森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

かみゅG

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第二章 七不思議の中のマンドラゴラ

056.くさいのニャッ

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 美術室へ行くのはいいのだが、よく考えたらマズくないだろうか。
 あそこには隠しカメラらしきものがある。
 それを調べに行くわけだが、あれがもしも本当に隠しカメラだとしたら、俺とポチも撮られることになってしまう。

「ポチ、肖像画に見られないように行けるか?」
「絵が見てくるニャッ?」
「念のためだ」

 ポチは首を傾げながらも、低い姿勢で美術室に侵入し、壁に沿って肖像画のもとまで辿り着く。
 この角度なら肖像画からは真横なので見えないはずだ。

「それでどうするニャッ?目潰しするニャッ?」

 俺が肖像画に見られないようにしたいと言ったからだろう。
 ポチがそんな提案をしてくる。

「具体的には?」
「目に画鋲を・・・」
「却下だ」

 夜の学校で俺も考えたことは秘密だ。
 それに、隠しカメラらしきものがあると分かった今、分かりやすく目を塞ぐのは問題がある。
 もし、リアルタイムで監視されているとしたら、俺とポチが侵入していることがバレる。
 万が一、他にも隠しカメラがあれば今さらなのだが、それでもリスクは減らしたい。

「肖像画をほんの少しだけ壁から外してくれるか」
「わかったニャッ」

 ポチが壁から肖像画を離す。
 そのわずかな隙間を俺は覗き込む。
 壁と肖像画の裏は、表が側に目が描かれている付近から、糸のようなもので繋がれていた。
 だけど、落下防止の糸じゃない。

「ケーブル・・・」

 俺が機械に詳しいわけじゃない。
 だけど、それはケーブルに見えた。
 絵にはレンズが埋め込まれていて、それは壁から伸びたケーブルに繋がっている。
 壁を壊して、壁の中を調べれば、もう少し何か分かるかも知れない。
 でも、そこまでする必要はないだろう。
 何かがあるということは十分にわかった。
 これがカメラだろうが、ただの覗き穴だろうと、大した違いはない。
 学校内が監視されているのは確実だからだ。
 問題は何のために監視しているかだけど、そこまではわかりそうにない。
 メイにとって危険かどうか判断するのは、いったん保留だな。
 生徒の安全を守るために監視している可能性もある。
 俺はポチにお願いして肖像画を壁に戻してもらう。

「次に行こう。出るときも肖像画に見られないようにな」
「了解ニャッ」

 俺とポチは美術室を後にした。

 *****

 次は家庭科室だ。
 俺はここは初めて来る。
 メイと一緒に夜の学校を探検したときは、ここまでは来なかった。
 先にポチと像が争っているのを見かけたからだ。

「ポチは家庭科室に入ったことがあるか?」
「無いニャッ。あそこは嫌なにおいがするのニャッ。くさいのニャッ」
「くさい?生ゴミとかの匂いか?」
「うーん、食べ荒らされた動物の死骸の匂いに似ていたのニャッ。でも、それよりくさかったのニャッ」

 ポチは狩りをすると言っていたから、動物の死骸を見たことがあるのだろう。
 逆に俺は無い。
 生ゴミと動物の死骸はくさいという点では同じだけど、臭さの種類が違うような気がする。
 生ゴミは食べられるものが腐ったものだけど、動物の死骸は食べられないものも混ざっている。
 たとえば、腸の中身とかだ。
 腸自体はモツとして食べることができるが、その中身とはつまり、排泄される直前の排泄物のことだ。
 具体的に言うと、う〇このことだ。
 動物の死骸は、いわば生ゴミとう〇こが混ざった匂いなのだろう。
 そう考えると、なんとなくイメージできる。
 けど、ポチはそれよりもくさいと言った。
 得体の知れないものが、家庭科室にある。
 そんな想像が思い浮かんで、背筋が震えるような感じがした。
 今の俺の身体は、夜の学校でポチに切られて、真ん中から皮一枚で繋がっている状態だ。
 それを、根っこを絡み合わせてくっつけている。
 植物の身体だから、接ぎ木のように繋がるか、そうでなくても根っこが伸びて元に戻るだろうと考えてのことなのだけど、自分の身体が頼りない。
 手のひらサイズで元々頼りない身体だけど、いつもより頼りなく感じる。
 引き返したい。
 そんな考えが頭に浮かんだ。
 だけど、そんなことは知らないポチは、足を止めない。
 気付いたら、家庭科室の前まで来ていた。

「中に人はいないみたいニャッ」

 ポチがそっと家庭科室の廊下側の窓から中を覗いて教えてくれる。
 扉が閉まっているせいか、においはしない。

「扉を開けるニャッ」

 ポチが少しだけ扉を開ける。
 そして、そのまま少し待つ。
 けれど、中からにおいが漂ってくることは無かった。
 今日はにおいの元は無いのかも知れない。

「中に入るニャッ」

 ポチが扉をもう少し開けて、するりと身体を滑り込ませる。
 そして、内側から扉を閉める。
 さて、どこから調べようか。
 そう考えかけたところで、その必要がないことに気付く。
 木製のテーブルの上に置かれていたのは、校庭にあるはずの像だった。
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