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第十話 GW合宿! ―中編―
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「フォク~ふぁれはらひろひろほもひついたんら~」
「こら、きいろ。喋るか食べるか、どっちかになさい!」
「ふぁべる~」
朝、食卓でトーストを咀嚼するきいろ。何ごとか言いかけたが、母に怒られ、食べることに専念する。
副菜は、ハムエッグとサラダ、牛乳という、ごきげんな朝食だ。
卓ゲ部の面々も、同じものを食んでいる。
「んくっ……んくっ……ぷはー。ボク、あれから色々思いついたんだ~」
トーストを牛乳で流し込み、先程の謎原語を言い直す。
「システム?」
「うん。クリティカルとファンブル。あと、射程についても、ちょっと」
歌留奈の問いに、少し上機嫌で答える。
「へえ。きいろ、ゲーム作ってるのかい?」
「うん。ボクがシステム担当で、ほかのみんなが世界観担当!」
「そうかそうか。さすがだなあ、きいろは」
「もー! コドモじゃないんだから、やめて~!」
頭を撫でようとする、父の手を全力回避するきいろ。父の表情に、哀愁が漂っていた。
思春期の父と娘にしては仲が良い方であるが、色々難しいお年頃。
「歯、磨いたら、さっそくミーティングだよー!」
「おー!」
◆ ◆ ◆
「でも、クリティカルとファンブルって、また地味なところ攻めるね」
客間で茶をいただきながら、そう言う歌留奈。
本日のお茶請けは、五家宝とハリボー。
「まあ、こういうところも埋めておかないとね。ファンブルは、単純に00で、クリティカルはゾロ目成功。ファンブルは、ヒドイ事が起きるパターンにする。百分の一だからね」
「クリティカルは?」
「よくぞ訊いてくれました! 成功度が五、上がるんだけど、片方だけダイス振り直すのね。それで、出目が残した方以下だったら、さらにプラス五。で、今度は数字が小さい方のダイス残して、それ以下の出目が出たらさらにまたプラス五……っていうのを、失敗するまで繰り返せる」
「へー。ダメージが、五刻みで一削りになるからか」
五家宝を頬張る歌留奈。
「そゆことー。ダメージ以外も、面倒だからこれで統一する。あとね、ハリボータワー作っててひらめいたんだけど、能力値四つにして、割り振れるようにしようかなって」
ハリボータワーがどう関係したのかわからないが、ともかくそれでひらめいたようだ。
「体力、器用度、敏捷度、知力の四つ。最低でも、それぞれ九あって、能力を一上げるとき、十の位の自乗、CP……キャラポイントってでもいうのかな、それが必要なようにする。能力値十三から、十四に上げると一ポイント。八十九から九十に上げるなら、八十一ポイント。能力値上限、九十九」
「はー。能力値の十の位で、成功度が変わってくるからか。よー考えるな」
「にひひー。ありがと」
紅茶を口に含む、きいろ。
「そういえば、射程距離もどうこうって言ってませんでした?」
「うん。TRPGの射程ってさ、イマイチ面白みがないんだよね」
「はあ」
るうが、ハリボーを口に放り込む。
「射程って、もっと暴力的でいいと思うんだ」
「んぐっ!? えほっ! けほっ!」
きいろの、突飛な暴力的という発言に、むせてしまう、るう。
「だいじょぶ?」
「はい、なんとか。でもなんです、暴力的って」
「剣道三倍段って言うじゃん。リーチの長い相手には、圧倒的に不利なわけよ。だから、射程を一詰めるたびに、敏捷度判定必要にする。何mとかで処理しない」
五家宝を口に放り込むきいろ。
「はー。スナイパーライフルとか、ほんとに暴力的になるな」
「でしょ? このぐらいやった方が、ピーキーで面白いと思うんだ。ボクからは、さしあたってこんなとこ。世界観チームからは、なんか無い?」
「悪の帝国だけど、アーク帝国にでもしようかなって。で、その主人公たちの国はシエン」
ちょっともじもじしながら、そう言う歌留奈。
「わかりやすくていいね!」
「ほんと!? ちょっと、直球すぎるかなあって思ってたんだけど、きーちゃんに気に入ってもらえてよかった。文化とかは、まだ考えてないんだけど」
「おーけーおーけー。ぼちぼち考えていこう。ところで、今日は何して遊ぶ?」
きいろが、戸棚を漁りつつ尋ねる。
「これなんかどう?」
T&TというTRPGの、第五版だ。
「また、古そうなゲームですね」
「まーね。ルール、割と簡単だよ。ちょっと、お父さんに使ったことあるシナリオないか訊いてくる」
そう言って、中座するきいろ。その間に三人は、ルールを読み込む。
「おまたせ~。シナリオもらってきたよ~。じゃ、やろっか?」
「はーい」
こうして、合宿二日目も、楽しく終わった。
「こら、きいろ。喋るか食べるか、どっちかになさい!」
「ふぁべる~」
朝、食卓でトーストを咀嚼するきいろ。何ごとか言いかけたが、母に怒られ、食べることに専念する。
副菜は、ハムエッグとサラダ、牛乳という、ごきげんな朝食だ。
卓ゲ部の面々も、同じものを食んでいる。
「んくっ……んくっ……ぷはー。ボク、あれから色々思いついたんだ~」
トーストを牛乳で流し込み、先程の謎原語を言い直す。
「システム?」
「うん。クリティカルとファンブル。あと、射程についても、ちょっと」
歌留奈の問いに、少し上機嫌で答える。
「へえ。きいろ、ゲーム作ってるのかい?」
「うん。ボクがシステム担当で、ほかのみんなが世界観担当!」
「そうかそうか。さすがだなあ、きいろは」
「もー! コドモじゃないんだから、やめて~!」
頭を撫でようとする、父の手を全力回避するきいろ。父の表情に、哀愁が漂っていた。
思春期の父と娘にしては仲が良い方であるが、色々難しいお年頃。
「歯、磨いたら、さっそくミーティングだよー!」
「おー!」
◆ ◆ ◆
「でも、クリティカルとファンブルって、また地味なところ攻めるね」
客間で茶をいただきながら、そう言う歌留奈。
本日のお茶請けは、五家宝とハリボー。
「まあ、こういうところも埋めておかないとね。ファンブルは、単純に00で、クリティカルはゾロ目成功。ファンブルは、ヒドイ事が起きるパターンにする。百分の一だからね」
「クリティカルは?」
「よくぞ訊いてくれました! 成功度が五、上がるんだけど、片方だけダイス振り直すのね。それで、出目が残した方以下だったら、さらにプラス五。で、今度は数字が小さい方のダイス残して、それ以下の出目が出たらさらにまたプラス五……っていうのを、失敗するまで繰り返せる」
「へー。ダメージが、五刻みで一削りになるからか」
五家宝を頬張る歌留奈。
「そゆことー。ダメージ以外も、面倒だからこれで統一する。あとね、ハリボータワー作っててひらめいたんだけど、能力値四つにして、割り振れるようにしようかなって」
ハリボータワーがどう関係したのかわからないが、ともかくそれでひらめいたようだ。
「体力、器用度、敏捷度、知力の四つ。最低でも、それぞれ九あって、能力を一上げるとき、十の位の自乗、CP……キャラポイントってでもいうのかな、それが必要なようにする。能力値十三から、十四に上げると一ポイント。八十九から九十に上げるなら、八十一ポイント。能力値上限、九十九」
「はー。能力値の十の位で、成功度が変わってくるからか。よー考えるな」
「にひひー。ありがと」
紅茶を口に含む、きいろ。
「そういえば、射程距離もどうこうって言ってませんでした?」
「うん。TRPGの射程ってさ、イマイチ面白みがないんだよね」
「はあ」
るうが、ハリボーを口に放り込む。
「射程って、もっと暴力的でいいと思うんだ」
「んぐっ!? えほっ! けほっ!」
きいろの、突飛な暴力的という発言に、むせてしまう、るう。
「だいじょぶ?」
「はい、なんとか。でもなんです、暴力的って」
「剣道三倍段って言うじゃん。リーチの長い相手には、圧倒的に不利なわけよ。だから、射程を一詰めるたびに、敏捷度判定必要にする。何mとかで処理しない」
五家宝を口に放り込むきいろ。
「はー。スナイパーライフルとか、ほんとに暴力的になるな」
「でしょ? このぐらいやった方が、ピーキーで面白いと思うんだ。ボクからは、さしあたってこんなとこ。世界観チームからは、なんか無い?」
「悪の帝国だけど、アーク帝国にでもしようかなって。で、その主人公たちの国はシエン」
ちょっともじもじしながら、そう言う歌留奈。
「わかりやすくていいね!」
「ほんと!? ちょっと、直球すぎるかなあって思ってたんだけど、きーちゃんに気に入ってもらえてよかった。文化とかは、まだ考えてないんだけど」
「おーけーおーけー。ぼちぼち考えていこう。ところで、今日は何して遊ぶ?」
きいろが、戸棚を漁りつつ尋ねる。
「これなんかどう?」
T&TというTRPGの、第五版だ。
「また、古そうなゲームですね」
「まーね。ルール、割と簡単だよ。ちょっと、お父さんに使ったことあるシナリオないか訊いてくる」
そう言って、中座するきいろ。その間に三人は、ルールを読み込む。
「おまたせ~。シナリオもらってきたよ~。じゃ、やろっか?」
「はーい」
こうして、合宿二日目も、楽しく終わった。
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