たくげぶ!

みなはらつかさ

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第三十二話 女子力高めませんか?

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「ところで、女子力高めませんか?」

 部活でマーダーミステリー終了後、るうが不意にそんなことを言い出した。

「どうした急に」

「いえ、わたしたち、基本ゲームばかりしてるじゃないですか。それじゃ華がないので、お菓子でも作って、女子力高めたらいいんじゃないかと」

「調理実習じゃだめなん?」

「それじゃ、好きなものが作れないじゃないですか」

 「なるほど」と、考えこむにこ。

「女子力ってなんですか?」

「女の子っぽい事しようっていう、お誘いです」

「オー、ジェンダーロールですね」

 ノヴァルナ、得心がいく。

「しかし、アタシ、お菓子って柄じゃねーぞ?」

「そこはギャップ萌えで!」

「お、おう」

 鼻息をふんすと吹き、興奮気味にサムズアップするるう。

「この中で、キッチンが広いの誰のうちかなあ」

「あの、ワタシの家はどうでしょう? オーブン、大きいのあります」

「おお、それはいいね! ノヴァ子の家、行ってみたかったし」

 ぽんと手を打つリーダー。

「では、今度の土曜日でどうでしょう」

「異議なーし」

 一同、ノヴァルナの提案に乗るのであった。


 ◆ ◆ ◆


 土曜日。

「あ、ノヴァ子ー!」

 学校に向かってくるノヴァルナの姿を認め、手を振るきいろ。

「オー! 遅くなりましたか?」

「だいじょぶだよ。ね、みんな?」

 他の三人、うんうんとうなずく。

「さっそく、行きましょう」

「おー!」

 ノヴァルナを先頭に縦列で歩く一同。

 しばらくして……。

「着きました!」

 おしゃれな一軒家に到着。

「おお~!」

「入ってください」

「おじゃましまーす」

 皆で、上がり込む。

「いらっしゃい。ノヴァルナのお友達ですね。………妻も、いらっしゃいませと言っています」

 婦婦・・が、一同を出迎える。片方は、ドイツ語で喋っていた。

「おお! ほんとにお母さんが二人なんだ!」

「こら、きーちゃん失礼でしょ。すみません、うちのきーちゃんが」

「気にしないでください。ドイツでも、まだ珍しいですから」

 リビングに通される一同。

「外は暑かったでしょう。飲み物をどうぞ」

「いただきまーす」

 キンキンに冷えたコーラを、飲み干すきいろたち。

「あ~、涼し~」

 リーダー、完全に弛緩。

「もう。だらしないなあ、きーちゃん」

 やっぱりおかんだなあ、と思うきいろであった。

 やがて、暑さも引き。

「そろそろやりませんか?」

 るう、提案。

「だね」

「では、こちらへどうぞ」

 キッチンに移動。

 二人の母が、材料や調理器具を用意してくれたので、ダンケありがとうと、ノヴァルナが母たちに言う。

 きいろたちも、「ありがとうございます」と、礼を述べる。

「では、わたしが分量言いますね。まず小麦粉を……」

 るうが主役となって、調理開始。

 生地を混ぜ、成形し、オーブンに入れることしばし……。

「できあがりです!」

 「おお~と声を上げる一同。

 ドイツ語で、二人の母に自分のクッキーを供するノヴァルナ。両者から、頬にキスされる。

「おおう、欧米!」

「だから、きーちゃん……」

 お小言も、疲れてしまったらしい。

「せっかくです。できたてを食べましょう」

 ノヴァルナの提案で、一同リビングに移動。

 母たちが紅茶を持ってきてくれ、ノヴァルナが礼を言う。

「そういえば、ノヴァ子の片方のお母さん、なんで日本語上手なの?」

 立ち入った質問をしたがるきいろに、「あちゃあ」という感じで額に手を当てる歌留奈。お小言は、完全に諦めモード。

「ドイツで、日本相手にボードゲームを売る仕事してたんです。転勤で、日本に住むことになりました」

 「へー」と言いながら、さくさくとクッキーを食べるきいろ。母二人は、娘のクッキーを食みながら、キッチンで談笑している。

「ノヴァ子は、日本どう?」

「好きですよ。色んな料理があったり。でも、お母さんは二人とも、車が左側通行なのだけが怖いって言ってます」

 車を運転することがない一同、「へえ」と、わかったような、わからないような反応。

「それにしても、クッキーうめえな。さすが、るう先生だぜ」

「ありがとうございます……」

 にこの褒め言葉に、赤くなってうつむいてしまう、るう。

「ごちそうさまでした。家族にお土産できちゃった」

 きいろの暴走も止まったようなので、機嫌を取り戻した歌留奈。

 一同食べ終わり、お土産をビニール袋に入れる。

「それじゃ、送ります」

「ありがとー」

 ノヴァルナの先導で、土産を手に、帰宅するのであった。
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