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不良退治2
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先輩モデルさんへの説明が終わりました。
後ろでカメラマンさんも一緒に聞いていたらしく、私の説明に対する感想を口にします。
「そ、そんなしょうもない理由で辞めるなんて……」
むっ。
幼馴染に夢を託し、私はそれをサポートする。
それのどこが、しょうもないというのでしょう。
今までお世話になったカメラマンさんとはいえ、今の暴言は許せません。
私が反論しようとしたところで、先に先輩モデルさんが動きます。
「話がややこしくなるから、ちょっと黙ってて」
ゴスッ!
「~~~~~っ!」
先輩モデルさんのチョップが炸裂して、カメラマンさんがうずくまります。
行き場を失い、私の怒りが霧散します。
そして、怒りが霧散したことで、私は冷静になります。
よく考えたら、私もカメラマンさんの夢を知らなかったのです。
カメラマンさんが私の夢を知らなくても仕方がありません。
そして、人の価値観というものは人それぞれなのです。
私がカメラマンさんの夢に共感できなかったのと同じように、カメラマンさんが私の夢に共感できなくても、仕方がないことなのでしょう。
先ほどの暴言は許せませんが、仕方がないこととして忘れることにします。
それに、ここで私がカメラマンさんと言い合いにでもなれば、先輩モデルさんのチョップがこちらにも向いてしまいそうです。
岩を砕くようなチョップの音を聴いた後でそんな行動をするほど、私は怖いもの知らずではありません。
私は素直に先輩モデルさんとの会話に戻ります。
「事情は分かったわ」
先輩モデルさんは、私の説明に納得しました。
けれど、私の状況に積極的に共感するというよりは、私の状況を理解したという雰囲気です。
なんだか、難しい顔をしています。
「でも、キラリンがモデルを辞めちゃうのは寂しいかな。友達だしね。考え直す気はない?」
先輩モデルさんの言葉を聞いて、私は考えます。
引き留める理由が、友達だから、という理由だったからです。
私も最初はモデルを辞めるつもりはありませんでした。
モデルのお仕事に未練はありませんが、色々な人にお世話になっていますし、友達もいます。
急に辞めると言えば、迷惑をかけることも分かっています。
それでも辞めようと思ったのは、優先度があるからです。
それさえ解決すれば、モデルを辞める必要はありません。
「部活を優先させてもらえるなら……」
呟きが口から漏れます。
考えがまとまって出た言葉では無かったのですが、私の言葉を聞いた先輩モデルさんの瞳がキラリンと光ったように見えました。
……ダジャレではありません。
光って見えたということを擬音で表しただけです。
「キラリンが部活を優先するのは、キラリン自身が部活に出たいからというより、幼馴染くんをおっぱいちゃんに取られなくないからだよね?」
「……そうです」
私にとって部活に出るのは、あくまでも手段です。
そして、幼馴染、つまり、ソラを取られなくないというのは、その通りです。
正確には『ソラ』ではなく『ソラの童貞』なのですが、似たようなものでしょう。
だから、私は先輩モデルさんの言葉に頷きました。
「ねえ、カメラマンさん。仕事のスケジュールをキラリンの都合に合わせてあげることってできる?」
「もちろん!」
私が頷いたのを見て、先輩モデルさんがカメラマンさんに問いかけると、カメラマンさんは即答しました。
どうやら、私の都合を優先してくれるようです。
我儘を言っているようで気が引けますが、それならモデルを辞めないでもよいかも知れません。
そんなふうに思い始めますが、先輩モデルさんの言葉はまだ続きました。
「でも、それだけじゃ足りないよね。キラリンの留守におっぱいちゃんが幼馴染くんを誘惑しちゃう可能性があるもんね」
「むっ」
確かにその通りです。
部活が無いからと言って、おっぱいお化けがソラを誘惑しないとは限らないのです。
おっぱいお化けは、魔王として覚醒する前から、お約束を無視した行動を取っていました。
魔王として覚醒した今、どんな行動をするのか予測不可能です。
やはり、モデルを辞めた方がよいでしょうか。
そんな考えが頭に浮かんだことが顔に出たのか、カメラマンさんが慌てます。
「あぁ! せっかく思い留まってくれそうなのに、余計なことを言わないでぇ!」
「慌てないで、要は幼馴染くんがおっぱいちゃんに誘惑されないようにすればいいってことでしょ? つまり――」
慌てるカメラマンさんを手で制して、先輩モデルさんがその方法を口にします。
「キラリンが魔女っ子の衣装を着ればいいのよ! 幼馴染くんが惚れちゃうような、エロかわいいヤツを!」
ババーンッ!という擬音が聴こえてきそうな勢いで、先輩モデルさんが言い切ります。
「キラリンに惚れちゃえば、おっぱいちゃんに誘惑されても、浮気することは無いわ!」
「なるほど」
一理あります。
私は言い寄ってくる女の方をなんとかしようとしていましたが、言い寄られても大丈夫なようにソラの方をなんとかする方法だってあります。
ソラを男の娘にする方法は上手く行きませんでしたが、私に惚れさせるという方法は試していません。
けれど、この方法には心配な点があります。
「よいアイデアだと思いますけど、上手くいくでしょうか?」
「なぁに? キラリンは幼馴染くんを惚れさせる自信がないの?」
先輩モデルさんが挑発するように言ってきますが、そういうことではありません。
「いえ、違います。ただ、先輩の彼氏さんは、先輩に惚れているのに浮気――」
ガッ!
「痛たたたッ!」
突然、こめかみに締め付けられるような痛みが走ります。
というより、頭蓋骨が割れそうです。
何が起こったかは見えませんでしたが、状況は把握できました。
元祖マジカルクラッシュです。
先輩モデルさんの彼氏さんが浮気したときに、彼氏さんの股間に炸裂するという拷問技です。
それが、目にも止まらぬ速さで、私のこめかみに炸裂したのです。
どうやら、私は先輩モデルさんの逆鱗に触れてしまったようです。
マズイです。
「上手くいくよね? そうよね? 惚れてるのに浮気するはずがないよね?」
「はいっ! もちろんですっ! 惚れているのに浮気するはずがありませんっ!」
「そう、よかった」
私が同意すると、先輩モデルさんは私を解放してくれました。
危なかったです。
ミシッ!という音が聴こえたときは、生命の危機を感じました。
「カメラマンさん。そんなわけで、キラリンにとっておきのエロかわいい魔女っ子の衣装を作ってあげて。それで、モデルを辞めるのを思い留まってくれるから」
「りょ、了解」
そういうことになりました。
後ろでカメラマンさんも一緒に聞いていたらしく、私の説明に対する感想を口にします。
「そ、そんなしょうもない理由で辞めるなんて……」
むっ。
幼馴染に夢を託し、私はそれをサポートする。
それのどこが、しょうもないというのでしょう。
今までお世話になったカメラマンさんとはいえ、今の暴言は許せません。
私が反論しようとしたところで、先に先輩モデルさんが動きます。
「話がややこしくなるから、ちょっと黙ってて」
ゴスッ!
「~~~~~っ!」
先輩モデルさんのチョップが炸裂して、カメラマンさんがうずくまります。
行き場を失い、私の怒りが霧散します。
そして、怒りが霧散したことで、私は冷静になります。
よく考えたら、私もカメラマンさんの夢を知らなかったのです。
カメラマンさんが私の夢を知らなくても仕方がありません。
そして、人の価値観というものは人それぞれなのです。
私がカメラマンさんの夢に共感できなかったのと同じように、カメラマンさんが私の夢に共感できなくても、仕方がないことなのでしょう。
先ほどの暴言は許せませんが、仕方がないこととして忘れることにします。
それに、ここで私がカメラマンさんと言い合いにでもなれば、先輩モデルさんのチョップがこちらにも向いてしまいそうです。
岩を砕くようなチョップの音を聴いた後でそんな行動をするほど、私は怖いもの知らずではありません。
私は素直に先輩モデルさんとの会話に戻ります。
「事情は分かったわ」
先輩モデルさんは、私の説明に納得しました。
けれど、私の状況に積極的に共感するというよりは、私の状況を理解したという雰囲気です。
なんだか、難しい顔をしています。
「でも、キラリンがモデルを辞めちゃうのは寂しいかな。友達だしね。考え直す気はない?」
先輩モデルさんの言葉を聞いて、私は考えます。
引き留める理由が、友達だから、という理由だったからです。
私も最初はモデルを辞めるつもりはありませんでした。
モデルのお仕事に未練はありませんが、色々な人にお世話になっていますし、友達もいます。
急に辞めると言えば、迷惑をかけることも分かっています。
それでも辞めようと思ったのは、優先度があるからです。
それさえ解決すれば、モデルを辞める必要はありません。
「部活を優先させてもらえるなら……」
呟きが口から漏れます。
考えがまとまって出た言葉では無かったのですが、私の言葉を聞いた先輩モデルさんの瞳がキラリンと光ったように見えました。
……ダジャレではありません。
光って見えたということを擬音で表しただけです。
「キラリンが部活を優先するのは、キラリン自身が部活に出たいからというより、幼馴染くんをおっぱいちゃんに取られなくないからだよね?」
「……そうです」
私にとって部活に出るのは、あくまでも手段です。
そして、幼馴染、つまり、ソラを取られなくないというのは、その通りです。
正確には『ソラ』ではなく『ソラの童貞』なのですが、似たようなものでしょう。
だから、私は先輩モデルさんの言葉に頷きました。
「ねえ、カメラマンさん。仕事のスケジュールをキラリンの都合に合わせてあげることってできる?」
「もちろん!」
私が頷いたのを見て、先輩モデルさんがカメラマンさんに問いかけると、カメラマンさんは即答しました。
どうやら、私の都合を優先してくれるようです。
我儘を言っているようで気が引けますが、それならモデルを辞めないでもよいかも知れません。
そんなふうに思い始めますが、先輩モデルさんの言葉はまだ続きました。
「でも、それだけじゃ足りないよね。キラリンの留守におっぱいちゃんが幼馴染くんを誘惑しちゃう可能性があるもんね」
「むっ」
確かにその通りです。
部活が無いからと言って、おっぱいお化けがソラを誘惑しないとは限らないのです。
おっぱいお化けは、魔王として覚醒する前から、お約束を無視した行動を取っていました。
魔王として覚醒した今、どんな行動をするのか予測不可能です。
やはり、モデルを辞めた方がよいでしょうか。
そんな考えが頭に浮かんだことが顔に出たのか、カメラマンさんが慌てます。
「あぁ! せっかく思い留まってくれそうなのに、余計なことを言わないでぇ!」
「慌てないで、要は幼馴染くんがおっぱいちゃんに誘惑されないようにすればいいってことでしょ? つまり――」
慌てるカメラマンさんを手で制して、先輩モデルさんがその方法を口にします。
「キラリンが魔女っ子の衣装を着ればいいのよ! 幼馴染くんが惚れちゃうような、エロかわいいヤツを!」
ババーンッ!という擬音が聴こえてきそうな勢いで、先輩モデルさんが言い切ります。
「キラリンに惚れちゃえば、おっぱいちゃんに誘惑されても、浮気することは無いわ!」
「なるほど」
一理あります。
私は言い寄ってくる女の方をなんとかしようとしていましたが、言い寄られても大丈夫なようにソラの方をなんとかする方法だってあります。
ソラを男の娘にする方法は上手く行きませんでしたが、私に惚れさせるという方法は試していません。
けれど、この方法には心配な点があります。
「よいアイデアだと思いますけど、上手くいくでしょうか?」
「なぁに? キラリンは幼馴染くんを惚れさせる自信がないの?」
先輩モデルさんが挑発するように言ってきますが、そういうことではありません。
「いえ、違います。ただ、先輩の彼氏さんは、先輩に惚れているのに浮気――」
ガッ!
「痛たたたッ!」
突然、こめかみに締め付けられるような痛みが走ります。
というより、頭蓋骨が割れそうです。
何が起こったかは見えませんでしたが、状況は把握できました。
元祖マジカルクラッシュです。
先輩モデルさんの彼氏さんが浮気したときに、彼氏さんの股間に炸裂するという拷問技です。
それが、目にも止まらぬ速さで、私のこめかみに炸裂したのです。
どうやら、私は先輩モデルさんの逆鱗に触れてしまったようです。
マズイです。
「上手くいくよね? そうよね? 惚れてるのに浮気するはずがないよね?」
「はいっ! もちろんですっ! 惚れているのに浮気するはずがありませんっ!」
「そう、よかった」
私が同意すると、先輩モデルさんは私を解放してくれました。
危なかったです。
ミシッ!という音が聴こえたときは、生命の危機を感じました。
「カメラマンさん。そんなわけで、キラリンにとっておきのエロかわいい魔女っ子の衣装を作ってあげて。それで、モデルを辞めるのを思い留まってくれるから」
「りょ、了解」
そういうことになりました。
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