48 / 63
第四十八話 九月三十日(土) バーシムレ
しおりを挟む
コイビトか~……。
ベッドにボフッと倒れ込み、疲れた体を休めつつ、柔らかな感触を味わう。
家が隣だったし、家族ぐるみの付き合いもあったから、自然と仲良くなった女の子。
ボクが小学校に上がるか上がらないかという頃に、前世の記憶が戻ってしまい、大混乱する中、実の親も含め、周りの大人たちは心配こそすれど、記憶の混乱とお医者様にも言われ、信じてくれなかった。
そんな中、たった一人、心の底から信じてくれた君。
この世でただ一人の、ボクの完全な理解者。
思春期を迎えると、君の何気ない仕草にドキッとすることが、何度もあった。
ボクは、やっぱり本質的に男の子なのだろうか?
そんな疑問をいだき始めていた頃、学校の授業で、ジェンダーの問題について教わった。同性を好きになるのは、おかしなことではないと。
でもそれは、ますますボクを混乱させた。ボクは、女なのか、男なのか、ナニモノなのだろうかと。
この問題は、バーシにも家族にも、教師にもどうにもできなくて、一人で悩む日々が続いた。
そしてあるとき、「心の奥底を十%ぐらい、前世の男の子が間借りしている」という、自分なりの結論を得た。
これが、正しい理解なのかはわからない。
ただ、はっきりと言えるのは、女装やメイクこそ未だに抵抗があるけど、ボクは自分が女であることは嫌ではないし、決して男ではないということ。
それだけは、なんというか、魂で理解できる。前世の男の子は、心の奥底でボクに色々影響を与えているけれど、ボクから主導権は奪っていない。
その上で、バーシが好きだ。だから、これは精神的にも同性愛なんだ。
バーシ。明るくて。優しくて。……ちょっと変わっていて。そんな彼女が、好きで、好きで、大好きで。
一歩進んだ関係を、周りに打ち明けたらどうなるだろう。
お母さんは、なんだかんだで受け入れてくれそうだな。お父さんと、おじいちゃん、おばあちゃんはショックを受けるかもしれないな。
ククとシャロンは、祝福してくれると思う。ほかのクラスメイトは、どうかな? ちょっと、予想がつかない。
バーシと電話で話したいな。でも、おじいちゃんとかに聞かれたら、どうしよう。
こんなとき、この世界にもスマホがあったらなあと思う。そしたら、二人でこっそり、とりとめのない会話を、いつまでもできるのに。
体は疲れてるのに、興奮して、全然、気も体も休まらない。
バーシ! バーシ! バーシ!!
ボクの、大切な人! 愛しくて、愛しくて、心の底から愛しくて!
ベッドの上で、枕に顔を埋めながら、ジタバタともんどり打つ。
そうだ、手紙を書こう! 封をしてしまえば、さすがにおばさんたちも、勝手に読むようなデリカシーのないこと、しないだろうし。
さっそく、机に座り、便箋とペンを取り出す。
どんな出だしにしよう。「愛しいバーシへ」……恥ずかしいし、なんかガラじゃないな。
「親愛なるバーシへ」……今度は、妙に堅苦しくなってしまった。書き直し。
「大好きなバーシへ」……うん、これでいこう。
こつこつと、ときに悩んだり、消しゴムをかけたりしながら、ラブレターを書き進めていく。
……書けた! 読み直してみると、我ながら小っ恥ずかしいことが、たくさん書かれている。
でも、これが今の正直な気持ちなんだから、仕方ない。
明日、ククとの散歩に行く前に、向こうの郵便受けに入れていこう。
ボクたちの関係は、まだ話さない。それは、バーシの同意を得てから。
ボク、ククに対して、態度隠しきれるかな。ちょっと、自信ない。
書くもの書いて封もしたので、再びベッドに横たわる。ちょっと、勉強の予習・復習って気分じゃない。
ああ、恋って、こんなにドキドキ、ソワソワするものなのか。
ボクらの新たな関係は、今までの延長線。でも、恋なのだという自覚を持つだけで、こんなに違うなんて。
なんだか体が火照るので、窓を開けると、寒気がびゅうと飛び込んでくる。
お月様がきれいだ。
そういえば、ボク、お日様にはいつも感謝してるけど、お月様にはしたことないな。
「お月様、ありがとー!」
明日は、きっといい日だ! その次も、そのまた次も、きっと!
バーシ、愛してる!!
ベッドにボフッと倒れ込み、疲れた体を休めつつ、柔らかな感触を味わう。
家が隣だったし、家族ぐるみの付き合いもあったから、自然と仲良くなった女の子。
ボクが小学校に上がるか上がらないかという頃に、前世の記憶が戻ってしまい、大混乱する中、実の親も含め、周りの大人たちは心配こそすれど、記憶の混乱とお医者様にも言われ、信じてくれなかった。
そんな中、たった一人、心の底から信じてくれた君。
この世でただ一人の、ボクの完全な理解者。
思春期を迎えると、君の何気ない仕草にドキッとすることが、何度もあった。
ボクは、やっぱり本質的に男の子なのだろうか?
そんな疑問をいだき始めていた頃、学校の授業で、ジェンダーの問題について教わった。同性を好きになるのは、おかしなことではないと。
でもそれは、ますますボクを混乱させた。ボクは、女なのか、男なのか、ナニモノなのだろうかと。
この問題は、バーシにも家族にも、教師にもどうにもできなくて、一人で悩む日々が続いた。
そしてあるとき、「心の奥底を十%ぐらい、前世の男の子が間借りしている」という、自分なりの結論を得た。
これが、正しい理解なのかはわからない。
ただ、はっきりと言えるのは、女装やメイクこそ未だに抵抗があるけど、ボクは自分が女であることは嫌ではないし、決して男ではないということ。
それだけは、なんというか、魂で理解できる。前世の男の子は、心の奥底でボクに色々影響を与えているけれど、ボクから主導権は奪っていない。
その上で、バーシが好きだ。だから、これは精神的にも同性愛なんだ。
バーシ。明るくて。優しくて。……ちょっと変わっていて。そんな彼女が、好きで、好きで、大好きで。
一歩進んだ関係を、周りに打ち明けたらどうなるだろう。
お母さんは、なんだかんだで受け入れてくれそうだな。お父さんと、おじいちゃん、おばあちゃんはショックを受けるかもしれないな。
ククとシャロンは、祝福してくれると思う。ほかのクラスメイトは、どうかな? ちょっと、予想がつかない。
バーシと電話で話したいな。でも、おじいちゃんとかに聞かれたら、どうしよう。
こんなとき、この世界にもスマホがあったらなあと思う。そしたら、二人でこっそり、とりとめのない会話を、いつまでもできるのに。
体は疲れてるのに、興奮して、全然、気も体も休まらない。
バーシ! バーシ! バーシ!!
ボクの、大切な人! 愛しくて、愛しくて、心の底から愛しくて!
ベッドの上で、枕に顔を埋めながら、ジタバタともんどり打つ。
そうだ、手紙を書こう! 封をしてしまえば、さすがにおばさんたちも、勝手に読むようなデリカシーのないこと、しないだろうし。
さっそく、机に座り、便箋とペンを取り出す。
どんな出だしにしよう。「愛しいバーシへ」……恥ずかしいし、なんかガラじゃないな。
「親愛なるバーシへ」……今度は、妙に堅苦しくなってしまった。書き直し。
「大好きなバーシへ」……うん、これでいこう。
こつこつと、ときに悩んだり、消しゴムをかけたりしながら、ラブレターを書き進めていく。
……書けた! 読み直してみると、我ながら小っ恥ずかしいことが、たくさん書かれている。
でも、これが今の正直な気持ちなんだから、仕方ない。
明日、ククとの散歩に行く前に、向こうの郵便受けに入れていこう。
ボクたちの関係は、まだ話さない。それは、バーシの同意を得てから。
ボク、ククに対して、態度隠しきれるかな。ちょっと、自信ない。
書くもの書いて封もしたので、再びベッドに横たわる。ちょっと、勉強の予習・復習って気分じゃない。
ああ、恋って、こんなにドキドキ、ソワソワするものなのか。
ボクらの新たな関係は、今までの延長線。でも、恋なのだという自覚を持つだけで、こんなに違うなんて。
なんだか体が火照るので、窓を開けると、寒気がびゅうと飛び込んでくる。
お月様がきれいだ。
そういえば、ボク、お日様にはいつも感謝してるけど、お月様にはしたことないな。
「お月様、ありがとー!」
明日は、きっといい日だ! その次も、そのまた次も、きっと!
バーシ、愛してる!!
0
姉妹作⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/132755025(完結) 他長編「神奈さんとアメリちゃん」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/663488280(完結)「小市民魔導剣士、冒険しつつ異世界を食べ歩く!」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/440658351(完結)「〈社会人百合〉アキとハル」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/968690065(完結)「自称・漆黒の堕天使が異世界を改革するようです」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/635743463(完結)
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
俯く俺たちに告ぐ
凜
青春
【第13回ドリーム小説大賞優秀賞受賞しました。有難う御座います!】
仕事に悩む翔には、唯一頼りにしている八代先輩がいた。
ある朝聞いたのは八代先輩の訃報。しかし、葬式の帰り、自分の部屋には八代先輩(幽霊)が!
幽霊になっても頼もしい先輩とともに、仕事を次々に突っ走り前を向くまでの青春社会人ストーリー。

三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!
佐々木雄太
青春
四月——
新たに高校生になった有村敦也。
二つ隣町の高校に通う事になったのだが、
そこでは、予想外の出来事が起こった。
本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。
長女・唯【ゆい】
次女・里菜【りな】
三女・咲弥【さや】
この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、
高校デビューするはずだった、初日。
敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。
カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる