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第二章 白雪
023.姫
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「王子のところへ向かわせた者はどうなっているの?」
一人の女性が、湯船に浸かっている。
足を伸ばしてゆったりと浸かることができる湯船ではあるが、女性の身分からすれば小さい湯船だ。
だが、それには理由があった。
湯船に満たされているのは湯ではない。
「行方不明です。ですが、様子を見に行かせた者の報告によると、王子は屋敷を出発して城へむかったということです」
側に控えていた女性が報告をする。
しかし、震えてこそいなかったが、その声は固かった。
「そう」
ざぱっ。
湯船につかっていた女性が立ち上がり、その裸体を隠すこともなく、報告をした女性に近づいていく。
そして顎に手をやり、俯き気味の顔を自分の方に向かせる。
その顔は青ざめていた。
「失敗したってことね?」
平坦な声で確認する。
それを聞いた途端、青ざめた顔はついに震え出した。
「お許しください、姫!」
一歩下がり、メイド服が汚れるのも構わず、膝をつき頭を下げる。
土下座と呼ばれる最も重い謝罪の体勢だ。
だが、姫は姿勢を下げ、先ほどと同じようにメイドの顔を自分に向けさせる。
「なにを許せばいいのかしら?私は確認しているだけよ?」
「も、申し訳ありません!」
今度は顔を逸らすこともできずに、真正面から視線が合ってしまう。
蛇に睨まれた蛙のように、メイドは震えながらも身体を動かすことができない。
そんなメイドの様子をおかしそうに眺めながら、姫は再び口を開く。
「だから、なにを許せばいいの?答えてくれないとわからないわ?」
「ひっ」
くすくすと笑いながら自分の頬を撫でる姫に、メイドは悲鳴を上げかける。
だが、それをすれば何が待っているかを知っているので、それすらもできない。
悲鳴を上げる自由すら奪われ、ただ震えることしかできなかった。
「喋ることもできないの?なら、あなたを側においておく必要もないわね。私の肌を潤すお湯になる?」
そう言って、姫は湯船に視線を向ける。
そこには赤い液体が満たされていた。
明らかに水を沸かせたものではない。
異臭がしないのは、『新鮮』な証拠だった。
姫が視線を逸らしたことで、メイドの視線もそちらへ向く。
その液体の正体を知っているメイドからすれば、姫の言葉は恐怖以外の何物でもなかった。
「王子を眠りにつかせる作成は失敗しました!すぐに次の者を向かわせます!」
メイドは、恐怖に駆られて、それだけを言うことができた。
自分達は、役に立つから、生かされている。
食材や湯になる以外の使い道があるから、そちらに使われているだけだ。
もし、そちらに使えないと判断されれば、他の者達と同じ運命を辿る。
それが分かっているので、失敗を報告することは命懸けだった。
「そう」
姫はそれだけを呟いた。
メイドは、死刑を宣告される罪人の気分で、次の言葉を待つ。
それは、決して大袈裟な比喩ではないのだ。
「不老薬を作る過程で面白い失敗作ができたから、欲張り過ぎたわね。今回の失敗は無かったことにしてあげる」
「あ、ありがとうございます!」
自分が許されたことを理解して、メイドが土下座をしたとき以上に頭を下げる。
これで気まぐれでも起こされたらたまらない。
すぐに次の行動を開始する必要があった。
すばやく立ち上がり、姫の指示を待つ。
「王子の暗殺は継続。でも、手段にはこだわらないことにするわ。確実に消しなさい」
「承知しました!」
返事をすると、メイドは速足で出ていく。
「私の世話を放り出して、仕方のない娘ね。湯冷めしちゃうじゃない」
姫は濡れた身体のまま、浴室を出ていく。
部屋の外には別のメイド達が控えており、姫の身体の液体をふき取り、ドレスを着せていく。
「今日はタルタルステーキが食べたいわ」
独り言のような言葉。
しかし、姫が口にすれば、夕食に出てくるのは、そのメニューになる。
姫は美食家ではあるが、入手が困難な珍しい食材を使った料理は求めない。
食材は城の地下に大勢いる。
姫の希望が叶えられないときは無かった。
*****
「ところでチャラ王子はビッチ姉さんを、どうやって城に連れていくんですか?」
私は城へ向かう道中、休憩中にチャラ王子に尋ねる。
「チャラ?俺はそんな名前じゃないぞ。お前の姉もそんな名前じゃないだろう」
「愛称ですよ。親しみを込めた呼び方というやつです」
「・・・悪意を感じるのは気のせいか?」
「気のせいです」
まあ、気のせいじゃないけど。
「それで、どうするんですか?」
気になっていた。
私はストーカー王子が婚約者として連れて行くと言っていた。
あまり納得はしていないが、状況から考えれば、それが一番都合がいいから妥協している。
それに、ガラスの靴のことで王様から許可は得ているらしいから、問題ないのだろう。
だが、ビッチ姉さんは違う。
ただの貴族の娘でしかない。
チャラ王子が足しげく通っていたそうだが、女癖の悪い王子が通ったところで、特別扱いされる理由にはならないだろう。
どうするのかと思っていたら、チャラ王子が予想外の言葉を口にした。
「妃の候補として連れて行く」
「え?大丈夫なんですか、それ」
「兄上、大丈夫なのですか?」
私とストーカー王子の台詞が被った。
でも、それも当然だ。
隣国の姫と婚約の話が出ている状況で、それはマズいだろう。
隣国に喧嘩を売っているとしか思えない。
まあ、先に喧嘩を売って来たのは向こうの可能性が高いけど。
そう言えば、そのことを伝えていなかったな。
師匠と話しただけだ。
伝えた方がいいだろうか。
でも、面倒なことになりそうだから、言う機会があったらでいいか。
それよりも、気になることがある。
チャラ王子は、そのことを知らないにも関わらず、ビッチ姉さんを妃候補にしようとしているのか。
「それほど、その人は兄上にとって大切な人なのですか」
同じことを考えたのか、私が訊こうと思ったことを、ストーカー王子が代わりに訊いてくれる。
「正直、わからん。側妃にしてやると言ったときは、断られたしな」
おお。
チャラ王子がビッチ姉さんにプロポーズ紛いのことをしていたとは。
正妃じゃなくて側妃というところに現実味がある。
本気のようだ。
でも、ストーカー王子も私に対して似たようなことをしてきたし、兄弟だから似ているのだろうか。
考え無しのところが。
「だが、命の恩人をそのままにはしておけないだろう。あの屋敷に残しておけば、どんな目に遭わされるかわかったものではないからな」
一応は私にとっても実家にあたるのだが、随分と王子二人の印象が悪くなったものだ。
否定する要素もないから、訂正しようとは思わないけど。
だけど、少し見直した。
女癖が悪いから、女を快楽を得るための穴のようにでも考えているのかと思っていたけど、そうでもないようだ。
意外に義理堅い。
「それでビッチ姉さんを助けるために解毒薬を手に入れるアテはあるんですか?メフィの話だと、それが無いと、ずっと眠り続けるみたいですけど」
暗殺者はメフィを呼び出すための生贄にしてしまった。
拷問して情報を引き出すこともできない。
こんなことなら生かしておいてもよかったのだが、そんな状況だと判明したのがメフィを呼び出したからなのだから、どうしようもなかった。
「襲撃は失敗したのだから、次が来るだろう。隣国の姫は、俺のところに嫁ぎたくないようだからな」
気付いていたのか。
まあ、自分の周囲で最近起こった変化から推測すれば、そう難しくはないか。
ストーカー王子や護衛の騎士達も驚いていないところを見ると、同じ結論に至っていたか、事前に情報を共有していたのだろう。
そのことは分かったのだが、問題は方法だ。
「それは、兄上が囮になるということですか?危険です!」
「解毒薬を手に入れるという目的が無かったとしても、襲撃者は来るだろう。危険なのは変わらないさ」
「護衛で固めた城に籠っていれば、襲撃者が諦める可能性もありますし、危険は少ないです。でも、今の言い方だと、襲撃者をおびき出すために隙を作るつもりなのでしょう?」
「・・・・・」
「止めてください!」
ストーカー王子が止めているが、チャラ王子は聞き入れるつもりは無さそうだ。
「大丈夫だ。そのための戦力も増えたことだした」
そう言いながら、チャラ王子が私とメフィを見てくる。
「言っておきますが、私は対価も無いのに動きませんよ。あなたは契約者でもないですし」
見られていることが分かったのだろう。
メフィがそう宣言する。
しかし、王子もそれは期待していなかったようだ。
「わかっている。だが、そっちの娘はどうだ?襲撃者は戦争で捕まえた捕虜というわけじゃないし、人知れず処分しても問題にはならん。こちらの用が済めば、譲ってやるぞ」
なるほど。
それをメフィへの対価にしろということか。
メフィへの対価は金銭で賄えるものではないし、悪い話ではない。
危険度は高いが、城なら他の護衛もいるだろうから、屋敷のときよりはマシだろう。
「いいわ。共犯になってあげる」
「シンデレラ!」
ストーカー王子が私を非難するような声を上げるが、それは聞けない。
なにせ、こんな機会は貴重なのだ。
消しても問題なく、心も痛まない者を手に入れる機会など、そうそう無い。
「助かる。しかし、共犯とはひどいな。俺はただ襲撃者を捕まえる協力を依頼しただけだぞ」
「自分を護衛しようとするものを裏切って、わざと隙を作ろうとしているんだから、充分に悪いことでしょ。国に損害を与える可能性があるんだから、犯罪者みたいなものよ」
「それで、お前は、それに協力するから共犯というわけか。くっくっくっ」
チャラ王子がおかしそうに笑う。
「気に入った。弟に愛想を尽かしたら、俺のところに来い」
「兄上!」
「あいにく、傍迷惑なプロポーズをする王子は間に合ってます」
「シンデレラ!」
本気ではないだろうが、断っておく。
王族は権力を持っているから、油断はできない。
そんなことをしながら、私達は城への道を進んでいた。
一人の女性が、湯船に浸かっている。
足を伸ばしてゆったりと浸かることができる湯船ではあるが、女性の身分からすれば小さい湯船だ。
だが、それには理由があった。
湯船に満たされているのは湯ではない。
「行方不明です。ですが、様子を見に行かせた者の報告によると、王子は屋敷を出発して城へむかったということです」
側に控えていた女性が報告をする。
しかし、震えてこそいなかったが、その声は固かった。
「そう」
ざぱっ。
湯船につかっていた女性が立ち上がり、その裸体を隠すこともなく、報告をした女性に近づいていく。
そして顎に手をやり、俯き気味の顔を自分の方に向かせる。
その顔は青ざめていた。
「失敗したってことね?」
平坦な声で確認する。
それを聞いた途端、青ざめた顔はついに震え出した。
「お許しください、姫!」
一歩下がり、メイド服が汚れるのも構わず、膝をつき頭を下げる。
土下座と呼ばれる最も重い謝罪の体勢だ。
だが、姫は姿勢を下げ、先ほどと同じようにメイドの顔を自分に向けさせる。
「なにを許せばいいのかしら?私は確認しているだけよ?」
「も、申し訳ありません!」
今度は顔を逸らすこともできずに、真正面から視線が合ってしまう。
蛇に睨まれた蛙のように、メイドは震えながらも身体を動かすことができない。
そんなメイドの様子をおかしそうに眺めながら、姫は再び口を開く。
「だから、なにを許せばいいの?答えてくれないとわからないわ?」
「ひっ」
くすくすと笑いながら自分の頬を撫でる姫に、メイドは悲鳴を上げかける。
だが、それをすれば何が待っているかを知っているので、それすらもできない。
悲鳴を上げる自由すら奪われ、ただ震えることしかできなかった。
「喋ることもできないの?なら、あなたを側においておく必要もないわね。私の肌を潤すお湯になる?」
そう言って、姫は湯船に視線を向ける。
そこには赤い液体が満たされていた。
明らかに水を沸かせたものではない。
異臭がしないのは、『新鮮』な証拠だった。
姫が視線を逸らしたことで、メイドの視線もそちらへ向く。
その液体の正体を知っているメイドからすれば、姫の言葉は恐怖以外の何物でもなかった。
「王子を眠りにつかせる作成は失敗しました!すぐに次の者を向かわせます!」
メイドは、恐怖に駆られて、それだけを言うことができた。
自分達は、役に立つから、生かされている。
食材や湯になる以外の使い道があるから、そちらに使われているだけだ。
もし、そちらに使えないと判断されれば、他の者達と同じ運命を辿る。
それが分かっているので、失敗を報告することは命懸けだった。
「そう」
姫はそれだけを呟いた。
メイドは、死刑を宣告される罪人の気分で、次の言葉を待つ。
それは、決して大袈裟な比喩ではないのだ。
「不老薬を作る過程で面白い失敗作ができたから、欲張り過ぎたわね。今回の失敗は無かったことにしてあげる」
「あ、ありがとうございます!」
自分が許されたことを理解して、メイドが土下座をしたとき以上に頭を下げる。
これで気まぐれでも起こされたらたまらない。
すぐに次の行動を開始する必要があった。
すばやく立ち上がり、姫の指示を待つ。
「王子の暗殺は継続。でも、手段にはこだわらないことにするわ。確実に消しなさい」
「承知しました!」
返事をすると、メイドは速足で出ていく。
「私の世話を放り出して、仕方のない娘ね。湯冷めしちゃうじゃない」
姫は濡れた身体のまま、浴室を出ていく。
部屋の外には別のメイド達が控えており、姫の身体の液体をふき取り、ドレスを着せていく。
「今日はタルタルステーキが食べたいわ」
独り言のような言葉。
しかし、姫が口にすれば、夕食に出てくるのは、そのメニューになる。
姫は美食家ではあるが、入手が困難な珍しい食材を使った料理は求めない。
食材は城の地下に大勢いる。
姫の希望が叶えられないときは無かった。
*****
「ところでチャラ王子はビッチ姉さんを、どうやって城に連れていくんですか?」
私は城へ向かう道中、休憩中にチャラ王子に尋ねる。
「チャラ?俺はそんな名前じゃないぞ。お前の姉もそんな名前じゃないだろう」
「愛称ですよ。親しみを込めた呼び方というやつです」
「・・・悪意を感じるのは気のせいか?」
「気のせいです」
まあ、気のせいじゃないけど。
「それで、どうするんですか?」
気になっていた。
私はストーカー王子が婚約者として連れて行くと言っていた。
あまり納得はしていないが、状況から考えれば、それが一番都合がいいから妥協している。
それに、ガラスの靴のことで王様から許可は得ているらしいから、問題ないのだろう。
だが、ビッチ姉さんは違う。
ただの貴族の娘でしかない。
チャラ王子が足しげく通っていたそうだが、女癖の悪い王子が通ったところで、特別扱いされる理由にはならないだろう。
どうするのかと思っていたら、チャラ王子が予想外の言葉を口にした。
「妃の候補として連れて行く」
「え?大丈夫なんですか、それ」
「兄上、大丈夫なのですか?」
私とストーカー王子の台詞が被った。
でも、それも当然だ。
隣国の姫と婚約の話が出ている状況で、それはマズいだろう。
隣国に喧嘩を売っているとしか思えない。
まあ、先に喧嘩を売って来たのは向こうの可能性が高いけど。
そう言えば、そのことを伝えていなかったな。
師匠と話しただけだ。
伝えた方がいいだろうか。
でも、面倒なことになりそうだから、言う機会があったらでいいか。
それよりも、気になることがある。
チャラ王子は、そのことを知らないにも関わらず、ビッチ姉さんを妃候補にしようとしているのか。
「それほど、その人は兄上にとって大切な人なのですか」
同じことを考えたのか、私が訊こうと思ったことを、ストーカー王子が代わりに訊いてくれる。
「正直、わからん。側妃にしてやると言ったときは、断られたしな」
おお。
チャラ王子がビッチ姉さんにプロポーズ紛いのことをしていたとは。
正妃じゃなくて側妃というところに現実味がある。
本気のようだ。
でも、ストーカー王子も私に対して似たようなことをしてきたし、兄弟だから似ているのだろうか。
考え無しのところが。
「だが、命の恩人をそのままにはしておけないだろう。あの屋敷に残しておけば、どんな目に遭わされるかわかったものではないからな」
一応は私にとっても実家にあたるのだが、随分と王子二人の印象が悪くなったものだ。
否定する要素もないから、訂正しようとは思わないけど。
だけど、少し見直した。
女癖が悪いから、女を快楽を得るための穴のようにでも考えているのかと思っていたけど、そうでもないようだ。
意外に義理堅い。
「それでビッチ姉さんを助けるために解毒薬を手に入れるアテはあるんですか?メフィの話だと、それが無いと、ずっと眠り続けるみたいですけど」
暗殺者はメフィを呼び出すための生贄にしてしまった。
拷問して情報を引き出すこともできない。
こんなことなら生かしておいてもよかったのだが、そんな状況だと判明したのがメフィを呼び出したからなのだから、どうしようもなかった。
「襲撃は失敗したのだから、次が来るだろう。隣国の姫は、俺のところに嫁ぎたくないようだからな」
気付いていたのか。
まあ、自分の周囲で最近起こった変化から推測すれば、そう難しくはないか。
ストーカー王子や護衛の騎士達も驚いていないところを見ると、同じ結論に至っていたか、事前に情報を共有していたのだろう。
そのことは分かったのだが、問題は方法だ。
「それは、兄上が囮になるということですか?危険です!」
「解毒薬を手に入れるという目的が無かったとしても、襲撃者は来るだろう。危険なのは変わらないさ」
「護衛で固めた城に籠っていれば、襲撃者が諦める可能性もありますし、危険は少ないです。でも、今の言い方だと、襲撃者をおびき出すために隙を作るつもりなのでしょう?」
「・・・・・」
「止めてください!」
ストーカー王子が止めているが、チャラ王子は聞き入れるつもりは無さそうだ。
「大丈夫だ。そのための戦力も増えたことだした」
そう言いながら、チャラ王子が私とメフィを見てくる。
「言っておきますが、私は対価も無いのに動きませんよ。あなたは契約者でもないですし」
見られていることが分かったのだろう。
メフィがそう宣言する。
しかし、王子もそれは期待していなかったようだ。
「わかっている。だが、そっちの娘はどうだ?襲撃者は戦争で捕まえた捕虜というわけじゃないし、人知れず処分しても問題にはならん。こちらの用が済めば、譲ってやるぞ」
なるほど。
それをメフィへの対価にしろということか。
メフィへの対価は金銭で賄えるものではないし、悪い話ではない。
危険度は高いが、城なら他の護衛もいるだろうから、屋敷のときよりはマシだろう。
「いいわ。共犯になってあげる」
「シンデレラ!」
ストーカー王子が私を非難するような声を上げるが、それは聞けない。
なにせ、こんな機会は貴重なのだ。
消しても問題なく、心も痛まない者を手に入れる機会など、そうそう無い。
「助かる。しかし、共犯とはひどいな。俺はただ襲撃者を捕まえる協力を依頼しただけだぞ」
「自分を護衛しようとするものを裏切って、わざと隙を作ろうとしているんだから、充分に悪いことでしょ。国に損害を与える可能性があるんだから、犯罪者みたいなものよ」
「それで、お前は、それに協力するから共犯というわけか。くっくっくっ」
チャラ王子がおかしそうに笑う。
「気に入った。弟に愛想を尽かしたら、俺のところに来い」
「兄上!」
「あいにく、傍迷惑なプロポーズをする王子は間に合ってます」
「シンデレラ!」
本気ではないだろうが、断っておく。
王族は権力を持っているから、油断はできない。
そんなことをしながら、私達は城への道を進んでいた。
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