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不良退治4

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 放課後になりました。
 これから部活です。
 いつもならソラと一緒に行くのですが、今日はソラは先に行っています。
 その理由は私が日直だったからです。

「急がなくちゃ」

 仕方がないこととはいえ、ソラを先に行かせてしまったのは、痛恨の極みです。
 学校だから比較的安全だとは思うのですが、その油断が命取りになることもあります。
 だから、私は油断しません。
 なにせ学校というフィールドには、保健室や体育館裏といった危険地帯があるのです。
 そのような危険地帯では、蟻が嵌るのを待つ蟻地獄のように、性に飢えた野獣が童貞を待ち受けているのです。
 ソラがそのような場所に迷い込まないように保護する必要があります。
 私は重い鞄を抱えて走り出します。

「衣装を持ってきたのは、失敗だったかしら」

 大切な衣装とはいえ、その重量が足を引っ張ります。
 私が走る速度を落としてしまうのです。
 一分一秒が生死を分ける状況では、大切な衣装といえど放り出したくなります。
 けれど、これは私の切り札でもあります。
 だから、放り出すわけにはいきません。
 葛藤に苛まれながら、私は一刻も早くソラのもとに辿り着くために、走り続けます。

「そうだ。念のため……」

 急がば回れ、という諺があります。
 急いでいるときほど、たとえ回り道になったとしても、見落としがないようにしなければなりません。
 私は部室に向かう途中で、保健室と体育館裏を見て回ることにします。
 ソラがいる可能性は限りなく低いですが、万が一ということがあります。
 ソラが自発的に向かわなくても、他者によって連れ込まれる可能性もあるのです。
 事実、お花見のとき、ソラは数人の男に取り囲まれてナンパされていました。
 もし私が助けなければ、ソラの貞操は儚く散らされていたことでしょう。

 …………

 ガラッ!

 まずは、保健室です。
 私は保健室の扉を開けて、部屋の中を覗き込みます。

「きゃっ!」
「うわっ!」

 保健室の中では、養護教諭と男子生徒が同じベッドに腰掛けていました。
 二人の距離は近く、二人とも服が乱れているように見えます。

「こ、これは、その……」
「ち、違うんです!」

 重要なことは一つ。
 男子生徒がソラかどうかだけです。
 一目で分かりました。
 ソラではありません。

「……保健室は問題なし、と」

 ガラッ!

 私は扉を閉めて、保健室を後にしました。

 …………

 次は体育館裏です。
 私は二階の廊下から外を見ます。
 体育館裏は一階で見ようとすると死角が多いのですが、二階からは丸見えです。
 そのため、こっそりタバコを吸っていた生徒が、よく見つかるらしいです。
 ただし、歩く向きとは方向が違うので、何かあっても気づきづらい場所ではあります。
 だから、決闘や告白などに利用されることが多い場所でもあります。
 私は目を凝らして、その方向を見ます。
 すると、何人かの生徒がいるのが見えました。

「あれは……」

 一瞬、ドキリとしました。
 生徒の一人の姿がソラに似ていたからです。
 けれど、すぐに落ち着きました。
 似ているだけで、ソラではなかったからです。
 体育館裏にいるのはリクでした。
 リクの隣には女子生徒がいます。
 そして、向かい合うように数人の男子生徒がいます。

「何してるんだろ?」

 女子生徒には見覚えがあります。
 リクの取り巻きの一人です。
 リクはヤリチンなので、リクの取り巻きということは、きっとリクのセフレです。
 だから、リクと二人で体育館裏にいても不自然ではありません。
 体育館裏は『そういう行為』をするのに、うってつけの場所らしいからです。

 しかし、他にも男子生徒が複数人います。
 お揃いのユニフォームを着ているので、おそらく部活仲間でしょう。
 リクも同じユニフォームを着ているので、サッカー部だと思います。
 彼らは何のために、あそこにいるのでしょうか?

 私には思い当たることがありました。
 乱交プレイです。
 私には理解できないのですが、『そういう行為』を複数人でおこなうことに性的な快楽を覚える人種がいるそうです。
 もしそうなら、見て見ぬフリをするべきでしょう。
 自分に理解できないからといって、むやみに否定するのはよくありません。
 それでは人種差別になってしまいます。
 異文化は尊重すべきです。
 とはいえ、私はその文化に染まる気はありません。
 彼らは露出プレイが好きなのかも知れませんが、私に視姦の趣味はありません。
 だから立ち去ろうとしたところで、男子生徒がリクを殴る光景が目に入ってきました。
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