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第五十九話 十月十日(火) カムアウト!
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今日もヤマト街に繰り出して、帰宅。こないだから、話そう話そうと思っていて、話せなかったことに、やっと決心がついた。
「ええと、家族のみんなに、打ち明けたいことがあります。ちょっと、集まってほしいんだ」
お父さんたちが、なんだなんだと、ボクに招かれるままに、ダイニングに集まる。
「あのね……。ボク、バーシと付き合い始めた。恋人として」
えーっ! という絶叫に包まれる一同。
「本気か、アユム」
おじいちゃんが、困惑を絵に描いたような顔で尋ねてくるので、こくりと頷く。脱力するおじいちゃん。
「冗談でしょう?」
おばあちゃんも困惑。今度は、首を横に振る。
「はあ……。仲がいいのは結構だが、そういう関係とは……」
お父さん、頭を抱えて下を向いちゃった。
「お母さん、こないだの夜遊びで、ちょっと臭いなーと思ってたけど、ほんとにそうだったなんて……」
この中では一番理解のありそうなお母さんも、ショックは隠せないようだ。
でも、一番ショックを受けてるのは……。
「お姉ちゃんのバカ! なんで私じゃないの!?」
ハーちゃん、ボロボロと涙をこぼして、怒り泣き。
「ハーちゃん。お母さんと約束したでしょ。ボクとハーちゃんはね、そういう仲には……」
「うっさい、バカーッ!」
乱暴に立ち上がり、そのまま駆け出してしまう。
「おい、ハーちゃん!」
お父さんとお母さんが、慌ててあとを追いかける。
「アユム、その、考え直す気はないのかい?」
力なく、尋ねてくるおじいちゃん。
「うん。ボク、今サイコーに幸せ。誰に言われても、友達に戻るつもりはないよ。キスも済ませたし」
「キッスだと!? ああ……ちょっと、休んでくる」
おじいちゃん、去ってしまいました。
「イクゼさん……。はあ……。孫の顔、見たかったけどねえ」
おばあちゃんも、顔が渋い。
「それについては、本当にごめんね。前世だと、女同士で子供作れる技術があったんだけど。だから、結婚したら養子でも取るよ」
「簡単に言ってくれるねえ……。ちょっと、イクゼさんが心配だから、見てくるわ」
ボク一人になっちゃった。
ハーちゃんが気になるな。こういうとき、ハーちゃんが行くところといえば……。
二階へ上がるための階段に向かう。
あ、やっぱり。お父さんと、お母さんがいた。
「ハーちゃん、出てきて」
「しょうがない、鍵を持ってこよう」
二人が、階段下の扉に呼びかけている。ちょっとした物置であるここは、内側から鍵がかけられるようになっていて、ハーちゃんが泣きそうになったり、癇癪を起こしたりすると、立てこもるのがおなじみのパターン。
電気が点くので、暗がりが苦手なハーちゃんでも耐えられる。
「お父さん、お母さん。無理やり引きずり出しても、解決にならないよ」
「アユム、お前ねえ……。他人事みたいに」
眉をひそめるお父さん。
「ごめん。ここまでショックを与えるとは、思ってなかったんだ。ボクの考えが甘かったと思う。だから、ボクが説得してみるよ」
扉の前に座る。きっと、ハーちゃんもしゃがみ込んでいるはずだから。
「おじいちゃんとおばあちゃん、相当ショックだったみたい。お父さんたちは、二人のところに行ってあげて」
「ああ……。行こう、お母さん」
二人が行くと、ハーちゃんのすすり泣きが、扉越しにかすかに聞こえてくる。
「ハーちゃん。ごめんね。ハーちゃんがどうしようもなくボクを好きなように、ボクもバーシがどうしようもなく好きなんだ。そして、ボク、ハーちゃんのことも、どうしようもなく好きだよ。ある意味、姉妹じゃなければ良かったなって思うぐらいに。姉妹じゃなければ、恋愛関係になれたかもしれないのにね」
すすり泣きが、少し弱まった気がする。
「じゃあ、バーシお姉ちゃんと別れてくれる?」
「ごめん、それだけはできない。さっきも言ったように、どうしようもなく好きなんだ。ハーちゃんは、バーシ嫌い?」
「さっき、嫌いになった……」
ふう、とため息を吐く。幸せ一つ、さようなら。
「本気じゃないよね? 今まで、仲良く遊んでたもん。嫌いになったなんて嘘だ。ハーちゃん。ボクらは、姉妹愛以上の関係になっちゃいけないんだ。お母さんとも、手を挙げて約束したよね。でも、だからこそバーシにはなれないことがひとつあるよ。それは、ボクと血の繋がった家族であること」
ひと息入れる。
「たとえば、結婚してバーシがこの家に入ってきたとして、彼女はあくまでも他人なんだ。きっと、なんていうのかな。アウェー感がつきまとうと思う。でも、ハーちゃんとは、ずーっと家族のままだ」
扉に呼びかけ続ける。ハーちゃんは今、どんな気持ちで聞いているのだろう。
「逆に、ボクが向こうの家に行っても、ハーちゃんとは家族のままでいられる。ボク、あまり口が上手くないから、これが精一杯だ。ここで、ハーちゃんが落ち着くまで、待ってるよ」
無言の時間が過ぎていく。心配したお父さんが様子を見に来たけど、そっとしておいてもらうように、手で制する。
カチャリ。
扉が開き、愛しのハーちゃんが顔を覗かせる。
「ありがとう、ハーちゃん。わかってくれて」
「抱きしめて」
「うん」
わんわん泣くハーちゃんを抱きしめ、優しく背中を、とんとんと叩き続けるのでした。
ボクとバーシの関係について、家族が完全な理解を示してくれるには、まだ時間がかかりそうだ。
でも、きっとわかってくれると信じている。だって、ボクの最高の家族だから!
「ええと、家族のみんなに、打ち明けたいことがあります。ちょっと、集まってほしいんだ」
お父さんたちが、なんだなんだと、ボクに招かれるままに、ダイニングに集まる。
「あのね……。ボク、バーシと付き合い始めた。恋人として」
えーっ! という絶叫に包まれる一同。
「本気か、アユム」
おじいちゃんが、困惑を絵に描いたような顔で尋ねてくるので、こくりと頷く。脱力するおじいちゃん。
「冗談でしょう?」
おばあちゃんも困惑。今度は、首を横に振る。
「はあ……。仲がいいのは結構だが、そういう関係とは……」
お父さん、頭を抱えて下を向いちゃった。
「お母さん、こないだの夜遊びで、ちょっと臭いなーと思ってたけど、ほんとにそうだったなんて……」
この中では一番理解のありそうなお母さんも、ショックは隠せないようだ。
でも、一番ショックを受けてるのは……。
「お姉ちゃんのバカ! なんで私じゃないの!?」
ハーちゃん、ボロボロと涙をこぼして、怒り泣き。
「ハーちゃん。お母さんと約束したでしょ。ボクとハーちゃんはね、そういう仲には……」
「うっさい、バカーッ!」
乱暴に立ち上がり、そのまま駆け出してしまう。
「おい、ハーちゃん!」
お父さんとお母さんが、慌ててあとを追いかける。
「アユム、その、考え直す気はないのかい?」
力なく、尋ねてくるおじいちゃん。
「うん。ボク、今サイコーに幸せ。誰に言われても、友達に戻るつもりはないよ。キスも済ませたし」
「キッスだと!? ああ……ちょっと、休んでくる」
おじいちゃん、去ってしまいました。
「イクゼさん……。はあ……。孫の顔、見たかったけどねえ」
おばあちゃんも、顔が渋い。
「それについては、本当にごめんね。前世だと、女同士で子供作れる技術があったんだけど。だから、結婚したら養子でも取るよ」
「簡単に言ってくれるねえ……。ちょっと、イクゼさんが心配だから、見てくるわ」
ボク一人になっちゃった。
ハーちゃんが気になるな。こういうとき、ハーちゃんが行くところといえば……。
二階へ上がるための階段に向かう。
あ、やっぱり。お父さんと、お母さんがいた。
「ハーちゃん、出てきて」
「しょうがない、鍵を持ってこよう」
二人が、階段下の扉に呼びかけている。ちょっとした物置であるここは、内側から鍵がかけられるようになっていて、ハーちゃんが泣きそうになったり、癇癪を起こしたりすると、立てこもるのがおなじみのパターン。
電気が点くので、暗がりが苦手なハーちゃんでも耐えられる。
「お父さん、お母さん。無理やり引きずり出しても、解決にならないよ」
「アユム、お前ねえ……。他人事みたいに」
眉をひそめるお父さん。
「ごめん。ここまでショックを与えるとは、思ってなかったんだ。ボクの考えが甘かったと思う。だから、ボクが説得してみるよ」
扉の前に座る。きっと、ハーちゃんもしゃがみ込んでいるはずだから。
「おじいちゃんとおばあちゃん、相当ショックだったみたい。お父さんたちは、二人のところに行ってあげて」
「ああ……。行こう、お母さん」
二人が行くと、ハーちゃんのすすり泣きが、扉越しにかすかに聞こえてくる。
「ハーちゃん。ごめんね。ハーちゃんがどうしようもなくボクを好きなように、ボクもバーシがどうしようもなく好きなんだ。そして、ボク、ハーちゃんのことも、どうしようもなく好きだよ。ある意味、姉妹じゃなければ良かったなって思うぐらいに。姉妹じゃなければ、恋愛関係になれたかもしれないのにね」
すすり泣きが、少し弱まった気がする。
「じゃあ、バーシお姉ちゃんと別れてくれる?」
「ごめん、それだけはできない。さっきも言ったように、どうしようもなく好きなんだ。ハーちゃんは、バーシ嫌い?」
「さっき、嫌いになった……」
ふう、とため息を吐く。幸せ一つ、さようなら。
「本気じゃないよね? 今まで、仲良く遊んでたもん。嫌いになったなんて嘘だ。ハーちゃん。ボクらは、姉妹愛以上の関係になっちゃいけないんだ。お母さんとも、手を挙げて約束したよね。でも、だからこそバーシにはなれないことがひとつあるよ。それは、ボクと血の繋がった家族であること」
ひと息入れる。
「たとえば、結婚してバーシがこの家に入ってきたとして、彼女はあくまでも他人なんだ。きっと、なんていうのかな。アウェー感がつきまとうと思う。でも、ハーちゃんとは、ずーっと家族のままだ」
扉に呼びかけ続ける。ハーちゃんは今、どんな気持ちで聞いているのだろう。
「逆に、ボクが向こうの家に行っても、ハーちゃんとは家族のままでいられる。ボク、あまり口が上手くないから、これが精一杯だ。ここで、ハーちゃんが落ち着くまで、待ってるよ」
無言の時間が過ぎていく。心配したお父さんが様子を見に来たけど、そっとしておいてもらうように、手で制する。
カチャリ。
扉が開き、愛しのハーちゃんが顔を覗かせる。
「ありがとう、ハーちゃん。わかってくれて」
「抱きしめて」
「うん」
わんわん泣くハーちゃんを抱きしめ、優しく背中を、とんとんと叩き続けるのでした。
ボクとバーシの関係について、家族が完全な理解を示してくれるには、まだ時間がかかりそうだ。
でも、きっとわかってくれると信じている。だって、ボクの最高の家族だから!
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