森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

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第一章(裏) 森の中のマンドラゴラ

064.少しずつ干渉していくことにするか

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 熱を出したメイを見舞いにやってきた少年少女の二人組。
 その二人から魔力を感じた。
 待ちに待った魔術師だ。
 だが、判断は慎重に行わなければならない。
 魔力を持たないのに魔女を名乗るメイのような前例がいるのだ。
 この二人も魔力を持つだけの一般人の可能性もある。
 二人を観察する。

「メイちゃん。今日、学校休んだみたいだけど、どうしたの?」
「学校のプリントを持ってきてあげたわよ」

 言動は同じ学校に通う子供達にしか見えない。
 だが、魔力を持たない魔女のところに魔力を持つ者が訪ねて来たのだ。
 状況は不自然極まりない。

「そうなんだ。心配したよ。病院に行かなくて大丈夫?」
「面倒かけるんじゃないわよ。この家、森の中にあって、来るの大変なんだから」

 しかし、観察しても変わった言動や行動は見られない。
 やはりこの二人は魔力を持つだけの一般人なのだろうか。

「ねえ、そろそろ帰りましょう」
「え?でも、メイちゃん一人暮らしだし、看病しなくていいかな?」
「あたし達がいたら、メイちゃんも眠れないだろうし迷惑よ。ね?」

 そのうち、二人は魔術師であるという片鱗を見せることなく帰ろうとする。
 これでは情報が不足しすぎていて、二人が魔術士かどうか判断できない。
 強引に試すなら呪音を使えばいい。
 だが、それをしてしまえば、後戻りはできない。
 まだ、その段階ではないだろう。
 二人はメイの知り合いのようだし、メイが熱を出している間にもう一度くらい見舞いに来るだろう。
 そのときまでに、確認する方法を考えておくことにする。

「明日もお見舞いに来るよ」
「毎日来たら、メイちゃんも迷惑すると思うわ。体調を崩したことを、おばあちゃんに教えてあげた方がいいんじゃないかしら」

 しかし、二人のうちの一人が予想外のことを言い出す。
 知り合いだというのに、見舞いにはもう来ないと言い出したのだ。
 それでは二人の正体を探る手間が段違いに面倒になる。
 どうすべきか。

「じゃあ、今日はこれで帰るね」
「バイバイ」

 結局、強引な手段に出ることは思い留まり、ただ二人を見送ることにした。
 まあいい。
 メイとあの二人が同じ学校だというのは間違いなさそうだ。
 一度しか見舞いにことないことから、あまり仲は良くなさそうだが、接触しようと思えばできるだろう。
 今は魔術書を持つメイを優先することにする。

 *****

 その後、主人格が身体を削るという暴挙に出るなどの出来事はあったが、他に大きな出来事は無かった。
 主人格は能動的に行動を起こすつもりは無いようだ。
 このままでは状況は停滞したままとなってしまう。
 長い年月を待つことは苦痛ではないが、この身体の寿命がどの程度なのか分からないのが不安要因だ。
 自分は魔術師であって植物学者ではない。
 マンドラゴラは魔術の素材になるが、だからといって魔術師がマンドラゴラに詳しいというわけではない。
 どういう素材なのかという知識はあるが、どういう植物なのかという知識はそれほどない。
 それにマンドラゴラに記憶が宿るということも知らなかった。
 この植物には謎が多い。

「(そろそろ行動を起こすべきか?)」

 メイという手がかりはある。
 問題は主人格が積極的に行動しないから、新しい情報が手に入らないということだ。

「(主人格のフリをして、僕が表に出るか?)」

 主人格は夜になると土に潜り睡眠を取る。
 その間に自分が表に出ることは可能だろう。
 しかし、その時間帯はメイも睡眠を取っている。
 情報を得ることは難しい。

 主人格を押しのけて自分が表に出ることもできるが、それではメイに不信感を抱かせる。
 自然に情報を得ることができなくなってしまう。
 強引な方法は最後の手段にしたいところだ。

「(少しずつ干渉していくことにするか)」

 メイが熱を出した一件で、主人格はメイの信頼を得たようだ。
 今のメイなら、以前は話さなかった情報を話す可能性がある。
 だが、それは自分に対してではない。
 あくまでも、主人格に対してだ。
 だから、不自然にならない程度に干渉して、情報を引き出す。
 気の長い方法ではあるが、今はそれが一番良いだろう。
 この身体では、メイを始末することは簡単だが、例の二人に接触することは困難だ。
 寿命の長さも気になるところではあるが、慎重に行動することを優先する。

「(まずは、この家の外に出るように仕向けるか)」

 主人格は睡眠を取っている間は隙が大きくなる。
 そこに干渉して、欲求を引き出す。
 主人格はもともと冒険をしたいという欲求を持っているようだ。
 メイに頼んで、外に出ようとするだろう。
 外に出れば、新たな情報を得る機会が増えるはずだ。
 学校に行くことができれば、あの二人にも接触しやすくなる。

 だが、忘れてはならないこともある。
 この付近には自分を殺した獣人どももいるはずなのだ。
 干渉は慎重に行わなければならない。
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