たくげぶ!

みなはらつかさ

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第八話 コンベンションに行こう! ―後編―

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「ひゃ~……おっきなビルですねえ。これ全部借り切ってやるんですか?」

「まさか。三階の第一会議室だけらしいぜ」

 にこがるうの肩をもみ、緊張をほぐそうとする。

「五百円払って、参加申込済み画面を見せるだけだね。キンチョーしなーい!」

 今度は、きいろがるうの背中を軽く叩く。

「もうすぐ時間だよ。行きましょう」

 歌留奈が話を進め、一同会場へ。

「こんにちはー。参加者です~」

 参加費を払い、入室。

「男の人が多いですね……」

「だから、取って食われたりしないから。心配なら、女性卓探すといいよ」

「はあ」

 怖気づくるうを、きいろが励まし、掲示板に近づく。

「えーと……? お、CD&D卓ある! ボク、これにするー!」

 CD&D。クラシック・ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズの略で、最古のTRPGである。三版がCD&Dと呼ばれ、ルールブックなどが箱に入っていることから、赤箱、緑箱などの愛称で親しまれる。

「あ、クトゥルフの女性卓……。わたし、ここにします」

「アタシは、ベタに2.5卓行くか~」

 にこの言う2.5とは、ソード・ワールドRPG2.5のこと。

「私も、別の2.5卓行くかな」

「よし! じゃーみんな楽しんでこよーねー」

 解散。はてさて、どうなるやら。


 ◆ ◆ ◆


「おじゃましまーす」

「どもども。若い女の子がCD&D来るとは思わなかったな」

「お父さんが、昔からの卓ゲーマーなので、触ったことあるんです」

 「おお~」と声が上がる。

「キャラメイクですけど、注意点とかあります?」

「HPは最大値で。それだけかな」

「りょーかいでーす。……あ、これエルフできるな。ボク、エルフやっていいですか?」

 D&Dのエルフは、いわゆる魔法戦士である。軽戦士ではなく、きちんと重武装できる、ファイターの上位互換だ。ただし、成長はとても遅い。

「リアルボクっ娘キタコレ。いいよー。みなさんはー?」

「異議なーし。俺、シーフやりますね」

 こうして、各自の職業は決まっていき……。

「げ、お金70ゴールド!?」

 金運の悪い、きいろであった。

「貸そうか?」

「あー、これから知り合うんで、それはなしで」

「オールディーな、酒場乱闘から始まるスタイルだったら、非武装はまずいなー。プレートメイルと、バトルアクスで頑張ります……」

 バトルアクス。弱くはないが、強くもない両手用武器だ。安いので、こういうときか、ドワーフを使うときぐらいしか出番がないが。

「アックスエルフかー。エルフの仲間内で、色々言われてそーだね」

「親ドワーフ派とかいう設定にでも、しちゃいますか」

 こうして、設定というのは生えていくものである。


  ◆ ◆ ◆


 一方、るうは。

「あ、それ明らかディープワンですよね。水辺は回避します」

(うわ~……。わたしって、こんな感じでプレイしてたんだなあ。確かに、興ざめかも)

「すいません、プレイヤー知識、もうちょっと切り離せません?」

 キーパーから、注意が入る。

「すみません、まだ初心者なので……」

(あ! 色んな意味で仲間だー!)

「うーん。慣れていったら、お願いしますね。で、倉庫街を歩いているあなた達は……」

 よくも悪くも、鏡写しを見たるうであった。

 かくして、終会となり……。

「ふい~! 楽しかったー! エルフで、バトルアクス振り回すのも面白いねー」

「うちも、おもろかったぜー。やっぱ、ファイタースカウトは基本よな」

「私は、ミアキスできただけで幸せ……。2.5でも、やらせてもらえるとは思わなかった~」

 ミアキス。猫人の種族で、猫にもなれる。本来は、一バージョン前の2.0用の種族だが、GMが特別に許可を出してくれたようだ。

「るーこは?」

「あ、はい。面白かったですし、色々と学ぶところがありました」

「そか。初コンベ楽しめたなら、それでよし! お腹すいちゃった。マックでも寄ってかない?」

 一同、賛成。

 かくして、和やかムードで、るうの初コンベンションは終わった。
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