上 下
5 / 63

第五話 九月五日(月) 激戦を終えて

しおりを挟む
 ボクはまだ子供なので、五時になったら、お仕事上がり! ここから先になると、本格的に酔っ払ったお客さんなんかが増えて、五時前の忙しさの比じゃなくなるそうで。

 そんな状態を、二人で切り盛りするお父さんとお母さん、すごいなあ。

「ただいまー」

 裏口から、ハーちゃんが帰ってきました。

「おかえり」

 脱衣所に向かい、エプロンほか、今日の洗い物を洗濯機に入れる。

「ハーちゃん、なんか洗うものある?」

「んー。お風呂入る。ちょっと、脱衣所から出てて」

「りょーかーい。なんなら、一緒にお風呂入らない?」

 う~んと伸びをして、提案。

「おねーちゃんと? やだよ、恥ずかしい……」

 あらま。ハーちゃんも、そんなお年頃ですか。じゃあ、別々に入りましょうかね。

 というわけで、洗濯は一旦おあずけ。

 ちょっと汗臭いけど、今日のテレビニュースを視聴。

 ちなみに、このラドネスブルグ……というか、世界的にそうらしいんだけど、ボクの前世時代より、若干文明が古いみたい。

 テレビが板状の横長じゃなくて、箱状の寸詰まりだし、パソコンはとても高価で、それでいて性能がスマホなんかより相当悪いらしくて。

 スマホといえば、携帯電話そのものが、冗談みたいな大きさだったり。

 こっちで電話といえば、基本的にダイヤルの付いた置き電話。それも、受話器が長~いの。そうじゃないと、ボクら会話できないんだもん。

 ボクは生まれた時からこんなだったから慣れてるけど、前世のボクにとっては、すっごいカルチャーショックなのかもね。

 とりあえず、今日のニュースは、ここルンドンベア市を騒がせる謎の不審者。やだなあ。

 ボクが前世と同じく男で、さらに元気だったら、こんなのにも立ち向かえるのかな?

 今となっては、わからないことだけど。

 ハーちゃんも、バーシも、ククたちも、気をつけて欲しいねー。もちろんボクも、気をつけないと。

 それにしても、ニュースって基本明るい話題ないよね。悲しいねえ。

 テレビを見て時間を潰していると、ハーちゃんがお風呂から上がったので、交代。

 やっとこ、ゆったりと入浴。

 ふわあ~……。やっぱり湯船に浸かるのは落ち着くねえ~……。ラドネスブルグは、前世日本と同じく、湯船とシャワーのハイブリッド文化です。

 なんだか、気持ち良過ぎて寝ちゃいそうになるけど、しっかりしないと! 湯船で溺れるニュース、ときどき聞くからね。

 一日の垢をしっかりと流し、さっぱりと湯上がり。洗濯機かけたら、牛乳飲も!

「いいお湯でした~」

 お風呂上がりに、キッチンに直行。牛乳をコップ一杯注ぎ、腰に手を当てて、ごっくん! くはぁ~! 効くぅ~!

 ホワイトボードに、赤ペンで「17:50~洗濯中」と記入する。

「そういえば、おばあちゃんは?」

 今更ながら、おばあちゃんの不在に気づき、リビングで読書中のおじいちゃんに尋ねる。

「ああ、ストルバックさんちに遊びにいってるよ。いつも通りなら、そろそろ帰ってくるんじゃないかな?」

 と、呑気な返事。うちとバーシの家、家族ぐるみのお付き合いだからね。

 そうだ。バーシとちょっと、話でもしようかな。

 電話のダイヤルを、くるくる……くるくる……。呼び出し音。

「はい、ストルバックです」

「あ、その声バーシ? おばあちゃん、そっちに行ってるらしいけど」

「うちのおばあちゃんと、茶話してるよー。それだけ?」

「ううん。なんか、バーシと話がしたくて」

 そんなわけで、女子同士の取止めもない長電話開始。会って話したほうが安いんだろうけど、湯上がりでくつろいでるしねー。

「あ、そうだアユム。オカルト特集見てる?」

「テレビ?」

「そそ。今、ちょうどいいとこ!」

 テレビをつけてチャンネルを回し、電話口に戻る。

「つけたけど」

「西のほうに廃教会があるじゃない? そこ、出る・・んだって!」

 どうしてこう、幽霊だのの話を楽しそうに語れるのか。まあ、それゆえに、ボクの前世を頭から信じてくれた、無二の友でもあるんだけど。

「でさ、今度探検とかしてみない!? いい心霊写真撮れそう!」

 悪趣味だなあ……。

 とはいえ、あんまり付き合いが悪いのもね。

「いいよ。でもさ、せっかくだからククとシャロンも誘わない?」

「大賛成! ナイスアイデア! じゃあ、計画は追って伝えるから!」

 増やそう、被害者の会。二人は、バーシと友達になったのが運の尽きだと思ってね。

 ま、そんな恐ろしい結果にもならないでしょ。

 あとは、バーシと他愛もない雑談。そうしていると、おばあちゃんも帰ってきたので、ちょうどいいからと、話を終えるのでした。
しおりを挟む
姉妹作⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/132755025(完結)  他長編「神奈さんとアメリちゃん」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/663488280(完結)「小市民魔導剣士、冒険しつつ異世界を食べ歩く!」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/440658351(完結)「〈社会人百合〉アキとハル」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/968690065(完結)「自称・漆黒の堕天使が異世界を改革するようです」https://www.alphapolis.co.jp/novel/334326892/635743463(完結)
感想 0

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

『器のちっちゃな、ふとちょ先輩』

小川敦人
青春
大学卒業後、スポーツジムで働き始めた蓮見吾一。彼は個性豊かな同僚たちに囲まれながら、仕事の楽しさと難しさを学んでいく。特に気分屋で繊細な「器の小さい」中田先輩に振り回される日々。ジム内の人間模様や恋愛模様が交錯しながらも、吾一は仲間との絆を深めていく。やがて訪れるイベントのトラブルを通じて、中田先輩の意外な一面が明らかになり、彼の成長を目の当たりにする。笑いあり、切なさありの職場青春ストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

M性に目覚めた若かりしころの思い出

kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。 一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。

処理中です...