上 下
10 / 15

エピソード10 ボクたちの初公園デート・後編

しおりを挟む
「ごっそさんでした! 美味かったぜ~」

「お粗末様でした。ありがとう。ボクも、もう少しで食べ終わるから、待っててね」

 合掌した後、笑顔を向けてくるタケルくんに、ボクもはにかみ返す。

 幸せを噛み締めながら、マイ手作り弁当を、もぐもぐと食べ進めるのでした。

「ふ~……ごちそうさま」

 ボクも、合掌。

「ちょっと食休みしたら、帰ろうか」

「だな」

 なんて言ってると……。

 ぱたっ。

 帽子に、なんか当たった!

「降ってる!」

 今日は、降らないはずだったのに!

 急いで、日傘を広げる。日傘を、雨傘にしてはいけないという法律はないのです!

「よし、全部しまったぞ!」

「入って!」

 密着して、相合い傘状態に。

 タケルくんの、たくましい腕が、ボクの肩に触れる。自分と、こんなにも違うんだなあ。

「どうしよう」

 もはや、土砂降りだ。

「とりあえず、休憩所に避難しようぜ」

 あそこには、屋根があるし、テーブルと椅子もある。

「うん、行こ」

 二人三脚のように、ペースを合わせて、ゆっくり歩く。

 しばらくして……。

「ちょっと、歩くペース落ちてないか?」

「ごめん、濡れたスカートが足にまとわりついて、歩きにくくて……」

 おしゃれ心出して、ロング丈にしたのが祟ったなー……。

「そか、気をつけるよ」

 ボクのペースに、合わせてくれる。ほんと、優しい。

「タケルくん、肩、はみ出てない?」

「実は、ちょっと」

「そっちに、少し傘寄せるね。もっとくっつこう」

 って、我ながら、ダイタン!

「あ、ああ。じゃあ……」

 身を寄せてくる彼。あー! 心臓がバクハツしそう!

 密着相合い傘。雨には困ったけど、わりと嬉しい。

 ドキドキしながら、休憩所へ向かうのでした。


 ◆ ◆ ◆


「着いたー!」

 休憩所の屋根の下に入り、ひと安心!

 傘の水気を飛ばしていると、なんか視線が……?

「どうかした?」

「い、いや! なんでもない!」

 慌てて目をそらす、タケルくん。

 今日のボクは、薄手の白ワンピ。それが、雨に濡れて……。

 セルフチェックすると……。

「えっち!」

「ごめん! ごめんて! マジごめん!!」

 合掌して、必死に頭を下げてくる。

「う~……。今見たものは、忘れること! OK!?」

「はい! OKです!」

 今度は、ビシッと敬礼。やれやれ。今日は、服のチョイスに祟られる日だなあ。

「とりあえず、席取っちゃお。混みだしてきた」

「だな」

 手近な席に、腰を落ち着ける。

「お願いあるんだけど、バニラソフト買ってきてくれる? タケルくんも、好きなの一つ買っていいから」

 五百円玉を差し出す。

「いいのか?」

「もともと、自販機のジュースでも買いなさいって、もらったお金だし。あと、この格好で、うろうろできないからね。お願い」

「わかった。サンキュな!」

 購買所へ向かう彼。ややあって、帰ってきました。

「ほい、バニラとお釣り」

「ありがと。チョコにしたんだ」

「うん。ほら、あれやろうぜ、シェア」

 うわ~、タケルくんから、提案してきましたよ! 頬が熱くなる。

「じゃあ……」

 ソフトクリームの蓋を取る。ここのソフトクリームは、機械で練りだすタイプではなく、スーパーで売ってるようなの。そこが、ちょっと惜しい。

 互いに、ぱくっ! うーん、つめた~い! チョコもいいよね~。

「雨が加わって、蒸し暑いから、ありがたいなあ」

 チョコソフトを、ナチュラルに舐めるタケルくん。ボクの口をつけたとこが……。やっぱ、照れるぅ! ボクも、お返し! うーん、バニラは基本!

 しばし、互いに無言で、ソフトクリームを味わう。早く食べないと、溶けちゃうからね。

「ごっそさんでした!」

「ごちそうさまでした」

 まだ、雨はやまない。困ったね。

「そういえば、タケルくんって、上半身も鍛えてるの?」

 素朴な疑問をぶつけてみる。

「まあ、それなりに。なんでまた、急に?」

「密着状態の時、たくましい腕だなーって思って」

「ああ。走るのは、腕の振りも大事だからな」

「へー」

 たしかに、短距離走の選手を思い浮かべると、上も筋肉質な人が多い。

「逆に、お前は華奢で、やっぱこう、守ってやりたくなる感じだったよ」

 ぼっと、頬が熱くなる。

「照れくさいよ……」

「お互い様かな」

 彼も、照れてるんだ。

「気象庁によると、にわか雨らしいぜ」

 スマホをしまい、席を立って、空を覗きに行くタケルくん。

「うん、晴れ間がさし始めてる。もうすぐ晴れるな」

「そっかー。歩いてるうちに、服が乾いてくれるといいんだけど……」

 雨上がりの湿度じゃ無理かな。

 しばらく雑談していると、雨が完全にやみました。

「行くか」

「うん」

 恋人繋ぎで、二人の家への分かれ道まで、仲良く歩いて行く。

 上がったり、下がったり、忙しいデートだったな。ま、たまにはこんなのもいいよね!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

処理中です...