上 下
13 / 87

高校生活3

しおりを挟む
 慎重に進んでいたつもりでした。
 でも、戦場では何が起こるか分かりません。
 そして、実際にそれは起こってしまいました。

「ソラ君、キララさん、おはよう」
「!」

 私は戦慄します。
 敵が後ろに現れたからです。
 奇襲攻撃です。
 バックアタックというやつです。
 ピンチです。
 私はソラを護るために、ソラの前を歩いていました。
 しかし、バックアタックされたときは、前後が逆になってしまいます。
 これでは、ソラを護ることができません。
 ソラが危険に晒されてしまいます。
 私は慌てて振り返ります。

「あ、加藤さん、おは……」

 しかし、一歩遅かったです。
 ソラが敵から攻撃を受けてしまいました。

「二人とも早いね」

 おっぱいお化けが、ぽよんっ♪と二つの塊を跳ねさせて攻撃してきます。
 けど、それだけじゃありません。
 おっぱいお化けは、さらなる必殺技を繰り出してきたのです。

 ズバッ!

 そんな効果音が聴こえてきたかと思いました。
 童貞を袈裟懸けに斬りつける必殺技。
 パイスラッシュです。

 おっぱいお化けは、今日は体育の授業があるのでしょう。
 体操服が入っていると思われるバッグをたすき掛けにしています。
 その紐を二つの塊の間を斜めに走り抜けさせることにより、攻撃力を高めているのです。
 鞘を利用して日本刀を振るう威力を高める、居合い抜きと同じ原理です。
 居合い抜きは素人が真似をすると、自分自身を傷付けてしまうと聞きます。
 しかし、おっぱいお化けに、自分自身を傷付けている様子はありません。
 どうやら、おっぱいお化けは、達人の領域にいるようです。

「おは……よう」

 ソラは必殺技をまともに食らってしまったらしく、顔を真っ赤にして視線を逸らしています。
 くっ。
 私は護衛失格です。
 みすみすソラへの攻撃を許してしまうなんて。
 けど、まだ手遅れではありません。
 まだ、ソラの童貞は無事です。
 これ以上、おっぱいお化けからの攻撃を受けないうちに、一刻も早くソラを安全な場所に隔離しなければなりません。

「おはよう、おっぱ……加藤さん」

 私はさりげなくソラの前に移動して、ソラを背後にかばいます。
 あくまで、さりげなくです。
 野性の獣を前にして急な行動をとると、襲い掛かられてしまうと聞きます。
 凶悪な武器を振りかざすおっぱいお化けも、似たような生態をしている可能性が高いです。
 あくまで、さりげなく行動して、ソラを護らなければなりません。
 私はソラの視界を遮り、おっぱいお化けの必殺技からソラをガードします。
 この必殺技の怖ろしいところは、攻撃範囲が広いところです。
 視界に入るだけで、童貞はダメージを受けてしまいます。

「……加藤さんは、なぜここに?」

 私は慎重に言葉を選びながら、おっぱいお化けに情報戦をしかけます。
 なにも強い武器を持つことだけが、戦いに勝つ方法ではないのです。
 ペンは剣よりも強し。
 そういう言葉があるように、情報が武器より強いことだってあります。

「私は図書室に行こうと思って。この高校の図書室は、小説も置いてあるみたいなの」

 しかし、おっぱいお化けは情報戦にも長けているようです。
 私とソラを先回りしようとしています。
 迂闊でした。
 おっぱいお化けはサブカルチャー研究部に入部したのです。
 小説が好きな可能性は予想できたはずです。
 それなのに、敵についての分析を怠り、みすみすソラへの接近を許してしまうとは。
 おっぱいお化けの生態さえ知っていれば、生息地に近付くようなことはしなかったのに、過去の自分の愚行が悔やまれます。
 けど、今は後悔している余裕すらありません。
 一刻も早く安全地帯まで離脱しなければ。

「そうなんだ。実は僕たちも……」
「私達は教室に行くところなの」

 私はソラの言葉を遮って、おっぱいお化けに話しかけます。
 授業開始までの数十分を、おっぱいお化けと対峙するなんて危険すぎます。
 朝早くて人が少ないのをいいことに、いつソラの童貞を咥え込もうとしてくるか、分かったものではありません。
 私は緊張して、おっぱいお化けの反応を待ちます。
 もし、これで私とソラについてくるなどと言い出したら、この場でソラを咥え込もうとしてきているのは確実です。
 けど、おっぱいお化けは、あっさりと身体の向きを変えます。

「じゃあ、私は行くわね。二人とも、また放課後」

 そう言えて、おっぱいお化けは去って行きました。
 どうやら、勝負は放課後に持ち越そうということのようです。
 助かりました。
 悔しいですけど、準備不足もあって、この場でおっぱいお化けに勝つことは難しかったでしょう。
 命拾いしました。

「ねえ、キララ。図書室に行くんじゃなかったの?」

 ソラが不思議そうに尋ねてきますが、緊張感から解放された私は、曖昧に返事をすることしかできませんでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

世にも異様な物語

板倉恭司
大衆娯楽
 娯楽性に極振りした短編集です。コメディからホラーまで、内容はいろいろです。グロい内容のものもありますので、注意してください。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...