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第十二章 ブレーメンの音楽
194.芸術の都(その1)
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「ブレーメンは芸術の国と言われておる」
「ふーん」
流れる風景を眺めながら、師匠の話を聞き流す。
「音楽が一番有名じゃが、絵画や彫刻なども有名じゃ。つまり、芸術全般じゃな」
「へー」
師匠はその国に行ったことがあるらしく、先ほどから説明してくれている。
「芸術を目当てに訪れる観光客が落とす金が、重要な収入源になっておる」
「そう」
しかし、興味が無いから耳に入るだけで頭に入って来ない。
「料理も有名で、見た目の鮮やかさは、なかなかのものじゃ」
「味は?」
「見た目が優先らしい」
「ふぅ」
少し興味がある話題かと思ったら、そうでもなかったようだ。
料理が美味しければ、それを食べることができるという理由で、テンションが上がるかと思ったのだけど。
「・・・ついに、相槌ですらなくなったのう」
師匠が困ったように言う。
現在、私と師匠は馬車に揺られながら、ブレーメン王国へ向かっている。
今回は、アーサー王子もいないし、メフィも留守番だ。
荒事をする予定はないから、MMQもついて来ていない。
普通の護衛の騎士とメイドだけだ。
「演奏を聴きに行くだけだしね。行き先の国について、そんなに知らなくてもいいかなと思ってる」
「国が違えば、文化が違う。自国では何でもないことが、他国では非礼にあたることもある。トラブルを起こさないためには、知っておくことは重要なんじゃがのう」
「そうは言っても、私に芸術は分からないしね。とりあえず、『素晴らしいですね』と言っておけばいいんでしょ?」
「身も蓋もないのう」
師匠が呆れたように言う。
けど、芸術の良さなんて一朝一夕に分かるようになるものじゃない。
中途半端な知識をひけらかせても、恥をかくだけだと思う。
それなら、いっそ全く知らない方がいいのではないだろうか。
根拠は全く無いけど。
「今回は目的が無いしね。やる気なんか出ないわよ」
「純粋に観光を楽しめばよかろう。ガイドの説明を聞くのは、旅の醍醐味じゃぞ?」
「旅を楽しむねぇ。日々を生きるのに精一杯な私のような庶民には、縁のない言葉だわ。庶民にとっての旅とは純粋に移動手段だからね」
「おぬし、王族の婚約者なんじゃがのう」
「婚約者なだけで、私自身が王族じゃないわよ」
「そうだとしても、一応、貴族じゃろう」
それは、その通りだ。
でも、その言葉の前には『名ばかりの』が付く。
「まあ、それは置いておくとしてじゃ」
師匠もそれを知っているから、深くその話題に触れようとはしなかった。
しかし、話はまだ続くようだ。
「ただの観光目的で呼ばれただけとは限らんぞ」
「なんで?」
招待状は私も見せてもらった。
けど、不審な点は無かったように思う。
せいぜい、観光でお金を落として欲しいという狙いがありそうだということくらいだろうか。
「理由が書かれていなかったのじゃ」
「?」
師匠が説明してくれるけど、私は首を傾げる。
それのどこに問題があるのだろう。
「普通、こういう招待状は開催する理由を書くものなのじゃ。誕生パーティーとか、大した理由でなくてよいのじゃがな」
「そういうもの?」
「そういうものなのじゃ。だって、理由もなく演奏会に来てくれと言ったら、聴きに来てお金を払えと言っているようなものなのじゃ。最初は義理で行く人間もいるじゃろうが、回数が多くなれば、来る人間は徐々に減っていくのは目に見えておる」
まあ、お金をせびられているようなものだからな。
少なくとも、私は行かない。
「じゃが、誕生パーティーなどの理由があれば、行く人間は増える。祝い事に顔を出さないと、不義理と見なされるからのう」
「ほぼ知らない相手の祝い事になんか、顔を出さないわよ」
それで不義理と見なされるのは理不尽じゃないだろうか。
「おぬしはそうじゃろうが、外交的にはよろしくないのじゃ」
感情的には納得できないところもあるけど、とりあえず理屈は分かった。
でも、そうなると、どういうことだろう。
演奏会に行ったことがない新顔だから、一度は声をかけておこうとか、そういうことだろうか。
しかし、それを理由に演奏会を開くとは思えないから、違うような気がする。
そもそも、私以外は誰を招待しているのだろう。
演奏会を開く理由が分からないと、それを予想することも難しい。
王族の面倒な行事だろうと思って、あまり深く考えなかったけど、言われて見ると不自然なところが思い当たる。
招待を受けることにしたのは、少し軽率だったろうか。
今回はMMQも連れて来ていない。
「そんなわけで、この招待はただ音楽を聴けばよいというものではないかも知れないのじゃ」
「なるほど」
私は気を引き締める。
「用意するのは、即効性があって広範囲に散布可能な薬でいい?眠り薬は相手が興奮していると効き目が薄いから、痺れ薬の方がいいかな?いきなり毒薬はまずいわよね?」
「待て待て待て!」
私が対処法のアイデアを披露すると、師匠がそれを止めてくる。
なぜだろう。
相手の命を奪わない、平和的な対処法で自信があったんだけど。
「さすがに命を狙われるような目的ではないじゃろうから、そんな物騒なものはいらないのじゃ」
「でも、師匠から教えてもらった、護身の方法・・・」
「それは、森で獣から身を守る方法じゃろうが!」
「そうだったっけ?」
おかしいな。
城に行った後も、身を護るのに、色々と役に立った方法なんだけど。
どうも、人間相手にする方法じゃなかったらしい。
「薬を使うのが悪い方法とは言わんが、飲み物に垂らす程度で充分じゃ。広範囲に散布してどうする。おぬしがどういう手段で何をやったかが丸わかりじゃろうが」
「なるほど。不用意に手口をさらすなということね」
「まあ、そうじゃが・・・今回の場合は、物騒な手段は必要ないと言いたかったのじゃぞ?」
「わかっているわ」
ようするに、目立たないように、やれということだろう。
私の先生だけあって、師匠が教えてくれることは色々と勉強になる。
「相手が、意識を奪われたと気付かないように、意識を奪う手段が必要ね。無味無臭で、ゆっくり効果が出る眠り薬かしら?」
それなら、眠気で意識を失ったと思わせることができるだろう。
どうだ!と師匠に答え合わせをお願いするけど、師匠は呆れたような顔を向けてきた。
「・・・まあ、ほどほどにな」
どうも、花丸を貰えるような優れた答えでは無かったようだ。
しかし、及第点ではあるのだろう。
否定はしてこなかった。
ひとまず、護身の手段は、それでいいだろう。
「残る問題は相手の狙いね。師匠は何か思い当たる?」
私は師匠に尋ねる。
師匠はしばらく考えるが、表情が芳しくない。
「無いのう。情報が少なすぎるわい。堂々と招待しているから、暗殺ということは無いと思うが」
それはそうだ。
そんなことをしたら、犯人が丸わかりだ。
宣戦布告ならあり得るけど、ブレーメン王国は武力は大したことが無かったはずだ。
それに経済面でも、各国を繋げる街道を押さえているアヴァロン王国の方が有利だ。
ブレーメン王国の経済が他国と友好関係を結んでいることが前提の観光に頼っている以上、ブレーメン王国にとって戦争は悪手なのだ。
そういえば、戦争と言えば、この間あったな。
決着はすぐについたけど。
・・・・・
それじゃないかな。
「もしかして、戦争の影響で観光客が減っているとか?」
生活に余裕がなければ、旅なんかしていられないだろう。
観光のために旅をするような裕福な連中にどれだけ影響があったのかは分からないけど、全く影響がなかったということはないだろう。
そうなると、そんな連中を客としていた側にも影響が出ることになる。
客を呼ぶのに必死なのではないだろうか。
理由がなくても招待状を出すほど必死で、これまで招待していなかった人間に招待状を出すほど必死。
私はその『これまで招待していなかった人間』の一人というわけだ。
そう考えたのだけど、師匠は同意できないようだ。
「その可能性もあるが、招待状が不自然な理由とは考えづらいのう。招待状を送るような連中はプライドも高い。たとえ嘘でも、それっぽい理由を考えて書くものじゃ」
貴族の生態については、師匠の方が詳しい。
年の功というやつだろう。
でも、そうか。
師匠がそういうなら、そうなのだろう。
「それほど深く考える必要はないじゃろう。単に演奏会でサプライズがあるだけかも知れないからのう」
「サプライズ・・・」
サプライズというとアレか。
自分の誕生パーティーに各国要人を呼んで、そこを襲撃させたりするイベントのことだ。
シルヴァニア王国でエリザベート王女がやったから知っている。
なるほど。
つまり師匠は、何が起こっても対処できるように、常に万全な準備をしておけと言いたいのだろう。
「そうなると、混ぜ合わせると爆発する、例の秘薬も必要ね」
エリザベート王女の誕生パーティーで起こったサプライズでは、それで壁に穴を空けて味方を呼んだのだ。
サプライズに対処するためには、そのくらいの準備は必要だと思う。
しかし、あの秘薬は持ってきていない。
ブレーメン王国で材料が手に入るだろうか。
私がそんな感じで考えを巡らせていると、師匠が首を横に振る。
「なんでそうなる」
どうも、私が考えている対処方法では、師匠を満足させることはできないようだ。
薬品を揃えるだけでは、準備が足りないらしい。
やはり、個人の戦力ではなく、集団としての戦力が必要なのだろう。
MMQを連れて来なかったのは失敗だったな。
現地で隠密行動に長けた人間を雇えるだろうか。
幸い『冬の苺』で多少の金銭は手に入ったから、私の判断でそのくらいはできるようになった。
「・・・演奏会で何かあったら、わしが対処するから、おぬしはオシャレでもしておれ」
師匠が呆れた表情で、そんなことを言ってくる。
どうやら、私の対処では頼りないと思われてしまったらしい。
仕方ない。
せめて、衣装くらいは師匠から及第点をもらえるように気合いを入れよう。
「ふーん」
流れる風景を眺めながら、師匠の話を聞き流す。
「音楽が一番有名じゃが、絵画や彫刻なども有名じゃ。つまり、芸術全般じゃな」
「へー」
師匠はその国に行ったことがあるらしく、先ほどから説明してくれている。
「芸術を目当てに訪れる観光客が落とす金が、重要な収入源になっておる」
「そう」
しかし、興味が無いから耳に入るだけで頭に入って来ない。
「料理も有名で、見た目の鮮やかさは、なかなかのものじゃ」
「味は?」
「見た目が優先らしい」
「ふぅ」
少し興味がある話題かと思ったら、そうでもなかったようだ。
料理が美味しければ、それを食べることができるという理由で、テンションが上がるかと思ったのだけど。
「・・・ついに、相槌ですらなくなったのう」
師匠が困ったように言う。
現在、私と師匠は馬車に揺られながら、ブレーメン王国へ向かっている。
今回は、アーサー王子もいないし、メフィも留守番だ。
荒事をする予定はないから、MMQもついて来ていない。
普通の護衛の騎士とメイドだけだ。
「演奏を聴きに行くだけだしね。行き先の国について、そんなに知らなくてもいいかなと思ってる」
「国が違えば、文化が違う。自国では何でもないことが、他国では非礼にあたることもある。トラブルを起こさないためには、知っておくことは重要なんじゃがのう」
「そうは言っても、私に芸術は分からないしね。とりあえず、『素晴らしいですね』と言っておけばいいんでしょ?」
「身も蓋もないのう」
師匠が呆れたように言う。
けど、芸術の良さなんて一朝一夕に分かるようになるものじゃない。
中途半端な知識をひけらかせても、恥をかくだけだと思う。
それなら、いっそ全く知らない方がいいのではないだろうか。
根拠は全く無いけど。
「今回は目的が無いしね。やる気なんか出ないわよ」
「純粋に観光を楽しめばよかろう。ガイドの説明を聞くのは、旅の醍醐味じゃぞ?」
「旅を楽しむねぇ。日々を生きるのに精一杯な私のような庶民には、縁のない言葉だわ。庶民にとっての旅とは純粋に移動手段だからね」
「おぬし、王族の婚約者なんじゃがのう」
「婚約者なだけで、私自身が王族じゃないわよ」
「そうだとしても、一応、貴族じゃろう」
それは、その通りだ。
でも、その言葉の前には『名ばかりの』が付く。
「まあ、それは置いておくとしてじゃ」
師匠もそれを知っているから、深くその話題に触れようとはしなかった。
しかし、話はまだ続くようだ。
「ただの観光目的で呼ばれただけとは限らんぞ」
「なんで?」
招待状は私も見せてもらった。
けど、不審な点は無かったように思う。
せいぜい、観光でお金を落として欲しいという狙いがありそうだということくらいだろうか。
「理由が書かれていなかったのじゃ」
「?」
師匠が説明してくれるけど、私は首を傾げる。
それのどこに問題があるのだろう。
「普通、こういう招待状は開催する理由を書くものなのじゃ。誕生パーティーとか、大した理由でなくてよいのじゃがな」
「そういうもの?」
「そういうものなのじゃ。だって、理由もなく演奏会に来てくれと言ったら、聴きに来てお金を払えと言っているようなものなのじゃ。最初は義理で行く人間もいるじゃろうが、回数が多くなれば、来る人間は徐々に減っていくのは目に見えておる」
まあ、お金をせびられているようなものだからな。
少なくとも、私は行かない。
「じゃが、誕生パーティーなどの理由があれば、行く人間は増える。祝い事に顔を出さないと、不義理と見なされるからのう」
「ほぼ知らない相手の祝い事になんか、顔を出さないわよ」
それで不義理と見なされるのは理不尽じゃないだろうか。
「おぬしはそうじゃろうが、外交的にはよろしくないのじゃ」
感情的には納得できないところもあるけど、とりあえず理屈は分かった。
でも、そうなると、どういうことだろう。
演奏会に行ったことがない新顔だから、一度は声をかけておこうとか、そういうことだろうか。
しかし、それを理由に演奏会を開くとは思えないから、違うような気がする。
そもそも、私以外は誰を招待しているのだろう。
演奏会を開く理由が分からないと、それを予想することも難しい。
王族の面倒な行事だろうと思って、あまり深く考えなかったけど、言われて見ると不自然なところが思い当たる。
招待を受けることにしたのは、少し軽率だったろうか。
今回はMMQも連れて来ていない。
「そんなわけで、この招待はただ音楽を聴けばよいというものではないかも知れないのじゃ」
「なるほど」
私は気を引き締める。
「用意するのは、即効性があって広範囲に散布可能な薬でいい?眠り薬は相手が興奮していると効き目が薄いから、痺れ薬の方がいいかな?いきなり毒薬はまずいわよね?」
「待て待て待て!」
私が対処法のアイデアを披露すると、師匠がそれを止めてくる。
なぜだろう。
相手の命を奪わない、平和的な対処法で自信があったんだけど。
「さすがに命を狙われるような目的ではないじゃろうから、そんな物騒なものはいらないのじゃ」
「でも、師匠から教えてもらった、護身の方法・・・」
「それは、森で獣から身を守る方法じゃろうが!」
「そうだったっけ?」
おかしいな。
城に行った後も、身を護るのに、色々と役に立った方法なんだけど。
どうも、人間相手にする方法じゃなかったらしい。
「薬を使うのが悪い方法とは言わんが、飲み物に垂らす程度で充分じゃ。広範囲に散布してどうする。おぬしがどういう手段で何をやったかが丸わかりじゃろうが」
「なるほど。不用意に手口をさらすなということね」
「まあ、そうじゃが・・・今回の場合は、物騒な手段は必要ないと言いたかったのじゃぞ?」
「わかっているわ」
ようするに、目立たないように、やれということだろう。
私の先生だけあって、師匠が教えてくれることは色々と勉強になる。
「相手が、意識を奪われたと気付かないように、意識を奪う手段が必要ね。無味無臭で、ゆっくり効果が出る眠り薬かしら?」
それなら、眠気で意識を失ったと思わせることができるだろう。
どうだ!と師匠に答え合わせをお願いするけど、師匠は呆れたような顔を向けてきた。
「・・・まあ、ほどほどにな」
どうも、花丸を貰えるような優れた答えでは無かったようだ。
しかし、及第点ではあるのだろう。
否定はしてこなかった。
ひとまず、護身の手段は、それでいいだろう。
「残る問題は相手の狙いね。師匠は何か思い当たる?」
私は師匠に尋ねる。
師匠はしばらく考えるが、表情が芳しくない。
「無いのう。情報が少なすぎるわい。堂々と招待しているから、暗殺ということは無いと思うが」
それはそうだ。
そんなことをしたら、犯人が丸わかりだ。
宣戦布告ならあり得るけど、ブレーメン王国は武力は大したことが無かったはずだ。
それに経済面でも、各国を繋げる街道を押さえているアヴァロン王国の方が有利だ。
ブレーメン王国の経済が他国と友好関係を結んでいることが前提の観光に頼っている以上、ブレーメン王国にとって戦争は悪手なのだ。
そういえば、戦争と言えば、この間あったな。
決着はすぐについたけど。
・・・・・
それじゃないかな。
「もしかして、戦争の影響で観光客が減っているとか?」
生活に余裕がなければ、旅なんかしていられないだろう。
観光のために旅をするような裕福な連中にどれだけ影響があったのかは分からないけど、全く影響がなかったということはないだろう。
そうなると、そんな連中を客としていた側にも影響が出ることになる。
客を呼ぶのに必死なのではないだろうか。
理由がなくても招待状を出すほど必死で、これまで招待していなかった人間に招待状を出すほど必死。
私はその『これまで招待していなかった人間』の一人というわけだ。
そう考えたのだけど、師匠は同意できないようだ。
「その可能性もあるが、招待状が不自然な理由とは考えづらいのう。招待状を送るような連中はプライドも高い。たとえ嘘でも、それっぽい理由を考えて書くものじゃ」
貴族の生態については、師匠の方が詳しい。
年の功というやつだろう。
でも、そうか。
師匠がそういうなら、そうなのだろう。
「それほど深く考える必要はないじゃろう。単に演奏会でサプライズがあるだけかも知れないからのう」
「サプライズ・・・」
サプライズというとアレか。
自分の誕生パーティーに各国要人を呼んで、そこを襲撃させたりするイベントのことだ。
シルヴァニア王国でエリザベート王女がやったから知っている。
なるほど。
つまり師匠は、何が起こっても対処できるように、常に万全な準備をしておけと言いたいのだろう。
「そうなると、混ぜ合わせると爆発する、例の秘薬も必要ね」
エリザベート王女の誕生パーティーで起こったサプライズでは、それで壁に穴を空けて味方を呼んだのだ。
サプライズに対処するためには、そのくらいの準備は必要だと思う。
しかし、あの秘薬は持ってきていない。
ブレーメン王国で材料が手に入るだろうか。
私がそんな感じで考えを巡らせていると、師匠が首を横に振る。
「なんでそうなる」
どうも、私が考えている対処方法では、師匠を満足させることはできないようだ。
薬品を揃えるだけでは、準備が足りないらしい。
やはり、個人の戦力ではなく、集団としての戦力が必要なのだろう。
MMQを連れて来なかったのは失敗だったな。
現地で隠密行動に長けた人間を雇えるだろうか。
幸い『冬の苺』で多少の金銭は手に入ったから、私の判断でそのくらいはできるようになった。
「・・・演奏会で何かあったら、わしが対処するから、おぬしはオシャレでもしておれ」
師匠が呆れた表情で、そんなことを言ってくる。
どうやら、私の対処では頼りないと思われてしまったらしい。
仕方ない。
せめて、衣装くらいは師匠から及第点をもらえるように気合いを入れよう。
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