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第三十二話 六月十七日(日) レィナちゃんとユシャンちゃんがラブラブで幸せ!

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 今日は祝日。とは言っても、ケーキ屋さんである我が家は普通に営業中。

 まだケーキをお客さんにお出しできるほどの腕前ではないので、店のお掃除で貢献!

 お菓子作りに精を出すお父さんたちに代わり、窓の拭き掃除や、床の掃除。

「ユーちゃん」

 お父さんが、ひょっこりこちらへやって来ました。

「そろそろ出ないと、レィナちゃんの試合、間に合わないんじゃない?」

 うっかりしてた! 今日は、レィナちゃんの晴れ舞台!

 急いで支度しないと!

「はい、お茶とお弁当」

「ありがと!」

 お母さんから、それらと交通費を受け取り、慌ててバス停へGO!


 ◆ ◆ ◆


「レィナちゃん、遅くなってゴメン! ……って、ウォームアップ中か」

 よく見ると、レィナちゃんはレーンの脇で準備運動をしていました。

「こんちゃ」

「こんにちは」

 ユシャンちゃんとエレンちゃんから挨拶されるので、「こんにちは」とご挨拶返し。

 それにしても、カーリング場は冷えるねえ。厚手の一枚羽織ってても、まだちょっと寒い。

「もうすぐ、始まるよ」

 ユシャンちゃんが言うので見てみると、各選手、レーン中央に集まっている。

 そして、それぞれ配置につく。

 レィナちゃんチーム先手で第一投。後手を取れなかったのは辛いな。

 ゲームはやはり後手有利に進んでいき、三点取れば勝ちだけど、と言う状態。

 しかし、カーリングで三点はとても高い壁。

 果たして、レィナちゃんチームは

 一点差で敗北してしまいました。

「か~! 負けたー!」

 健闘を称え合い、反省会を済ませると、悔しそうに天を仰ぎながら、レィナちゃんがこっちにやってきました。

 さっそく、ホットレモネードで暖を取る彼女。

「お疲れ。負けたけど、かっこよかったよ」

「うんうん!」

 みんなで励ます。

「あんがとな。腹減ったわ」

「あ、これ約束の……」

 ユシャンちゃんがお弁当箱を出す。

「唐揚げと、ごはんは冷えるとあんまよくないから、サンドイッチにした」

 あらま! 愛妻弁当!

「お、やっぱ、運動の後はチキンだよな! サンクス!」

 美味しそうに食べる彼女。

「あたしたちも、いただこうぜ」

 自分のお弁当を取り出し、提案する。

 というわけで、もぐもぐタイム。

 愛妻弁当か~。わたしも、エレンちゃんに作ろうかな~。

「ねえ、ユーに愛妻弁当、作っていいかな?」

 ほえ!? 先手を打たれました!

「だったら、わたしも! 交換しよ!」

「いいね」

 ミステリアスな笑みを浮かべる。はぅん、ほんとそれ弱いの~。

「あ、そうだ。ユシャン、勝利の女神のキスくれよ」

「食事中だぞ?」

「いいじゃん」

 二人で、キス! ひょー! だいたーん!!

 さすがに、ディープじゃないけど。

「サンキューな。これで、次は勝てる気がするわ」

 ほえ~。なんともオープンな……。

「ユー、わたしたちもする?」

 ひょわ!?

「あうー……そのー……」

 ダメだ、ミステリアスな笑みに逆らえない。

「軽く、ね」

 ちゅっ。

 はうう、恥ずかしい~!

 なんだかもったいなくて、しばらく飲み物で流すのがためらわれました。

 その後、少しおしゃべりを楽しむものの、何分寒いので、引き上げることに。

 レィナちゃんは試合で疲れているので直帰。わたしも、お店のお手伝いがあるので、名残惜しくもエレンちゃんとお別れ。くすん。

 そんなわけで、ユシャンちゃんとバスで揺られています。

「なんていうか、ユシャンちゃんが幸せそうで良かった」

 心からの気持ちを打ち明ける。

「ん。レィナがほんと良くしてくれてさ。気づいたら、失恋の痛みもなくなって、夢中になってた」

「ゴメン」

「謝んなし。結果オーライだよ。今じゃ、ユーに振られたおかげで、レィナとこんなにラブラブで、ありがたいなって思ってるし」

 何か、フクザツな気分。

「人生って、読めないね」

「だな」

 小学生にして、そんなことを悟り、バスを降りるのでした。
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