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第十二章 ブレーメンの音楽
193.夜明けを告げるニワトリのように
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アダム王子。
アーサー王子。
師匠。
私。
このメンバーでのお茶会はひさしぶりだ。
「おまえに招待状だ」
お茶を口に含んだところで、アダム王子がそんなことを言ってきた。
たぶん、私の顔には苦々しい表情が浮かんでいると思う。
けど、お茶が苦いわけじゃない。
招待状には良い思い出が無いから、そんな表情になったのだ。
「断っておいて」
当然のように、私はそう答える。
そして、お茶菓子代わりの苺を口に放り込む。
この苺は私が育てたものではない。
畑で育てられたものを買ってきたのだ。
甘味よりも酸味が強いが、風味はよい。
そのまま食べてもいいけど、ジャムにした方が美味しそうだ。
「せめて送り主くらい聞いたらどうだ」
私は眉をひそめる。
苺はすっぱいけど、それが理由で眉をひそめたわけじゃない。
招待状の送り主を聞いたら、行かなきゃならなくなりそうで、嫌なのだ。
私は口を閉ざす。
「誰からなの?」
だというのに、アーサー王子が聞いてしまう。
余計なことをするなと言いたいけど、たぶんアダム王子は聞かなくても勝手に話しただろう。
だから、手間を省いてくれたと思っておこう。
「ブレーメン王国からだ」
「?」
送り主を聞いて、私は首を傾げる。
聞き覚えの無い国だ。
当然、知り合いもいない。
「シンデレラ、ファイファー殿の国だよ」
「あー・・・」
そう思っていたら、どうやら知り合いがいたようだ。
シルヴァニア王国で会った他国の王子なのだけど、そういえば興味が無いから出身国を聞いていなかった。
けど、アーサー王子は知っていたらしい。
まあ、それはいいとして、疑問がある。
「なんで、私に招待状が届くのかしら?」
シルヴァニア王国に滞在していたとき、ファイファーとはそれなりに親しくしていた。
けど、それはアーサー王子も同じだ。
私だけに招待状が届く理由が分からない。
私がアーサー王子の婚約者ということは知っているはずだから、婚約者を差し置いて私だけに招待状を出すことに問題があることは、向こうも理解できると思う。
そこまで、アホではないだろう。
そんなことを考えていると、アダム王子が招待状について補足してくる。
「ちなみに、差出人はファイファー殿ではないぞ」
「あれ?そうなの?」
アダム王子の言葉にアーサー王子が不思議そうな顔をする。
アーサー王子は、差出人をファイファーと考えていたようだ。
私も同じだ。
でも、だとすると、ますます分からない。
知り合いではない人間から、なぜ招待状が届くのだろう。
それと肝心なことを聞いていなかった。
「そもそも、なんの招待状なの?」
それによって、私だけに届いた理由も分かるはずだ。
そう思ったのだけど、
「演奏会だ」
さっぱり分からなかった。
「演奏会?」
演奏する側でも、演奏を聴く側でも、私には縁が無いものだ。
貴族ならば、何かしら楽器を使えるものだけど、私は使えない。
その教育を受ける時期に、使用人としての扱いを受けていたからだ。
だとすると、
「手の込んだ嫌がらせ?」
そのくらいしか思い浮かばない。
私に芸術の教養がないことを馬鹿にする意図なら分かる。
先日の貴族の令嬢のように、私のことをアーサー王子に相応しくないと考えている相手だろうか。
しかし、他国の人間が嫌がらせのためだけに、そこまでするとも考えづらい。
やっぱり、分からないな。
「もしかして、わしがパーティーで会った人間が差出人かのう?」
そこで師匠が口を開いた。
「パーティー?・・・・・あぁ」
私は、ぽんっと手を打つ。
そう言えば、アダム王子が主催したパーティーに、私の代わりに師匠に出てもらった。
あれには他国の人間が来ていたはずだ。
その人間が私と師匠を勘違いして、私宛てに招待状を出したというなら、私に心当たりが無くても不思議ではない。
なら、話は簡単だ。
「宛先を間違えたのね。その招待状は師匠にあげるわ」
やれやれ。
これで一件落着だ。
「そんなわけにいくか」
ベストな解決方法だと思ったのだけど、アダム王子が否定してくる。
「もし、宛先を間違えたのだとしても、宛名はおまえになっているのだ。おまえが対応しないとダメだろう」
「無視したらダメ?」
「断るにしても、せめて、ちゃんとした理由をつけて断れ」
「面倒だなぁ」
面倒だけど、断ること自体がダメとは言われなかった。
しかし、断る理由か。
「『興味が無いから』でいい?」
「なぜ、それでいいと思うのだ」
「正直な理由なんだけどダメ?」
「正直なのは、美徳ではないぞ」
正直は美徳ではないという。
かといって、嘘つきが美徳というわけではないだろう。
つまり、美徳な人間はいないということだ。
それはともかく、それっぽい理由はないだろうか。
今の話だと、たとえ嘘でも、それっぽい理由ならばよいということだと思う。
「病気で寝込んでいるとか」
「部屋にこもって出てこないならいいぞ」
それは嫌だな。
別の理由を考えることにする。
「私じゃなくて、婚約者が病気で寝込んでいるとかは?アーサーなら工房にこもりっきりだし」
「僕?別にいいけど」
アーサー王子の了解も得られた。
これでいいだろうと思ったのだけど、アダム王子は首を横に振る。
「他の国の人間が、べったり張り付いているだろう。すぐにバレるからダメだ」
グィネヴィアか。
ここで彼女の存在が邪魔になるのか。
でも、追い出すわけにもいかないだろう。
しかし、そうなると、バレない嘘というのは難しい気がする。
「もう、招待を受けた方が早くないかのう」
私が薄っすらと感じていたことを、師匠がはっきりと口にする。
それしか無いような気はするけど、素直に頷くと何だか負けた気になるな。
「じゃあ、師匠も一緒に行きましょう」
だから、そう誘ってみる。
「えー?なんで、わしも?」
師匠が嫌そうな顔をするけど、逃がさない。
「招待状が届いたのは、師匠がパーティーで八方美人に愛想を振り撒いたからでしょう」
「おぬしが代わりに出ろと言ったのじゃろ」
「いいじゃない。師匠、別に音楽は嫌いじゃないでしょ?」
「好きか嫌いかでいったら嫌いではないが、国を跨いで聴きに行くほど好きというわけではないのじゃ」
「もう、我儘ねぇ」
「どっちがじゃ」
私と師匠が言い合いをしていると、アーサー王位が仲裁に入ってくる。
「まあまあ、僕も一緒に行くから」
「おまえはダメだ」
けど、アダム王子からストップがかかる。
「おまえが行くと、グィネヴィア殿の相手をする人間がいなくなるだろう」
「兄上が・・・」
「話が合うとは思えん」
グィネヴィアも王女としての責任感はあるだろうから、話を合わせてくれるとは思う。
けど、合わせてくれるだけだ。
合うわけじゃない。
アダム王子とは、ハーメルン王国と良好な関係を保ちたいのだろう。
そうすると、アーサー王子はこの国を離れるわけにはいかない。
「わかったわよ。招待を受けて行ってくるわ。でも、師匠も一緒に来てよ」
「仕方ないのう」
これ以上はどうにもならなさそうだと悟って、私は抵抗を諦める。
すると、師匠も同様に抵抗を諦めた。
結局のところ、こうなるだろうとは思っていた。
ちょっと、拗ねただけだ。
私が王族の婚約者で、招待状が他国の王族からという時点で、断るという選択肢は無いに等しい。
「せいぜい、観光を楽しんでくるわ」
こうして、私と師匠はブレーメン王国で開催されるという演奏会に行くことになった。
アーサー王子。
師匠。
私。
このメンバーでのお茶会はひさしぶりだ。
「おまえに招待状だ」
お茶を口に含んだところで、アダム王子がそんなことを言ってきた。
たぶん、私の顔には苦々しい表情が浮かんでいると思う。
けど、お茶が苦いわけじゃない。
招待状には良い思い出が無いから、そんな表情になったのだ。
「断っておいて」
当然のように、私はそう答える。
そして、お茶菓子代わりの苺を口に放り込む。
この苺は私が育てたものではない。
畑で育てられたものを買ってきたのだ。
甘味よりも酸味が強いが、風味はよい。
そのまま食べてもいいけど、ジャムにした方が美味しそうだ。
「せめて送り主くらい聞いたらどうだ」
私は眉をひそめる。
苺はすっぱいけど、それが理由で眉をひそめたわけじゃない。
招待状の送り主を聞いたら、行かなきゃならなくなりそうで、嫌なのだ。
私は口を閉ざす。
「誰からなの?」
だというのに、アーサー王子が聞いてしまう。
余計なことをするなと言いたいけど、たぶんアダム王子は聞かなくても勝手に話しただろう。
だから、手間を省いてくれたと思っておこう。
「ブレーメン王国からだ」
「?」
送り主を聞いて、私は首を傾げる。
聞き覚えの無い国だ。
当然、知り合いもいない。
「シンデレラ、ファイファー殿の国だよ」
「あー・・・」
そう思っていたら、どうやら知り合いがいたようだ。
シルヴァニア王国で会った他国の王子なのだけど、そういえば興味が無いから出身国を聞いていなかった。
けど、アーサー王子は知っていたらしい。
まあ、それはいいとして、疑問がある。
「なんで、私に招待状が届くのかしら?」
シルヴァニア王国に滞在していたとき、ファイファーとはそれなりに親しくしていた。
けど、それはアーサー王子も同じだ。
私だけに招待状が届く理由が分からない。
私がアーサー王子の婚約者ということは知っているはずだから、婚約者を差し置いて私だけに招待状を出すことに問題があることは、向こうも理解できると思う。
そこまで、アホではないだろう。
そんなことを考えていると、アダム王子が招待状について補足してくる。
「ちなみに、差出人はファイファー殿ではないぞ」
「あれ?そうなの?」
アダム王子の言葉にアーサー王子が不思議そうな顔をする。
アーサー王子は、差出人をファイファーと考えていたようだ。
私も同じだ。
でも、だとすると、ますます分からない。
知り合いではない人間から、なぜ招待状が届くのだろう。
それと肝心なことを聞いていなかった。
「そもそも、なんの招待状なの?」
それによって、私だけに届いた理由も分かるはずだ。
そう思ったのだけど、
「演奏会だ」
さっぱり分からなかった。
「演奏会?」
演奏する側でも、演奏を聴く側でも、私には縁が無いものだ。
貴族ならば、何かしら楽器を使えるものだけど、私は使えない。
その教育を受ける時期に、使用人としての扱いを受けていたからだ。
だとすると、
「手の込んだ嫌がらせ?」
そのくらいしか思い浮かばない。
私に芸術の教養がないことを馬鹿にする意図なら分かる。
先日の貴族の令嬢のように、私のことをアーサー王子に相応しくないと考えている相手だろうか。
しかし、他国の人間が嫌がらせのためだけに、そこまでするとも考えづらい。
やっぱり、分からないな。
「もしかして、わしがパーティーで会った人間が差出人かのう?」
そこで師匠が口を開いた。
「パーティー?・・・・・あぁ」
私は、ぽんっと手を打つ。
そう言えば、アダム王子が主催したパーティーに、私の代わりに師匠に出てもらった。
あれには他国の人間が来ていたはずだ。
その人間が私と師匠を勘違いして、私宛てに招待状を出したというなら、私に心当たりが無くても不思議ではない。
なら、話は簡単だ。
「宛先を間違えたのね。その招待状は師匠にあげるわ」
やれやれ。
これで一件落着だ。
「そんなわけにいくか」
ベストな解決方法だと思ったのだけど、アダム王子が否定してくる。
「もし、宛先を間違えたのだとしても、宛名はおまえになっているのだ。おまえが対応しないとダメだろう」
「無視したらダメ?」
「断るにしても、せめて、ちゃんとした理由をつけて断れ」
「面倒だなぁ」
面倒だけど、断ること自体がダメとは言われなかった。
しかし、断る理由か。
「『興味が無いから』でいい?」
「なぜ、それでいいと思うのだ」
「正直な理由なんだけどダメ?」
「正直なのは、美徳ではないぞ」
正直は美徳ではないという。
かといって、嘘つきが美徳というわけではないだろう。
つまり、美徳な人間はいないということだ。
それはともかく、それっぽい理由はないだろうか。
今の話だと、たとえ嘘でも、それっぽい理由ならばよいということだと思う。
「病気で寝込んでいるとか」
「部屋にこもって出てこないならいいぞ」
それは嫌だな。
別の理由を考えることにする。
「私じゃなくて、婚約者が病気で寝込んでいるとかは?アーサーなら工房にこもりっきりだし」
「僕?別にいいけど」
アーサー王子の了解も得られた。
これでいいだろうと思ったのだけど、アダム王子は首を横に振る。
「他の国の人間が、べったり張り付いているだろう。すぐにバレるからダメだ」
グィネヴィアか。
ここで彼女の存在が邪魔になるのか。
でも、追い出すわけにもいかないだろう。
しかし、そうなると、バレない嘘というのは難しい気がする。
「もう、招待を受けた方が早くないかのう」
私が薄っすらと感じていたことを、師匠がはっきりと口にする。
それしか無いような気はするけど、素直に頷くと何だか負けた気になるな。
「じゃあ、師匠も一緒に行きましょう」
だから、そう誘ってみる。
「えー?なんで、わしも?」
師匠が嫌そうな顔をするけど、逃がさない。
「招待状が届いたのは、師匠がパーティーで八方美人に愛想を振り撒いたからでしょう」
「おぬしが代わりに出ろと言ったのじゃろ」
「いいじゃない。師匠、別に音楽は嫌いじゃないでしょ?」
「好きか嫌いかでいったら嫌いではないが、国を跨いで聴きに行くほど好きというわけではないのじゃ」
「もう、我儘ねぇ」
「どっちがじゃ」
私と師匠が言い合いをしていると、アーサー王位が仲裁に入ってくる。
「まあまあ、僕も一緒に行くから」
「おまえはダメだ」
けど、アダム王子からストップがかかる。
「おまえが行くと、グィネヴィア殿の相手をする人間がいなくなるだろう」
「兄上が・・・」
「話が合うとは思えん」
グィネヴィアも王女としての責任感はあるだろうから、話を合わせてくれるとは思う。
けど、合わせてくれるだけだ。
合うわけじゃない。
アダム王子とは、ハーメルン王国と良好な関係を保ちたいのだろう。
そうすると、アーサー王子はこの国を離れるわけにはいかない。
「わかったわよ。招待を受けて行ってくるわ。でも、師匠も一緒に来てよ」
「仕方ないのう」
これ以上はどうにもならなさそうだと悟って、私は抵抗を諦める。
すると、師匠も同様に抵抗を諦めた。
結局のところ、こうなるだろうとは思っていた。
ちょっと、拗ねただけだ。
私が王族の婚約者で、招待状が他国の王族からという時点で、断るという選択肢は無いに等しい。
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