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エピソード20 ボクたちの初めてで、一旦最後の……
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今日は、タケルくんちで宿題退治。
持参したパインゼリーを食べていると、タケルくんが、やたら真剣な顔つきで、ボクを見ていることに気づきました。
「顔、ゼリーでもついてる?」
「あー、いや……。これ、訊いていいものかどうかって思って」
「なに? 気になるじゃない。とりあえず言ってみてよ」
ゼリーとスプーンを、一旦置く。
「んーとさ。興味本位な感じの質問で、アレなんだけどさ。お前って、いつから、どういうきっかけで、自分の心が女だって気付いたのかなって」
「……タケルくんになら、話してもいいかな。ボクね、保育園でよく泣く子だったらしいんだ。で、何が悲しいのか言語化できないから、保育士さんも、両親も困っちゃってね。そんなのが続いたある日、お母さんと一緒にお風呂入ってる時、『いつ、ママみたいな体になれるの?』って訊いたんだって。で、これでさすがにピンときて、必死にジェンクリ探して、今に至るってわけ」
「はー……」
もはや、言葉が出ない感じみたい。
「でもね。ボク、そろそろ限界で」
「え、おい、自殺とか考えんなよ!?」
慌てて、立ち上がりかける彼。
「しないよ、そんなこと。ただ、二十万円弱出せば、問答無用で玉を取ってくれるクリニックがあるらしくてね。そこで取っちゃえば、今の主治医の先生も、ボクの覚悟っていうのかな。本気度が伝わって、女性化を進めてくれるのかなって」
二十万円。タケルくんのおじさんがくれた、お金の十倍。そんな大金、両親が出してくれるだろうか。そのためなら、土下座だって、なんだってする。
すると、タケルくんが立ち上がって、背後から抱きしめてきた。
「お前、ほんとに覚悟決まってるよな。この小さな体に、でっかい悩み抱えてさ。なのに、オレは、なにもしてやれない」
慰めるように、そして、無力を嘆くように、ぎゅっと力を入れてくる。
「ううん。タケルくんと恋人になれただけで、ボク、幸せだよ」
「強がりだ」
「だね。でも、今言ったことは、本当だよ」
手に手を重ねる。
「キス、したい」
「ボクも」
唇を重ね合わせると、タケルくんが、舌で唇の間をつついてきた。意図を理解し、唇を緩めると、彼の舌が、入ってくるので、ボクも舌を合わせる。
そして、絡め合うと、いつもの軽いキスとは違う、なんとも言えない感覚が、舌を伝う。
さらに、互いに口の中をまさぐり合う。
心臓が、爆発しそう! これが、ディープキス……!
夢中で唇と舌で感じ合い、息苦しくなってきたので、どちらともなく唇を離すと、ボクも彼も、つうとよだれを引いてしまい、慌てて、ティッシュで口元を拭く。
「すごかったな……」
「うん……。ねえ、もう一回」
と言いかけた時、タケルくんがハッとなり、気まずそうに顔をそらす。
一瞬、頭が謎で包まれたけど、自分の体に起こった現象に気づき、慌てて股を手で隠す。
「ごめん。恥をかかせるつもりは、なかったんだ」
「タケルくんは、悪くないよ。神様が悪いんだ」
タケルくんは、思いやり深い、誠実な人。ボクが見られたくない状態を、見てしまったんだ。
慌てて視線をそらした彼だけど、タケルくんは、どうする対応するのが正解だったのか、ボクにもわからない。
「ほんと、ヤな体」
ため息一つ。
タケルくんなら、この体でも受け入れてくれる。でも、ボクが嫌なんだ。
「ごめん。なんか、気まずくなっちゃったね。治療が前進するまで、ディープは封印していい?」
「うん」
顔をそらしたまま、頷く彼。「合わせる顔がない」を絵に描いたような有り様。ディープキスに誘った事に、強い罪悪感を感じているのだろう。彼は、責任感が強い人でもある。
「『本当の体』になったら、またディープしようね。約束。だから、そんなに自分を責めないで」
「ああ……。嫌な思い、させちゃったな。ほんと悪かった」
やっと、こっちを向いてくれたけど、頭を下げてくる。
「もう、タケルくんは悪くないって。ね、もっかいキスしよ。軽いやつ」
「ああ……」
ちゅっ。
さっきの快感にはとても敵わないけど、それでも、十分気持ちいい。
気まずい空気を打ち消すように、時間をかけ、何度も何度も唇を突き合わせる。
よし、大丈夫。これなら「反応」しないみたい。
高まってきたところに、不意にチャイムが。
「あーもう、間の悪い! ちょっと、行ってくる」
「やっぱり、神様は意地悪だね」
残念だけど、一旦中止。彼の帰りを待つ。
「ただいまー。ばーちゃんが、野菜大量に送ってきたよ。ありがたいけど、タイミングがなあ」
後頭部をかきながら、戻って来る。
「続き、する?」
「ごめんな。ちょっと、気ィ抜かれちゃったよ」
「そか。残念。本来の目的に、戻ろっか」
ため息つきながら、向かいに座る彼。
再び、宿題退治の世界に戻るのでした。
持参したパインゼリーを食べていると、タケルくんが、やたら真剣な顔つきで、ボクを見ていることに気づきました。
「顔、ゼリーでもついてる?」
「あー、いや……。これ、訊いていいものかどうかって思って」
「なに? 気になるじゃない。とりあえず言ってみてよ」
ゼリーとスプーンを、一旦置く。
「んーとさ。興味本位な感じの質問で、アレなんだけどさ。お前って、いつから、どういうきっかけで、自分の心が女だって気付いたのかなって」
「……タケルくんになら、話してもいいかな。ボクね、保育園でよく泣く子だったらしいんだ。で、何が悲しいのか言語化できないから、保育士さんも、両親も困っちゃってね。そんなのが続いたある日、お母さんと一緒にお風呂入ってる時、『いつ、ママみたいな体になれるの?』って訊いたんだって。で、これでさすがにピンときて、必死にジェンクリ探して、今に至るってわけ」
「はー……」
もはや、言葉が出ない感じみたい。
「でもね。ボク、そろそろ限界で」
「え、おい、自殺とか考えんなよ!?」
慌てて、立ち上がりかける彼。
「しないよ、そんなこと。ただ、二十万円弱出せば、問答無用で玉を取ってくれるクリニックがあるらしくてね。そこで取っちゃえば、今の主治医の先生も、ボクの覚悟っていうのかな。本気度が伝わって、女性化を進めてくれるのかなって」
二十万円。タケルくんのおじさんがくれた、お金の十倍。そんな大金、両親が出してくれるだろうか。そのためなら、土下座だって、なんだってする。
すると、タケルくんが立ち上がって、背後から抱きしめてきた。
「お前、ほんとに覚悟決まってるよな。この小さな体に、でっかい悩み抱えてさ。なのに、オレは、なにもしてやれない」
慰めるように、そして、無力を嘆くように、ぎゅっと力を入れてくる。
「ううん。タケルくんと恋人になれただけで、ボク、幸せだよ」
「強がりだ」
「だね。でも、今言ったことは、本当だよ」
手に手を重ねる。
「キス、したい」
「ボクも」
唇を重ね合わせると、タケルくんが、舌で唇の間をつついてきた。意図を理解し、唇を緩めると、彼の舌が、入ってくるので、ボクも舌を合わせる。
そして、絡め合うと、いつもの軽いキスとは違う、なんとも言えない感覚が、舌を伝う。
さらに、互いに口の中をまさぐり合う。
心臓が、爆発しそう! これが、ディープキス……!
夢中で唇と舌で感じ合い、息苦しくなってきたので、どちらともなく唇を離すと、ボクも彼も、つうとよだれを引いてしまい、慌てて、ティッシュで口元を拭く。
「すごかったな……」
「うん……。ねえ、もう一回」
と言いかけた時、タケルくんがハッとなり、気まずそうに顔をそらす。
一瞬、頭が謎で包まれたけど、自分の体に起こった現象に気づき、慌てて股を手で隠す。
「ごめん。恥をかかせるつもりは、なかったんだ」
「タケルくんは、悪くないよ。神様が悪いんだ」
タケルくんは、思いやり深い、誠実な人。ボクが見られたくない状態を、見てしまったんだ。
慌てて視線をそらした彼だけど、タケルくんは、どうする対応するのが正解だったのか、ボクにもわからない。
「ほんと、ヤな体」
ため息一つ。
タケルくんなら、この体でも受け入れてくれる。でも、ボクが嫌なんだ。
「ごめん。なんか、気まずくなっちゃったね。治療が前進するまで、ディープは封印していい?」
「うん」
顔をそらしたまま、頷く彼。「合わせる顔がない」を絵に描いたような有り様。ディープキスに誘った事に、強い罪悪感を感じているのだろう。彼は、責任感が強い人でもある。
「『本当の体』になったら、またディープしようね。約束。だから、そんなに自分を責めないで」
「ああ……。嫌な思い、させちゃったな。ほんと悪かった」
やっと、こっちを向いてくれたけど、頭を下げてくる。
「もう、タケルくんは悪くないって。ね、もっかいキスしよ。軽いやつ」
「ああ……」
ちゅっ。
さっきの快感にはとても敵わないけど、それでも、十分気持ちいい。
気まずい空気を打ち消すように、時間をかけ、何度も何度も唇を突き合わせる。
よし、大丈夫。これなら「反応」しないみたい。
高まってきたところに、不意にチャイムが。
「あーもう、間の悪い! ちょっと、行ってくる」
「やっぱり、神様は意地悪だね」
残念だけど、一旦中止。彼の帰りを待つ。
「ただいまー。ばーちゃんが、野菜大量に送ってきたよ。ありがたいけど、タイミングがなあ」
後頭部をかきながら、戻って来る。
「続き、する?」
「ごめんな。ちょっと、気ィ抜かれちゃったよ」
「そか。残念。本来の目的に、戻ろっか」
ため息つきながら、向かいに座る彼。
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