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第二十五話 九月十九日(月) 怖がりハーちゃん
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今日も宿題、かりかりと~。
おっと、ゼロは自然数じゃないよねえ。引っかからないぞ~。
かりかり……かりかり……。
ちょっと、一息入れたいな。紅茶淹れてこよ。もう、八時か。
それにしても、雷がゴロゴロと……。落ちなきゃいいけど。
◆ ◆ ◆
お湯が沸くまで、暇だなー。電気ポット、早く発明されないかな。
「わ!」
一段と眩しい雷光とともに、ブレーカーが落ちる。停電だ!
前世では、停電なんてめったになかったのに、こっちではよく起こる。こういうとこ、不便だな。
幸い、ガスの明かりがあるから、懐中電灯は戸棚からなんとか取り出せた。
入れ替わりに、ガスを消す。ブレーカーを上げてみるけど……ダメだね。大元がやられたっぽい。
「おじいちゃん、おばあちゃん、大丈夫~?」
リビングに行き、まずは二人の様子を確認。
「アユムか。せっかくテレビ、いいとこだったのになァ」
「復旧まで、どれぐらいかかるのかしらね?」
「とりあえず、無事みたいだね。大元がやられたっぽいよ。今、ろうそくとマッチ出すね」
点火。頼りないけど、最低限の明かりは確保できた。
「懐中電灯、こっちにも、もう一個あったよな。店の様子見てくるわ」
そういって、戸棚から、懐中電灯二号を取り出すおじいちゃん。
「マエへさん、心細いだろうけど」
「わたしは大丈夫だから」
「ボク、ハーちゃんの様子見てくる」
二手に分かれ、ボクは階段を登っていく。
着いた。
「ハーちゃん、大丈夫?」
ノックしながら尋ねると、「おねーちゃん?」と、心細そうな声が聞こえてくる。
「うん。入っていい?」
「早く来て!」
相当心細い模様。
中に入ると、彼女はベッドの上で、毛布にくるまって震えていた。
実は、ハーちゃんは、かなりの暗所恐怖症だ。寝るときも、常夜灯ではなく、蛍光灯を点けて寝るぐらい。
「大丈夫?」
そばに寄ると、「それ、ちょうだい! こっちの、電池切れちゃったの!」と、泣きべそ状態でお願いしてくる。
懐中電灯を渡すと、自分を照らし、本格的に泣き始めてしまった。
そんなハーちゃんの横に腰掛け、肩をとんとん叩いて落ち着かせる。
「ボクがついてるからね。大丈夫、大丈夫」
ひたすら、とんとんと、声掛けを続け、最愛の妹を安心させていく。
ハーちゃんが、なんでここまでひどい、暗所恐怖症になってしまったのかはわからない。
お母さんに訊いたときは、お母さんも不思議がっていた。
震えながら、しがみついてくるハーちゃん。
ぎゅっと、抱きしめ返す。
「キモいとか言ってごめんなさい! 鬱陶しいとか言ってごめんなさい! だから、ずっとそばにいて!」
「うん。ずっと、そばにいるからね」
ハーちゃんが怖くないように、優しく抱きしめ続ける。
お父さんたちは、今頃、お客さんの対応にてんてこ舞いかな。
どのぐらい、そうしていただろう。
不意に、蛍光灯の明かりが戻った。
「停電、直ったみたいだね」
今度は、安心してわんわん泣き出してしまった。「よしよし」と、頭をなでて慰める。
「もう、大丈夫だね? じゃあ、ボク、行くね」
ベッドから立ち上がろうとすると、裾をきゅっと掴まれた。
「行かないで……一人にしないで……また、暗くなったらやだ……」
心底、心細そうに懇願するハーちゃん。外では、相変わらず雷が激しく光って、轟いている。
困ったな。
「寝るまで、ここにいて……」
う~ん。宿題あるんだけど。
少し悩んだけど、可愛い妹の頼みは断れないな! 宿題は、明日、朝イチで済ませよう。
「わかった。一緒に寝ようか」
あれほど、こないだツンツンしていたハーちゃんが、こくこくと激しく頷く。
「ボク、明るいと眠れないから、アイマスク取ってくるね。すぐに戻ってくるから、その間だけ待てる?」
「……わかった。ほんとに、すぐに戻ってね!」
素早く自室からアイマスクを取り、こちらの明かりは消して、ハーちゃんの部屋へ。
「遅い!」
涙目ハーちゃん。
「ごめんね」
頭をなでて、一緒のベッドに潜る。
すると、なんか腰のあたりがもぞもぞと。ハーちゃんの手だ。そっと握ると、きゅっと握り返された。
「おやすみ。今夜は、ずっと一緒だからね」
そう言うと、眠りの世界に落ちていく。かわいいハーちゃん、また明日。
翌日は快晴!
ハーちゃんはというと、なんだかボクに対して、ツンツンモードから、照れ照れもじもじモードに変わってしまいました。おやおや。うふふ。
おっと、ゼロは自然数じゃないよねえ。引っかからないぞ~。
かりかり……かりかり……。
ちょっと、一息入れたいな。紅茶淹れてこよ。もう、八時か。
それにしても、雷がゴロゴロと……。落ちなきゃいいけど。
◆ ◆ ◆
お湯が沸くまで、暇だなー。電気ポット、早く発明されないかな。
「わ!」
一段と眩しい雷光とともに、ブレーカーが落ちる。停電だ!
前世では、停電なんてめったになかったのに、こっちではよく起こる。こういうとこ、不便だな。
幸い、ガスの明かりがあるから、懐中電灯は戸棚からなんとか取り出せた。
入れ替わりに、ガスを消す。ブレーカーを上げてみるけど……ダメだね。大元がやられたっぽい。
「おじいちゃん、おばあちゃん、大丈夫~?」
リビングに行き、まずは二人の様子を確認。
「アユムか。せっかくテレビ、いいとこだったのになァ」
「復旧まで、どれぐらいかかるのかしらね?」
「とりあえず、無事みたいだね。大元がやられたっぽいよ。今、ろうそくとマッチ出すね」
点火。頼りないけど、最低限の明かりは確保できた。
「懐中電灯、こっちにも、もう一個あったよな。店の様子見てくるわ」
そういって、戸棚から、懐中電灯二号を取り出すおじいちゃん。
「マエへさん、心細いだろうけど」
「わたしは大丈夫だから」
「ボク、ハーちゃんの様子見てくる」
二手に分かれ、ボクは階段を登っていく。
着いた。
「ハーちゃん、大丈夫?」
ノックしながら尋ねると、「おねーちゃん?」と、心細そうな声が聞こえてくる。
「うん。入っていい?」
「早く来て!」
相当心細い模様。
中に入ると、彼女はベッドの上で、毛布にくるまって震えていた。
実は、ハーちゃんは、かなりの暗所恐怖症だ。寝るときも、常夜灯ではなく、蛍光灯を点けて寝るぐらい。
「大丈夫?」
そばに寄ると、「それ、ちょうだい! こっちの、電池切れちゃったの!」と、泣きべそ状態でお願いしてくる。
懐中電灯を渡すと、自分を照らし、本格的に泣き始めてしまった。
そんなハーちゃんの横に腰掛け、肩をとんとん叩いて落ち着かせる。
「ボクがついてるからね。大丈夫、大丈夫」
ひたすら、とんとんと、声掛けを続け、最愛の妹を安心させていく。
ハーちゃんが、なんでここまでひどい、暗所恐怖症になってしまったのかはわからない。
お母さんに訊いたときは、お母さんも不思議がっていた。
震えながら、しがみついてくるハーちゃん。
ぎゅっと、抱きしめ返す。
「キモいとか言ってごめんなさい! 鬱陶しいとか言ってごめんなさい! だから、ずっとそばにいて!」
「うん。ずっと、そばにいるからね」
ハーちゃんが怖くないように、優しく抱きしめ続ける。
お父さんたちは、今頃、お客さんの対応にてんてこ舞いかな。
どのぐらい、そうしていただろう。
不意に、蛍光灯の明かりが戻った。
「停電、直ったみたいだね」
今度は、安心してわんわん泣き出してしまった。「よしよし」と、頭をなでて慰める。
「もう、大丈夫だね? じゃあ、ボク、行くね」
ベッドから立ち上がろうとすると、裾をきゅっと掴まれた。
「行かないで……一人にしないで……また、暗くなったらやだ……」
心底、心細そうに懇願するハーちゃん。外では、相変わらず雷が激しく光って、轟いている。
困ったな。
「寝るまで、ここにいて……」
う~ん。宿題あるんだけど。
少し悩んだけど、可愛い妹の頼みは断れないな! 宿題は、明日、朝イチで済ませよう。
「わかった。一緒に寝ようか」
あれほど、こないだツンツンしていたハーちゃんが、こくこくと激しく頷く。
「ボク、明るいと眠れないから、アイマスク取ってくるね。すぐに戻ってくるから、その間だけ待てる?」
「……わかった。ほんとに、すぐに戻ってね!」
素早く自室からアイマスクを取り、こちらの明かりは消して、ハーちゃんの部屋へ。
「遅い!」
涙目ハーちゃん。
「ごめんね」
頭をなでて、一緒のベッドに潜る。
すると、なんか腰のあたりがもぞもぞと。ハーちゃんの手だ。そっと握ると、きゅっと握り返された。
「おやすみ。今夜は、ずっと一緒だからね」
そう言うと、眠りの世界に落ちていく。かわいいハーちゃん、また明日。
翌日は快晴!
ハーちゃんはというと、なんだかボクに対して、ツンツンモードから、照れ照れもじもじモードに変わってしまいました。おやおや。うふふ。
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