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エピソード6 ボクたちの初性転換講座
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「素朴な疑問なんだけどさ、なんでお前の主治医って、さっさと診断つけないの? かなり小さい頃から、通ってるんだろ?」
今日は、タケルくんのおうちで、宿題退治。
「うん。前も少し話したけど、大人になるまで、ジェンダーって割と不安定でね。大人でも、突然ジェンダーが変わる人が、いるぐらいなんだ。だから、慎重なのが一つ」
ふんふんと、頷く彼。
「で、重要なのが、もう一つの理由で、GIDの診断が下って、いざ性転換手術した人が、その性別で生きてみると、『こんなはずじゃなかった』って後悔して、自殺する事が多いんだって。だから、ジェンクリの先生って、慎重なの」
自殺という物騒なワードに、ぎょっとするタケルくん。
「そこで、望む性別で実際生活してみる、テスト期間を設けて、本当に大丈夫かどうか、試すんだ。で、『この人なら、ちゃんと大丈夫だ』って思ってもらえれば、やっとこ診断書がもらえる感じ」
「へえ~……」
どういう感情なのか、ため息をつく彼。
「で、ボクの場合、目下のネックが、女子コミュニティに馴染めないことと、この一人称」
「あー。こないだ、地蔵状態だったって言ってたな。でも、ボクっ娘、そんな駄目か?」
怪訝な顔。
「ボクらってね、純女さん以上に、女らしさを求められるんだ。そうじゃないと、『なんだ、結局男じゃん』って思われちゃうの」
「えー! この、ジェンダフリーを目指そうってご時世にか!?」
「そういうもんなんだよ」
ため息。
「まー、ボクっ娘自体が珍しいから、奇異な目で見られるのは、覚悟しないとだね。実際、見知らぬ人に、変な顔されたことあるし」
「んー……。ボクっ娘、かわいいと思うけどなー」
「ありがと。でも、タケルくんみたいに思ってくれる人は、少数派だよ、どうしても。結局、二次元の世界じゃないと、受け入れてもらえないんだよね」
「そーゆーもんかー。オレなんか、お前のボク呼びに、キュンと来ちゃうけどな~」
照れくさくなって、下を向いて、もじもじしてしまう。
「タケルくんみたいな人が、いっぱいいたら、いいのになー」
照れたと思ったら、今度はため息。我ながら、忙しい。
「他にはね、性ホルモンって一度使ったら、一生使い続けなきゃいけないの。そうしないと、骨粗鬆症になっちゃうんっだって。あと、女性化、あるいは男性化した体も、元には戻らない。もし、後から気が変わってもね。だから、お医者さんにも、何度も念を押されてる。あと、保険も効かないから、高いんだ」
「でも、今にでも始めたいんだろ?」
「うん。でも、最初に言った理由から、成人するまで、様子見なんだ」
また、ため息をついてしまう。
「それと、お医者さんが慎重な理由は、やっぱり、手術が命がけってことかな」
「命がけ!」
タケルくん、びっくり。
「MTFの性転換手術って、二種類あるんだけど、比較的簡単な方でも、股のど真ん中に、結構深い穴開けるからね。もう片方のなんか、難易度も危険度も、もっと高いよ」
タケルくん真っ青。
「お前、ハードな世界に生きすぎだろ……」
「そうだね。ボク、TVじゃなくて、やっぱりGIDだと思うんだよね。この体、嫌で仕方ないから」
じっと、自分の股間を見つめる。
すると、タクルくんが立ち上がり、背後から抱きしめてきた。
「オレ、絶対お前を幸せにする! 約束する!」
「ありがとう」
抱きしめる手に、そっと触れる。
産まれる時、神様が、心と体がちぐはぐでないようにしてくれてたら、こんな苦労しなくて済んだんだろうな。
でも、そうだったら、タケルくんにとって、ただの生徒の一人に過ぎず、恋人になってなかったかも知れない。
運命って、ほんと不思議。
ボクの最大の哀しみ。それは、タケルくんの子どもを、産んであげられないこと。
今の医学では、どうしようもないらしい。
なってみたかったな。お母さん。
生理って毎月大変らしいし、出産は命がけらしいけど。
それでも。
つい、涙がこぼれてしまう。
「お前……泣いてる?」
「ゴメン、ちょっとね。すぐ、収まるから」
指で拭いながら、笑顔を作ろうとする。
彼まで、悲しい顔をするのは嫌だ。
そんなボクの涙を、キスで拭うタケルくん。やっぱりきざだよ、キミ。
「泣かないでくれ、とは言わない。多分、誰にもどうしようもなく、泣きたいことで悩んでるんだなって思うから。こんなことしか、できないけど……」
互いに、唇を求め合う。
そして、キス。
静かに、過ぎていく時間。
入学式の時、さっそくボクはからかわれた。そして、必殺のげんこつを、そいつに叩き込んだタケルくん。
彼がいなかったら、ボクの小学校生活は、仄暗いものになっていただろう。
ボクの、ナイト、灯火、太陽……。
どんな言葉でも、言い尽くせない、素敵な人。
大好きだよ。心の底から。
今日は、タケルくんのおうちで、宿題退治。
「うん。前も少し話したけど、大人になるまで、ジェンダーって割と不安定でね。大人でも、突然ジェンダーが変わる人が、いるぐらいなんだ。だから、慎重なのが一つ」
ふんふんと、頷く彼。
「で、重要なのが、もう一つの理由で、GIDの診断が下って、いざ性転換手術した人が、その性別で生きてみると、『こんなはずじゃなかった』って後悔して、自殺する事が多いんだって。だから、ジェンクリの先生って、慎重なの」
自殺という物騒なワードに、ぎょっとするタケルくん。
「そこで、望む性別で実際生活してみる、テスト期間を設けて、本当に大丈夫かどうか、試すんだ。で、『この人なら、ちゃんと大丈夫だ』って思ってもらえれば、やっとこ診断書がもらえる感じ」
「へえ~……」
どういう感情なのか、ため息をつく彼。
「で、ボクの場合、目下のネックが、女子コミュニティに馴染めないことと、この一人称」
「あー。こないだ、地蔵状態だったって言ってたな。でも、ボクっ娘、そんな駄目か?」
怪訝な顔。
「ボクらってね、純女さん以上に、女らしさを求められるんだ。そうじゃないと、『なんだ、結局男じゃん』って思われちゃうの」
「えー! この、ジェンダフリーを目指そうってご時世にか!?」
「そういうもんなんだよ」
ため息。
「まー、ボクっ娘自体が珍しいから、奇異な目で見られるのは、覚悟しないとだね。実際、見知らぬ人に、変な顔されたことあるし」
「んー……。ボクっ娘、かわいいと思うけどなー」
「ありがと。でも、タケルくんみたいに思ってくれる人は、少数派だよ、どうしても。結局、二次元の世界じゃないと、受け入れてもらえないんだよね」
「そーゆーもんかー。オレなんか、お前のボク呼びに、キュンと来ちゃうけどな~」
照れくさくなって、下を向いて、もじもじしてしまう。
「タケルくんみたいな人が、いっぱいいたら、いいのになー」
照れたと思ったら、今度はため息。我ながら、忙しい。
「他にはね、性ホルモンって一度使ったら、一生使い続けなきゃいけないの。そうしないと、骨粗鬆症になっちゃうんっだって。あと、女性化、あるいは男性化した体も、元には戻らない。もし、後から気が変わってもね。だから、お医者さんにも、何度も念を押されてる。あと、保険も効かないから、高いんだ」
「でも、今にでも始めたいんだろ?」
「うん。でも、最初に言った理由から、成人するまで、様子見なんだ」
また、ため息をついてしまう。
「それと、お医者さんが慎重な理由は、やっぱり、手術が命がけってことかな」
「命がけ!」
タケルくん、びっくり。
「MTFの性転換手術って、二種類あるんだけど、比較的簡単な方でも、股のど真ん中に、結構深い穴開けるからね。もう片方のなんか、難易度も危険度も、もっと高いよ」
タケルくん真っ青。
「お前、ハードな世界に生きすぎだろ……」
「そうだね。ボク、TVじゃなくて、やっぱりGIDだと思うんだよね。この体、嫌で仕方ないから」
じっと、自分の股間を見つめる。
すると、タクルくんが立ち上がり、背後から抱きしめてきた。
「オレ、絶対お前を幸せにする! 約束する!」
「ありがとう」
抱きしめる手に、そっと触れる。
産まれる時、神様が、心と体がちぐはぐでないようにしてくれてたら、こんな苦労しなくて済んだんだろうな。
でも、そうだったら、タケルくんにとって、ただの生徒の一人に過ぎず、恋人になってなかったかも知れない。
運命って、ほんと不思議。
ボクの最大の哀しみ。それは、タケルくんの子どもを、産んであげられないこと。
今の医学では、どうしようもないらしい。
なってみたかったな。お母さん。
生理って毎月大変らしいし、出産は命がけらしいけど。
それでも。
つい、涙がこぼれてしまう。
「お前……泣いてる?」
「ゴメン、ちょっとね。すぐ、収まるから」
指で拭いながら、笑顔を作ろうとする。
彼まで、悲しい顔をするのは嫌だ。
そんなボクの涙を、キスで拭うタケルくん。やっぱりきざだよ、キミ。
「泣かないでくれ、とは言わない。多分、誰にもどうしようもなく、泣きたいことで悩んでるんだなって思うから。こんなことしか、できないけど……」
互いに、唇を求め合う。
そして、キス。
静かに、過ぎていく時間。
入学式の時、さっそくボクはからかわれた。そして、必殺のげんこつを、そいつに叩き込んだタケルくん。
彼がいなかったら、ボクの小学校生活は、仄暗いものになっていただろう。
ボクの、ナイト、灯火、太陽……。
どんな言葉でも、言い尽くせない、素敵な人。
大好きだよ。心の底から。
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