【男の娘BL】ボクと彼の、はじめてだらけの恋物語!

みなはらつかさ

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エピソード7 ボクたちの初夏バテ対策

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『おおおお~お~おお~♪』

 夜、ベッドでぐでーっとしてると、スマホが鳴る。

 この着信音は、タケルくんからだ。

 ちなみに、スカバイのジムリーダーテラスタル戦。テンション上がるよね。

 もっとも……。

「は~い……」

 寝そべったまま、スマホに出る。

「こんばんはー。って、なんかテンション低くね?」

「うん。夏バテしちゃったみたいでね。食欲はないし、なんかもう、色々やる気でないし」

 ため息。

「えー! 大変じゃん」

「とりあえず、おそうめんとか、シリアルとかを、少し食べるのが限界で」

 また、ため息。せっかくの、タケルくんからの電話なのに、ほんとだるくて……。

「うーん、なんか力になれねーかなあ……。よし! 明日の昼、我が家秘伝の夏バテ対策料理、作りに行っていいか!?」

「タケルくん、料理できないって言ってなかった?」

「そりゃ、ものによる。明日作るのぐらいなら、オレでもラクショーよ!」

「そっか。楽しみにしてるね。ほんとはもっと、お話ししてたいけど、ほんとだるくて……。ごめん」

「わかった。じゃ、明日な! 無理すんなよ!」

 通話終了。

 なに作るんだろ?

 ちょっとわくわくしつつ、タケルくんからもらった、マリルリぬいを抱っこするのでした。


 ◆ ◆ ◆


 お昼。チャイムが鳴った。しんどいけど、ベッドから玄関まで、頑張って向かう。

「はーい、どちらさまですか~」

「オレオレ!」

「開けるね」

 ドアを開けると、タケルくん、ちょっとびっくり。

 ボク、パジャマのままだからね。水色基調のワンピースタイプ。白いフリルと、胸元のポンポンがポイント。

「おおう、いきなりかわいいな、おい。でも……やっぱしんどそうだな。お前んち、ガス? IH?」

「ガス~」

「お、うちと同じで助かる。じゃあ、台所の場所だけ教えたら、戻って、休んでてくれよ。できたら、持ってくから」

「うん」

 というわけで、そのとおりにして、再度安静に。


 ◆ ◆ ◆


「……できたぞ~」

 耳元でささやかれて、びくっと起きる。寝落ちしてたらしい。

「ほんと、つらそうだな。テーブルまで来れるか?」

「なんとか、がんばる……」

 スローモーな動作で着席。

 で、テーブルを見ると……。おそうめんが、用意されてました。タケルくんのは、大盛りだ。

「普通に、おそうめんだね?」

「まーな。そこで、ひみつ道具~」

 ねり梅のチューブを、取り出す彼。

「これで、味変してみ?」

「へ~。どんな感じになるんだろ。いただきます」

 適量めんつゆに絞って、つるつるっといってみる。

 ん!

「さっぱりして、食べやすい!」

「だろ? オレも去年、夏バテしちゃってさ。たまたま家に遊びに来てたばーちゃんが、これ作ってくれたんだ。ばーちゃんは、梅干しを裏ごししてたけど、ねり梅の方が、ラクだからな」

「美味しい~。すごいよ、タケルくん!」

 つるつるいただきながら、心からの称賛。

 あんなに食欲なかったのに、お箸が進む。

「おう。帰ったら、ばーちゃんに、喜んでもらえたって電話しとくな」

 タケルくんも、ずるずるといただいてます。

「ごちそうさまでした」

 ふー。久々に満腹!

「お粗末様でした。やることなくて、暇だろ? ポケモンの映画、持ってきたけど」

「ごめんね。歯を磨いたら、寝たいかな」

「そか。じゃあ、洗い物してくるよ」

 彼が立ち上がるので、「あ、待って」と声をかける。

「ん?」

「ボクが寝付くまで、手、握っててくれると嬉しいな……」

 もじもじしながら、提案。

「お安い御用! じゃ、洗ってくるな」

 一緒に部屋を出て、ボクは洗面所へ。

 そして、合流。

「なんかごめんね。わがまま言っちゃって」

「気にすんな。オレも嬉しいから、ウィンウィンだぜ。それじゃお姫様、おやすみなさいませ」

「うん、ありがと」

 アイマスクをして横になり、右手を横に置くと、優しく握られる。

 タケルくんの手、男の子の手だ。がっしりしてて、肉厚で……。

 逆に彼は、ボクの女の子みたいな手を、感じてくれてるのかな……。

 ……。

 トイレに行きたくなって起きると、「また明日!」という文字と、なんというか、やたら個性的なマリルリが書かれたメモが、テーブルに載っていた。

 外を見ると、もう夕方。結構、寝込んじゃったらしい。

 どのぐらい、手を握り合ってたのかな。

 うっとりと、感触を思い出す。

 おっと、トイレ行くんだった。

 トイレから戻り、LINEで、「今日は、本当にありがとう!」と打つと、ややあって、「どういたしまして! またなんか困ったことあったら、いつでも声かけてくれよな!」と返信が届く。

 しばらく、寝っ転がりながらチャットを楽しむと、話題も尽きてきたので、「また明日。そうそう。あのマリルリ、結構味があったよ。それじゃ!」と送り、LINEを落とす。

 早く元気になりたいな。そう思いながら、あのメモを、愛おしく眺めるのでした。
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