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不思議生物7

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「ちょっとコンクリ詰めにして欲しいものがあって……いえ、人間じゃありません」

 電話の相手は店長さんです。
 店長さんは知り合いが多いです。
 建築会社の人にも知り合いがいます。

「いえ、海に沈める必要はありません。ホントに人間じゃありませんから」

 建築会社の人なら、コンクリートを手配できると思います。
 それで店長さんに仲介をお願いしたのです。
 目的は倒れた木の撤去と道を塞ぐことです。

「はい、それじゃあ、お願いします。料金は……いえ、タダというわけにはいきません。なら、今度、お仕事をお手伝いしますね」

 話はつきました。
 これで壊れた祠の件は解決です。
 さて、次は――

「このままでは魑魅魍魎が這い出てきてしまう。どうにかしなければ……」
「もう解決したわ」

 ヤタさんの処遇についてです。
 私はヤタさんを掴んだまま考えます。

「解決したとはどういう――ぐえっ!」

 動物にお仕置きすると、動物愛護団体がうるさいです。
 でも、目玉を潰すような危険生物をそのままにしておくわけにはいきません。
 悪さをしないように監視する必要があるでしょう。
 これはヤタさんのためでもあるのです。
 人を襲わないようにしておかないと、きっと害獣として殺処分されてしまいます。
 それはそれでジビエとして人の役に立ってもらうという方法もあるのですが、カラスをジビエにするというのは、あまり聞いたことがありません。
 ヤタガラスも似たようなものでしょう。
 それに、ヤタさんは生き物かどうか怪しいです。
 AI搭載のドローンという可能性も考えられます。

「ペットとして飼うしかないかしら?」
「飼うとはなんだ。我は陰陽師の式神――ぐえっ!」

 そういえば、魔女っ子には不思議生物がつきものです。
 普通の女の子に魔法の力を与えて、サポートしてくれる存在です。
 でも、ヤタさんにその役目が果たせるとは思えません。
 なぜなら――

「……かわいくない」

 ――ヤタさんは容姿に欠陥を抱えているからです。
 容姿で生き物の価値を決めつけるつもりはありません。
 でも、魔女っ子のパートナーである不思議生物は、可愛くなくてはいけません。
 カラスはその役に向かないと思うのです。
 それに、カラスはなんとなく縁起が悪いです。
 縁起が悪いシーンには、カラスの鳴き声が響き渡るイメージがあります。
 そう考えると、ペットとしても向かないのではないでしょうか。

「うーん……」
「こ、こら! 離せ!」

 私は頭を悩ませながら部室に戻りました。

 *****

「キララちゃん、お帰り。ずいぶん遅かった――あら?」
「キララさん、私も後片付け手伝った方が――あれ?」

 部室に着くと、部長とおっぱいお化けが私と私が掴んでいるヤタさんに気付きました。
 少し遅れて、ソラや他の部員のみなさんも気付きます。

「キララ、そのカラス、どうしたの?」
「カラスではない。我はヤタガラス――ぐえっ!」

 ソラがヤタさんについて尋ねてくると、私が返事をする前にヤタさんが返事をしてしまいます。
 失敗しました。
 ヤタさんに余計なことを喋らないように、事前に言い聞かせておくのを忘れてしまいました。
 妙な設定を口走られると、みなさんが混乱してしまいます。

「え? 今、そのカラス、喋らなかった?」
「だから、カラスではない! ヤタガラス――ぐえっ!」
「やっぱり、喋ったよね? え? え?」

 部長とおっぱいお化けが、ヤタさんが喋ったことに気付いてしまいました。
 仕方ありません。
 今から口止めするのも不自然なので、誤魔化すことにします。

「喋りましたね。それがなにか?」
「え? だって、鳥が喋ったんだよ?」
「そうですね。それがなにか?」
「鳥は普通、喋らないよね?」
「オウムとかインコとか九官鳥とか、普通に喋るじゃないですか」
「え? あれ?」
「なにをいまさら」
「でも、カラスだよ? カラスは喋らないよね?」
「知っていますか? カラスって人間の7歳児くらいの知能があるという説があるんですよ。7歳児って普通に喋りますよね?」
「あれ? え? あれ?」
「そう……なのかな?」

 ふう。
 どうやら納得してもらえたようです。
 私が安堵していると、ソラがヤタさんに話かけています。

「僕、ソラっていうんだ。君の名前は? どこから来たの?」
「我はヤタガラス。陰陽師の式神として、祠の封印を護っていたのだ」

 しまった。
 ちょっと目を離した隙に、ヤタさんが余計なことを喋っています。
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