7 / 49
第七話 コンベンションに行こう! ―前編―
しおりを挟む
月曜日。
「授業、きつかった~」
部室で、だらんと垂れるきいろ。
「きーちゃんの苦手な、英語と社会だったからねー」
「ボク、日本史興味ないのー。高校行ったら、絶対世界史取る~」
「ヨシヨシ」
にこに、撫でて慰められる。
「面白いのになあ、日本史も」
「勉学性の違いってやつだね~。数学とか理科は楽しいのになあ」
歌留奈の言葉に、よくわからない造語で答えるきいろ。
「そいや、るーこはどの教科が好き?」
「わたしですか? 国語とか好きですね」
「ほー。ボク、書道も苦手なんだよねー。それはさておき、本筋に話を移して。今日は何やる?」
垂れ状態から回復。
「ウィングスパンとかどーよ」
「いーね! 二人は?」
「賛成」
「初めてなので、おまかせで」
ウィングスパンは、鳥を繁殖させて、得点を競うカードゲームだ。様々な勝ち筋がある、よくできたゲームである。
「勝ったー!」
きいろの勝利宣言。
「く~、ワタリガラスの大回転は、やっぱぶっ壊れだな」
「だね~」
「でも、すっごく面白かったです! 鳥も可愛くて」
ドベに終わったものの、るうは楽しめたようだ。
「お、好感触。ボクの大回転で、萎えちゃうかと思ったけど」
「いえいえ! それぐらいじゃ、へこみません!」
「あ!」
突如としてきいろが素っ頓狂な大声を上げ、スマホを取り出す。
「忘れるとこだった。これ、見て!」
「へー、T市でコンベやるのか」
「みんな、行けそう?」
ノリノリで身を乗り出すきいろたちに、「あの」と挙手する、るう。
「コンベってなんですか?」
「んー? 広い会場借りて、参加費払って、沢山の人でTRPGやるんだー」
「あー……。例の手引きエッセイに、書いてあった気もします。でも、そんな大人数さばき切れるんですか?」
首を傾げる質問者。
「いや、卓はせいぜい五、六人ってとこじゃないかな? それだけ別れてやるんだ」
「へえ」
「でさ、るーこもいい経験だし、みんなバラバラで参加しない? 知らない人と卓囲むのも、醍醐味だし!」
目をキラキラさせる、きいろ。
「うわ~……。知らない人ととか、緊張します~」
「何事も、チャレンジだよ!」
きいろの、サムズアップ。
「で、コンベ参加はいいとして、それまでの方針は?」
「ボクは、プレイヤーで行こっかなって。だから、それまでは、ゲーム制作に集中~」
「私たちも、世界観作り始めた方がいい?」
自分たちの出番を気にする歌留奈。
「お願い。探検が盛んだった時代でよろ~」
「ざっくりしてんなー」
「ボクが書いた、残念ファンタジー小説見たでしょ? 自慢じゃないけど、世界観構築、ド下手だからね?」
本当に、自慢にならない。
「あーね……」
目を逸らす、にこと歌留奈。るうは、すべてを察した。
「わたしにも、手伝えることってあるんでしょうか?」
「その辺は、かるかんたちに訊いてー。ボク、そっち方面、ほんとポンコツだから」
「あ、はい……」
きいろがへこみ始めたので、流れを打ち切ることにした。
「まー。さしあたっては、コンベ楽しもーぜ!」
「だね」
元気を取り戻す、きいろであった。
◆ ◆ ◆
「とりあえず、探検が盛んだった時代って言うと、大航海時代になるんだけど、どう?」
当日。行きの電車の中で、そんな話をする歌留奈。
「う~ん……。ボクとしては、定番の探検ルックの似合う時代がいいかな。もう少し、下げられない?」
「わかった。それでやってみる」
「アタシは、タイトル案考えたんだけど、いーか?」
歌留奈の隣から、身を乗り出してくる、にこ。
「ジ・エクスプローラーズってどうよ。そのまんま、探検隊って意味だけど」
「なんか、パンチが足りないね。……頭に、秘境探検ってつけない?」
「秘境探検 ジ・エクスプローラーズか! いいな!」
ぱちんと指を鳴らす。
「ところで、るーこが地蔵と化してるけど、だいじょーぶ?」
「スイマセン、緊張しちゃって……」
「取って食われたりしないから、安心しなよ」
るうの肩を、ぽんぽんと叩く。
「はあ……」
「お。T駅着いたよ。行きやんしょ」
上機嫌な三人と、不安げなるう。
「T記念会館」とスマホに入力しながら、会場を目指すのであった。
「授業、きつかった~」
部室で、だらんと垂れるきいろ。
「きーちゃんの苦手な、英語と社会だったからねー」
「ボク、日本史興味ないのー。高校行ったら、絶対世界史取る~」
「ヨシヨシ」
にこに、撫でて慰められる。
「面白いのになあ、日本史も」
「勉学性の違いってやつだね~。数学とか理科は楽しいのになあ」
歌留奈の言葉に、よくわからない造語で答えるきいろ。
「そいや、るーこはどの教科が好き?」
「わたしですか? 国語とか好きですね」
「ほー。ボク、書道も苦手なんだよねー。それはさておき、本筋に話を移して。今日は何やる?」
垂れ状態から回復。
「ウィングスパンとかどーよ」
「いーね! 二人は?」
「賛成」
「初めてなので、おまかせで」
ウィングスパンは、鳥を繁殖させて、得点を競うカードゲームだ。様々な勝ち筋がある、よくできたゲームである。
「勝ったー!」
きいろの勝利宣言。
「く~、ワタリガラスの大回転は、やっぱぶっ壊れだな」
「だね~」
「でも、すっごく面白かったです! 鳥も可愛くて」
ドベに終わったものの、るうは楽しめたようだ。
「お、好感触。ボクの大回転で、萎えちゃうかと思ったけど」
「いえいえ! それぐらいじゃ、へこみません!」
「あ!」
突如としてきいろが素っ頓狂な大声を上げ、スマホを取り出す。
「忘れるとこだった。これ、見て!」
「へー、T市でコンベやるのか」
「みんな、行けそう?」
ノリノリで身を乗り出すきいろたちに、「あの」と挙手する、るう。
「コンベってなんですか?」
「んー? 広い会場借りて、参加費払って、沢山の人でTRPGやるんだー」
「あー……。例の手引きエッセイに、書いてあった気もします。でも、そんな大人数さばき切れるんですか?」
首を傾げる質問者。
「いや、卓はせいぜい五、六人ってとこじゃないかな? それだけ別れてやるんだ」
「へえ」
「でさ、るーこもいい経験だし、みんなバラバラで参加しない? 知らない人と卓囲むのも、醍醐味だし!」
目をキラキラさせる、きいろ。
「うわ~……。知らない人ととか、緊張します~」
「何事も、チャレンジだよ!」
きいろの、サムズアップ。
「で、コンベ参加はいいとして、それまでの方針は?」
「ボクは、プレイヤーで行こっかなって。だから、それまでは、ゲーム制作に集中~」
「私たちも、世界観作り始めた方がいい?」
自分たちの出番を気にする歌留奈。
「お願い。探検が盛んだった時代でよろ~」
「ざっくりしてんなー」
「ボクが書いた、残念ファンタジー小説見たでしょ? 自慢じゃないけど、世界観構築、ド下手だからね?」
本当に、自慢にならない。
「あーね……」
目を逸らす、にこと歌留奈。るうは、すべてを察した。
「わたしにも、手伝えることってあるんでしょうか?」
「その辺は、かるかんたちに訊いてー。ボク、そっち方面、ほんとポンコツだから」
「あ、はい……」
きいろがへこみ始めたので、流れを打ち切ることにした。
「まー。さしあたっては、コンベ楽しもーぜ!」
「だね」
元気を取り戻す、きいろであった。
◆ ◆ ◆
「とりあえず、探検が盛んだった時代って言うと、大航海時代になるんだけど、どう?」
当日。行きの電車の中で、そんな話をする歌留奈。
「う~ん……。ボクとしては、定番の探検ルックの似合う時代がいいかな。もう少し、下げられない?」
「わかった。それでやってみる」
「アタシは、タイトル案考えたんだけど、いーか?」
歌留奈の隣から、身を乗り出してくる、にこ。
「ジ・エクスプローラーズってどうよ。そのまんま、探検隊って意味だけど」
「なんか、パンチが足りないね。……頭に、秘境探検ってつけない?」
「秘境探検 ジ・エクスプローラーズか! いいな!」
ぱちんと指を鳴らす。
「ところで、るーこが地蔵と化してるけど、だいじょーぶ?」
「スイマセン、緊張しちゃって……」
「取って食われたりしないから、安心しなよ」
るうの肩を、ぽんぽんと叩く。
「はあ……」
「お。T駅着いたよ。行きやんしょ」
上機嫌な三人と、不安げなるう。
「T記念会館」とスマホに入力しながら、会場を目指すのであった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
執事👨一人声劇台本
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
執事台本を今まで書いた事がなかったのですが、機会があって書いてみました。
一作だけではなく、これから色々書いてみようと思います。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

息絶える瞬間の詩のように
有沢真尋
青春
海辺の田舎町で、若手アーティストを招聘した芸術祭が開催されることに。
ある絵を見て以来、うまく「自分の絵」がかけなくなっていた女子高生・香雅里(かがり)は、招聘アーティストの名前に「あの絵のひと」を見つけ、どうしても会いたいと思い詰める。
だけど、現れた日本画家・有島はとてつもなくガラの悪い青年で……
※喫煙描写があります。苦手な方はご注意ください。
表紙イラスト:あっきコタロウさま
(https://note.com/and_dance_waltz/m/mb4b5e1433059)

パラメーターゲーム
篠崎流
青春
父子家庭で育った俺、風間悠斗。全国を親父に付いて転勤引越し生活してたが、高校の途中で再び転勤の話が出た「インドだと!?冗談じゃない」という事で俺は拒否した
東京で遠い親戚に預けられる事に成ったが、とてもいい家族だった。暫く平凡なバイト三昧の高校生活を楽しんだが、ある日、変なガキと絡んだ事から、俺の人生が大反転した。「何だこれ?!俺のスマホギャルゲがいきなり仕様変更!?」
だが、それは「相手のパラメーターが見れる」という正に神ゲーだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる