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第六十一話 十月十二日(木) 念願の十三歳!

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「今日はありがとう、みんな!」

 ククの家で、再びお誕生会。その主役は、ボク! ついに、ついについに! 夢にまで見た、十三歳になったのです!

 今回も紙の輪飾りがそなえ付けられ、テーブルには、でん! と今度はチョコクリームのショートケーキ!

「すごいねー、クク! これ、一人で作ったの? 学校あったのに、大変だったでしょ?」

「まあ、ずいぶん早起きしたけど、大親友のためだもんよ! 頑張ったぜ!」

「ほんと、ありがとう!」

 十三本のろうそくの、なんと感動的なことか!

「じゃあ、いくよ! ふーっ……!」

 火がすべて消える。

「アユム、誕生日おめでとう!!」

 みんなから、拍手をもらう。ああ、二度の人生で、最良の日だ!

「ねえ。ボクのために、歌ってほしい歌があるんだ。前世の歌だから、一回ボクが歌うね」

 『ハッピーバーデー・トゥー・ユー』を歌う。前世の誕生日では、おなじみだった歌。前世でも、十三回聴きたかった歌。ボクはこの世界で、やっと十三回目のこの歌を、大切な友達たちから、耳にするんだ。

「お誕生日おめでとうって、そのまんまな歌なんだけど。どうかな? 歌えそう?」

 前世の言葉だから、ここ、ラドネスブルグの言葉ではない。

「簡単な歌詞だから、意味はわかんなくてもいけると思う」

 バーシの言葉に、凸凹カップルもうなずく。

「じゃあ、お願い」

 みんなが、『ハッピーバースデー・トゥー・ユー』を歌ってくれる。ちょっとたどたどしいけど、嬉しい!

「ハッピーバースデー、トゥーユー……」

 再度、三人から拍手。

「ありがとう! ほんとにありがとう、みんな!」

 ぺこりとお辞儀。ちょっと、涙出ちゃった。

「じゃ、ケーキ切り分けていいかな?」

「おねがい」

 ククの手で、ケーキが、みんなのお皿に載せられる。

「いただきます!」

 ぱくっ……。んん! ククのお母さんのに、負けず劣らずおいしい!

「おいしい! おいしいよ、クク!」

「お褒めに預かり、光栄だぜ」

「ほんと、いいお嫁さんになれるよ~。シャロン、やったね!」

 サムズアップ。

「へへ~。結婚したら、姉さんのおいしいごはん、食べ放題っす~」

「ばっ……おめー、照れるじゃねぇか……」

 もじもじするクク。ふふ。

 ケーキもおいしく食べ終わり、プレゼントお渡し会。

「色々悩んだ末に、三人でお金出しあって買ったんだけど……」

「なになに?」

 包装紙を開けると、左右にバンドが付いた、金属の棒が出てきた。

「あっ! これ、雑誌広告で見たことある!」

 確か、バンドを引っ張ったり、棒を押し込んだりして使う筋トレグッズだ!

「アユムって、基本、下半身ばっか鍛えてるでしょ? これ使ったら、上半身も鍛えられるかなって」

「ありがとう! これ、ほしかったんだ~!」

 思わず頬ずり。

「喜んで、使わせてもらうね!」

 サイコーに、上機嫌!

 その後は、ククの部屋で、談笑。ユーフラジーは、ガブくんの隣に、ちょこんと座っていました。

 そして、帰宅時間。

「こないだのバーシじゃないけど、ボクもこの日を一生忘れない! ほんとにありがとう!」

 凸凹カップルに別れを告げ、バーシと手をつないで、バスに揺られるのでした。


 ◆ ◆ ◆


 自宅前に到着。

「アユム。今度は、家族に祝ってもらう番だね!」

「うん。一昨日、気まずくなっちゃったばかりだから、かなり不安だけど……」

「おじさんたちを信じてあげなって! 絶対、大喜びでお祝いしてくれるよ!」

 トン、と胸を叩かれる。

「だといいな、へへ……」

 期待半分、不安半分。

 そのまま裏口まで一緒に歩いて行き……。

「アユム」

 目をつぶり、ちょんちょんと、自分の唇をつつくバーシ。

「うん……」

 そっと、お別れのキス。あまり本格的にやる空気でもないから、軽く。

「じゃあ、また明日!」

 手を振って、自宅に戻る彼女。ボクもドアを開け、帰宅するのでした。
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姉妹作⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/132755025(完結)  他長編「神奈さんとアメリちゃん」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/663488280(完結)「小市民魔導剣士、冒険しつつ異世界を食べ歩く!」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/440658351(完結)「〈社会人百合〉アキとハル」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/968690065(完結)「自称・漆黒の堕天使が異世界を改革するようです」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/635743463(完結)
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