たくげぶ!

みなはらつかさ

文字の大きさ
上 下
17 / 49

第十七話 BBQ! うぇーい!

しおりを挟む
「おじさん、おばさん、今日はよろしくお願いします!」

 大須家にて、ぺこーっとお辞儀するきいろ。意外と、こういうことはしっかりしている。

「はっはっは! よろしくな!」

 歌留奈も同様に、「よろしくお願いします」と挨拶する。

「悪ぃー! 遅くなった!」

 にことるうも、息を切らして参上。

 「そんな急がなくても」と、母がフォローするが、「待たせて迷惑かけたくなかったから!」と返す。にこはにこで、こういうところ、しっかりしている。

「すみません。わたしの足が遅いせいで……。今日は、お世話になります」

 恐縮する、るう。

「キニシナーイ! ね、おじさん?」

「おうよ。若もんが、そんな恐縮すんなって」

 きいろのフォローに、同意する父。娘同様、気さくなたちのようだ。

「じゃ、さっそく乗ってくんな。助手席は、家内な」

「よろしくお願いしまーす!」

 改めて一同挨拶し、出発!

「楽しみだなー、肉!」

「よっ! 肉食系女子!」

「ヘンな言い方すんなし」

 にこときいろの、漫才。一方……。

「るうちゃん、何読んでるの?」

「スティーブン・キングです。ホラーの大家の一人ですよね!」

「え、ええ。そうなんだ」

 ホラーは、ラヴクラフトぐらいしか知らない歌留奈、困惑。

 そんな珍道中も、終わりを告げ。

「着いたぞ~」

 K公園、BBQ場に到着!

 T川沿いの河原にある、BBQ場である。すぐ隣に川という立地。

「ひゃっほー! 肉だ肉だ~!」

「こら、騒いでないで手伝いなさい」

「ボクらも手伝いまーす!」

「ありがとねえ」

 六人で手分けした結果、てきぱきとセッティングは進み……。

「ヒャッハー! 完成だあ!」

「にこちゃん、テンション高いね」

「だね」

 苦笑する、歌留奈ときいろ。るうは、(こんな、大須先輩もいいな……)などと、ぽうっとしていた。

「着火するぞー」

 父がおがくずに点火すると、火が炭に渡っていく。

「焼いていい? 焼いていい?」

「ああ、人参とか、火の通りが悪いのからな」

「まっかせて!」

 トングを、カッチャン、カッチャンと鳴らし、人参から焼いていく、にこ。

「ボクにもやらせてー」

「ほいよ。じゃあ、玉ねぎな」

 危うく、BBQ奉行になりかけたが、平常心を取り戻し、きいろにトングを手渡す。

 みんなでそうやっているうちに、本命の肉が焼かれ始める。

「あー、やべ。よだれ出そ」

「にこちゃん、はしたないよ」

「この音と匂いを前に、冷静でいられるかよ~」

 笑いに包まれる会場。るうは、(こういう、ワイルドな先輩も素敵です……!)と、別の方面で冷静さを失っていた。

「じゃあ、言おうか。いただきます!」

「いただきまーす!」

 父の音頭取りで、実食タイム。

 紙皿に肉や野菜と、BBQソースを戴かせ、もりもりと食べていく。

「うーん、うめー!」

 語彙力はないが、全力でBBQが好きなんだな、とわかる、にこのシャウト。

「ほんとに、美味しいです~」

 さすがのるうも、恋心より食欲のほうが、勝ったようだ。

「腹ペコで来たかいが、あったよ~」

 我らがリーダーも、ご満悦。

「ほんといい肉ですね。高かったんじゃないですか?」

「はっはっは! 若い子が、気にするんじゃないよ!」

 父、気さくに答え、歌留奈に気を使わせない。

 父は運転するのでノンアルコールビールだが、母は普通にビール。

「ふー。ごっそさん! もう入らないや!」

 にこ、完食。一同も、次々ギブアップ。

「おじさん、楽しい催し、ありがとうございました!」

 ぺこーっと、お辞儀するきいろ。こういうところは、ほんとにしっかりしている。

 るうと歌留奈も、きちんとお辞儀。

「いやー、台風が来る前にできてよかった! グリルが冷めたら、片付けよう。ゴミはこの袋に入れてー」

 父が、帰りの用意を始める。

 そして、家に到着。

「それでは、失礼します! 本当に、ありがとうございました!」

 ぺこーっと、再度お礼する三人。

「またやろうな!」

 にこの呼びかけに、一同応じる。

「るう、送っていくよ」

「はい!」

「あれ? るーこ、道覚えるの得意だって……」

 と言いかけたきいろの口をふさぎ、「無粋なこと言わないの」と、黙らせる歌留奈。

「あ、うん。なんだかよくわからないけど……」

 どこまでも鈍感な、我らがリーダーであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

俺と公園のベンチと好きな人

藤谷葵
青春
斉藤直哉は早川香澄に片想い中 公園のベンチでぼんやりと黄昏ているとベンチに話しかけられる 直哉はベンチに悩みを語り、ベンチのおかげで香澄との距離を縮めていく

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由

棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。 (2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。 女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。 彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。 高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。 「一人で走るのは寂しいな」 「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」 孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。 そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。 陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。 待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。 彼女達にもまた『駆ける理由』がある。 想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。 陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。 それなのに何故! どうして! 陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか! というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。 嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。 ということで、書き始めました。 陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。 表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。

執事👨一人声劇台本

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
執事台本を今まで書いた事がなかったのですが、機会があって書いてみました。 一作だけではなく、これから色々書いてみようと思います。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...