森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

かみゅG

文字の大きさ
上 下
73 / 75
第三章 ホムンクルスの中のマンドラゴラ

073.はーい、ご飯ですよぅ

しおりを挟む
「子猫に試すのか?」
「はい」

 メイが頷くが、俺は気が進まない。
 まず、生まれたばかりの命を実験台にすることが、気が引ける。
 安全だったとしても、子猫の命を俺が上書きしてしまうようで、申し訳ない気持ちになる。

「うーん・・・」
「どうしたんですか?」
「子猫だって自我を持っているはずだろ?それを乗っ取るみたいでな」

 俺が気が進まないことを伝えると、メイはきょとんとする。

「?・・・ああ、そういうことですか。違いますよ、ケイ。自我を乗っ取るんじゃなくて、記憶を移植するだけです」
「どう違うんだ?」
「そうですねぇ。たとえば、本を読んだら知識が増えますよね」
「まあ、そうだな」
「でも、自我が上書きされるわけじゃないですよね」
「呼んだ内容によっては、影響くらいは受けるかも知れないけどな」
「記憶を移植するというのは、本を読むという工程を省略して、知識を増やす方法なんです」
「そうなのか」
「そうなんです」

 なら、いいのか。
 いや、あまりよくないような気はするが、自我を乗っ取るよりはマシか。
 逆に、苦労せずに知識が増えるわけだから、お得なくらいかも知れない。
 俺の知識が何の役に立つかはわからないが、本を読んで得る知識だって役に立たないものはあるしな。
 そう考えれば、子猫に教育を施していると言えなくはないか。

「完全に空っぽのホムンクルスに記憶を移植すれば自我を乗っ取ることも可能なんですけど、今回はそこまではできません」
「そういうことか」
「そういうことです」

 メイの話を聞いて、記憶を移植することについての抵抗感は無くなった。
 後は安全面だ。
 それを確認しないことには、子猫を犠牲にすることになりかねない。

「それで、どんな方法で記憶を移植するんだ?」
「記憶の移植元の身体を材料にした魔術薬を、記憶の移植先の個体に与えます」
「俺の身体を食べさせるってことか」
「魔術薬に加工するから、直接じゃないですけどね」

 なるほど。
 その方法なら、多少失敗しても、子猫が腹を壊すくらいだ。
 産まれたばかりのときは腹を壊すだけでも命に関わりそうだが、固形物を食べられるくらいまで成長してからなら大丈夫だろうか。
 ダメもとで試してみるか。

「どのくらい身体を削ればいいんだ?」
「今回はお試しですからね。惚れ薬を作ったときの余りがありますから、それを使いましょう」
「そんな少しでいいのか?」
「ケイの全てを移植しようと思ったら足りませんけど、一部を移植するだけなら充分だと思います」

 こうして俺の記憶を子猫へ移植する試みが始まった。

 *****

 黒猫の出産は無事終わった。
 三匹生まれたが毛並みはみんな違う。
 一匹は母猫と同じく真っ黒だが、他の二匹は父猫に似たのだろうか。
 猫を飼ったことは無いが、人間よりは成長が早いのだろう。
 あっと言う間にミルクを卒業して離乳食になり、やがて固形物を食べるようになった。
 子猫はポチが熱心に世話をしている。
 というか、一緒になって遊んでいる。
 最近、ポチが子猫たちの中の一匹にしか見えない。

「そろそろ試してみましょうか」
「なにがだ?」

 メイがそう言ったとき、最初は気付かなかった。
 だが、メイが手にしているものを見て、気付いた。
 あれから数ヶ月経っているが、メイは忘れていなかったらしい。

「ああ、アレか。本当に大丈夫なのか?」
「毒になる材料は入れていませんからね。問題があるとすれば、味見ができないので、不味い可能性があることくらいですね」

 メイが餌入れを持って、子猫達のところへ近づいていく。

 ぴくっ

 匂いに気付いたのか、子猫+ポチが反応する。

「はーい、ご飯ですよぅ」

 メイが餌入れを置くと、いっせいに群がる。
 というか、

「こら、ポチ!おまえは食べたらダメだろ!」
「ニャ?」

 ポチも一緒になって食べていた。
 慌てて、それを止める。
 ポチに俺の記憶が宿ったら、ややこしいことになる。
 さいわい口にする前だったようで、ポチに変化は見られない。

 ポチを餌から離した後、子猫たちが食べ終わるのを待つ。
 そして、しばらく様子を見る。

「失敗ですかねぇ」
「まあ、それならそれで・・・」

 満腹になった子猫たちがゴロゴロし始める。
 失敗だろうかと考え始めた矢先、一匹の子猫がこちらに振り返った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~

degirock/でじろっく
ファンタジー
「【なろうぜ系】って分かる?」 「分かりません」 「ラノベ読んだ事無い?」 「ありません」 「ラノベって分かる?」 「ライトノベルの略です」 「漫画は?」 「読みません」 「ゲーム」 「しません」 「テレビ」 「見ません」 「ざけんなおらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」  サブカル0知識の私が死んだ先で背負わされたのは、  異世界情報を詰め込んだ【異世界辞典】の編纂作業でした。 ========================  利己的な人間に歪まされた自分の居場所を守る為に、私は私の正しさを貫く事で歪みを利己的な人間ごと排斥しようとした。  結果、利己的な人間により私の人生は幕を下ろした。  …違う。本当に利己的であったのは、紛まぎれも無く、私だ。間違えてしまったのだ。私は。その事実だけは間違えてはならない。 「……私は確かに、正しさという物を間違えました」 「そうだよなァ!? 綺麗事はやめようよ、ねェ! キミは正義の味方でも何でもないでしょォ!?」  我が意を得たり、と言わんばかりに醜くく歪んだ笑顔を見せる創造主。  そんな主に作られた、弄れるかわいそうな命。  違う…、違う!! その命達を憐れむ権利など私には無い! 「───だから?」 「……へっ?」 「だから、それがどうかしたんですか。私は今度こそ私の正しさを貫き通します。あなたが生み出したこの星の命へ、そしてあなたへ」      彼等のその手にそれぞれ強制的に渡されたとある本。それは目の前に浮かぶ地球によく似た星そのものであり、これから歩む人生でもある。二人の未熟なカミサマに与えられた使命、それはその本を完成させる事。  誰の思惑なのか、何故選ばれたのか、それすらも分からず。  一人は自らの正しさを証明する為に。  一人は自らの人生を否定し自由に生きる為に。  ───これは、意図せず『カミサマ』の役目を負わされてしまった不完全な者達が、自ら傷付きながらも気付き立ち上がり、繰り返しては進んでいく天地創造の軌跡である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

遺伝子操作でファンタジーの住人を創るならエルフよりオークの方がよいと思うのでやってみた。

かみゅG
ファンタジー
 ゴブリン。  オーガ。  オーク。  エルフ。  ドワーフ。  ファンタジーの住人達。  もし、彼らを創り出すことができるとしたら、どの種族がよいだろうか。  強さを求める者。  美しさを求める者。  様々だろう。  しかし、世界の役に立つという観点で考えた場合、答えは明確だ。  オークである。 「だから、創ってみた」 「なにしてくれちゃってんの、このアホーーーッ!!!」  教授と助手による、特に異世界に転移も転生もしない冒険が、今!始まる!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...