森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

かみゅG

文字の大きさ
上 下
68 / 75
第二章(裏) 七不思議の中のマンドラゴラ

068.君達と同じ魔術師だよ

しおりを挟む
 真っ二つに斬り裂かれた身体。

「た、大変ニャッ!」
「よせっ!それより、すぐに逃げろっ!」
「でもっ!」
「いいからっ!」

 半身がポチを急かして逃げてゆく。
 残る半身はゴーレムと一緒に置き去りにされた。
 細切れにされると警戒するが、ゴーレムが動くことは無かった。
 先ほどこちらの身体を斬り裂いてきたのは、自己防衛機能だったのかも知れない。

「・・・・・」

 置き去りにされた半身に、主人格は宿っていないようだった。
 自分以外の存在が感じられない。
 逃げた半身に自分という存在が宿っているかは判らない。
 一人の人間の記憶が複数のものに刻まれる可能性はある。
 しかし、一人の人間に魂は一つだ。
 ただの記録としてならともかく、命を持つ存在として複数が成立することは無いように思えた。

「・・・・・」

 身体を動かすことはできそうだった。
 根の絡み具合を調整すれば手足を作ることもできそうだ。
 ここに転がっていても主人格やポチが回収に来ることは期待できそうにない。
 このままでは、やがて朽ちるだけだろう。
 自発的に行動を開始すべきだ。
 そう考えて、実行しようとしたところで、声が聴こえてきた。

「あたしのゴーレムを壊した犯人が戻ってきたのかしら?」
「『君の』じゃないだろう。あのゴーレムは借り物だ」

 その声を聴いた瞬間、とっさに動きを止めた。
 そして、幸運に感謝した。

「でも、どういうことかしら?てっきり、あの娘が犯人だと思っていたんだけど」
「さてね。でも、好都合じゃないか。契約のせいで、あの娘には手を出せないんだから」

 二人はこちらに気付いた様子はない。
 会話をしながらゴーレムの方に近づいていく。

「動き出した形跡はあるけど、破壊された形跡はないわね」
「さっきの信号は誤作動だったんじゃないか?外側は無事に見えても、内側が焼かれているという話だったろう」

 どうやら二人はゴーレムが動いたことを知り、調べに来たようだ。
 ゴーレムの持ち主なのだろうか。
 しかし、借り物と言っていたことが気になる。

「まったく。このポンコツ、さっさと修理してくれないかしら」
「君が犯人をおびき寄せる囮に使うと言って、ここに置いたのだろう」

 二人はゴーレムの使用者ではあるが、製作者ではないようだ。
 会話から判断すると自力で修理できないらしい。
 しかし、修理するアテはあるようだ。
 だとすると、この二人には協力者がいると考えられる。

 ここにやってきた二人は、以前に魔力を感じた例の二人だった。
 予想では魔術師の可能性が高い。
 だが、魔術士だとするとゴーレムを作ることはできない。
 ゴーレムは錬金術師の技術だからだ。
 それらのことを総合すると、協力者は錬金術師の可能性が高い。
 魔術師と錬金術師が協力関係にあるということだろうか。
 そして、ゴーレムが獣人を襲ったということは獣人とは協力関係にないということだろうか。
 もしそうなら、かつて自分が人間だったときの認識とは大きく異なっている。

「ところで、コレは何かしら?」
「マンドラゴラじゃないかな。あの娘の家にもあったようだけど、同じものかな」
「やっぱり、あの娘が犯人じゃないの?」
「決めつけるのは早計だよ。それに、もしそうだとしても、あの娘に手を出せないことには変わりない」

 思考を巡らせている間に、二人が自分に気付いたようだった。
 ただし、ただのマンドラゴラとしてだ。
 自我を持っていることや、ゴーレムを破壊した人間であるメイの知人であることには、気付かれていない。

「犯人は捕まえられなかったから、代わりにコレをもらっておこうかしら」
「現場に残されたものは、犯行の証拠として保管しておくべきだと思うけどね」

 二人がこちらに近付いてくる。
 まだ距離が遠い。
 ギリギリまで近付くのを待つ。
 そして手が触れそうな距離まで近付いたところで、全魔力を呪音として解放する。

『!?』

 呪音が放たれる直前、二人が魔力を身体に満ちさせるのが判った。

『オオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ!!!!!』

 かつて一度に数体の獣人を葬った呪音。
 しかし、魔力を持つ魔術師には致命傷にはなり得ない。
 呪音は二人の魔力を揺らすだけにとどまる。
 二人は酔ったようにふらつくが、膝をつくことはなかった。
 すでに二人が魔術士だということは確信している。
 二人の魔術士に向かって、魔術師として口を開く。

「やあ、こんにちは。僕の名前はKingキング。君達と同じ魔術師だよ。気軽にケイとでも呼んでくれ」

 魔術士に対して、自分が魔術士だと証明するには、魔術を使って見せるのが手っ取り早い。
 そして、取り引きを有利に進めるためには、力を誇示するのが手っ取り早い。
 さて、ここからが本番だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~

degirock/でじろっく
ファンタジー
「【なろうぜ系】って分かる?」 「分かりません」 「ラノベ読んだ事無い?」 「ありません」 「ラノベって分かる?」 「ライトノベルの略です」 「漫画は?」 「読みません」 「ゲーム」 「しません」 「テレビ」 「見ません」 「ざけんなおらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」  サブカル0知識の私が死んだ先で背負わされたのは、  異世界情報を詰め込んだ【異世界辞典】の編纂作業でした。 ========================  利己的な人間に歪まされた自分の居場所を守る為に、私は私の正しさを貫く事で歪みを利己的な人間ごと排斥しようとした。  結果、利己的な人間により私の人生は幕を下ろした。  …違う。本当に利己的であったのは、紛まぎれも無く、私だ。間違えてしまったのだ。私は。その事実だけは間違えてはならない。 「……私は確かに、正しさという物を間違えました」 「そうだよなァ!? 綺麗事はやめようよ、ねェ! キミは正義の味方でも何でもないでしょォ!?」  我が意を得たり、と言わんばかりに醜くく歪んだ笑顔を見せる創造主。  そんな主に作られた、弄れるかわいそうな命。  違う…、違う!! その命達を憐れむ権利など私には無い! 「───だから?」 「……へっ?」 「だから、それがどうかしたんですか。私は今度こそ私の正しさを貫き通します。あなたが生み出したこの星の命へ、そしてあなたへ」      彼等のその手にそれぞれ強制的に渡されたとある本。それは目の前に浮かぶ地球によく似た星そのものであり、これから歩む人生でもある。二人の未熟なカミサマに与えられた使命、それはその本を完成させる事。  誰の思惑なのか、何故選ばれたのか、それすらも分からず。  一人は自らの正しさを証明する為に。  一人は自らの人生を否定し自由に生きる為に。  ───これは、意図せず『カミサマ』の役目を負わされてしまった不完全な者達が、自ら傷付きながらも気付き立ち上がり、繰り返しては進んでいく天地創造の軌跡である。

遺伝子操作でファンタジーの住人を創るならエルフよりオークの方がよいと思うのでやってみた。

かみゅG
ファンタジー
 ゴブリン。  オーガ。  オーク。  エルフ。  ドワーフ。  ファンタジーの住人達。  もし、彼らを創り出すことができるとしたら、どの種族がよいだろうか。  強さを求める者。  美しさを求める者。  様々だろう。  しかし、世界の役に立つという観点で考えた場合、答えは明確だ。  オークである。 「だから、創ってみた」 「なにしてくれちゃってんの、このアホーーーッ!!!」  教授と助手による、特に異世界に転移も転生もしない冒険が、今!始まる!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...