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第二十一話 九月十七日(土) とーふ、とーふ、とーふ

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「へえ~。これが豆腐か!」

 水を張った容れ物に入ったお豆腐に、おじいちゃん興味津々。

アルクお父さんと一緒に色々試してみてえが……ちょいと、オレだけで試してみるか」

 とはいえ、初めて見る食材に、攻めあぐねる。

「うーん、アユム。前世・・の湯豆腐ってのは、どんな風に作ってたんだい?」

「えーとね。昆布でおだし取って、で、人参とか、えのきとかネギとか茹でてね。切ったお豆腐入れるの」

 おぼろげな記憶を頼りに、レシピを導き出す。

「昆布ってのが要るのか。もっと多めに、小遣い渡しときゃよかったなァ。他の食べ方はないのかい?」

「あ。冷奴ってのがあるよ。冷やしたお豆腐に、お醤油かけて食べるの」

「へえ。そりゃシンプルだねえ」

 と言いながら、考え込むおじいちゃん。

「これ、包丁入れたら崩れるな……ヤマトじゃ、どうしてるんだ?」

「それならね、手のひらに乗せて切るんだよ」

 前世の、お母さんのお味噌汁づくりを思い出す。

「手のひら!」

 おじいちゃんに、電流奔る!

「はー……ヤマト人ってのは、面白いこと思いつくなァ。よし、冷奴にして食べてみるか」

 というわけで、調理自体はシンプルなので、あっという間に冷奴が出てきました。

 「いただきます」と、お店にいるお父さん、お母さんを除く四人で試食。

「……おいしいはおいしいけど、なにか物足りませんねえ」

 おばあちゃんが、違和感を口にする。

「あ! ごめん! 薬味を使うんだ! えっとね、おろしショウガと刻みネギ!」

「玉ねぎ、刻むのか」

「ううん。こんな感じのネギ」

 ホワイトボードに、前世でよく見かけた、スーパーのネギを描く。

「はー。ポロネギ……かねえ? とりあえず、ショウガをおろしてみるか」

 というわけで、薬味追加。

「あ、味が引き締まりましたね」

「だな」

 おばあちゃん、おじいちゃんが言う通り、ずいぶん締まりのある味になった。

「ハーちゃんは、どう?」

「うーん。まあ、おいしいんじゃない?」

 ハーちゃん、言葉と裏腹に、いまいちな表情。きっと、湯豆腐とかのほうが、口に合うんだろうな。

「こりゃ、オレとアルクでヤマト街出向いて、色々買ってきたほうがいいな。俄然、興味が湧いてきた」

 おお、料理人魂に火が点いた!

「味噌ってのも、後でいろいろ試してみるか」

「うん。使い道、ほんと多い調味料だったよ」

 またもお味噌汁を思い出す、ボクでありました。


 ◆ ◆ ◆


「おはよう!」

 ククとのロードワークから帰ってくると、おじいちゃんが上機嫌で出迎えてくれました。

いつもの・・・・終わったら、食卓についてくれ。いいもんができたぞー」

 おじいちゃん、ほんとめっちゃ上機嫌。ボクも挨拶を返し、ハーちゃんを起こし、シャワーを浴びる。

「ふー、さっぱりしたー」

 食卓に着席。

「あれから色々試してみたんだがね、これがバツグンでなァ」

 そういって、おじいちゃんがおナスの炒めものと、ご飯を盛る。

 日曜は、お米デーだ。

「さ、冷めないうちに食べようぜ。いただきます」

 というわけで、みんなで合唱。

 ……ぱくっ。あ!

「ナス味噌炒め!」

「正解だ! さすが、アユム。これが、見事にバチッとハマってなァ。昨晩から、朝食に作りたくて、ウズウズしてたんだ」

 昨日の晩ごはんはラムステーキだったから、あのあとも一人で研究してたんだ。

「おいしい! おじいちゃん、おかわりほしい!」

 ハーちゃん、すごい食いつきぶり!

「はっはっはっ。おいしいって言われるのが、最高のご褒美だな! 今作るからな。これ、すぐ作れるんだ」

 といって、おナスを切り始めるおじいちゃん。ほんと、嬉しそう。

「これは面白いね。親父、火曜になったら、ヤマト街に繰り出そう」

「おう! お前も、料理人魂に火が点いたか!」

 お父さんも、ノリノリだ!

 我が家に、ヤマトの風が吹いた。ネコザキ先生、ありがとうございます。

 これから和食が、我が家の食卓に並ぶようになるのかな。楽しみ!
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姉妹作⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/132755025(完結)  他長編「神奈さんとアメリちゃん」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/663488280(完結)「小市民魔導剣士、冒険しつつ異世界を食べ歩く!」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/440658351(完結)「〈社会人百合〉アキとハル」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/968690065(完結)「自称・漆黒の堕天使が異世界を改革するようです」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/635743463(完結)
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