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第二十話 五月二十一日(水) ピクニックで、幸せ!

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「ユーちゃん、お手紙来てるわよー」

 おりょ。お母さんから、封書を手渡されます。送り主はアユムさん。

 部屋に戻って封を開けると、こんな内容が。

「ユーフラジーさん。近々会いませんか? ボクは、お父さんが、どうしても一人で行かせたくないと言うので、火曜日が都合良いのですが、いかがでしょうか?」

 アユムさんは、今までの情報から、ルンドンベアに住む女子中学生らしいとわかっている。嘘か真か、それはわからないけど。

 わたしのほうも、アスティアル住まいの女子小学生だと、情報を明かしてあるけど、アユムさん視点、これも嘘か真かわからないことでしょう。互いに、変なおじさんが相手だったら困るからね。

 そこで、保護者同伴というわけで。

 下に降りて、お父さんに同伴の許可を得ると、「そういうことなら」と、快く同意してくれました。

 アユムさんのご家族も、火曜がフリーで、うちとちょうど重なってるのが良かった。今度の火曜日を指定して、封書をしたためます。明日、登校時に出さないと。

 アユムさんからのお返事、楽しみ!


 ◆ ◆ ◆


「なー。今度の土曜、みんなで遊ばねー?」

 翌お昼、レィナちゃんが、そう提案してきました。

「また、レィナのねーちゃん同伴?」

 ユシャンちゃんが、肩をすくめる。

「んにゃ。学校そばの市民公園だから、うちらだけ。どう?」

「だったら、堅苦しくなくていいかな」

 と、ユシャンちゃん。

「わたしも、大丈夫だと思う! エレンちゃんは?」

「私も大丈夫かな。まだ、予定入れる前だったし」

「よっし、決まり! じゃー、お昼に弁当持って、南門集合な」

 レィナちゃんが、パチンと指を鳴らす。

 そして、放課後。

「そっちも、上手くやれよ」と、肩をポンと叩いて去る、レィナちゃんでした。


 ◆ ◆ ◆


 そして、来ました土曜日!

 自作のサンドイッチ弁当片手に、おめかしして、公園南門へ! ユシャンちゃんには、何か声がかけづらくて、一人で来ちゃいました。一番乗りかな?

 あ、ユシャンちゃんだ。

「ユー! ひと声かけてくれよな!」

「ごめん。なんか、声かけづらくて」

 しゅんとする。

「いや、まあ、気持ちはわかるけど……」

「ごめんね、これからは気をつける」

 出だし、ぎくしゃく。やりにくいな。

「レィナちゃんと、最近よく一緒みたいだね」

 知ってて、そう話しかけてみる。

「あ、ああ、うん。最近、色々良くしてくれてさ、あいつ」

 二人の仲は、順調みたいだね!

「そか。レィナちゃんなら、ユシャンちゃん幸せにしてくれると思うよ」

「な……なんだよ、やぶからぼーに……」

 ちょっと、押しが強すぎ&唐突すぎたかな? 微笑んで誤魔化しておこう。

「あ、噂をすれば、レィナちゃん」

 噂の中心人物が、ダッシュでこっちに向かってきます。

「悪い! 言い出しっぺなのに!」

「そんなに待ってないから、気にしないで」

「ん。気にすんな」

 肩で息をしてる彼女に、気配り。

 そうこうしてると、エレンちゃんもやって来ました。

「ごめんなさい、ちょっと、服選びに手間取っちゃって」

「女の子なら、それは仕方ないね! ね?」

 他の二人にも、念を押す。「お、おう」と納得してくれるのでした。

 さっそく、いい感じの木陰を物色。

「ここ、いいんじゃない?」

「たしかに。ここにすっか」

 レィナちゃんが、ピクニックシートを敷きます。

 そして、輪になって、着座。

「いい天気だねー」

「だな。たまには、こうしてまったりってのも、いいもんだ」

 自前の烏龍茶を、すするユシャンちゃん。

「アタシのアップルティー一杯と、それ、交換してくれね?」

「ええ? 飲みさしだぞ」

「女同士だし、いいじゃん」

 と、レィナちゃんグイグイ! その調子!

「エレンちゃん。私たちも、交換しよ」

「ひょえ!? 間接キスはちょっと……さすがに」

「じゃあ、そのカップに入れてあげる」

 まだ空の私のカップに絵恋ちゃんのコーヒーを、エレンちゃんに私のミルクティーを、彼女のカップにれ合う。

「にがっ」

 ブラックなので、思わずそう言ってしまう。

「無理しなくていいよ?」

「ううん、せっかくだから」

 大人の階段登る! コーヒー飲んで、大人になれたら、苦労ないけどね。

「ユーのミルクティー、美味しい」

「ありがとう。それ、自分でれたんだよ」

「そうなんだ。ほんとに美味しいよ」

 うふふ、嬉しい。私たちの間を、心地よい春の終わりの風が、駆け抜ける。

「ふう、烏龍茶ごちそうさま。じゃあ、弁当にすっか!」

 レィナちゃんの号令に、一同、「はーい」。ぱかっと、可愛い手作りサンドイッチ弁当が出現~!

「わ。ユーの、かわいいね」

「ユシャンちゃんのおにぎりも、美味しそう」

「交換する?」

 「いいね」と、ユシャンちゃんとサンドイッチとのトレード成立。最近、こういう友達ムーブ希薄だったから、嬉しいな。

「ユー。私とも、なにか交換しない?」

「じゃあ、ナゲットと、わたしの何かをどーぞ」

「それじゃ、アスパラのベーコン巻きもらうね」

 エレンちゃんとも、おかずトレード成立。レィナちゃんとも、ミニハンバーグとアスパラベーコンをトレード。

 楽しいなあ。なんか、久しぶりにほっとする一日だ。

「レィナちゃん。誘ってくれて、ありがとうね」

「おう! 楽しいよな!」

 みんなで、カーリングのこととか、テレビのこととか、様々な話題をおしゃべりする。


 ◆ ◆ ◆


「さすがに、ちょっと肌寒くなってきたな」

 レィナちゃんに言われて気づけば、たしかにちょっと肌寒い。ずいぶん、おしゃべりに夢中になってたみたい。

「解散すっか!」

 一同賛成し、ピクニックはお開きになりました。

「ユー、一緒に帰ろ」

「うん」

 ユシャンちゃんと、お手々つないで帰宅。

 そこには、もう、気まずさはありませんでした。
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