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第二章 七不思議の中のマンドラゴラ
060.精液って用意できませんか?
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七不思議を巡る騒動が一段落した。
同居人が増えるというできごとはあったが、概ね平穏な日々だ。
冒険をしたいなんて考えるもんじゃないな。
思い返してみれば、あれが騒動のきっかけだった。
もう決めた。
俺は転生したこの世界で、のんびり過ごす。
平穏が一番だ。
そんな自堕落な決意を固めていると、メイがポツリと言った。
「ケイの身体をなんとかしないといけませんねぇ」
ちなみに、ポチは陽の光が入る窓際でひなたぼっこをして、ゴロゴロしている。
すっかり、家猫だ。
狩りの一族とか言っていたのは、どうなったんだろうか。
ネズミ一匹捕まえてこない。
そんなものを捕まえてこられても困るけど。
「俺の身体?」
ポチがゴロゴロしているので、俺がメイの言葉に返事を返す。
それに、話題は俺のことのようだ。
「身体なら、だいぶ再生したぞ」
七不思議の騒動で小さくなった身体だったが、現詩はほとんど元の大きさまで回復している。
しかし、メイの言いたいことは、そういうことではないらしい。
「そうじゃなくて、ケイの身体って小さくて不便じゃないですか」
「まあ、不便じゃないとは言わない」
転生前は人間だった俺からすると、手のひらサイズしかない身体は、何をするにも不便だ。
メイが世話をしてくれないと、生きていくのは不可能だろう。
植物としてずっと土に埋まっているなら話は別だが、人間の意識があるのでそれはキツイ。
「植物の成長を促進させる薬でも作ってみましょうか。人間くらいの大きさになれば、便利じゃないですか?」
なるほど。
それなら、着ぐるみを着込んで人里に行くこともできそうだ。
行動の範囲も広がる。
「魔術書に載っていたんですけど、作りますか?」
メイがへっぽこ魔術師であることに一抹の不安はあるが、アイデア自体は悪くない。
お願いしてみるか。
一瞬そう考えるが、ふと気になることがあった。
「その前に、マンドラゴラって、そんなに大きくなるのか?」
今の俺の身体は、人型の根っこをしたマンドラゴラという植物だ。
しかし、マンドラゴラが大木になるとは聞いたことがない。
下手に成長を促進なんかしたら、寿命が減ってしまうような気もする。
「どうなんでしょう。魔術書には、ケイくらいのサイズの絵しか載っていませんね。そのくらいが収穫に適した大きさですし」
「うーん、怖いからやめておく。他にいい方法はないか?」
どうやらメイは、俺の身体を大きくしてくれようとしているみたいだ。
その厚意に甘えて、他の方法はないか尋ねてみる。
「そうですねぇ」
メイはぺらぺらと魔術書をめくって、その方法を探す。
しばらくしたところで、メイの手が止まる。
「これなんか、どうでしょう?」
「どれどれ」
俺は小さい身体でテクテクと近づいて、メイと一緒に魔術書を覗き込む。
「ホムンクルス?」
「はい。魔術生命体です。本来はホムンクルス自体に自我を持たせるんですけど、ケイの意識を移植すれば、メイの身体になるんじゃないかと思って」
今までの魔術(笑)と比べると、はるかに魔術っぽい。
それだけに胡散臭い。
科学にもクローンなんてものがあるから、不可能だと決めつける気はないが。
「ホムンクルスねぇ。本当にそんなものが作れるのか?」
「水素、酸素、炭素、窒素、硫黄、リン・・・材料は手に入りそうですね」
確かに人間の身体を構成している元素は、それほど珍しいものではないと思う。
珍しい元素が無いと存在できないなら、人間がこれほど繁栄していないはずだ。
だけど、構成元素があるからといって、それを使って人間を作れるかというは話は別だ。
そんなことをするくらいなら、生殖行為で作る方がはるかに簡単だ。
俺はそのことを突っ込もうとするが、それより先に魔術書を読んでいたメイがさらに材料を読み上げる。
「あ、でも、私だと手にいれづらい材料がありますね」
やはり、そんなに簡単ではないようだ。
メイがその材料の名前を口にする。
「ケイって確か男の人でしたよね。精液って用意できませんか?」
「ぶっ!」
「自前のものを使った方が、意識を移植するときも拒絶反応が少ないと思うんですよ」
「女の子が真っ昼間から精液なんて言うな!」
生命を作るなら必要なものではある。
しかし、少女が男性に要求するというのは、卑猥にしか聞こえない。
「なんで怒るんですか。精液は人体の設計図ですから、ホムンクルスを作るときに必要なんですよ」
「恥じらいを持てって言っているんだよ!ええい、性教育のやり直しだ!」
「なんでですかぁ」
その日、俺は徹夜でメイに性教育を教え込んだ。
同居人が増えるというできごとはあったが、概ね平穏な日々だ。
冒険をしたいなんて考えるもんじゃないな。
思い返してみれば、あれが騒動のきっかけだった。
もう決めた。
俺は転生したこの世界で、のんびり過ごす。
平穏が一番だ。
そんな自堕落な決意を固めていると、メイがポツリと言った。
「ケイの身体をなんとかしないといけませんねぇ」
ちなみに、ポチは陽の光が入る窓際でひなたぼっこをして、ゴロゴロしている。
すっかり、家猫だ。
狩りの一族とか言っていたのは、どうなったんだろうか。
ネズミ一匹捕まえてこない。
そんなものを捕まえてこられても困るけど。
「俺の身体?」
ポチがゴロゴロしているので、俺がメイの言葉に返事を返す。
それに、話題は俺のことのようだ。
「身体なら、だいぶ再生したぞ」
七不思議の騒動で小さくなった身体だったが、現詩はほとんど元の大きさまで回復している。
しかし、メイの言いたいことは、そういうことではないらしい。
「そうじゃなくて、ケイの身体って小さくて不便じゃないですか」
「まあ、不便じゃないとは言わない」
転生前は人間だった俺からすると、手のひらサイズしかない身体は、何をするにも不便だ。
メイが世話をしてくれないと、生きていくのは不可能だろう。
植物としてずっと土に埋まっているなら話は別だが、人間の意識があるのでそれはキツイ。
「植物の成長を促進させる薬でも作ってみましょうか。人間くらいの大きさになれば、便利じゃないですか?」
なるほど。
それなら、着ぐるみを着込んで人里に行くこともできそうだ。
行動の範囲も広がる。
「魔術書に載っていたんですけど、作りますか?」
メイがへっぽこ魔術師であることに一抹の不安はあるが、アイデア自体は悪くない。
お願いしてみるか。
一瞬そう考えるが、ふと気になることがあった。
「その前に、マンドラゴラって、そんなに大きくなるのか?」
今の俺の身体は、人型の根っこをしたマンドラゴラという植物だ。
しかし、マンドラゴラが大木になるとは聞いたことがない。
下手に成長を促進なんかしたら、寿命が減ってしまうような気もする。
「どうなんでしょう。魔術書には、ケイくらいのサイズの絵しか載っていませんね。そのくらいが収穫に適した大きさですし」
「うーん、怖いからやめておく。他にいい方法はないか?」
どうやらメイは、俺の身体を大きくしてくれようとしているみたいだ。
その厚意に甘えて、他の方法はないか尋ねてみる。
「そうですねぇ」
メイはぺらぺらと魔術書をめくって、その方法を探す。
しばらくしたところで、メイの手が止まる。
「これなんか、どうでしょう?」
「どれどれ」
俺は小さい身体でテクテクと近づいて、メイと一緒に魔術書を覗き込む。
「ホムンクルス?」
「はい。魔術生命体です。本来はホムンクルス自体に自我を持たせるんですけど、ケイの意識を移植すれば、メイの身体になるんじゃないかと思って」
今までの魔術(笑)と比べると、はるかに魔術っぽい。
それだけに胡散臭い。
科学にもクローンなんてものがあるから、不可能だと決めつける気はないが。
「ホムンクルスねぇ。本当にそんなものが作れるのか?」
「水素、酸素、炭素、窒素、硫黄、リン・・・材料は手に入りそうですね」
確かに人間の身体を構成している元素は、それほど珍しいものではないと思う。
珍しい元素が無いと存在できないなら、人間がこれほど繁栄していないはずだ。
だけど、構成元素があるからといって、それを使って人間を作れるかというは話は別だ。
そんなことをするくらいなら、生殖行為で作る方がはるかに簡単だ。
俺はそのことを突っ込もうとするが、それより先に魔術書を読んでいたメイがさらに材料を読み上げる。
「あ、でも、私だと手にいれづらい材料がありますね」
やはり、そんなに簡単ではないようだ。
メイがその材料の名前を口にする。
「ケイって確か男の人でしたよね。精液って用意できませんか?」
「ぶっ!」
「自前のものを使った方が、意識を移植するときも拒絶反応が少ないと思うんですよ」
「女の子が真っ昼間から精液なんて言うな!」
生命を作るなら必要なものではある。
しかし、少女が男性に要求するというのは、卑猥にしか聞こえない。
「なんで怒るんですか。精液は人体の設計図ですから、ホムンクルスを作るときに必要なんですよ」
「恥じらいを持てって言っているんだよ!ええい、性教育のやり直しだ!」
「なんでですかぁ」
その日、俺は徹夜でメイに性教育を教え込んだ。
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