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035.あかい思い出
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快楽というものには中毒性がある。
一度快楽を味わうと、次に同等の快楽を味わうためには、前回より少し強い刺激が必要になる。
一度快楽を味わうと、次も同等の快楽を味わいたいと、少しずつ深みに嵌っていくことになる。
求める刺激に上限はなく、嵌る深みに下限はない。
ずぶずぶと底の無い深みに嵌りながら、際限なく強い刺激を求めていく。
快楽を覚えた女医の身体は、常に疼きがくすぶっていた。
「せんせー、来たよ」
「いらっしゃい」
だからと言って、子供に手を出すほど堕ちてはいない。
子供にとって性的な体験は刺激が強すぎる。
身体への負担も大きいこともある。
たとえば、低年齢の女子が妊娠や出産をする場合、身体への負担が大き過ぎて、命にかかわることもある。
彼女は医者だった。
正しい知識を持っていた。
少し前に、なぜか買い置きの避妊具がなくて、でも快楽を我慢できなくて、結果として妊娠してしまったことがある。
けれど、それは責任を取ることができる大人ゆえの行動だ。
もし出産することになっていたら、育てる覚悟はあった。
子供を家に泊める。
それは母性ゆえの行動だ。
寂しさを紛らわせる目的が無いわけではないが、懐いてくる子供を拒絶する理由にはならない。
だから彼女は、アオイを笑顔で招き入れた。
夕食を食べてきたというアオイに冷たい麦茶を出し、楽しくお喋りする。
身体の疼きが消えたわけではなかったが、彼女にとって楽しいひとときだった。
「ふあぁ」
「眠くなっちゃった?」
楽しいが、ひとときだった。
もともと子供は夜遅くまで起きていられない上に、夕食を食べてきたのだから眠くなって当然だ。
楽しい時間はあっという間に終わりを迎えた。
欠伸をしたアオイをベッドに誘う。
「着替えるから、先に寝てていいわよ」
短い時間だったけど、仕方がない。
まさか、子供を無理やり起こして、お喋りを続けるわけにはいかない。
彼女はアオイをベッドに寝かせ、自分も寝巻になるために着替えをする。
白衣を脱ぎ、衣服を脱ぎ、下着姿になって寝間着を手に取る。
アオイは、うつらうつらと、夢現にその光景を眺めていた。
「……せんせーって、なんでそんなに、おっぱいが大きいの?」
服を脱いでいく光景に、いつもの入浴が思い浮かんだのか、アオイがそんな疑問を口にする。
彼女は、大きすぎず小さすぎない、平均的な体形だった。
けれど、男性が手や口で触れたくなる程度には、ふくらみはあった。
少なくとも、子供よりは肉感的な身体をしていた。
「赤ちゃんが吸いやすいようによ」
彼女はアオイにそう答えた。
まさか男を吸い付かせるためとは言えない。
単純に母乳をあげるためと答えなかったのは、彼女が医者だからだった。
胸が小さくても母乳は出る。
胸が小さいと子供が育てられないと、アオイが勘違いするといけない。
なんとなく、そう思ったからだった。
「ふーん、そうなんだ……」
納得したのか、アオイはそう返事をする。
そして再び、うつらうつらと、夢現に目の前の光景を眺め始める。
今さらながらにその視線を感じ、彼女は身体の芯でくすぶる疼きが刺激されるのを感じた。
子供に欲情したわけではない。
ただ、視線をくすぐったく感じただけだ。
ただ、疼きをくすぐられるのを感じただけだ。
ただ、くすぶっていた火種に触れられて、身体の芯が熱を持つのを感じただけだ。
「…………」
彼女は着替えの途中だったことを思い出した。
持っていた寝間着から手を離し、代わりに下着に手をかける。
「……せんせー、どうして裸になるの?」
「ちょっと暑いからよ。それに裸だとリラックスして眠れるのよ」
「ふーん……」
嘘は言っていない。
身体は熱かったし、裸だとリラックスして眠れるのも本当のことだ。
少し前までは、ほとんど毎日、裸で眠っていた。
心地よい疲労を感じながら、ぐっすり眠ることができた。
その頃を思い出し、さらに身体の芯がが熱を持つ。
冬山で身体を温め合うように、彼女はアオイの隣に寄り添う。
「……せんせー、どうしてくっついてくるの?」
「それはね……」
赤ずきんと狼のやりとりのような会話。
けれど配役の性別は絵本とは異なる。
そして大きな口で襲い掛かることもない。
「……せんせー、おしっこに行きたくなっちゃった」
寝る前に冷たい麦茶を飲んだせいだろうか。
アオイは、心地よい夢現の中で、尿意に似たものを感じた。
下腹のあたりが、むずむずする。
ふと、このまま出してしまいたい誘惑にかられた。
そうすると、とても気持ち良くなれるような気がした。
でも、そうするわけにはいかない。
自分の歳でおねしょをするなんて、恥ずかしいことだ。
そんな葛藤をするアオイの耳元で、彼女が優しく囁く。
「このまま出しちゃっていいわよ」
とても魅力的な提案だった。
抗い難い誘惑だった。
眠気も手伝い、アオイは考えることを止めた。
一度快楽を味わうと、次に同等の快楽を味わうためには、前回より少し強い刺激が必要になる。
一度快楽を味わうと、次も同等の快楽を味わいたいと、少しずつ深みに嵌っていくことになる。
求める刺激に上限はなく、嵌る深みに下限はない。
ずぶずぶと底の無い深みに嵌りながら、際限なく強い刺激を求めていく。
快楽を覚えた女医の身体は、常に疼きがくすぶっていた。
「せんせー、来たよ」
「いらっしゃい」
だからと言って、子供に手を出すほど堕ちてはいない。
子供にとって性的な体験は刺激が強すぎる。
身体への負担も大きいこともある。
たとえば、低年齢の女子が妊娠や出産をする場合、身体への負担が大き過ぎて、命にかかわることもある。
彼女は医者だった。
正しい知識を持っていた。
少し前に、なぜか買い置きの避妊具がなくて、でも快楽を我慢できなくて、結果として妊娠してしまったことがある。
けれど、それは責任を取ることができる大人ゆえの行動だ。
もし出産することになっていたら、育てる覚悟はあった。
子供を家に泊める。
それは母性ゆえの行動だ。
寂しさを紛らわせる目的が無いわけではないが、懐いてくる子供を拒絶する理由にはならない。
だから彼女は、アオイを笑顔で招き入れた。
夕食を食べてきたというアオイに冷たい麦茶を出し、楽しくお喋りする。
身体の疼きが消えたわけではなかったが、彼女にとって楽しいひとときだった。
「ふあぁ」
「眠くなっちゃった?」
楽しいが、ひとときだった。
もともと子供は夜遅くまで起きていられない上に、夕食を食べてきたのだから眠くなって当然だ。
楽しい時間はあっという間に終わりを迎えた。
欠伸をしたアオイをベッドに誘う。
「着替えるから、先に寝てていいわよ」
短い時間だったけど、仕方がない。
まさか、子供を無理やり起こして、お喋りを続けるわけにはいかない。
彼女はアオイをベッドに寝かせ、自分も寝巻になるために着替えをする。
白衣を脱ぎ、衣服を脱ぎ、下着姿になって寝間着を手に取る。
アオイは、うつらうつらと、夢現にその光景を眺めていた。
「……せんせーって、なんでそんなに、おっぱいが大きいの?」
服を脱いでいく光景に、いつもの入浴が思い浮かんだのか、アオイがそんな疑問を口にする。
彼女は、大きすぎず小さすぎない、平均的な体形だった。
けれど、男性が手や口で触れたくなる程度には、ふくらみはあった。
少なくとも、子供よりは肉感的な身体をしていた。
「赤ちゃんが吸いやすいようによ」
彼女はアオイにそう答えた。
まさか男を吸い付かせるためとは言えない。
単純に母乳をあげるためと答えなかったのは、彼女が医者だからだった。
胸が小さくても母乳は出る。
胸が小さいと子供が育てられないと、アオイが勘違いするといけない。
なんとなく、そう思ったからだった。
「ふーん、そうなんだ……」
納得したのか、アオイはそう返事をする。
そして再び、うつらうつらと、夢現に目の前の光景を眺め始める。
今さらながらにその視線を感じ、彼女は身体の芯でくすぶる疼きが刺激されるのを感じた。
子供に欲情したわけではない。
ただ、視線をくすぐったく感じただけだ。
ただ、疼きをくすぐられるのを感じただけだ。
ただ、くすぶっていた火種に触れられて、身体の芯が熱を持つのを感じただけだ。
「…………」
彼女は着替えの途中だったことを思い出した。
持っていた寝間着から手を離し、代わりに下着に手をかける。
「……せんせー、どうして裸になるの?」
「ちょっと暑いからよ。それに裸だとリラックスして眠れるのよ」
「ふーん……」
嘘は言っていない。
身体は熱かったし、裸だとリラックスして眠れるのも本当のことだ。
少し前までは、ほとんど毎日、裸で眠っていた。
心地よい疲労を感じながら、ぐっすり眠ることができた。
その頃を思い出し、さらに身体の芯がが熱を持つ。
冬山で身体を温め合うように、彼女はアオイの隣に寄り添う。
「……せんせー、どうしてくっついてくるの?」
「それはね……」
赤ずきんと狼のやりとりのような会話。
けれど配役の性別は絵本とは異なる。
そして大きな口で襲い掛かることもない。
「……せんせー、おしっこに行きたくなっちゃった」
寝る前に冷たい麦茶を飲んだせいだろうか。
アオイは、心地よい夢現の中で、尿意に似たものを感じた。
下腹のあたりが、むずむずする。
ふと、このまま出してしまいたい誘惑にかられた。
そうすると、とても気持ち良くなれるような気がした。
でも、そうするわけにはいかない。
自分の歳でおねしょをするなんて、恥ずかしいことだ。
そんな葛藤をするアオイの耳元で、彼女が優しく囁く。
「このまま出しちゃっていいわよ」
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抗い難い誘惑だった。
眠気も手伝い、アオイは考えることを止めた。
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