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第六話 パジャマパーティー! ―後編―
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「まーまー、聞きなって。まず、成功判定はD%。これはいいね?」
「ああ、フツーだな」
実際、クトゥルフの呼び声を筆頭に、D%で成功判定をするゲームは多い。
「でさ、ここで同時に、成功度を出しちゃうのさ!」
「どういうこと?」
「成功率六十%だったとするじゃん? ここで、出目が五十五なら、十分の一の切り捨てで、成功度五! そんなカンジ~」
歌留奈の質問に、にひひと答えるきいろ。
「へー。出目が低けりゃいいってもんじゃないんだな。でも、さらに成功度とかいうのを求めるのはなんでだ?」
「このゲームでは、成功判定に成功しただけじゃ、成功にならないんだ。成功度で目標値を超える必要がある。ふつーはゼロとかだけどね」
「ほほー」と、感心する一同。
「でも、それがお前が言ってた……なんだっけ? ニンゲンコーガク? とどうつながるんだ?」
「うん。この成功度、ダメージ判定でも使うのですよ。つまり、一回ダイス振れば、ダメージ計算も楽ちん!」
「へー」と、コレまた感心する一同。
「よく考えますねえ、先輩」
「まーね! ボク、バカだけど賢いのがジマンだから!」
えっへんと、胸を反らすきいろ。「それ、自慢になってる?」と、歌留奈に突っ込まれる。
「あれ? でも、結局ダメージ計算の手間できるんじゃ? 相手にも防御力あるでしょう?」
「ないよ。秘境探検してるような時代だもん。鎧も防弾チョッキもナシ!」
「なるほどなー」
一息つき、お茶菓子に手を伸ばす一同。
「ダメージ計算はどうするの? 成功度が関わってくるのはわかったけど」
「それは、こーあんちゅー。あとちょっとで、面白いこと、ひらめきそうなんだけどなー」
きいろが、自分の頭をぐりぐりする。
「まあまあ、おせんべでも食べて。せっかく持ってきたんだし」
「あんがと。カレーが入る程度にしないとね」
青ざめる、るう。この後、カレーがあるのを忘れていた顔だ! すでに、煎餅を六枚も!
◆ ◆ ◆
「カレー、できたわよー」
「はーい!」
母に呼ばれ、ダイニングに向かう一同。
「カッレェ! カッレェ!」
スキップしながら母の先導のもと、ダイニングに向かうきいろたち。るうだけ少し、テンションが低い。
「どうぞ」
ほかほかごはんに、カレーが注がれる。瞳をキラキラさせる一同。ただし、るう除く。
「お母さん自慢の、キーマカレーだよ。いっただっきまーす!」
きいろの元気な声で、音頭取り。皆で、一斉にスプーンをつける。
「相変わらず、美味しいっすね!」
「うんうん。るうちゃん、きいろのお母さん、ほんとに料理が上手なんだよ」
「そうですね……」
美味しいは美味しい。が、煎餅とポテチのせいで、いまいち食が進まない。
「お口に合わなかった?」
「いえ! そんなことは!」
母の不安げな言葉に、これは失礼だと、一所懸命かきこむ、るう。
こうして、佐武家での食事は、つつがなく進んでいった。
◆ ◆ ◆
食後は、皿洗いを手伝って、入浴タイム。
じゃんけんで、入る順番を決める。ちなみに、父は最後。母はその前。きいろが思春期を迎えてから、そういう決まりになっていた。
一同、順番に風呂から上がり、パジャマモードに変身。
「ふい~。いい湯だった~!」
「完全にくつろぎモードだね、にこちゃん」
「アタシ、誰んちでもこんな感じだから」
パタパタと、うちわで自分を扇ぐ。
「じゃ、夜のクトゥルフやりますかー」
「わーい」という声と、パチパチという拍手が響く。
「今日は短めのシナリオだから、今夜中に終わると思う」
「必須技能は?」
「おなじみの、目星、聞き耳、図書館」
きいろの質問に、テキパキと答える歌留奈。
こんな感じでセッションは進んでいき……。
「楽しかったですー!」
クトゥルフ神話大好きるう、大満足である。
「うーん、キーパーとしてはメタ読みはあまりしないでほしいんだけどな」
「すいません」
「まーまー、そのへんの分別は、もっと慣れてからでいいじゃん。ボクも、キャラの客観視ができるようになるまで、結構かかったし」
きいろが、るうをかばう。
「そだぜ。歌留奈は細かすぎ」
「もう、私そんなに悪い?」
「悪い悪くないと言うより、せっかちだな」
むうと、落ち込む歌留奈。
「ほらほら、かるかん落ち込んじゃったじゃん。まずはお礼言お? キーパー、お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした!」と、きいろに続く、にこと、るう。
「ああ、うん。あんまり口うるさくならないように気をつけるね」
「気にしない、気にしない! それより、お布団敷こ!」
きいろとともに、布団を用意する一同。
「ふう。なんだか、まだ眠くならねーや」
「だったらー……!」
にこの顔面に、枕を投げるきいろ。
「わぷ! やったな、この!」
枕を投げ返す。ぼふっと命中!
「る-うちゃん、さっきも今度もごめんねっと!」
歌留奈も、るうに枕を命中させる。
「ちょ……わたし、食べ過ぎで動けないので~」
へろへろ枕を投げかえするう。
「うーん、るうちゃん不調か。それじゃ、きいろ!」
「わっぷ! 二人がかりはひきょーだぞー!」
こんな調子で枕を投げ合う三人を、(素晴らしいな、友情って)と、目を細めて眺める。
るうは、ホラー趣味のせいで、気の合う友達が、なかなかできなかった。
でも、こんなに素晴らしい友人が、三人もできたのだ。
しんみりと、喜びを噛みしめる。
「ちょっと、いつまで騒いでるの!?」
「ひゃあ! ごめんなさい!」
騒ぎすぎて、母が乱入してきたので、枕投げ小会はお開き。
程よく疲れたところで、「おやすみなさーい」と、眠りの世界に落ちる四人であった。
「ああ、フツーだな」
実際、クトゥルフの呼び声を筆頭に、D%で成功判定をするゲームは多い。
「でさ、ここで同時に、成功度を出しちゃうのさ!」
「どういうこと?」
「成功率六十%だったとするじゃん? ここで、出目が五十五なら、十分の一の切り捨てで、成功度五! そんなカンジ~」
歌留奈の質問に、にひひと答えるきいろ。
「へー。出目が低けりゃいいってもんじゃないんだな。でも、さらに成功度とかいうのを求めるのはなんでだ?」
「このゲームでは、成功判定に成功しただけじゃ、成功にならないんだ。成功度で目標値を超える必要がある。ふつーはゼロとかだけどね」
「ほほー」と、感心する一同。
「でも、それがお前が言ってた……なんだっけ? ニンゲンコーガク? とどうつながるんだ?」
「うん。この成功度、ダメージ判定でも使うのですよ。つまり、一回ダイス振れば、ダメージ計算も楽ちん!」
「へー」と、コレまた感心する一同。
「よく考えますねえ、先輩」
「まーね! ボク、バカだけど賢いのがジマンだから!」
えっへんと、胸を反らすきいろ。「それ、自慢になってる?」と、歌留奈に突っ込まれる。
「あれ? でも、結局ダメージ計算の手間できるんじゃ? 相手にも防御力あるでしょう?」
「ないよ。秘境探検してるような時代だもん。鎧も防弾チョッキもナシ!」
「なるほどなー」
一息つき、お茶菓子に手を伸ばす一同。
「ダメージ計算はどうするの? 成功度が関わってくるのはわかったけど」
「それは、こーあんちゅー。あとちょっとで、面白いこと、ひらめきそうなんだけどなー」
きいろが、自分の頭をぐりぐりする。
「まあまあ、おせんべでも食べて。せっかく持ってきたんだし」
「あんがと。カレーが入る程度にしないとね」
青ざめる、るう。この後、カレーがあるのを忘れていた顔だ! すでに、煎餅を六枚も!
◆ ◆ ◆
「カレー、できたわよー」
「はーい!」
母に呼ばれ、ダイニングに向かう一同。
「カッレェ! カッレェ!」
スキップしながら母の先導のもと、ダイニングに向かうきいろたち。るうだけ少し、テンションが低い。
「どうぞ」
ほかほかごはんに、カレーが注がれる。瞳をキラキラさせる一同。ただし、るう除く。
「お母さん自慢の、キーマカレーだよ。いっただっきまーす!」
きいろの元気な声で、音頭取り。皆で、一斉にスプーンをつける。
「相変わらず、美味しいっすね!」
「うんうん。るうちゃん、きいろのお母さん、ほんとに料理が上手なんだよ」
「そうですね……」
美味しいは美味しい。が、煎餅とポテチのせいで、いまいち食が進まない。
「お口に合わなかった?」
「いえ! そんなことは!」
母の不安げな言葉に、これは失礼だと、一所懸命かきこむ、るう。
こうして、佐武家での食事は、つつがなく進んでいった。
◆ ◆ ◆
食後は、皿洗いを手伝って、入浴タイム。
じゃんけんで、入る順番を決める。ちなみに、父は最後。母はその前。きいろが思春期を迎えてから、そういう決まりになっていた。
一同、順番に風呂から上がり、パジャマモードに変身。
「ふい~。いい湯だった~!」
「完全にくつろぎモードだね、にこちゃん」
「アタシ、誰んちでもこんな感じだから」
パタパタと、うちわで自分を扇ぐ。
「じゃ、夜のクトゥルフやりますかー」
「わーい」という声と、パチパチという拍手が響く。
「今日は短めのシナリオだから、今夜中に終わると思う」
「必須技能は?」
「おなじみの、目星、聞き耳、図書館」
きいろの質問に、テキパキと答える歌留奈。
こんな感じでセッションは進んでいき……。
「楽しかったですー!」
クトゥルフ神話大好きるう、大満足である。
「うーん、キーパーとしてはメタ読みはあまりしないでほしいんだけどな」
「すいません」
「まーまー、そのへんの分別は、もっと慣れてからでいいじゃん。ボクも、キャラの客観視ができるようになるまで、結構かかったし」
きいろが、るうをかばう。
「そだぜ。歌留奈は細かすぎ」
「もう、私そんなに悪い?」
「悪い悪くないと言うより、せっかちだな」
むうと、落ち込む歌留奈。
「ほらほら、かるかん落ち込んじゃったじゃん。まずはお礼言お? キーパー、お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした!」と、きいろに続く、にこと、るう。
「ああ、うん。あんまり口うるさくならないように気をつけるね」
「気にしない、気にしない! それより、お布団敷こ!」
きいろとともに、布団を用意する一同。
「ふう。なんだか、まだ眠くならねーや」
「だったらー……!」
にこの顔面に、枕を投げるきいろ。
「わぷ! やったな、この!」
枕を投げ返す。ぼふっと命中!
「る-うちゃん、さっきも今度もごめんねっと!」
歌留奈も、るうに枕を命中させる。
「ちょ……わたし、食べ過ぎで動けないので~」
へろへろ枕を投げかえするう。
「うーん、るうちゃん不調か。それじゃ、きいろ!」
「わっぷ! 二人がかりはひきょーだぞー!」
こんな調子で枕を投げ合う三人を、(素晴らしいな、友情って)と、目を細めて眺める。
るうは、ホラー趣味のせいで、気の合う友達が、なかなかできなかった。
でも、こんなに素晴らしい友人が、三人もできたのだ。
しんみりと、喜びを噛みしめる。
「ちょっと、いつまで騒いでるの!?」
「ひゃあ! ごめんなさい!」
騒ぎすぎて、母が乱入してきたので、枕投げ小会はお開き。
程よく疲れたところで、「おやすみなさーい」と、眠りの世界に落ちる四人であった。
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