歩きましょー!」

「お、おー!」

 後に、蛤だの焼豚だのの、変Tを着た集団が、F市を闊歩することになるが、それは少し後の話。

「来週だけど、みんな待望のゲーム用意するんで、よろよろ~」

 と、きいろ。果たして、何をやる気なのか?

 乞う、ご期待!
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