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第二十三話 九月十八日(日) 大地祭! ―後編―
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大道芸人さんが、アコーディオンを弾きながら歌い、ワッフル屋台がホカホカなワッフルの、いい匂いを漂わせていた。
ハーちゃんよりも、さらに幼い子供たちが、妖精の仮装をし、大人らと一緒にお花を配って回っている。
「どーぞ、おねーちゃん!」
「ありがとう」
妖精さんから花一輪ずつもらい、さらに街を歩いて行く。
街は、感謝と祝いの歌で満ち、夕方だというのに、場の空気は明るい。
仮設テーブルで、フライドポテトをお供に、ビールやソフトドリンクを飲み食いする人々。
疲れてはいるけれど、ボクは今年も元気に、このお祭りに参加できたのが嬉しい。元気って、なんてありがたいんだろう。
「ガブリエル!」
突如、ククが叫んだ。
彼女の視線を追うと、射的の屋台。そこには、お菓子などと並び、かわいいぬいぐるみが並べられていました。
「一目惚れした! ちょっと、行ってくる!」
ダッシュで屋台に向かうクク。ボクらも、ぽてぽてと後をついていきます。
「待ってろよ~ガブ~。連れ帰ってやっかんな~」
ククはすでに、狙撃体勢。構えて……ポン! ありゃ、外れ。どうもハンターの狙いは、くまちゃんのぬいぐるみみたいだね。
「おじさん、もう一回!」
諦めない、クク。ボクらも、「がんばれー!」と声援を飛ばす。
……が、また外れ!
「くぅ~っ! もっかい! これでダメなら諦める!」
クク選手、ラストワンに賭けました!
……ポン!
ドサッ。
「はーい、おめでとー!」
おじさんが、くまちゃんを渡してくれる。
「おおお~! ガブ~! お前は今日から、あたしの家族だかんな~!!」
ガブに頬ずりするクク。ほんとに、ぬいぐるみ好きなんだね。
「おめでとー!」と拍手すると、ガブリエルで顔を隠し、照れる彼女。
すると向こうから、にぎやかな音楽が。
「パレードっすよ!」
おお。大地祭名物、パレード!
「行こ!」
みんなで、パレードのほうへ向かうのでした。
◆ ◆ ◆
パレードでは、女優さんや男優さん、ダンサーといった人々が、ゆっくり進むパレードカーの上で、踊っていました。
うっとりと、夢のような光景を見るボクたち。
「華やかで、きれいだね」
「うん」
誰に言うわけでもなかった独り言に、バーシが相槌を打つ。
ボクらがこのパレードを最初に見てから、何度目になるだろう。
来年も見たいな。みんなと一緒に。
通り過ぎていくパレードを見送り、手を振る。
「クク、軍資金残ってる?」
「かろうじて」
「じゃあさ、なにか食べない?」
そろそろ夕食どき。トマランは大混雑だし、なんといっても、こんな日は、屋台料理を楽しみたい。
「いいっすね!」
お、調子が戻ってきたかな、シャロン?
「あの、グリルドソーセージとかどう?」
バーシが、屋台を指差す。おお、何かいい匂いが漂ってくると思ったら。
「さんせー!」
満場一致。さっそく、店主さんに一本ずつ注文します。
「しまった。ガブ、どこに置こう」
ちょっと大きいガブリエル。小脇に抱えるのが難しい。
「あ~んさせてあげるっすよ~」
むふふと、ほくそ笑むシャロン。
「うえ、恥ずかしいよ……」
「くまちゃん抱えて言っても、今更っすよ。ささ」
観念したクク、口をあ~ん。ぱくっ。
「おいしいっすか?」
「うん、うめえ!」
というわけで、二刀流で食べさせつつ、自分も食べるという小器用なことをしながら、シャロンもソーセージを食べる。
「おいしいね」
「うん」
バーシと手をつなぎ、花火を見る。
このままの時間が、ずっと続けばいいのに。
そんなことを考えてしまう。
……ああ。花火が、終わってしまった。
「そろそろ、お祭りも終わりだね」
「うん」
なんとなく、バーシと見つめ合う。
小さな頃から親友で。ずっと、そばにいて欲しい人。
ふふ、何か照れくさいこと考えてるな、ボク。
「じゃー、そろそろ解散かな」
ソーセージを食べ終わったククが、提案する。
「だね。ハーちゃんとおばあちゃんも、帰ってる頃かな」
二手に分かれて、手を振り合う。
「また明日ー!」
口に手を当てて、大きな声を出すと、手が離せないククの代わりに、シャロンがダブル・サムズアップで応える。
さようなら、二人とも。そして、今年の大地祭。
「手、つなご」
バーシが手を差し出してくるので、握り返す。
名残を惜しむように、ゆっくりと帰るのでした。
ハーちゃんよりも、さらに幼い子供たちが、妖精の仮装をし、大人らと一緒にお花を配って回っている。
「どーぞ、おねーちゃん!」
「ありがとう」
妖精さんから花一輪ずつもらい、さらに街を歩いて行く。
街は、感謝と祝いの歌で満ち、夕方だというのに、場の空気は明るい。
仮設テーブルで、フライドポテトをお供に、ビールやソフトドリンクを飲み食いする人々。
疲れてはいるけれど、ボクは今年も元気に、このお祭りに参加できたのが嬉しい。元気って、なんてありがたいんだろう。
「ガブリエル!」
突如、ククが叫んだ。
彼女の視線を追うと、射的の屋台。そこには、お菓子などと並び、かわいいぬいぐるみが並べられていました。
「一目惚れした! ちょっと、行ってくる!」
ダッシュで屋台に向かうクク。ボクらも、ぽてぽてと後をついていきます。
「待ってろよ~ガブ~。連れ帰ってやっかんな~」
ククはすでに、狙撃体勢。構えて……ポン! ありゃ、外れ。どうもハンターの狙いは、くまちゃんのぬいぐるみみたいだね。
「おじさん、もう一回!」
諦めない、クク。ボクらも、「がんばれー!」と声援を飛ばす。
……が、また外れ!
「くぅ~っ! もっかい! これでダメなら諦める!」
クク選手、ラストワンに賭けました!
……ポン!
ドサッ。
「はーい、おめでとー!」
おじさんが、くまちゃんを渡してくれる。
「おおお~! ガブ~! お前は今日から、あたしの家族だかんな~!!」
ガブに頬ずりするクク。ほんとに、ぬいぐるみ好きなんだね。
「おめでとー!」と拍手すると、ガブリエルで顔を隠し、照れる彼女。
すると向こうから、にぎやかな音楽が。
「パレードっすよ!」
おお。大地祭名物、パレード!
「行こ!」
みんなで、パレードのほうへ向かうのでした。
◆ ◆ ◆
パレードでは、女優さんや男優さん、ダンサーといった人々が、ゆっくり進むパレードカーの上で、踊っていました。
うっとりと、夢のような光景を見るボクたち。
「華やかで、きれいだね」
「うん」
誰に言うわけでもなかった独り言に、バーシが相槌を打つ。
ボクらがこのパレードを最初に見てから、何度目になるだろう。
来年も見たいな。みんなと一緒に。
通り過ぎていくパレードを見送り、手を振る。
「クク、軍資金残ってる?」
「かろうじて」
「じゃあさ、なにか食べない?」
そろそろ夕食どき。トマランは大混雑だし、なんといっても、こんな日は、屋台料理を楽しみたい。
「いいっすね!」
お、調子が戻ってきたかな、シャロン?
「あの、グリルドソーセージとかどう?」
バーシが、屋台を指差す。おお、何かいい匂いが漂ってくると思ったら。
「さんせー!」
満場一致。さっそく、店主さんに一本ずつ注文します。
「しまった。ガブ、どこに置こう」
ちょっと大きいガブリエル。小脇に抱えるのが難しい。
「あ~んさせてあげるっすよ~」
むふふと、ほくそ笑むシャロン。
「うえ、恥ずかしいよ……」
「くまちゃん抱えて言っても、今更っすよ。ささ」
観念したクク、口をあ~ん。ぱくっ。
「おいしいっすか?」
「うん、うめえ!」
というわけで、二刀流で食べさせつつ、自分も食べるという小器用なことをしながら、シャロンもソーセージを食べる。
「おいしいね」
「うん」
バーシと手をつなぎ、花火を見る。
このままの時間が、ずっと続けばいいのに。
そんなことを考えてしまう。
……ああ。花火が、終わってしまった。
「そろそろ、お祭りも終わりだね」
「うん」
なんとなく、バーシと見つめ合う。
小さな頃から親友で。ずっと、そばにいて欲しい人。
ふふ、何か照れくさいこと考えてるな、ボク。
「じゃー、そろそろ解散かな」
ソーセージを食べ終わったククが、提案する。
「だね。ハーちゃんとおばあちゃんも、帰ってる頃かな」
二手に分かれて、手を振り合う。
「また明日ー!」
口に手を当てて、大きな声を出すと、手が離せないククの代わりに、シャロンがダブル・サムズアップで応える。
さようなら、二人とも。そして、今年の大地祭。
「手、つなご」
バーシが手を差し出してくるので、握り返す。
名残を惜しむように、ゆっくりと帰るのでした。
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