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高校生活5

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「ソラ、キララ、一緒に食べようぜ」

 リクがずかずかと歩いてきます。
 その後ろをぞろぞろと取り巻きがついてきます。
 取り巻きは全員、女子です。
 取り巻きの狙いがリクだということは知っていますが、私は警戒します。
 なぜなら、リクはソラと双子だからです。
 性格は違いますが、顔は同じです。
 取り巻きの誰かが、狙いをリクからソラに変えないとも限りません。
 だから、私は言います。

「帰れ、ヤリチン。迷惑だ」
「こんな場所で、ヤリチンって言うな! それに、俺はヤリチンじゃねえ!」

 リクが周囲を気にしながら文句を言ってきます。
 けど、私は気にしません。
 なぜなら、リクがヤリチンであることは事実だからです。
 私は何も嘘を言っていません。

「さっさと、そのビッチどもと、しけ込んだら? 体育倉庫とかオススメよ。薄暗くて音も漏れにくいから」
「しけ込まねえよ!」

 せっかく私が親切にオススメの場所を教えてあげているというのに、リクはソラの隣に勝手に座ります。
 どうやら、ここで昼食を食べるつもりのようです。
 リクが座ったことで、取り巻き達も机や椅子を動かして周囲に座ります。
 はっきり言って迷惑です。

「さっさと食べようぜ」

 元凶であるリクが、購買で買ってきたと思われるパンを取り出します。
 仕方ありません。
 急いで食べてしまうことにします。

「おい、なんだそれ」

 一口食べたところで、ふいにリクが言いました。
 視線は私とソラのお弁当に向いています。

「もしかして、キララが作ったのか? 俺の分は?」
「あるわけないでしょう」
「なんでソラの分だけなんだよ。俺の分も作ってくれてもいいだろ」
「ヤリチンは摂取したタンパク質をすぐに射精してしまうのでしょう? プロテインでも飲んでいたらいいのよ」
「そんなことしねえ!」

 せっかく私が親切に栄養バランスについて教えてあげているというのに、リクが否定してきます。
 なんと、恩を仇で返してきたのです。
 私が文句の一つでも言おうと口を開いたところで、隣からつんつんと突かれました。
 突いてきたのはサチコです。

「あのー、キララ。食事中だし、その……保健体育的な単語は言わない方が……」
「?」

 何のことか分からずサチコを見ると、彼女の頬が赤いことに気付きます。
 周囲を見渡すと、取り巻き女子達も顔が赤いです。
 なぜでしょう。
 私は学術的な観点から栄養について語っただけなのですが、何かおかしな内容があったでしょうか。
 まあ、いいです。
 リクの精子が足りなくなったところで、私は困りません。
 食事に戻ることにします。

「ねえ、リク。よかったら、一口食べる?」

 すると、ソラがリクにそんなことを言っていました。
 栄養バランスを無視した食事をするリクを哀れに思ったのでしょう。
 ソラは優しいです。
 本当は栄養バランスを計算したお弁当なので、人に分けてしまうとバランスが崩れてしまうのですが、ソラの優しさに免じてリクが一口食べることを黙認してあげることにします。
 ソラの提案にリクは迷っていたようでしたが、興味があったのでしょう。
 一口もらうことに決めたようです。
 もらうオカズを選ぶべく、お弁当を覗き込みます。

「……変わったオカズが多いな」

 リクがそんな感想を漏らします。
 変わったとは失礼な表現ですが、ヤリチンはタンパク質が不足して脳が弱り語彙力が低いでしょうから、大目に見てあげることにします。
 ソラのために希少な食材を使っているのは確かなのです。

「……これは何だ?」
「両生類の黒焼きね」
「……こっちは?」
「人型をした根菜類のきんぴらよ」
「…………」

 満月の夜に収穫したハーブを味付けに使っていて、どれも味には自信があります。
 それに魔力を高める効果もあります。
 いずれ魔法使いになるソラのために、心を込めて作ったお弁当です。

「どれも美味しいよ。これなんか、どう?」

 ソラがリクに勧めたのは、爬虫類の血を練り込んだ肉団子です。
 鉄分が豊富で貧血にもオススメの一品です。
 リクに食べさせるのは勿体ないですが、一つくらいならよいでしょう。

「……俺、今日はカツサンド買ってきたから遠慮しておく」
「そう?」

 リクはそう言って、お弁当から目を逸らし、買って来たというカツサンドに噛り付きます。
 ソラの優しさを断るなんて、リクは許せません。
 けど、別にリクに食べさせたいわけではないので、ソラに食べてもらえれば私は満足です。
 ソラはリクに勧めた肉団子を美味しそうに食べてくれます。
 あーん!とかしてあげたくなります。

「ソラ、ハーブティーもあるわよ」
「ありがとう。もらうよ」

 お邪魔虫はいますが、楽しい昼休みがすぎていきました。
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