森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

かみゅG

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第二章 七不思議の中のマンドラゴラ

053.猫ってタマネギとかがダメじゃなかったか?

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「殺されるって、ずいぶん物騒ですねぇ」

 危機感の無いのんきな口調でメイが言う。
 状況がわかっているのだろうか。
 その物騒な存在がいるのは、メイの通う学校なのだ。
 あの像がどんな存在なのかは、ポチの話だけではわからない。
 メイも知らないようだ。
 もしかしたら、学校の守護者的な存在の可能性もあるが、得体の知れない存在なのは間違いない。
 それに、ポチの話では、ポチの一族が学校の生徒を狩りの対象にしていたという話だ。
 ポチはキャッチ、アンド、リリースと言っていたが、だからといって安全とは言えない。
 命を取られることは無いにしろ、怪我を負う可能性は充分にある。
 実際、学校でポチがメイに襲い掛かったときは危なかった。
 今は惚れ薬の効果ですっかり懐いているが、どこまで気を許していいか迷うところだ。
 そんなふうに気を張って考え事をしていると、

 きゅ~~~~~

 気が抜ける音が聴こえてきた。
 力が抜けるような音だ。
 というか、音の主は力が抜けたように腹を押さえている。

「お腹が空きましたねぇ」

 音の主はメイだった。
 先ほどの音は、空腹で腹が鳴った音のようだ。

「ポチちゃんも食べるでしょ?」
「食べるのニャ~~~♪」

 メイはポチに気を許してしまっているようだ。
 危機感が無いと思う。
 けど、じゃあポチをどうするのかと言われると、答えに困る。
 俺が腕力でどうにかできるわけはないし、家から放り出しても、さっきの話だと狩りをするまで帰れないようだ。
 それなら、目の届くところに置いておいて、人間を襲わないように躾けた方がいいか。

「ま、いいか」

 けっきょく俺は、メイの行動を止めないことにした。
 この身体のせいで空腹は感じないが、俺も食事は摂っておきたい。

「ポチちゃんは、何か嫌いなものはある?」
「なんでも食べれるのニャッ。好き嫌いはないのニャッ」
「猫ってタマネギとかがダメじゃなかったか?」
「あたしは猫じゃないから、平気なのニャッ」
「ホントかよ」

 こうして、この家に新たな同居人が増えた。

 *****

 次の日の朝。
 ベッドで眠る二人を眺めながら思う。

「仲のよい姉妹・・・と言いたいところだけど、魔女と使い魔のようにも見えるな」

 この家には、ベッドは一つしかない。
 ソファも無いので、メイとポチは一つのベッドで仲良く寝ることになった。
 見た目だけなら仲のよい姉妹なのだが、俺は二人の正体を知っている。

 メイ → へっぽこ魔女。
 ポチ → やんちゃな子猫。

 そんなふうに頭の中で変換されて、魔女が使い魔と寝ているように見えるのだ。
 すでに朝日は昇っているから、じきに二人とも起きるだろう。
 しかし、俺は迷っていた。

「メイを学校に行かせていいのか?」

 七不思議を探検に行ったときに襲い掛かってきた相手は二人。
 そのうちの一人であるポチは、目の前にいてメイに懐いている。
 だが、もう一人、いや、一体は、いまだに学校にいるはずなのだ。
 メイが雷の魔術(笑)で倒していたけど、今も倒れたままかどうかはわからない。
 自分を倒したメイに襲い掛かってくるのではないかと俺は懸念しているのだ。
 それに、それだけではない。
 夜中に学校でのことを思い返していて、他にも気になることがあった。
 肖像画に埋め込まれていた、隠しカメラのようなもの。
 あれはいったい何だったのだろうか。
 思い付くのは監視カメラだ。
 仮に監視カメラだとすれば、何を監視するためのものなのだろうか。
 いかがわしい盗撮のためじゃないだろう。
 考えられるのは、学校に侵入する不審者か、もしくは、学校の生徒。
 前者だとすれば気にすることは無いが、後者だとすれば疑問は深まる。
 何のために、という疑問だ。

「なんだかなあ」

 俺はどんな異世界に転生してしまったのだろうか。
 魔術や獣人というキーワードは出てきているが、科学技術の片鱗も見える。
 けれど、高度に発展した科学技術というわけではない。
 元の世界と似て非なる世界。
 そんな感じだ。

「ふあぁ・・・」
「ふにゃあ・・・」

 どうやら、メイとポチが目を覚ましたようだ。
 俺は考え事を中断する。
 ここがどんな世界かはともかく、俺がマンドラゴラなんて存在に転生したのは間違いない。
 人間として生きていくことができない以上、世話をしてくれる相手を失うわけにはいかない。
 なら、その相手は護らないといけないだろう。
 目を擦りながら起きる二人を見ながら、俺はそんなことを考えた。
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