たくげぶ!

みなはらつかさ

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第五話 パジャマパーティー! ―前編―

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「ねね。土曜、ボクんちに泊まりに来ない? パジャマパーティーしようよ!」

「唐突だな」

「だって、ボクだよ?」

 にこのツッコミに、意味は分からないが、自信だけは伝わる謎ドヤで返すきいろ。

「パジャマパーティーですか! 楽しそうですね! でも……」

 ちょっと困る、るう。

「あー、るーこはボクんち知らないか。ここ学校まで迎えに来るよ。にこちんと、かるかんは、てきとーにウチでくつろいでて」

「あいよ」

「お菓子、持っていった方がいい?」

「ウチである程度用意するけど、食べたい物あるなら持ってきて。当日は、カレーパーティーやるからね!」

 「おお~!」と意気上がる一同。やはり、こういうときはカレーだ。

 かくして皆、意気軒昂。週末に向けて盛り上がるのであった。


 ◆ ◆ ◆


「待った?」

「今来たとこです」

「なはは~。デートみたいなやり取りだね~」

 当日。校門前で、弛緩した顔をする、きいろ。

「もう、何言ってるんですか」

 一方、るうは照れくさそう。

「じゃ、みんなも待ってるだろうし、行こっか!」

 るんるんと、スキップでもしそうな陽気さで、先導するきいろ。

 ときどき、ついてこれているか振り返る。

「そういえばさ」

 歩調を落とし、不案内なるうに並ぶ。

「なんでしょう?」

「クトゥルフのキーパー、やってみない?」

 キーパーとは、他ゲームでいうGMのこと。

「わたしみたいな、初心者がですか!?」

 豆鉄砲を受けた鳩のような顔になる、るう。

「最初は、誰だって初心者だよ? なにごとも、ケーケンだよ、ケーケン。ボクがサブマスやるからさ、アシストは任せて」

「はあ」

「ま、あくまでも提案だから! 気が向いたらね!」

 その後は、クトゥルフトークをしながら、佐武家へ向かう二人。濃い光景である。

「たっだいま~!」

 帰宅すると、台所で手を洗うきいろ。るうもそれにならう。

「おかえりなさい。歌留奈ちゃんとにこちゃんなら、客間よ」

「工藤さんだね。はじめまして。お話は、かねがねきいろから伺っているよ」

 きいろの父母が、気さくに話しかけてくる。それを受け、るうは少し緊張しながらも、打ち解けた気持ちになった。

「お邪魔します」

「あんまり待たせても悪いから、ボクら行くね」

 客間に向かう二人。

「おーう、いらっさーい。自分のうちだと思って、くつろいでくんな」

「にこちんは、くつろぎすぎ」

 座椅子で完全にだらんとしているにこに、きいろが苦笑する。

「とりあえず、うちからはおせんべ持ってきた」

「んで、うちがポテチと。かるかん、おせんべとか好きだよねえ」

「なんかねえ。そうなのよ。自分でも謎だけど」

 歌留奈は、煎餅や羊羹といった和菓子を、妙に好む。なので、用意されたお茶も緑茶だ。

「ボクらの分もれよっと」

 急須に湯を注ぐきいろ。

「あ、るーこはテキトーにくつろいで」

「はい」

 ちょこんと女の子座りする、るう。

 一方きいろは、スパッツ&女子だけなのをいいことにあぐらだ。

「もう、お行儀」

「えー。自宅でぐらい、好きにくつろがせてよ」

「いつも、オープンスタイルじゃない」

 さっそく、歌留奈のお小言。

「ほらほら、せっかく遊びに来たんだから、ゲームの話しよーぜ」

 にこが、話を進める。

「そだね。ここ、お父さんの私物が多いから、古めのゲームになるけど……。『大戦略』なんてどーお?」

「なんだか、仰々しそうなゲームですね」

「まー、題材は昔の戦闘機とか戦車のドンパチで、女の子向けって感じじゃないけど、なかなか面白いよ」

 実物を取り出す、きいろ。

「ちょっと、お菓子とかお茶は、一旦下に置こう。ルールはねえ……」

 大戦略。同名のコンピューターゲームを元ネタとする、カードゲームである。兵器カードを出し合って2D6+性能で勝敗が決まるが、自国の兵器なら、そのまま手元に戻ってくるというのが味噌。

 日本の担当になると、色々辛いゲームである。

「面白いですね!」

「でしょー」

 最初は難色を示していたるうも、シンプルにしてバランスの取れた内容に、すっかり気に入ったようだ。きいろもにっこり。

「このあとは、私キーパーでクトゥルフやるけどいい?」

「異議なーし」

 再び、茶菓子モードに戻る四人。

「そいえば、きいろ。例のオリゲーどーなったよ? あれから何も言ってこんから、アタシらも動けなくてさ」

「あ、うん。ボクも色々考えててさ。とりあえず、コレだけでできるゲームにする」

 きいろが取り出したのは、十面体二個。

「へー2D10か。おーざっぱなゲームになりそだな」

「ノンノン。D%ディーパーオンリーだよん」

「なんだそりゃ!? アタシ、ダメージ計算で百分率計算とか、したくねーぞ!」

 にこが、悲鳴を上げる。果たして、きいろの真意やいかに!?
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