たくげぶ!

みなはらつかさ

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第二十二話 人狼と百合と

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 夏休みもすっかり最終盤。今日は、歌留奈の提案で「汝は人狼なりや?」をやろうということになった。

 汝は人狼なりや? は、推理と騙し合いのゲームだ。

 村人サイドと人狼サイドに別れ、人狼をすべて「吊る」か、人狼の数が村人を上回ったら決着。

 人狼同士は夜に人狼同士で会話ができ、人数的不利をチームプレイでカバーし、村人を襲撃していく。

 ただの村人以外にも役職持ちがおり、人狼の判定ができる占い師。死んだ人間が人狼かどうか分かる霊能者、人狼が勝ったら勝利になる村人・狂人などがいる。

 これらがあやをなし、複雑怪奇な推理と騙しの展開が行われるわけだ。

 ただ、プレイ人数が四人ではあまりにも少ないので、「人狼」系アプリで、野良を待つ。

 やがて、人が揃い、挨拶の後プレイ開始。

(む。狂人引いたか。ほんじゃー、引っ掻き回しましょうか)

 きいろ、狂人でプレイ。

「占いCO。かるにゃんさん●です」

 狂人は、こうやって、役職に持ちになりすますことが多い。

 ちなみに、きいろが言っていることの意味は、「占い師カムアウト。かるにゃんさん人狼です」という意味。

 かるにゃんは歌留奈だ。親友だろうが容赦なく。これが「汝は人狼なりや?」の世界。

 これに、占いの対抗COが出てくる。かるにゃん○。○は村人サイドの意。

 きいろ視点。歌留奈は村人で決め打ちだ。後は徹底的に引っ掻き回して、自分も吊られて、人狼の勝利に貢献できれば勝ちである。

 ゲームは進んでいき……。

「人狼の勝利!」

 きいろ、スマホ片手にVサイン。

「やったぜ」

 にこは、人狼だったらしい。

「いえろーさん、狂人だったかー。先に占いCOされたら、信頼度高いよねえ」

 みんなで、感想会。

 るうは、初体験だったが、共有 (テレパシーで繋がっている、二人一組の村人)を引けたおかげで、いろいろアドバイスしてもらったようだ。

「もう一回、やりましょう!」

 るうが熱望するので、第二ラウンド。意外と負けず嫌いなのかもしれない。

 二度目は、村人の勝ち。

「うにゃあ、序盤なのに吊られちゃった。まあ、吊りは人狼の華だよね」

 きいろ、今度はただの村人だったが、グレラン(=グレー・ランダム=無作為吊り)で吊られてしまった。吊られてしまったら、冥界で観戦となる。

「ふー、今度は勝てた」

「同じく」

 歌留奈、にこも村人サイド。

「負けちゃいました……人狼って難しいですね……」

「あー、慣れれば面白みわかるから。めげないで」

 初心者が折れそうなので、にこ、フォロー

「はい。先輩がそう言うなら」

「おとと、先輩とか言っちゃだめ」

「あ、すみません」

 仲間内でずっとやっていたせいか、ちょっと粗忽そこつなところが目立つ、るう。

「もう一回、やらせてください!」

「お、そうこなくちゃ!」

 にこの発破が効いたのか、やる気を出した模様。

 今度は、るう含む村人サイド勝利。

「勝ちました!」

「おめでとー!」

 初心者であることは言ってあるので、野良含めた一同から祝福を受ける。

「ありがとうございます!」

「みなさん、また機会があれば~」

 こうして、夜も近づいてるので、野良さんたちとはお別れ。いつものZoomに移る。

「最後まで投げなくて、立派だったぜー、るう」

「ありがとうございます……!」

 憧れのにこから褒められ、赤らむるう。それを見て、ふふとなる歌留奈と、相変わらず何も気づかない鈍感な二人。

(二人の仲、進展させたいなあ。よし!)

 何やら企む、歌留奈。

「ねえ、明日は映画見に行かない?」

「映画?」

 三人が首を傾げる。

「リリー・マルレーンっていう恋愛映画なんだけど」

「それ、おもろいん?」

「レビュー、☆4」

 おおー、となるにこ。

「ちょっと面白そうだな! 行こうぜ!」

「さんせー!」

 翌日、駅のTOHOシネマで見てみると……。

(お、女の子同士でキス……!?)

 百合恋愛映画だったことにびっくりする、るう。

 ごくりとつばを飲み、隣のにこに手を差し伸べてみる。

 握り返された!

 にこは無自覚であったが、手に手を重ねられた。

 耳まで真っ赤になり、上映後もぽわぽわしながら、退館する。

 そんなるうを見て、微笑む歌留奈であった。

「面白かったねー!」

 一人蚊帳の外でも、にこやかな我らがリーダー。

(ふーむ、きーちゃんを巻き込んだものかしらね?)

 ちょっと悩む、仕掛け人。四者四様で、バス停に向かうのであった。
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