【男の娘BL】ボクと彼の、はじめてだらけの恋物語!

みなはらつかさ

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エピソード3 ボクたちの初手作り弁当

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 うーん……マリルリが被っちゃった。どうしようかな。

 ただ今、タケルくんのおうちで、ポケモン対戦中。

 やっぱりタケルくん強くて、負けっぱなし。

 もっとも、ボクはかわいいポケモンたちが見たいって感じで、勝ち負けには、あまりこだわってないのだけど。

 でも、五連敗はちょっと負け過ぎだな……。

 よし、ライチュウがんばって!

 あー! ダグトリオ! 読み負けた~。

 ……なんてやってると、お腹が空いてきました。

 時計を見ると、もうお昼。早いなー。

「ねえ、お昼にしない?」

「あ。もうそんな時間か。わりぃ、気が利かなくて。おふくろが作ってくれたの、レンチンしてくるな」

「待って! じゃじゃーん!」

 立ち上がろうとする彼に、マリルリ袋を取り出し、見せる。

「ひょっとして……」

「ひょっとするよー。じゃじゃじゃーん!」

 マリルリお弁当箱×2!

「おお~! 手作り弁当!?」

「うん! 頑張ったよ~」

「すっげー! 恋人の手作り弁当とか、男子超憧れイベントじゃん! おふくろのは、晩飯にして、弁当食おう!」

 ふふ。彼氏にお弁当手作りも、女子ならではだね!

 今どきこういうこと言うと、文句言う人とかいそうだけど。ボクと彼で意見が合ってるんだから、いいじゃない。

 それはともかく。お弁当箱を取り出して、二人で「いただきます!」と開封。

 すると、「う」と、タケルくんが、小声でうめきます。

「どしたの!? なんか、変なの入ってた!?」

「いや、すごくいい弁当だと思う、うん。ただ……笑わないか?」

「約束する。そんなこと、絶対しない」

 挙手宣誓。

「ピーマン、駄目なんだ。コドモっぽいだろ?」

「そんなことない! 誰だって、苦手の一つや二つあるよ!」

 ぶんぶんと、首を横に振る。

「嫌なら、残していいよ」

「いや、そんな、お前にもピーマン農家さんにも失礼なこと、できっかよ。ちゃんと食う!」

 彼がお弁当に箸をつけ始めるので、ボクも食べ始める。

 少しずつ食べるボクに対し、タケルくんは、ぱくぱく勢いよく食べていく。いいなー、こういう男の子なムーブ。見てて、嬉しくなる。

 アスパラベーコンやナゲットを片付けていき……彼のお弁当箱に残るは、ラスボス、ピーマンの肉詰め。

 箸を持ったまま、固まるタケルくん。

「ほんと、無理しなくていいよ?」

「男は勇気!」

 ぱくっ! いったー!

 ちょっと顔をしかめつつも、ごくんと食べ下す。

「ふー。ごっそさんでした」

 合掌する彼。

「どういたしまして」

「料理上手いなー、お前」

「夏休みとかは、ボクが料理当番だからね。お父さんと、お母さんの分も、作ってるんだー」

「へー! すごいな! オレ、料理できないから、尊敬しちゃうぜ!」

「えー? それほどでもー」

 照れて、後頭部を撫でる。

 うち、共働きだから、ボクもなにか手伝えないかなって、早起きして、朝晩とお弁当毎日作ってたんだけど、両親に無理しないでいいよって心配されて。

 そしたら、案の定、授業中居眠りしちゃって。先生に怒られたけど、事情を話したら許してもらえたものの、三者面談。

 どうしても続けたいって、ボクが食い下がって、話し合った結果、夏休みや冬休みの間だけにしましょうって、決まったんだよね。

「でも、正直ピーマンどうだった?」

「ただのハンバーグだったら、完璧だったなーってのが正直な感想かな……。ゴメンな、せっかく作ってもらったのに」

「ううん。ちゃんと好き嫌い訊いておかなかった、ボクが悪かったよ。タケルくん、無敵だと思ってて」

「無敵って」

 ぷっと吹いてしまう彼。

「だってー。それぐらい、憧れてたんだもん」

「幻滅したか?」

 ちょっと、自信なさそうにする。

「しないよ。ピーマン食べれなくても、タケルくんは、ボクの憧れ! ……ただ、ピーマン、もう一回だけリベンジさせてもらいたいな」

「ええー!?」

「ポケモンで負けても悔しくないけど、なんかこれは敗北感があって……。お願い! これで駄目だったら、二度とピーマン入れないから!」

 頭を下げる。

「うーん、そこまで言うなら……」

「ありがとう!」

 微笑んで、食事を再開する、ボクでした。

 そして、翌日。今度は、ボクの家で。

「じゃん! 今度は、中華弁当だよっ!」

 焼売、回鍋肉、そして青椒肉絲のお弁当!

「あれ? ピーマンは?」

 青椒肉絲をほじるタケルくん。

「入ってるでしょ。赤いのが」

「赤ピーマンか! ……赤いと、そんなに変わるのか?」

「まま、食べてみて」

 青椒肉絲を、ぱくっといく彼。

「お? あんま苦くない……」

「緑ピーマンが完熟すると、赤ピーマンになって、苦みが減るんだ。あと、縦切りにすると、苦味成分が出にくくなるんだよ!」

「へー。ん、美味い、美味い! お前、マジで料理の天才だよ!」

「もー、褒めすぎ~。嬉しいけど~」

 ぱくぱく、青椒肉絲を食べ進めるタケルくん。

 作戦大成功! やったね!
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