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第十三章 シンデレラ
206.シンデレラ(その2)
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寒さが残る季節。
ソレはやってきた。
「シンデレラ様、お客様です」
「誰?まだ雪が残っている場所もあるのに、気が早い観光客?」
冬の間も観光客は来ていた。
だけど、それは冬の最初の方だけだ。
雪が積もり道が通れなくなると帰ることができなくなる。
だから、真冬に来る観光客はほとんどいない。
いるのは、冬の間中ずっと滞在している金持ちくらいだ。
後は、その連中に娯楽を提供するブレーメン王国から出稼ぎに来ている団体だろうか。
ブレーメン王国との交渉はスムーズにいき、秋にはもう出稼ぎの団体がやってきていた。
演奏や劇など、幅広い娯楽を提供してくれるので、観光客は喜んでいるようだ。
ちなみに、その団体にはミシェルもいた。
楽器が上手くなりたいと言っていたのだけど、今は女優として劇に出演している。
大人気らしい。
私もたまに見に行くのだけど、私の役をやるのだけは止めてくれないだろうか。
見ていると、むずがゆくなる。
私はあんなに可憐ではない。
それはともかく、そんなわけで、冬の間は雪のせいで新しく観光客がやってくることはないけど、春になったらやってくるだろうとは思っていた。
でも、まだ雪に覆われている道が多いから、もう少し後だと考えていたのだ。
「いえ、それが・・・」
だけど、どうも観光客ではないようだ。
私に伝えにきてくれたリンゴが言い淀む。
「まだ寒い季節だというのに活気があって、よい街ですな」
「メフィ」
リンゴの背後から姿を現したのは、アヴァロン王国にいるはずのメフィだった。
*****
リンゴにお茶をお願いして、メフィと部屋に二人きりになる。
「他には誰がきたの?」
「いえ、一人で来ました。皆さん忙しそうでしたので」
普通なら、こんな子供が一人で隣の国まで来ることなんてできない。
でも、メフィはただの子供ではない。
だから私の感想としては、
「ふーん」
というくらいのものだ。
けど、メフィがただの観光に来たとも思えない。
いや、観光に来る可能性が無いわけではないけど、それならもっと早く来ると思う。
「アーサーは元気?一応、手紙で帰れない事情は伝えてあるけど」
「寝不足気味のようですが、元気といえば元気ですな。グィネヴィア殿と浮気もしていないようです」
「それは別に心配していないけど」
「おや、そうですか」
メフィは意外そうにしてくるけど、私は本当に心配はしていない。
アーサー王子とグィネヴィアは身分的には釣り合っているし、そうなったらそうなったで別にいいと思っている。
それに、王子なら複数の妃を娶ってもおかしくはない。
その場合、身分から考えたら、グィネヴィアが第一妃で、私が第二妃になるのが普通だ。
だから、本当に心配はしていない。
ただ、私の追いかけていたアーサー王子が、グィネヴィアを追いかけるのを想像すると、ほんの少しだけ、もやっとする。
これが、親離れする子供を見守る、親の心境なのだろうか。
アーサー王子は、研究に熱が入ると時間を忘れる子供っぽいところがあるから、婚約者というよりも手のかかる子供という感じがして、恋愛感情よりも母性本能が刺激されるのだ。
「それで、メフィは何をしに来たの?観光なら歓迎するけど」
アーサー王子に変わりはないようだし、私はさっそく本題に入る。
一人で来たと言っていたけど、まさか観光ということはないだろう。
その疑問はメフィの次の言葉で解決する。
「観光も面白そうですが、もっと面白いことが起きているので、教えて差し上げようと思いましてな」
やはり、観光ではないらしい。
でも、メフィにとって面白いことか。
ろくでもない事の気がする。
「バビロン王国から襲撃を受けています」
予想通り、ろくでもないことだった。
「バビロン王国の軍が攻めてきたの?」
ハーメルン王国にちょっかいをかけていたみたいだから、何か企んでいるとは思っていたけど、とうとう行動を起こしたみたいだ。
また、『彼女』が裏で糸を引いているのだろうか。
一度アーサー王子の銃によって敗北しているのに懲りずに攻めてきたということは、何か対策を講じた可能性がある。
だとすれば、油断はできない。
そんなことを考えていたのだけど、メフィの言葉には続きがあった。
「攻めてきたのは、軍ではありません」
「軍じゃない?」
「攻めてきたのは、大量の吸血鬼です。そして、攻められているのはアヴァロン王国だけではありません。ハーメルン王国とブレーメン王国もです」
・・・・・
「国民達は、バビロン王国が地獄と繋がったのではないかと噂しているようですな」
・・・・・
「なんの冗談?」
私はメフィにそう問いかけるけど、メフィがそんなつまらない冗談を言うはずがないことは分かっていた。
*****
メフィと世間話をしている状況ではないと判断した私は、師匠とリンゴ達を呼び出した。
師匠は軍師をしていたくらいだから何か良い意見が出るかも知れないし、リンゴ達には何かをやってもらう可能性があるから、一緒に話を聞いてもらうことにしたのだ。
正直、このメンバーで話をしたからといって何かが解決するような気はしないけど、すぐに集めることができるのがこのメンバーだけなのだから仕方がない。
「それで、戦況はどうなのじゃ?できれば、何があったのかも含めて聞きたいのじゃが」
師匠がメフィに尋ねる。
尋ねた内容は、私も知りたい内容だ。
異常事態だということは分かるけど、何があったのか、さっぱり分からない。
メフィが言うからには冗談ではないのだろうけど、吸血鬼なんていうおとぎ話にしか出てこないような存在が攻めてきたというのは冗談にしか聞こえない。
「十日ほど前でしょうか?バビロン王国から大量の人間が歩いてきました」
メフィが説明を始める。
「馬車にも乗らず、荷物も持たずに、ただ歩いてきたのです。その怪しい出で立ちに国境を警備する兵士達は警戒したようですが、相手が武器を持っていないこともあり、近くまで接近を許してしまったようです」
まあ、相手が怪しいからといって、問答無用で攻撃するわけにも行かないだろう。
「歩いてきた人間達は、国境まで来ると兵士達に襲い掛かりました。当然、兵士達は迎撃しましたが、結果としては国境の内側への侵入を許すことになりました」
戦闘になったのは予想できる。
問題は、なぜ武器を持っていない相手の侵入を許すことになったかだ。
しかも、侵入されてから敵だと気付いたわけではなく、国境の時点で敵だと分かったにも関わらずだ。
「兵士達がそんなに軟弱だとは思えんがのう」
師匠も同じことを考えたようだ。
首を傾げる。
「侵入を許した理由は二つあります。一つは敵が軍隊のように集団で接近してきたわけではなく、散り散りに接近してきたということ」
なるほど。
国境を警備するといっても、国の境目を隙間なく警備するなんてことは、兵士の数からして現実的に不可能だ。
だから普通は、需要な地点に兵士を配備して、周囲を巡回させることで対応する。
でもそれだと、広範囲にバラバラに接近された場合に、侵入を完全に防ぐことはできない。
戦争ならそんなことをしても相手に大した損害を与えられないから意味はないけど、侵入すること自体が目的なら効果的だ。
「もう一つは、敵が厄介な存在だったということ」
「厄介?」
「人間とは思えない怪力で襲い掛かってくる上に、剣で斬っても槍で突いても痛みを感じた様子は無い。さらに、そいつらに噛まれたり引っ掻かれたりした兵士は、しばらくして太陽や水を怖れるようになって戦えなくなる」
二つ目の理由は、予想もしなかった内容だった。
でも、メフィの最初の言葉を納得させるものだった。
「吸血鬼」
リンゴの呟きが聞こえてきた。
そうだ。
その存在を思い起こさせる。
リンゴ達は寒気を感じたように、身体を震わせる。
「それは、厄介じゃのう」
師匠も顔をしかめる。
けど、リンゴ達と違って、未知の存在に対して恐怖を感じているわけではない。
ただ、敵として厄介だと言っているように聞こえる。
「師匠なら『治療』できる?」
だから、私は尋ねる。
ほんの少しの期待を込めて。
「できる可能性が無いとは言わんが・・・」
でも、いくら師匠でも、どんな期待にでも応えてくれるわけではない。
それに、仮に『治療』ができたとしても、『患者』が増える方が早そうだ。
それに、肝心の『治療』する相手は、こちらに襲い掛かってくるのだ。
現実的に『治療』は無理だと言っていいだろう。
諦めるしかない。
「国境を通過した人間達は、北を目指して進行を続けています。塀に囲まれた王都は無事ですが、周辺の街や村には程度の差はあれ、被害が出ているようです」
「襲撃されているのは、アヴァロン王国だけじゃないって言っていたわね。他の国の状況はわかる?」
私はすぐに気持ちを切り替えて、状況の把握に努めることにする。
「さあ?そこまではわかりかねます」
メフィなら他の国の状況も知っているかも知れないと思って尋ねたのだけど、当てが外れる。
あるいは、本当は知っていて教えてくれないのかも知れないけど、問い詰めても教えてはくれないだろう。
メフィは私に無条件で協力してくれるわけじゃない。
これ以上の情報はくれそうにない。
今までの情報で対処するしかないだろう。
「アヴァロン王国は銃、ハーメルン王国は鎧があるから持ちこたえられるだろうけど、ブレーメン王国は大丈夫かしら?」
私が情報を整理しようとしたところで、部屋の外が騒がしくなる。
私が指示するまでもなくリンゴが様子を見に行こうとするが、それより先に扉が乱暴に開かれる。
駆け込んできたのは、ミシェルだった。
「あの、姉様!ブレーメン王国が襲撃されているという連絡が!」
メフィの話だと、アヴァロン王国だけでなく、他の国も襲われているということだった。
おそらく、襲われたのは同じタイミングなのだろう。
つまり、ここまで情報が伝わってくるタイミングも同じくらいということだ。
「さて、どうしますか?女神様?」
メフィが皮肉な言葉と楽しそうな笑顔で、こちらを見ていた。
ソレはやってきた。
「シンデレラ様、お客様です」
「誰?まだ雪が残っている場所もあるのに、気が早い観光客?」
冬の間も観光客は来ていた。
だけど、それは冬の最初の方だけだ。
雪が積もり道が通れなくなると帰ることができなくなる。
だから、真冬に来る観光客はほとんどいない。
いるのは、冬の間中ずっと滞在している金持ちくらいだ。
後は、その連中に娯楽を提供するブレーメン王国から出稼ぎに来ている団体だろうか。
ブレーメン王国との交渉はスムーズにいき、秋にはもう出稼ぎの団体がやってきていた。
演奏や劇など、幅広い娯楽を提供してくれるので、観光客は喜んでいるようだ。
ちなみに、その団体にはミシェルもいた。
楽器が上手くなりたいと言っていたのだけど、今は女優として劇に出演している。
大人気らしい。
私もたまに見に行くのだけど、私の役をやるのだけは止めてくれないだろうか。
見ていると、むずがゆくなる。
私はあんなに可憐ではない。
それはともかく、そんなわけで、冬の間は雪のせいで新しく観光客がやってくることはないけど、春になったらやってくるだろうとは思っていた。
でも、まだ雪に覆われている道が多いから、もう少し後だと考えていたのだ。
「いえ、それが・・・」
だけど、どうも観光客ではないようだ。
私に伝えにきてくれたリンゴが言い淀む。
「まだ寒い季節だというのに活気があって、よい街ですな」
「メフィ」
リンゴの背後から姿を現したのは、アヴァロン王国にいるはずのメフィだった。
*****
リンゴにお茶をお願いして、メフィと部屋に二人きりになる。
「他には誰がきたの?」
「いえ、一人で来ました。皆さん忙しそうでしたので」
普通なら、こんな子供が一人で隣の国まで来ることなんてできない。
でも、メフィはただの子供ではない。
だから私の感想としては、
「ふーん」
というくらいのものだ。
けど、メフィがただの観光に来たとも思えない。
いや、観光に来る可能性が無いわけではないけど、それならもっと早く来ると思う。
「アーサーは元気?一応、手紙で帰れない事情は伝えてあるけど」
「寝不足気味のようですが、元気といえば元気ですな。グィネヴィア殿と浮気もしていないようです」
「それは別に心配していないけど」
「おや、そうですか」
メフィは意外そうにしてくるけど、私は本当に心配はしていない。
アーサー王子とグィネヴィアは身分的には釣り合っているし、そうなったらそうなったで別にいいと思っている。
それに、王子なら複数の妃を娶ってもおかしくはない。
その場合、身分から考えたら、グィネヴィアが第一妃で、私が第二妃になるのが普通だ。
だから、本当に心配はしていない。
ただ、私の追いかけていたアーサー王子が、グィネヴィアを追いかけるのを想像すると、ほんの少しだけ、もやっとする。
これが、親離れする子供を見守る、親の心境なのだろうか。
アーサー王子は、研究に熱が入ると時間を忘れる子供っぽいところがあるから、婚約者というよりも手のかかる子供という感じがして、恋愛感情よりも母性本能が刺激されるのだ。
「それで、メフィは何をしに来たの?観光なら歓迎するけど」
アーサー王子に変わりはないようだし、私はさっそく本題に入る。
一人で来たと言っていたけど、まさか観光ということはないだろう。
その疑問はメフィの次の言葉で解決する。
「観光も面白そうですが、もっと面白いことが起きているので、教えて差し上げようと思いましてな」
やはり、観光ではないらしい。
でも、メフィにとって面白いことか。
ろくでもない事の気がする。
「バビロン王国から襲撃を受けています」
予想通り、ろくでもないことだった。
「バビロン王国の軍が攻めてきたの?」
ハーメルン王国にちょっかいをかけていたみたいだから、何か企んでいるとは思っていたけど、とうとう行動を起こしたみたいだ。
また、『彼女』が裏で糸を引いているのだろうか。
一度アーサー王子の銃によって敗北しているのに懲りずに攻めてきたということは、何か対策を講じた可能性がある。
だとすれば、油断はできない。
そんなことを考えていたのだけど、メフィの言葉には続きがあった。
「攻めてきたのは、軍ではありません」
「軍じゃない?」
「攻めてきたのは、大量の吸血鬼です。そして、攻められているのはアヴァロン王国だけではありません。ハーメルン王国とブレーメン王国もです」
・・・・・
「国民達は、バビロン王国が地獄と繋がったのではないかと噂しているようですな」
・・・・・
「なんの冗談?」
私はメフィにそう問いかけるけど、メフィがそんなつまらない冗談を言うはずがないことは分かっていた。
*****
メフィと世間話をしている状況ではないと判断した私は、師匠とリンゴ達を呼び出した。
師匠は軍師をしていたくらいだから何か良い意見が出るかも知れないし、リンゴ達には何かをやってもらう可能性があるから、一緒に話を聞いてもらうことにしたのだ。
正直、このメンバーで話をしたからといって何かが解決するような気はしないけど、すぐに集めることができるのがこのメンバーだけなのだから仕方がない。
「それで、戦況はどうなのじゃ?できれば、何があったのかも含めて聞きたいのじゃが」
師匠がメフィに尋ねる。
尋ねた内容は、私も知りたい内容だ。
異常事態だということは分かるけど、何があったのか、さっぱり分からない。
メフィが言うからには冗談ではないのだろうけど、吸血鬼なんていうおとぎ話にしか出てこないような存在が攻めてきたというのは冗談にしか聞こえない。
「十日ほど前でしょうか?バビロン王国から大量の人間が歩いてきました」
メフィが説明を始める。
「馬車にも乗らず、荷物も持たずに、ただ歩いてきたのです。その怪しい出で立ちに国境を警備する兵士達は警戒したようですが、相手が武器を持っていないこともあり、近くまで接近を許してしまったようです」
まあ、相手が怪しいからといって、問答無用で攻撃するわけにも行かないだろう。
「歩いてきた人間達は、国境まで来ると兵士達に襲い掛かりました。当然、兵士達は迎撃しましたが、結果としては国境の内側への侵入を許すことになりました」
戦闘になったのは予想できる。
問題は、なぜ武器を持っていない相手の侵入を許すことになったかだ。
しかも、侵入されてから敵だと気付いたわけではなく、国境の時点で敵だと分かったにも関わらずだ。
「兵士達がそんなに軟弱だとは思えんがのう」
師匠も同じことを考えたようだ。
首を傾げる。
「侵入を許した理由は二つあります。一つは敵が軍隊のように集団で接近してきたわけではなく、散り散りに接近してきたということ」
なるほど。
国境を警備するといっても、国の境目を隙間なく警備するなんてことは、兵士の数からして現実的に不可能だ。
だから普通は、需要な地点に兵士を配備して、周囲を巡回させることで対応する。
でもそれだと、広範囲にバラバラに接近された場合に、侵入を完全に防ぐことはできない。
戦争ならそんなことをしても相手に大した損害を与えられないから意味はないけど、侵入すること自体が目的なら効果的だ。
「もう一つは、敵が厄介な存在だったということ」
「厄介?」
「人間とは思えない怪力で襲い掛かってくる上に、剣で斬っても槍で突いても痛みを感じた様子は無い。さらに、そいつらに噛まれたり引っ掻かれたりした兵士は、しばらくして太陽や水を怖れるようになって戦えなくなる」
二つ目の理由は、予想もしなかった内容だった。
でも、メフィの最初の言葉を納得させるものだった。
「吸血鬼」
リンゴの呟きが聞こえてきた。
そうだ。
その存在を思い起こさせる。
リンゴ達は寒気を感じたように、身体を震わせる。
「それは、厄介じゃのう」
師匠も顔をしかめる。
けど、リンゴ達と違って、未知の存在に対して恐怖を感じているわけではない。
ただ、敵として厄介だと言っているように聞こえる。
「師匠なら『治療』できる?」
だから、私は尋ねる。
ほんの少しの期待を込めて。
「できる可能性が無いとは言わんが・・・」
でも、いくら師匠でも、どんな期待にでも応えてくれるわけではない。
それに、仮に『治療』ができたとしても、『患者』が増える方が早そうだ。
それに、肝心の『治療』する相手は、こちらに襲い掛かってくるのだ。
現実的に『治療』は無理だと言っていいだろう。
諦めるしかない。
「国境を通過した人間達は、北を目指して進行を続けています。塀に囲まれた王都は無事ですが、周辺の街や村には程度の差はあれ、被害が出ているようです」
「襲撃されているのは、アヴァロン王国だけじゃないって言っていたわね。他の国の状況はわかる?」
私はすぐに気持ちを切り替えて、状況の把握に努めることにする。
「さあ?そこまではわかりかねます」
メフィなら他の国の状況も知っているかも知れないと思って尋ねたのだけど、当てが外れる。
あるいは、本当は知っていて教えてくれないのかも知れないけど、問い詰めても教えてはくれないだろう。
メフィは私に無条件で協力してくれるわけじゃない。
これ以上の情報はくれそうにない。
今までの情報で対処するしかないだろう。
「アヴァロン王国は銃、ハーメルン王国は鎧があるから持ちこたえられるだろうけど、ブレーメン王国は大丈夫かしら?」
私が情報を整理しようとしたところで、部屋の外が騒がしくなる。
私が指示するまでもなくリンゴが様子を見に行こうとするが、それより先に扉が乱暴に開かれる。
駆け込んできたのは、ミシェルだった。
「あの、姉様!ブレーメン王国が襲撃されているという連絡が!」
メフィの話だと、アヴァロン王国だけでなく、他の国も襲われているということだった。
おそらく、襲われたのは同じタイミングなのだろう。
つまり、ここまで情報が伝わってくるタイミングも同じくらいということだ。
「さて、どうしますか?女神様?」
メフィが皮肉な言葉と楽しそうな笑顔で、こちらを見ていた。
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