ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

みなはらつかさ

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第十七話 九月十三日(火) 雪溶けハーちゃん

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 今朝も、ハーちゃんを避けながらの生活。つらいなあ。

 他に悩みを打ち明けられそうな人……あ! 一番頼れそうな人たちを、すこーんと意識の外にやっていた!

 今日はお店がオフだから、お父さんたちに悩みを打ち明ける、いいチャンスかもしれない。

 よし、学校から帰ったら、さっそく相談してみよう!


 ◆ ◆ ◆


「なるほどねえ。道理で、昨日から様子が変だと……」

 お悩み相談室と化した、我が家のリビング。

 目をぱちくりさせて、ボクの変わりぶりを理解するお母さん。

「そうかー。もう、そんな年頃かー」

 お父さんは、ハーちゃんが反抗期であることに、やっとこ気づいた感じだ。

「母さん、女の子の反抗期って、そんな早いのかい?」

「早いですよ。ほんとに早い子は、小三で突入しますから」

 「へえ」と、変な感心をする、ボクとお父さん。

「ボク、どうしたらいいのかなあ。シャロンには、そっとしておくべきって言われたけど、ボク、もう耐えられないよ……!」

「そんな、一日で大げさな……。ほんと、シスコンねえ」

 ため息を吐くお母さん。お母さんも、幸せ逃げちゃうよ?

「俺は、洗濯物別にしてくれとか言わないから、てっきり反抗期まだだと思ってたよ」

「私たち、あまり子どもたちに構ってあげられませんからね。ハーちゃんを構い倒すアユムに、白羽の矢が立ったんじゃないかしら」

「うう……」

 心の底から、しょんぼりする。

「とりあえず、わかりました。アユムもつらいでしょうけど、下手に刺激してもいけないし、お母さんたちに任せて?」

「うん……。ありがとう」

 項垂うなだれたまま、リビングを後にするのでした。


 ◆ ◆ ◆


 その日の夕食。

「ねえ、ハーちゃん」

「何?」

 お母さんの呼びかけに、妹が返事する。

お姉ちゃんアユムのこと、好き? 嫌い?」

「んぐっ!?」

 唐突かつ直球な質問に、ボクとハーちゃんが喉をつまらせる。

「えほっ……唐突に、変なこと訊かないでよー!」

 水でごはんを流し込み、抗議する彼女。ボクも、水で流し込む。こんな変なことで、姉妹シンクロしなくても。

「好き? 嫌い?」

 お母さんは、穏やかな笑みを浮かべながら、ハーちゃんに再度問う。

「……好きでも嫌いでもないっつーか、その、ちょっと鬱陶しいだけ……」

 ぐさっ。

「じゃあ、嫌いなの?」

「だから、鬱陶しいだけだってば!」

「ねえ、ハーちゃん。ハーちゃんがお姉ちゃんに、鬱陶しいとか、キモいって言われたら、どんな気分かしら?」

 うつむいて、考え込む妹。

「……悲しい、嫌な気分になると思う」

 悩んだ末に、ぽつりとこぼす。

「お姉ちゃんね。今、ハーちゃんとの距離をどうしたらいいか悩んでるの。ベタベタしてあげてとは言わないから、ハーちゃんを見てにやけるぐらい、許してあげられないかしら」

 さすがお母さん。見てないようで、ボクたちのこと、よく見てる……。

「……わかった。それぐらいなら、いいよ」

「アユムも、それでいい?」

「うん!」

 一歩、前進だ!

「じゃ、そういうことで。ごはんが冷めないうちに、食べきっちゃいましょ!」

 お母さんの音頭取りで、食事再開。

 ああ、やっぱりごはん食べてるハーちゃんは、かわいいなあ……。にへら~……。あう、ジト目で睨まれた。まだ、完全な雪溶けには遠いか。

 食事の後、お皿洗いを手伝っていると、「あとは、時間が解決してくれるからね」と、ウィンクするお母さんでした。


 ◆ ◆ ◆


「おっはよーう、ハーちゃん! あっさでっすよー!」

 がばっと、掛け布団を剥がす。

「うにゃ~っ!! あと十分じゅっぷん~!」

 ふふ。今日も、変な寝相がかわいい。おへそが出てますよ~。

「じゃあ、起こしたからね!」

 そそくさと退散!

 今は、最低限の接触でいい。お母さんの言葉を、信じよう。

 少しだけ足取りも軽く、階段を降りるのでした。
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