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不思議生物4
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ぽちっ
そんな音が聴こえたかは、自分でも自信がありません。
けれど――
ドゴンッ!
――という音は確実に聴こえました。
あと、バキバキと木が倒れる音も。
「…………」
「…………ふむ」
私は必殺技が着弾した場所を見ます。
そして感想を口にします。
「威力は充分ね」
「充分すぎるよ!?」
「ちょっと薬品の量が多かったかしら?」
「ちょっとどころじゃないよ!?」
必殺技はある意味成功です。
これなら、どんな敵にも負けないでしょう。
ですが、おっぱいお化けの言うことも一理あります。
ショーで使うには、ちょっぴり威力があり過ぎるかも知れません。
「それに、今のなに!? 胸のところから、なにかが飛んだんだけど!?」
「おっぱいミサイルよ」
「おっぱいミサイル!?」
私がヒーロー衣装に組み込んだのは、伝統ある必殺技『おっぱいミサイル』です。
ただし、おっぱいお化けはロボットではないので、胸から本物のミサイルが飛ぶわけではありません。
そんなことは物理的に不可能です。
だから、ミサイルの代わりに、胸の先端に仕込んだ器具から玩具の弾が飛ぶようにしました。
そして、その弾には薬品を仕込みました。
左右でそれぞれ別の薬品を仕込んだのですが、どんな薬品かはヒミツです。
でも、ちょっとだけヒントを教えると、着弾して二種類の薬品が混ざり合うと、激しく化学反応を起こします。
どのくらい激しいかというと、木が倒れるくらいの激しさです。
「こんな必殺技を使うくらいなら、殺陣を練習するよ!? パイスラッシュでも、なんでもするよ!? だって、テロリストになりたくないもん!?」
テロリストとは失礼な。
テロリストを倒すための必殺技だというのに。
とはいえ、おっぱいお化けは本物のヒーローというわけではありません。
あくまで、ショーの役としてのヒーローです。
ここは希望を聞くことにしましょう。
「わかったわ。パイスラッシュを出せるように衣装を改良するわ」
「改良はいいよ!? もっとひどいことになりそうだもん!?」
むぅ。
おっぱいお化けは、わがままです。
興奮しながら叫んでいます。
ここが人のいない校舎裏でよかったです。
「もうこれ脱いでいいよね!?」
「仕方ないわね」
まあ、殺陣を頑張るというなら、それでもいいでしょう。
やる気が出たのはいいことです。
せっかく作ったおっぱいミサイルは無駄になってしまいましたが、やる気を出させたことで役に立ったと思うことにしておきます。
おっぱいミサイルは、魔女っ子(代理)の活動のときにでも使うことにしましょう。
*****
そんなわけで、おっぱいお化けは着替えるために戻っていきました。
私は片付けをするため残っています。
倒れた木を一人で動かすのは無理そうですが、人手を集めるにしても、何人くらい必要か確認しないといけません。
「先輩達を呼べば動かせるかな」
先輩達というのは、以前、私がお仕置きをしたサッカー部の人達のことです。
すっかり心を入れ替えたようなので、きっと手伝ってくれるでしょう。
今は校庭で練習をしているはずです。
先輩達を呼びに行くために、いったん校舎裏から立ち去ろうとしたところで、私は気付きました。
「……誰?」
静かな校舎裏。
そこに音も立てずに、その人はいました。
いつの間にか、その人はいました。
「…………」
返事はありません。
なにかがおかしいです。
普通ではありません。
変質者。
その単語が頭に浮かびましたが、そうでないことは、すでに理解しています。
そういう方向のおかしさではないのです。
その人、いえ、人と言っていいのでしょうか。
そこにいたのは、一言で言えば、鬼でした。
節分で大人が扮する鬼ではありません。
ナマハゲとも違います。
特殊メイクをしたリアルな鬼。
それが一番近いです。
いえ、違います。
特殊メイクをするのは、本物に近付けるためです。
本物であれば、特殊メイクをする必要などありません。
「ぐおおおおおぉぉぉぉぉッ!!!」
そこまで考えたところで、鬼が吠えながら、こちらに迫ってきました。
そんな音が聴こえたかは、自分でも自信がありません。
けれど――
ドゴンッ!
――という音は確実に聴こえました。
あと、バキバキと木が倒れる音も。
「…………」
「…………ふむ」
私は必殺技が着弾した場所を見ます。
そして感想を口にします。
「威力は充分ね」
「充分すぎるよ!?」
「ちょっと薬品の量が多かったかしら?」
「ちょっとどころじゃないよ!?」
必殺技はある意味成功です。
これなら、どんな敵にも負けないでしょう。
ですが、おっぱいお化けの言うことも一理あります。
ショーで使うには、ちょっぴり威力があり過ぎるかも知れません。
「それに、今のなに!? 胸のところから、なにかが飛んだんだけど!?」
「おっぱいミサイルよ」
「おっぱいミサイル!?」
私がヒーロー衣装に組み込んだのは、伝統ある必殺技『おっぱいミサイル』です。
ただし、おっぱいお化けはロボットではないので、胸から本物のミサイルが飛ぶわけではありません。
そんなことは物理的に不可能です。
だから、ミサイルの代わりに、胸の先端に仕込んだ器具から玩具の弾が飛ぶようにしました。
そして、その弾には薬品を仕込みました。
左右でそれぞれ別の薬品を仕込んだのですが、どんな薬品かはヒミツです。
でも、ちょっとだけヒントを教えると、着弾して二種類の薬品が混ざり合うと、激しく化学反応を起こします。
どのくらい激しいかというと、木が倒れるくらいの激しさです。
「こんな必殺技を使うくらいなら、殺陣を練習するよ!? パイスラッシュでも、なんでもするよ!? だって、テロリストになりたくないもん!?」
テロリストとは失礼な。
テロリストを倒すための必殺技だというのに。
とはいえ、おっぱいお化けは本物のヒーローというわけではありません。
あくまで、ショーの役としてのヒーローです。
ここは希望を聞くことにしましょう。
「わかったわ。パイスラッシュを出せるように衣装を改良するわ」
「改良はいいよ!? もっとひどいことになりそうだもん!?」
むぅ。
おっぱいお化けは、わがままです。
興奮しながら叫んでいます。
ここが人のいない校舎裏でよかったです。
「もうこれ脱いでいいよね!?」
「仕方ないわね」
まあ、殺陣を頑張るというなら、それでもいいでしょう。
やる気が出たのはいいことです。
せっかく作ったおっぱいミサイルは無駄になってしまいましたが、やる気を出させたことで役に立ったと思うことにしておきます。
おっぱいミサイルは、魔女っ子(代理)の活動のときにでも使うことにしましょう。
*****
そんなわけで、おっぱいお化けは着替えるために戻っていきました。
私は片付けをするため残っています。
倒れた木を一人で動かすのは無理そうですが、人手を集めるにしても、何人くらい必要か確認しないといけません。
「先輩達を呼べば動かせるかな」
先輩達というのは、以前、私がお仕置きをしたサッカー部の人達のことです。
すっかり心を入れ替えたようなので、きっと手伝ってくれるでしょう。
今は校庭で練習をしているはずです。
先輩達を呼びに行くために、いったん校舎裏から立ち去ろうとしたところで、私は気付きました。
「……誰?」
静かな校舎裏。
そこに音も立てずに、その人はいました。
いつの間にか、その人はいました。
「…………」
返事はありません。
なにかがおかしいです。
普通ではありません。
変質者。
その単語が頭に浮かびましたが、そうでないことは、すでに理解しています。
そういう方向のおかしさではないのです。
その人、いえ、人と言っていいのでしょうか。
そこにいたのは、一言で言えば、鬼でした。
節分で大人が扮する鬼ではありません。
ナマハゲとも違います。
特殊メイクをしたリアルな鬼。
それが一番近いです。
いえ、違います。
特殊メイクをするのは、本物に近付けるためです。
本物であれば、特殊メイクをする必要などありません。
「ぐおおおおおぉぉぉぉぉッ!!!」
そこまで考えたところで、鬼が吠えながら、こちらに迫ってきました。
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