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第四章 塔の上
064.お茶会(昼)
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「それで、今日はどうしたの?あなたが、ここへ来るなんて珍しいわね」
王妃が先ほどと同じ質問をアダム王子にする。
アダム王子が『珍しい』の辺りで気まずそうにしたが、気付かないフリをする。
たぶん、ここへ来ると自分も同じ目に遭うような気分になって避けていたんじゃないだろうか。
親子揃って異性にだらしないようだから、可能性としてはある。
まあ、さすがに次期国王が軟禁されることはないとは思うけど。
「妃を決めたから報告にきた」
王妃の質問にアダム王子が答えを返す。
余程ここに長く居たくないんだろうか。
ずばり本題を答えたようだ。
王妃は驚いた顔をして見せたが、実際には、さほど驚いているようには見えない。
表情が作ったものだと分かる。
ある程度、予想していたんじゃないだろうか。
「あら?シルヴァニア王国のお姫様と結婚することにしたの?」
「違う」
王妃がアダム王子に尋ねるが、どこかとぼけた質問のように感じた。
おそらく、違うことを分かった上で、質問したのだろう。
その証拠に、アダム王子の答えを聞いても、意外そうな顔をしていない。
その様子を見て、私は王妃の評価を少し改める。
ただの淫乱じゃなさそうだ。
こんな塔に軟禁されているのに、最近の情報に通じている。
侍女から聞いただけかも知れないけど、同じことだ。
そういう情報に興味を持つということ自体が、油断できない。
王妃になるだけの理由があるということあろう。
ただ、容姿が美しいだけだったり、好かれる性格だったりするだけでは、あるいは、性的な技能が高いだけでは、王族は務まらない。
「そう。あのお姫様はあまりオススメじゃないから安心したわ」
「そう思っていたのなら、教えてくれ」
「私が言っても周囲の人間は聞き流すだけで、あなたまで届かないでしょう。教えて欲しければ、あなたが直接聞きに来なさいな」
王妃が、母親である自分に会いに来ない息子に、拗ねたような態度を見せる。
けど、もし、あのお姫様の本性まで知っていて伝えなかったとしたら、シャレになっていない。
下手をしたらアダム王子は殺されていたのだ。
息子に対する愛情があるのかないのか、いまいち分からないな。
「・・・俺へ伝える手段などいくらでもあるだろう」
王子も憮然とした態度を取るが、滅多に会いに来ないことを自覚しているのだろう。
子供の言い訳のような文句を言っている。
「でも、それじゃあ、お相手は誰?もしかして、そこの可愛らしい騎士さんかしら?一緒に連れてくるくらいだしね」
突然、私に矛先が向いた。
息子が女と連れ立って自分に会いにきたのだ。
連れて来たのが明らかな使用人でもなければ、そう思うのも無理はないだろう。
先ほど護衛だと言ったはずだが、大勢の男の騎士がいる中で、わざわざ女の騎士を連れて来たのだ。
意味深だろう。
でも、断じて違う。
否定させてもらおう。
王族にこちらから話しかけるなんて礼儀に反するだろうけど、お茶会に誘ったのは向こうだ。
かまわないだろう。
「違います。私はそれほど男の好みは悪くありません」
「違うぞ。俺がこんなじゃじゃ馬を妃にするはずがないだろう」
私とアダム王子の言葉が被った。
というか、私のことをそんな風に思っていたのか。
別にアダム王子に何と思われようと気にならないが、何か納得いかない。
私は一応、アダム王子の命の恩人のはずなんだけど。
「好みに合わなくて悪かったな」
「誰が、じゃじゃ馬ですか」
互いに反論するが、その言葉がまた被った。
その様子を見て、王妃がくすくすと笑う。
「ふふ。そんなに仲良しなのに、その娘が相手じゃないのね。その娘が、毎夜、寝室に通っていたみたいだから、勘違いしちゃったわ」
その言葉に警戒を引き上げる。
寝室に通っていたというのは、暗殺者として送り込まれたシェリーを捕まえるために、罠をしかけていたときのことだ。
警戒を引き上げた私の様子に、王妃が種明かしをしてくる。
「この塔の窓から見えていたわよ」
そう言って、視線を窓の方に向ける。
確かに、この塔は高いし、方角的に見えてもおかしくはない。
私も忍び込むときに、この塔の存在は気にしていなかったから、見られていてもおかしくはない。
けど、無理だ。
予想外のところから見られても大丈夫なように、陽が沈んでから忍び込んでいたのだ。
見て知っていたというのは嘘だろう。
「この塔から見えていたのなら、相手が違うことくらい知っているはずだろう」
私が警戒して言葉を出さずにいると、アダム王子がそんなことを言い出した。
ここから見ていたら相手が違うことを知っている?
ああ、義理の姉を連れ込んでいたからか。
なんだか生々しいけど、話の筋は通っている。
けど、自分の秘め事を母親に話す息子というのは、どうなんだろう。
王族にプライベートは無いって聞くけど、そんなことまで日常会話に上がるんだろうか。
「ふふ。そうね。可愛らしいものだから、つい、からかっちゃったわ」
ぞわぞわっとした。
なんだろう。
身体を舐めまわされたような、そんな感覚が身体を走った。
私が鳥肌に耐えていると、アダム王子が話を続ける。
「それに、こいつは弟の婚約者だ」
「あら、そうなの?じゃあ、私の義理の娘になるのね」
「そうだ」
この場でそれをばらすのか。
打算のある婚約だけど事実だから否定できない。
けど、こういうのは当人であるアーサー王子から語るべき内容じゃないだろうか。
文句を言いたかったが、アダム王子の表情を見て、止めておく。
アダム王子は、なぜか牽制するような表情で、今の言葉を王妃に言ったのだ。
もしかして、私は王妃に目を付けられたのだろうか。
厄介な予感がする。
「それなら、将来の娘と仲を深めないとね」
王妃の視線がこちらを向く。
優し気な瞳なんだけど、なんだろう、なぜか愛玩動物に向ける優しさのような感じがした。
「お茶はいかが?自慢の茶葉なの」
「あ、いただきます」
そう言って先ほどから甘い香りを漂わせてくるお茶を勧めてくる。
部屋に入ったときに感じた甘い香りは、このお茶の香りだったようだ。
よほど気に入っているのか、部屋にまで染み付いている。
「どうぞ」
一応、将来の母親からの勧めということになる。
断るわけにはいかないだろう。
勧められるままに口をつけて、舌で味を感じる。
香りは甘いけど、微かな苦みがある。
森で私が飲んでいたハーブティーに近いだろうか。
あるいは薬草茶のような風味かも知れない。
「・・・ずいぶんと、珍しいお茶ですね」
「こんなところにいるとお茶くらいしか楽しみがなくてね。変わった茶葉を集めているのよ。お口に合わなかった?」
「いえ、飲みなれない味で驚いただけです」
そう言っておくけど、二口目は飲まないでおく。
「美味しいのだけどね。息子達もあまり飲んでくれないのよ」
そう言って王妃は、自分のティーカップから優雅にお茶を口に運ぶ。
ここまで甘い香りが漂ってくるから、同じ茶葉だろう。
警戒し過ぎただろうか。
薬草の味だから気になったのだけど。
「せっかくだから、アーサーとお嬢さんの馴れ初めを聞きたいわ」
そう言われて、私は名乗っていないことに気づく。
ただの護衛だったら名乗る気はなかったのだけど、アーサー王子の婚約者と紹介されてしまったからには、名乗らないわけにはいかないだろう。
「失礼しました。シンデレラと申します」
「シンデレラさんね。私はラプンツェルよ」
私は自分の名前を名乗り、王妃も自分の名前を名乗った。
あまり関わり合いになりたくないタイプの女性だけど、なんだか長い付き合いになりそうな気がする。
そんな予感がした。
*****
「あまり長居をする時間もないから、これで失礼する」
あの後、アーサー王子との馴れ初めとやらを話さなければならないかとウンザリしていたところ、アダム王子が話題を変えてくれた。
というより、そもそもアダム王子の婚約の話をしにきたのだから、そちらを先にするのは当たり前だ。
結果として、アダム王子が義理の姉のことを話し終えたところでお茶会は終了した。
話した内容は、まあほとんどが事実だ。
毒を受けて眠り続けていたところは省略していたけど。
私とアーサー王子の馴れ初めをでっち上げる必要があるかと思ったので、助かったのは確かだ。
「よかったら、シンデレラさんだけでも、またお茶会にいらしてね」
最後にそんな声をかけられて、王妃のいる塔を後にした。
とりあえず、護衛としての役目は果たせただろう。
ほっと息を吐いたところでアダム王子が話しかけてくる。
「先に謝っておく」
突然、謝られた。
なんだろう。
予定に無かったのに、アーサー王子の婚約者として紹介したことだろうか。
そのせいで目をつけられた気がするのは確かだ。
そう思って聞いてみたのだが、どうも違うようだ。
「それもあるが・・・お茶は飲まない方がよいと、言い忘れていたと思ってな。王妃がおまえを誘うとは思っていなかったのだ」
「やっぱり、何か盛られていた?」
一応、舌で薬草の味を感じた時点で飲むのを止めておいたんだけど、一口分くらいは飲んでしまった。
アダム王子がその場で止めなかったから毒ではないとは思うし、師匠がいるから何とかなるとは思うけど、そう言えば身体が少し火照ってきた気がする。
「俺も昔使ったことがあるから、あの香りを嗅いだ時点で気づいた」
「あの甘い香りね。なんの薬なの?」
「薬というか、薬効のあるお茶だな。効果は・・・・・まあ、一晩で消えると思う」
それはなによりだけど、質問したのは別のことだ。
「それで効果は?」
「あー・・・・・困ったら、弟に頼むといい」
「ちょっと、効果は何?」
「先に謝っただろう」
「許したとは言っていないわよ」
嫌な予感がしてきた。
不安のせいか、心臓の鼓動が大きく感じる。
そう思ったけど、どうも違う。
これは不安のせいじゃなさそうだ。
アダム王子を問いただそうとしたけど、なんだか熱も出てきたような気がする。
仕方がないので、その場はそれで別れ、すぐに自室に戻る。
そして、その判断は正しかったらしく、自室に着くことには身体に痺れを感じ始めていた。
王妃が先ほどと同じ質問をアダム王子にする。
アダム王子が『珍しい』の辺りで気まずそうにしたが、気付かないフリをする。
たぶん、ここへ来ると自分も同じ目に遭うような気分になって避けていたんじゃないだろうか。
親子揃って異性にだらしないようだから、可能性としてはある。
まあ、さすがに次期国王が軟禁されることはないとは思うけど。
「妃を決めたから報告にきた」
王妃の質問にアダム王子が答えを返す。
余程ここに長く居たくないんだろうか。
ずばり本題を答えたようだ。
王妃は驚いた顔をして見せたが、実際には、さほど驚いているようには見えない。
表情が作ったものだと分かる。
ある程度、予想していたんじゃないだろうか。
「あら?シルヴァニア王国のお姫様と結婚することにしたの?」
「違う」
王妃がアダム王子に尋ねるが、どこかとぼけた質問のように感じた。
おそらく、違うことを分かった上で、質問したのだろう。
その証拠に、アダム王子の答えを聞いても、意外そうな顔をしていない。
その様子を見て、私は王妃の評価を少し改める。
ただの淫乱じゃなさそうだ。
こんな塔に軟禁されているのに、最近の情報に通じている。
侍女から聞いただけかも知れないけど、同じことだ。
そういう情報に興味を持つということ自体が、油断できない。
王妃になるだけの理由があるということあろう。
ただ、容姿が美しいだけだったり、好かれる性格だったりするだけでは、あるいは、性的な技能が高いだけでは、王族は務まらない。
「そう。あのお姫様はあまりオススメじゃないから安心したわ」
「そう思っていたのなら、教えてくれ」
「私が言っても周囲の人間は聞き流すだけで、あなたまで届かないでしょう。教えて欲しければ、あなたが直接聞きに来なさいな」
王妃が、母親である自分に会いに来ない息子に、拗ねたような態度を見せる。
けど、もし、あのお姫様の本性まで知っていて伝えなかったとしたら、シャレになっていない。
下手をしたらアダム王子は殺されていたのだ。
息子に対する愛情があるのかないのか、いまいち分からないな。
「・・・俺へ伝える手段などいくらでもあるだろう」
王子も憮然とした態度を取るが、滅多に会いに来ないことを自覚しているのだろう。
子供の言い訳のような文句を言っている。
「でも、それじゃあ、お相手は誰?もしかして、そこの可愛らしい騎士さんかしら?一緒に連れてくるくらいだしね」
突然、私に矛先が向いた。
息子が女と連れ立って自分に会いにきたのだ。
連れて来たのが明らかな使用人でもなければ、そう思うのも無理はないだろう。
先ほど護衛だと言ったはずだが、大勢の男の騎士がいる中で、わざわざ女の騎士を連れて来たのだ。
意味深だろう。
でも、断じて違う。
否定させてもらおう。
王族にこちらから話しかけるなんて礼儀に反するだろうけど、お茶会に誘ったのは向こうだ。
かまわないだろう。
「違います。私はそれほど男の好みは悪くありません」
「違うぞ。俺がこんなじゃじゃ馬を妃にするはずがないだろう」
私とアダム王子の言葉が被った。
というか、私のことをそんな風に思っていたのか。
別にアダム王子に何と思われようと気にならないが、何か納得いかない。
私は一応、アダム王子の命の恩人のはずなんだけど。
「好みに合わなくて悪かったな」
「誰が、じゃじゃ馬ですか」
互いに反論するが、その言葉がまた被った。
その様子を見て、王妃がくすくすと笑う。
「ふふ。そんなに仲良しなのに、その娘が相手じゃないのね。その娘が、毎夜、寝室に通っていたみたいだから、勘違いしちゃったわ」
その言葉に警戒を引き上げる。
寝室に通っていたというのは、暗殺者として送り込まれたシェリーを捕まえるために、罠をしかけていたときのことだ。
警戒を引き上げた私の様子に、王妃が種明かしをしてくる。
「この塔の窓から見えていたわよ」
そう言って、視線を窓の方に向ける。
確かに、この塔は高いし、方角的に見えてもおかしくはない。
私も忍び込むときに、この塔の存在は気にしていなかったから、見られていてもおかしくはない。
けど、無理だ。
予想外のところから見られても大丈夫なように、陽が沈んでから忍び込んでいたのだ。
見て知っていたというのは嘘だろう。
「この塔から見えていたのなら、相手が違うことくらい知っているはずだろう」
私が警戒して言葉を出さずにいると、アダム王子がそんなことを言い出した。
ここから見ていたら相手が違うことを知っている?
ああ、義理の姉を連れ込んでいたからか。
なんだか生々しいけど、話の筋は通っている。
けど、自分の秘め事を母親に話す息子というのは、どうなんだろう。
王族にプライベートは無いって聞くけど、そんなことまで日常会話に上がるんだろうか。
「ふふ。そうね。可愛らしいものだから、つい、からかっちゃったわ」
ぞわぞわっとした。
なんだろう。
身体を舐めまわされたような、そんな感覚が身体を走った。
私が鳥肌に耐えていると、アダム王子が話を続ける。
「それに、こいつは弟の婚約者だ」
「あら、そうなの?じゃあ、私の義理の娘になるのね」
「そうだ」
この場でそれをばらすのか。
打算のある婚約だけど事実だから否定できない。
けど、こういうのは当人であるアーサー王子から語るべき内容じゃないだろうか。
文句を言いたかったが、アダム王子の表情を見て、止めておく。
アダム王子は、なぜか牽制するような表情で、今の言葉を王妃に言ったのだ。
もしかして、私は王妃に目を付けられたのだろうか。
厄介な予感がする。
「それなら、将来の娘と仲を深めないとね」
王妃の視線がこちらを向く。
優し気な瞳なんだけど、なんだろう、なぜか愛玩動物に向ける優しさのような感じがした。
「お茶はいかが?自慢の茶葉なの」
「あ、いただきます」
そう言って先ほどから甘い香りを漂わせてくるお茶を勧めてくる。
部屋に入ったときに感じた甘い香りは、このお茶の香りだったようだ。
よほど気に入っているのか、部屋にまで染み付いている。
「どうぞ」
一応、将来の母親からの勧めということになる。
断るわけにはいかないだろう。
勧められるままに口をつけて、舌で味を感じる。
香りは甘いけど、微かな苦みがある。
森で私が飲んでいたハーブティーに近いだろうか。
あるいは薬草茶のような風味かも知れない。
「・・・ずいぶんと、珍しいお茶ですね」
「こんなところにいるとお茶くらいしか楽しみがなくてね。変わった茶葉を集めているのよ。お口に合わなかった?」
「いえ、飲みなれない味で驚いただけです」
そう言っておくけど、二口目は飲まないでおく。
「美味しいのだけどね。息子達もあまり飲んでくれないのよ」
そう言って王妃は、自分のティーカップから優雅にお茶を口に運ぶ。
ここまで甘い香りが漂ってくるから、同じ茶葉だろう。
警戒し過ぎただろうか。
薬草の味だから気になったのだけど。
「せっかくだから、アーサーとお嬢さんの馴れ初めを聞きたいわ」
そう言われて、私は名乗っていないことに気づく。
ただの護衛だったら名乗る気はなかったのだけど、アーサー王子の婚約者と紹介されてしまったからには、名乗らないわけにはいかないだろう。
「失礼しました。シンデレラと申します」
「シンデレラさんね。私はラプンツェルよ」
私は自分の名前を名乗り、王妃も自分の名前を名乗った。
あまり関わり合いになりたくないタイプの女性だけど、なんだか長い付き合いになりそうな気がする。
そんな予感がした。
*****
「あまり長居をする時間もないから、これで失礼する」
あの後、アーサー王子との馴れ初めとやらを話さなければならないかとウンザリしていたところ、アダム王子が話題を変えてくれた。
というより、そもそもアダム王子の婚約の話をしにきたのだから、そちらを先にするのは当たり前だ。
結果として、アダム王子が義理の姉のことを話し終えたところでお茶会は終了した。
話した内容は、まあほとんどが事実だ。
毒を受けて眠り続けていたところは省略していたけど。
私とアーサー王子の馴れ初めをでっち上げる必要があるかと思ったので、助かったのは確かだ。
「よかったら、シンデレラさんだけでも、またお茶会にいらしてね」
最後にそんな声をかけられて、王妃のいる塔を後にした。
とりあえず、護衛としての役目は果たせただろう。
ほっと息を吐いたところでアダム王子が話しかけてくる。
「先に謝っておく」
突然、謝られた。
なんだろう。
予定に無かったのに、アーサー王子の婚約者として紹介したことだろうか。
そのせいで目をつけられた気がするのは確かだ。
そう思って聞いてみたのだが、どうも違うようだ。
「それもあるが・・・お茶は飲まない方がよいと、言い忘れていたと思ってな。王妃がおまえを誘うとは思っていなかったのだ」
「やっぱり、何か盛られていた?」
一応、舌で薬草の味を感じた時点で飲むのを止めておいたんだけど、一口分くらいは飲んでしまった。
アダム王子がその場で止めなかったから毒ではないとは思うし、師匠がいるから何とかなるとは思うけど、そう言えば身体が少し火照ってきた気がする。
「俺も昔使ったことがあるから、あの香りを嗅いだ時点で気づいた」
「あの甘い香りね。なんの薬なの?」
「薬というか、薬効のあるお茶だな。効果は・・・・・まあ、一晩で消えると思う」
それはなによりだけど、質問したのは別のことだ。
「それで効果は?」
「あー・・・・・困ったら、弟に頼むといい」
「ちょっと、効果は何?」
「先に謝っただろう」
「許したとは言っていないわよ」
嫌な予感がしてきた。
不安のせいか、心臓の鼓動が大きく感じる。
そう思ったけど、どうも違う。
これは不安のせいじゃなさそうだ。
アダム王子を問いただそうとしたけど、なんだか熱も出てきたような気がする。
仕方がないので、その場はそれで別れ、すぐに自室に戻る。
そして、その判断は正しかったらしく、自室に着くことには身体に痺れを感じ始めていた。
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